大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

山形家庭裁判所酒田支部 昭和37年(家)126号 審判 1962年2月26日

国籍 アメリカ 住所 山形県

申立人 フォスター・エヌ・ジェームス(仮名)

(本籍および住所 申立人住所に同じ)

未成年者 田中実(仮名)

主文

申立人が、未成年者田中実を養子とすることを許可する。

理由

一、本件申立の要旨は、

(一)  申立人は、かねて、未成年者田中実の実母である田中安子と知り合いの間柄にあつたところ、昭和三十七年一月二十二日、将来を契つて、婚姻した。

(二)  そして、現在、妻安子とおよびその非嫡出子である未成年者実と同居し、妻安子と協力して、未成年者実を監護養育している。

(三)  ところで、申立人は、近く、米本国に帰ることになつているが、未成年者実を養子とした上、妻安子とともに同伴して、米国において、夫婦親子として円満な家庭生活を営みたいと考え、妻安子も、また、このことを希望している。

それで、未成年者実との養子縁組許可の審判を求めるというのである。

二、そこで、審案するに、わが国の法例第一九条によれば、養子縁組の要件は、各当事者について、その本国法によつて定めるべきことになつているところ、養子となるべき未成年者実の本国法であるわが民法第七九八条但し書によれば、未成年者実は、申立人の妻安子の子であるから、本件養子縁組については、裁判所の許可を必要としないわけであるが、養親となるべき申立人の本国法であるアメリカ合衆国オクラホマ州法によれば、本件養子縁組についても、裁判所の養子縁組の審判を必要とすることになつているので、本件養子縁組許可申立について、審判をするのが相当であると考えられる。

すすんで、本件養子縁組許可の当否について検討するに、申立人の身許証明書および筆頭者田中安子の戸籍謄本並びに申立人および田中安子各審問の結果によれば、申立人の申立の事実を認めることができ、この事実によれば、申立人が、未成年者実を養子とすることは、その本国法であるアメリカ合衆国オクラホマ州法に照らして、何らの障得もなく、また、未成年者実が、申立人の養子となることは、その本国法であるわが民法に照らして、何らの障碍もないものと認められる。そして、未成年者実が、申立人の養子となつて、実母安子およびその夫である申立人のひざもとにあつて、その監護養育を受けることは、未成年者実の将来の幸福のために、当を得たことであると認められる。

よつて、申立人の本件申立は、その理由があるから、これを許可することにし、主文のとおり、審判する。

(家事審判官 野口栄一郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例