山形地方裁判所 昭和37年(ワ)1号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決要旨〕仮処分の後に本案訴訟において権利がないと判断された以上、原則として仮処分債権者に過失が有ると推定するのが相当であるが、仮処分債権者において実体上権利があると確信し、その確信を得るについて相当の理由がある場合には右の推定は覆元されるべきである。
〔判決理由〕尤も、仮処分は一般に口頭弁論を経ずに一応の疏明だけに基づいて発せられ、又実体上の請求権の存否の確定を本案訴訟に譲りながら、仮処分債権者の責任において権利の保全を図り、且つ仮処分債務者の受忍によつて自己の利益を得るところの、簡易、迅速、暫定的にして然も強力な措置なのであるから、後に本案訴訟において権利がないと判断された以上、原則として仮処分債権者に過失があると推定するのが相当であるが、仮処分債権者において実体上権利があると確信し、その確信を得るについて相当の理由がある場合には右の推定は覆えさるべきである。これを本件について考えるのに、被告は本件農地に対する原告等および訴外亡サキ〓耕作権を否認した上、その立入立入を禁止する旨の仮処分決定を得たのであるが、後に本案訴訟において敗訴の確定判決を受けたので、それだけをみれば、一応被告の行為に過失の有ることが事実上推定されるけれども、しかし、前記(二)および(三)における説示によつても明らかなように、被告は本件農地に耕作権を有すると確信し、且つその確信を得るについて相当の理由があると認めるのを相当とするから、右の推定は覆えされたものと言わねばならない。(裁判長裁判官上田次郎 裁判官石垣光雄 裁判官西尾幸彦)