大判例

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山形地方裁判所鶴岡支部 昭和26年(タ)7号 判決

原告 林園

被告 王金童

一、主  文

原告と被告とを離婚する。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め、その原因として、原告と被告は昭和二十一年十月頃鶴岡市に於て婚姻し、当時その旨東京都千代田区内幸町中華民国駐日代表団僑務所に登記手続をして同棲したが、その後間もなく山形県西田川郡湯田川村大字田川湯、九兵衛旅館事大滝九兵衛方に転住した。ところが被告はその頃から情婦の許に走り同人と同棲し、原告を棄てて顧みないようになつた為原告は生活に窮し、右旅館の支払さえ出来ず自己の僅かの衣類をこれに提供して宿料等の支払に充てていたが、遂には同旅館も逐われ、同所七内旅館に転居し、昭和二十二年七月十五日此処で長女王秀蓮を分娩した。然し依然被告は原告に一銭の生活費も供与しないので、原告は前同様その所有の衣類を同旅館に提供して宿料等の支払に代えて漸く糊口を凌いで来たのである。ところが間もなく被告は右秀蓮を引取つて同年九月頃無断同地を出奔し、昭和二十四年九月頃たまたま湯田川村役場を訪れて同年十月一日附で東京都杉並区高円寺四百七十五番地に転出する旨の証明書の交付を受けたがその儘立去つて現在に至るも生活費の供与の無いのは勿論その消息も不明である。

被告のこのような所為は悪意を以て原告を遺棄したもので、原告は被告と離婚して将来の生活の途を講じたいので民法第七百七十条第二号、中華民国民法第千五十二条第五号により本訴に及んだ次第である旨陳述した。<立証省略>

被告は適式の呼出を受けたのに拘らず本件口頭弁論期日に出頭しない。

三、理  由

真正に成立したと認められる甲第一、二号証、証人張生妹、同廖万江、同林椅波の各証言並鑑定人張栄鑑の鑑定の結果を綜合考察すれば離婚原因に関する法律の適用を除くその余の原告主張の事実即ち婚姻の経緯並婚姻(同時に離婚も)の要件乃至は効力を裏付ける婚姻の方式の適式であつたこと全部を認めることができる。

ただ原告は本訴裁判上の離婚原因に関する法律の適用について我が国民法第七百七十条第二号、中華民国民法第千五十二条第五号を掲記しているが、これについて考えてみると、今次の戦争により我国の降伏した後、台湾人は日本の主権の範囲外におかれ、この地域に生じた現実の政治上の事態はことがらの性質によつて台湾人を実質上外国人として取扱わなければならない場合が生じて来ることは当然であるが、その他の帰属が終局的に決定していない今日、主権の行使と関係のない私法上の身分関係に関する事項のごときは従来の我国の法制を維持し、これをそのまゝ適用しなければならないものと思う。

而して大正十一年勅令第四百七号(台湾ニ施行スル法律ノ特例ニ関スル件)第五条によれば、台湾本島人のみの親族及相続に関する事項については民法(但しこの場合は昭和二十二年法律第二百二十二号による改正前の民法をいう)第四編及第五編の規定を適用せずして別に定めるものを除くの外慣習による旨定められ、鑑定人張栄鑑の鑑定によれば、同島に在する慣習として本訴被告の所為は明らかに配偶者の一方が悪意を以て相手方を遺棄したとのもとに裁判上の離婚の原因となるものであることが認められる。よつて原告の本訴請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 三沢清助)

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