山形地方裁判所 昭和29年(行)14号 判決
原告 安房正雄 外二名
被告 糠野目村議会
一、主 文
原告等の訴はいずれもこれを却下する。
訴訟費用は原告等の負担とする。
二、事 実
原告控訴代理人は、昭和二十年九月十二日被告議会がなした糖野目村を宮内町並びに沖郷、漆山、梨郷、吉野、金山及び中川の各村に合併する旨の議決を取消すとの判決を求め、請求の原因として、原告等はいずれも糖野目村の住民である。昭和二十九年六月十八日被告議会は六月定例議会を開いて糖野目村を赤湯町宮内町を中心とするいわゆる北部ブロツクに合併することを議決した。凡そ新町村建設計画を定めるに当つては、合併町村の住民が相互に融和し進んで合併町村の建設に協力する基本態勢を整えるよう配慮しなければならないし、その計画は合併町村の住民のすべてについて等しく福祉を増進する等種々の要請を充たすに足るものでなければならないことは、町村合併促進法第七条の法意に徴し明らかであり、又町村合併を行うに当つては、関係機関はその意義及び目的を住民に周知されるように努めなければならないことは、同法第二十一条の法意に徴して明らかである。然るに被告議会は村民の総意に一顧も与えず右の議決をしたのであるが、居村の永遠の福祉を願原告等としてはまことに遺憾に堪えない。そこで原告等はかくの如き議会に信をおくことができなくなつたため、地方自治法第七十六条に則り、被告議会の解散を請求するため村民にその署名を求めたところ、千三百四十七の署名を得、その内有効署名数は千百四十四に達し、糖野目村選挙有権者総数三千百三十五名の三十六・八パーセント強を占めた。そこで昭和二十九年八月十九日附で原告遠藤外四名連署のうえ、糖野目村選挙管理委員会に対し被告議会の解散請求をなし同日これを受理された。ところで被告議会解散賛否投票日昭和二十九年十月三日と定めたのであるが、被告議会はそのことを知り乍ら、同年九月十二日請求趣旨記載の議決をなした。右議決は明かに町村合併促進法第一条、第七条、第二十一条第二項の法意に違反しているので取消されるべきものであると述べた。
被告議会訴訟代理人は、原告等の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする旨の判決を求め、答弁として、原告等が糖野目村の住民であること、被告議会が原告等の主張の各議決をなしたこと、並びに被告議会解散賛否投票日が原告等主張の日であることはいずれもこれを認めるがその余の事実はこれを否認する。と答え、被告議会は町村合併促進法の精神を尊重し、村民の意思を顧慮して右議決をなしたものであると述べた。
三、理 由
先ず本訴の提起が適法であるかどうかについて考えてみるに、町村が都道府県知事に対してなす町村合併の申請については、右の町村の議会の議決を経ることになつているが、その議会の議決は町村の内部的意思決定であると認むべきで、町村の住民の権利義務に直接且つ具体的な法律効果を及ぼす町村の行為であるとは認められないから、それは行政事件訴訟特例法にいわゆる行政庁の処分に当るものとは考えられない。そうすると被告議会がなした糖野目村を特定の町村と合併する旨の議決の取消を求める本訴は爾余の点の判断をまつまでもなく不適法として却下を免れない。よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 松本晃平 立川俊夫 岡田安雄)