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山口地方裁判所下関支部 昭和44年(ワ)259号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕被告に対する帰責事由

<証拠>によると、

(1) 被告は土木建設会社で、その請け負つた県道改修工事に従事していたが、この工事に使用するため、本件事故の発生する約二週間前から、砂利販売業者訴外裵大万との間で運転手付の継続的自動車賃貸借契約を締結し、ほとんど毎日のように、右訴外人保有にかかる大型貨物自動車一、二台を一台につき運転手一名付で借り受け、その料金は時間制で支払つていた。

(2) 右賃貸借契約にもとづき被告に派遣される運転手は、訴外裵の被用者であり、自動車とともに通いの形をとつていたが、午前八時ごろ被告の西市プラントに赴いたのちは、すべて被告の現場監督の指揮に従い道路工事現場まで工事用アスフアルトの運搬をなし、必要量のアスフアルトの運搬が終るまで右往復を繰り返すことになつており、その間勝手に他の用務に従事することはもとより許されなかつた。

(3) 訴外李東来は昭和四三年三月ごろから訴外裵に雇用され、自動車による秒利運搬の業務に従事していたものであるが、本件事故の数日前から、前記契約にもとづき訴外裵から本件加害車付で被告に派遣されるようになり、右事故当時は、前記のごとくアスフアルトを道路工事現場に運搬してきて、これを卸す場所まで右加害車を後退中であつた。

以上の事実が認められ、この認定を左右しうる証拠はない。

そこで、以上認定の事実により判断すると、訴外李東来は、被告と訴外裵大万間の運転手付自動車賃貸借契約にもとづき被告に派遣され、雇用主たる訴外裵から指図を受けることなく、被告の指揮監督のもとで道路工事用アスフアルトの運搬に専従していたのであるから、訴外李が右運搬の業務に従事している間は、被告が同人に対し具体的直接的な指揮監督権を有し、かつ、その運転する自動車の運行を支配していたというべく、したがつて、訴外李が前記のごとく被告の道路工事用アスフアルトを運搬するため本件加害車を運転中惹起した本件事故については、被告は自賠法三条本文の責任主体に該当するものと解すべきところ、被告から同法ただし書所定の免責事由の主張がなされないので、被告は原告に対し、自賠法三条本文にもとづき、後記損害の賠償義務を免れない。

被告の和解(示談)成立の抗弁について

本件加害車の保有者たる訴外裵大万が原告に対し損害賠償義務を負うとしても、同義務と被告の原告に対する前記損害賠償義務とは不真正連帯債務の関係にある(被告と訴外裵は原告に対し民法七一九条一項の共同不法行為者ではない)ので、たとえ、原告と訴外裵間で被告主張のような和解(示談)が成立したとしても、その事実自体は、被告の原告に対する右損害賠償義務になんら影響を及ぼさないと解するのが相当であり、また、原告の本訴請求を権利乱用と解すべき事情は認められない。

被告の弁済の抗弁について

(1) 原告が昭和四五年九月二五日までに訴外裵大万から本件事故による損害賠償金として九回にわたり合計一八〇、〇〇〇円を受領したことは、当事者間に争いがないけれども、右金員の受領日は明らかでないので、これを右昭和四五年九月二五日に一括受領したものとして、原告の損害賠償請求権に充当すると、左のようになる。

(イ) 昭和四四年九月二三日(本件訴状送達翌日)における右請求権(元本)残額は(編注=賠償額より本訴提起前の填補額を控除して)二、二九六、五五六円。

(ロ) 石に対する昭和四四年九月二三日から翌四五年九月二五日まで年五分(日歩一銭三厘六毛九糸)の割合による遅延損害金は一一五、六九八円(円未満切捨)。

(ハ) よつて、一八〇、〇〇〇円のうち一一五、六九八円を右遅延損害金に充当し、残額六四、三〇二円を元本に充当すると、昭和四五年九月二六日における右請求権(元本)残額は二、二三二、二五四円。

(2) 原告が本件事故により昭和四六年一二月一日以降年間一三八、〇〇〇円の労災保険給付(障害補償年金)を受けることになつていることは、当事者間に争いがないけれども、労働基準法八四条一、二項および労働者災害補償保険法二〇条一、二項によると、原告の前記損害賠償請求権は、原告が現実に右保険給付を受けたとき、その給付の価額の限度で消滅(または移転)するものと解されるから、いまだ給付のなされない現時点において、これを弁済とみなすべきいわれはない。(谷水央)

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