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山形地方裁判所 昭和55年(ヨ)29号

主文

1  相手方は申立人工藤良二、申立人三浦文男、申立人井上武夫及び申立人二藤部正八郎を相手方の従業員として取り扱わなければならない。

2  相手方は別紙(略)債権目録中の氏名欄記載の各申立人に対し、それぞれこれに対応する同目録中の債権金額欄記載の金員を昭和五五年二月から本案判決確定にいたるまで毎月末日限り仮に支払え。

3  申立人芳賀保治及び申立人長瀬正美の本件申立てをいずれも却下する。

4  申立費用は申立人工藤良二、申立人三浦文男、申立人井上武夫及び申立人二藤部正八郎と相手方との間においては相手方の負担とし、申立人芳賀保治及び申立人長瀬正美と相手方との間においては相手方に生じた費用の三分の一を右申立人両名の負担とし、その余を各自の負担とする。

理由

一  申立人ら代理人は「1相手方は申立人工藤良二、申立人三浦文男、申立人井上武夫及び申立人二藤部正八郎を相手方の従業員として取り扱わなければならない。2相手方は別紙債権目録中の氏名欄記載の各申立人に対し、それぞれこれに対応する同目録中の債権金額欄記載の金員を昭和五五年二月から本案判決確定にいたるまで毎月末日限り仮に支払え。3相手方が昭和五五年一月二九日付をもってした申立人芳賀保治及び申立人長瀬正美に対する減給三か月、譴責処分の意思表示の効力を停止する。4申立費用は相手方の負担とする。」旨の裁判を求めた。

二  そこで検討するに疎明によれば、次の事実が認められる。

1  相手方(以下「会社」という)は肩書住所地(略)に本社を有し、自動車部品の製造及び販売等を営なむことを目的として昭和四八年八月二五日設立された株式会社であり、昭和五五年四月一〇日現在その従業員数は四八名(正社員二五名、出向社員一名、臨時工九名、パート一三名)である。申立人らはいずれも会社の従業員である。申立人工藤、申立人三浦及び申立人井上は会社の従業員で組織されている美吉製作所労働組合(以下「第一組合」という)の組合員であり、それぞれ申立人工藤は第一組合の執行委員長、申立人三浦は同組合副執行委員長、申立人井上は同組合書記長である。申立人二藤部、申立人芳賀及び申立人長瀬は会社の従業員で組織されている美吉製作所大石田工場労働組合(以下「第二組合」という)の組合員であり、それぞれ申立人二藤部は第二組合の執行委員長、申立人芳賀は同組合副執行委員長、申立人長瀬は同組合執行委員である。

2  会社は申立人工藤、申立人三浦、申立人井上及び申立人二藤部に対し昭和五五年一月二九日付内容証明郵便をもって右申立人四名を同月三一日付で懲戒解雇する旨の意思表示をし、右郵便は同月三〇日右申立人四名に到達した。また、会社は申立人芳賀及び申立人長瀬に対し昭和五五年一月二九日付内容証明郵便をもって右申立人両名を「減給三か月に処する。譴責処分として始末書を昭和五五年二月五日まで提出する。」旨の懲戒処分に付する旨の意思表示をし、右郵便は同月三〇日右申立人両名に到達した。

3  申立人工藤らは昭和五〇年一一月ころ会社の労働条件が劣悪であるとして会社に対し夜勤手当の増額の要求をしたところ、会社は申立人工藤、申立人三浦、申立人井上を含む五名の者を解雇した。そこで申立人工藤ら五名は北村山地区労働組合評議会(以下「地区労」という)の支援を得て会社をして右解雇を撤回させ、同年一二月職場復帰を実現した。この事件が契機となって申立人工藤、申立人三浦、申立人井上ら五名は同年一一月二五日第一組合を結成し、同時に同組合は地区労及びその上部団体たる山形県労働組合評議会に加盟した。ところが他の約二二名の従業員は山形地方同盟加盟の労働組合の結成を企て会社の支援を得て同年一二月一一日第二組合を結成し、同月一六日山形地方同盟に加盟した。そのため第一組合の組合員は五名にとどまった。申立人工藤は第一組合結成と同時に同組合の執行委員に選任され、昭和五一年七月執行委員長となって現在に至っている。第一組合結成と同時に申立人三浦は副執行委員長に、申立人井上は書記長にそれぞれ選任されて現在に至っている。申立人二藤部は第二組合結成と同時に同組合の書記長に、昭和五三年一月二八日執行委員長に選任されて現在に至っている。申立人芳賀は第二組合結成と同時に同組合副執行委員長に選任されて現在に至っている。

4  会社は第一組合、第二組合の設立後、会社に非協力的な第一組合を嫌悪し、第二組合とのみ団体交渉を行うことなどがあった。第一組合は当時組合員数三名であったが昭和五三年七月一二日山形県地方労働委員会に対し会社が団体交渉を拒否するとして会社を相手方として団体交渉の斡旋の申立をした結果、同月二八日第一組合と会社との団体交渉において妥結をみた。ところで第二組合は申立人二藤部の指導のもとに昭和五三年春ころから会社との対決の姿勢を強め残業についてのいわゆる三六協定の運用をめぐる闘争を行うとともに同年一〇月ころから第一組合と共同闘争を行うようになった。その過程において第二組合の組合員中の申立人二藤部、申立人芳賀及び申立人長瀬を除いて他の組合員ら二三名の従業員が会社の支援を得て昭和五四年七月一九日美吉製作所新大石田労働組合(以下「第三組合」という)を結成したので、第二組合の組合員は申立人二藤部、申立人芳賀及び申立人長瀬の三名のみとなった。

5  会社は昭和五四年一二月一七日朝申立人二藤部について製造課班長の職を解く旨の処分を従業員に公示した。ところで第一組合は同月一七日午前八時過ぎころ会社に対して同日午後五時三〇分より年末一時金の件に関する団体交渉等を行いたい旨申入れた。また、第二組合も同日午前八時半ころ会社に対して同日団体交渉を行うことを申入れた。会社の佐藤勇総務部長は同日第一組合に対し業務の都合により本日は団体交渉に応じられない、翌一八日午後五時から午後六時まで団体交渉を行いたい旨回答するとともに、第一組合側からの団体交渉への出席者名を翌一八日昼休み時間に会社へ通知してもらいたい旨の要請をした。そこで第一組合員である申立人工藤及び第二組合員である申立人二藤部らは一七日午後五時過ぎに会社事務所へ当日団体交渉を行わない理由を聞きただすために出向いたところ、会社の門の付近において帰宅しようとする会社の佐藤勇総務部長を発見して呼びとめ同部長に話合を求めた。そして申立人工藤ら第一組合員及び申立人二藤部ら第二組合員合計六名は佐藤部長とともに会社事務所食堂に赴いて同部長に対して即ちに団体交渉を行うよう要求した。そのうち、当日団体交渉があるものと信じて支援のために参集した地区労の小山四郎議長ら六名が右食堂に入ってきた。第一組合員、支援の地区労組合員らは佐藤部長に対し当日団体交渉を行わない理由の説明を求めるとともに、団体交渉に出席する者の氏名を予め通知するようにとの会社側の要求が従来からの労使慣行に反するとして追及した。これに対して佐藤部長は自分には団体交渉の権限がないので本日団体交渉を行うことができない旨答えるとともに、組合側からの佐藤多田雄副社長を呼び出してくれとの要求に対しては同副社長の所在は不明である旨答えていた。また、佐藤部長は明日の団体交渉に第一組合側から出席する者の氏名を予め明らかにするよう主張して組合員らと押問答が続いた。午後七時ころ申立人三浦が注文した出前のラーメンが届いたので組合員らはこれを食べ、佐藤部長に対してもこれを食べるよう勧めたが、同部長はこれを断った。その後佐藤多田雄副社長から会社事務所へ電話があり、同副社長は組合側に対し一応従来どおりのやり方で第一組合との団体交渉に応ずる旨約束したため、その点については組合側も納得した。その後その場に居た第二組合員の申立人二藤部、申立人芳賀及び申立人長瀬は、佐藤総務部長に対し、会社が申立人二藤部の班長職を解いた処分の撤回を要求するとともに、それまで第二組合に対して使用を許していた社内の掲示板を会社側が禁止し、右掲示板に貼付してあった第二組合のチラシを会社側がはずしたとして抗議した。そして第一組合及び地区労の支援の者もこれに同調して佐藤総務部長に強く迫ったため、同部長は第二組合と会社との間において話合の結着がつくまで右掲示板を従来どおり同組合に使用させることの承諾を余儀なくされた。そこで第一組合、第二組合及び地区労の者らは一応納得して佐藤部長の帰宅を許したので、同部長は迎えに来ていた長男恵一とともに午後九時五〇分ころ帰宅し、その後組合員らも引きあげていった。

6  昭和五四年一二月一八日午後五時から会社事務所の応接室において第一組合と会社との間の団体交渉が開始され、第一組合から申立人工藤、申立人井上及び申立人三浦が、会社側から佐藤多田雄副社長及び佐藤勇総務部長が立ち会った。ところが同日午後五時三〇分ころ第一組合の支援のために来た地区労の小山議長ら七名が右応接室に入ってきたので団体交渉の場所を応接室の隣の事務室に移した。会社側は第一組合に対し年末一時金については第三組合と妥結した条件以外では交渉に応じられない旨述べ、第一組合側は会社側にその理由の説明を求めたがこれを拒否されたうえ、会社側から団体交渉を午後六時で打ち切りたいとして団体交渉の時間を制限されたため態度を硬化させた。同日午後六時三〇分ころ会社事務所の食堂に待機していた第二組合の組合員である申立人二藤部、申立人芳賀及び申立人長瀬が団体交渉の行われている事務室に入ってきた。佐藤副社長及び佐藤部長は第二組合の組合員は本日の団体交渉とは関係がないとして申立人二藤部ら第二組合員に事務室からの退去を求めたが、申立人二藤部らはこれに応じなかった。そこで佐藤副社長は地区労の組合員以外の組合員が立ち会っていることを理由に一方的に第一組合との団体交渉の打ち切りを宣言した。そのころ団体交渉に立ち会っている者たちのために第一組合側が注文した出前のラーメンが外部から届いたので、午後七時三〇分ころその場に居合わせた組合員らは交代でこれを食べはじめた。同人らは佐藤副社長及び佐藤部長に対してもこれを食べるように勧めたが、副社長らはこれに応じなかった。そして佐藤副社長は再三、再四第一組合側に団体交渉を打ち切ったので退去するように求めたが、第一組合側はこれに応じなかった。そこで佐藤副社長がそれでは自分達が先に帰るといって立ち上ると第一組合側の者らがその前に立ちふさがったり、同副社長の腕を押えておしとどめるというようなこともあった。その後約二時間にわたり団体交渉に応じろ、応じない、帰せ、帰さないというようなことで会社側と第一組合員らとの押問答が繰り返された。午後八時三〇分ころ佐藤総務部長の長男恵一が第一組合側の者に父は身体が悪いので早く帰してくれるよう求めるなどのことがあり、ようやく第一組合、第二組合及び地区労の者らは団体交渉をあきらめて会社事務所から引きあげていった。

7  会社はその後昭和五五年一月七日就業規則に則って会社の制裁委員会に対して申立人ら六名に対する制裁処置に関して諮問を行った。制裁委員会は、同日から同月一四日まで七回にわたり会議を開催し、同月一五日会社社長佐藤吉雄に対し答申をした。この答申書によれば、申立人工藤、申立人三浦及び申立人井上については懲戒解雇を相当とする、申立人二藤部については自主退職若しくは懲戒解雇を相当とする、申立人芳賀及び申立人長瀬については減給、譴責を相当とするというものであった。佐藤副社長は同月一六日申立人二藤部に対し自主退職を求めたが、申立人二藤部はこれを拒否した。そこで会社は、前記2のとおり、申立人工藤、申立人三浦、申立人井上及び申立人二藤部の四名に対して就業規則第六四条所定の事由ありとして懲戒解雇の通告をし、また申立人芳賀及び申立人長瀬の両名に対して就業規則第六四条所定の事由ありとして減給三か月及び譴責の懲戒処分に付する旨の通告をした。

8  会社の就業規則第六四条には第一号から第二〇号にわたって懲戒事由が列挙され、同規則第六六条には「制裁はその情状により次の区分に従って行う」と規定され、その区分として次のとおり定められている。即ち、

第一号 減給、一回の額が平均賃金一日分の半額以内とし総額が一か月の給与の一割以内で行う。

第二号 譴責、始末書を提出させ将来を戒める。

第三号 出勤停止、七日以内出勤を停止し、その期間中の賃金を支払わない。

第四号 格下、役付を免ずる。

第五号 懲戒解雇、予告期間を設けることなく即時に解雇する。但し、行政官庁の認定を得た時は解雇手当は支給しない。

三  前記二の事実によれば、会社が申立人工藤、申立人三浦、申立人井上及び申立人二藤部を懲戒解雇に付したのは昭和五四年一二月一七日及び同月一八日における右申立人らの行為が主たる理由であると考えられるところ、前記二に判示した事情のもとでは右両日における右申立人ら四名の右行為は疎明によって認められる右申立人らのその余の行動を勘案してみても、いまだ同社就業規則第六四条各号所定の懲戒事由に該らないかあるいは少なくとも右申立人ら四名の行為は右就業規則第六六条第五号所定の懲戒解雇に付するに足るものということはできない。そして他に会社が右申立人ら四名を解雇するについて正当な理由が見出しえないから、会社が申立人工藤、申立人三浦、申立人井上及び申立人二藤部に対してした前記解雇の意思表示はその要件を欠くか、解雇権の濫用にあたるものというほかはなく、その効力を生じるに由ないものといわざるをえない。したがって、右申立人ら四名はなお会社の従業員たる地位を有しているものというべきである。

四  疎明によれば、右申立人ら四名は昭和五五年一月まで会社から毎月末日限り賃金を支払われていること、右申立人ら四名のそれぞれの一か月の平均賃金は別紙債権目録中の債権金額欄記載の各金額であり、右申立人ら四名は昭和五五年二月から以後に支払われるべき賃金の支給を受けていないが、いずれも賃金を生計の資とする労働者であるから本案判決を待っていては回復し難い損害を被るおそれのあることが認められる。したがって申立人工藤、申立人三浦、申立人井上及び申立人二藤部の求める本件仮処分はその必要性がある。したがって右申立人ら四名の本件申立は理由があるからこれを認容すべきである。

五  ところで、前記二の事実によれば、会社の申立人芳賀及び申立人長瀬に対する懲戒処分は昭和五五年一月三〇日右申立人らに通告されたが、その内容は減給三か月及び譴責というものである。しかしながら申立人ら提出の疎明資料によっては未だ会社の申立人芳賀及び申立人長瀬に対する前記懲戒処分の意思表示の効力を停止しなければ右申立人両名において回復しがたい損害を被るものと認めるに足りない。したがって申立人芳賀及び申立人長瀬の求める本件仮処分はその必要性があるものということができないから、右申立人両名の本件申立はこれを却下すべきである。

六  よって、申立費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条本文、第九三条第一項本文を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 武藤冬士己 裁判官 下澤悦夫 裁判官 伊藤茂夫)

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