山形地方裁判所 昭和42年(ワ)17号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕本件事故における原告の損害の総額は、……原告の本訴請求額を上まわるものであるところ、……過失相殺により控除の対象となる基礎額は、右の上まわる額(前者と云う)か、あるいは、……請求額(後者と云う)であるかについては問題がある。実体法的考察をすると相殺は発生した客観的損害と対比し、それとの考量によつて、その程度、額が決定されるものであるから、その控除の対象も右前者に、他方、手続法的考察をすると、訴訟関係は、相殺の主張も含め、その訴訟物を中心とし、その範囲内で、攻、防が尽され、主張の当否が決せられるのであるから、本来の主張の範囲以外の事項に相殺をかからせることは、訴訟物以外の点につき、判断をすることに帰するから、その控除の対象も、右後者とするのが妥当とされるであろう。ところで本件において、相殺さるべき額の認定は別として、右前者の損害額から、相殺分を差引いた場合、その残存額は、なお原告主張の請求総額を上まわり、相殺の主張が容認されながら、原告に敗訴部分がないという変則的な事態が生れ、帰するところ、原告はその申立以上の利益を受ける結果となり、従つて弁論主義に悖ることとなる。斯様な点からみて、相殺による控除は、原告の請求する範囲の額を対象にするものと解するのが相当である。このことは、原告が当初から相殺を予見し、あらかじめ、これを控除した額、若くは客観的損害全額を請求している場合は、自ずと別論である。(伊藤俊光)