山口地方裁判所 昭和36年(タ)6号 判決 1962年5月18日
原告 石井冨喜子
被告 検察官
主文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、「原告と訴外亡石井直輔、亡石井サダとの間に嫡出親子関係の存在しないことを確認する。訴訟費用は国庫の負担とする。」との判決を求め、請求原因として、
原告は、戸籍上、父訴外石井直輔と母訴外堀本サダとの間に大正七年一月四日に庶子として出生し、大正一一年一一月二一日直輔、サダの婚姻により嫡出子となつた旨記載されている。
しかし、原告は実際には石井直輔、石井サダの間に生れたものではなく右両名以外の男女の間に生れたものであるのを直輔、サダが右の如く届出でたのである。それ故原告はその後直輔とサダの長男である訴外石井勇と事実上の婚姻をしたのであるが、同訴外人は昭和二〇年六月二〇日フイリツピンにおいて戦死した。
石井直輔は昭和七年三月二五日に、石井サダは昭和一九年六月四日に、それぞれ死亡した。
よつて人訴法第二条三項第三二条を準用し被告を相手方として本訴に及ぶ、
と述べた。
被告は請求棄却の判決を求め、答弁として、請求原因事実は全部不知と述べた。
理由
戸籍上の父母の死亡後に検察官を相手方として親子関係不存在確認の訴を提起することは法律上の根拠がなく、不適法である。
この場合原告は、原告が前記の男女の間に生れた子であることを確認する、旨の裁判を得た上、これに基き戸籍法第一一三条により戸籍訂正の許可を得て原告の戸籍の記載を消除することができる。
よつて本訴を却下することとし、民訴法第八九条第九五条を適用し、主文のように判決する。
(裁判官 井野口勤)