山口家庭裁判所岩国支部 事件番号不詳 決定
少年 G(一九三九・九・二二生)
主文
この事件について少年を保護処分に付さない。
理由
(非行の事実)
少年は岩国駐屯米海兵航空施設米海兵第○○航空部隊憲兵部米海兵一等兵P(二二年)と共に、昭和三四年一月一一日午前三時頃広島市から岩国市所在の駐屯米海兵隊航空施設に帰隊する為、広島市薬研堀町から○川○美こと○美○(二七年)の運転する○○タクシー所属の営業用小型乗用自動車に乗車して右施設に向つたがPは当時三〇〇円しか所持せず、少年の所持金を加えても約定の自動車料金に不足することに思い及んだので逃走しようと考え、途中自動車を人気のない岩国市内今津川畔堤防路上に運行させて、同市大字今津○○○番地○○○酒場横に停車させて下車したところ運転手○から執拗に料金の支払方催促されて万策つきるや咄嗟に暴力によつても強いて料金を踏倒そうと決意し、偶々同運転手から借受け所持していた懐中電灯を以て右○の後頭部を二回強打したのである、すると少年もその場の零囲気から直ちにPの意図を察し茲に両名は共謀の上少年に於て更に右○の横腹を一回蹴りつけて転倒させ両名共同して○の反抗を抑圧した上広島から岩国までの自動車料金一千六百九十円の請求を不能にし、その支払を免れ、以て右金額相当の財産上不法な利益を得たがその際右暴行により右○に対して治療の為八日間を要する左側頭部切創の傷害を負わせたものである。
(上記事実に適用した法条)
刑法第二四〇条
(主文記載の不処分に付する事由)
一、本件非行は少年の母親の死亡の為、台湾より帰国の途中岩国基地に立寄つたところ、遇然本国で知り合つていたPに遭遇し同人の厚意から同夜広島市にドライブするに至つたものであるがその帰途の自動車賃に不足を来たした為に本件の発生を見るに至つたものでその責任は主として前記Pにあり、少年としては単に不案内の土地にあつてPの無思慮な行動に盲従したるに過ぎず、本件は結局Pの犯行の巻添えにあつたに過ぎないものと認めるのを相当とする。
二、被害の弁償としては被害者○に対し治療費、休養日当、慰藉料を支払う等被害損失の補填に努力の跡が認められる。
三、少年の性格は正直温良で、海兵隊軍人としても隊内の勤務成績は良好である。また過去において処罰を受けた前歴もなく、本件非行についても非常に後悔しており且つ海兵隊における上官も今後の教育、指導に万全を期する旨約しているので犯罪的危険性は無いものと思料せられる。
よつて少年の経歴、性格、環境等諸般の事情を綜合斟酌すれば保護処分に付する必要がないと認め、少年法第二三条第二項により決定する。
(裁判官 山根吉三)