大判例

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岐阜地方裁判所 平成8年(行ウ)13号 判決

原告

三輪唯夫

松島勢至

三輪隆久

右三名訴訟代理人弁護士

山田秀樹

笹田参三

被告

岐阜県知事 梶原拓

右訴訟代理人弁護士

渡邊一

右指定代理人

鈴木拓児

山岸誠

中村敏雄

片岸吉充

西澤法久

千田孝博

"

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一1  争点<2>について判断するに、行政事件訴訟法一四条一項は、処分の取消訴訟は処分があったことを知った日から三か月以内に提起しなければならない旨規定するところ、処分の名宛人以外の第三者の場合については、諸般の事情から、右第三者が処分があったことを了知したものと推認することができるときは、その日を右にいう「処分があったことを知った日」としてその翌日を右第三者の出訴期間の起算日とすることができるものというべきである(最高裁平成二年〔行ツ〕第一一五号同五年一二月一七日第三小法廷判決・民集四七巻一〇号五五三〇頁参照)。

2(一)  原告らは、処分の名宛人以外の第三者については、右条項が定める、いわゆる主観的出訴期間の適用はないと主張するが行政処分は公共の利害に係るところが大きく、その効力をいつまでも争い得る状態においておくことは好ましくないことから、行政事件訴訟法一四条が出訴期間を限っているものであるところ、右理由とするところは処分の名宛人以外の第三者が行政処分の効力を争う場合についても同様に妥当するうえ、右主観的出訴期間について別異に扱うべきとする事情も存在しない。したがって、原告らの右主張を採用することはできない。

(二)  また、原告らは、どのような事実があれば右第三者が処分があったことを知ったといえるのかが判然とせず、基準とするにはあまりにも不明確なものであるとも主張するが、これが直ちに右第三者について行政事件訴訟法一四条一項の適用を一律に排除すべき理由になると解することもできない。

二  そこで、本件について、原告らが本件許可処分があったことを了知したものと推認できるか否かについて検討するに、〔証拠略〕によれば、次の事実が認められる。

1  原告ら外一名は、平成七年六月九日付け調停申請書により、メナードランド、岐阜県及び上石津町を相手方として、メナードランドに対しては本件ゴルフ場計画の中止を、岐阜県に対しては林地開発行為を許可しないことを、上石津町に対しては岐阜県に進達した意見書の取下をそれぞれ求めるとの内容の公害紛争処理法に基づく公開調停(以下「本件公害調停」という。)を、岐阜県公害審査会に申請した。

2  メナードランドの取締役で、本件ゴルフ場計画の担当である滝藤兼清(以下「滝藤」という。)は、平成七年八月三一日に本件公害調停に出席した。右調停の手続は、各当事者が別々に調停委員の部屋に入り、個別に委員と話をするという形式で進められたが、本件許可処分があったことは調停委員も知っており、滝藤に対しては、調停委員から既に岐阜県は本件公害調停の相手方とはならないという話がされた。右調停の席で滝藤は、メナードランドは計画を中止する意思はなく、原告らがあくまで中止を求めるのであれば調停で話し合うことはない旨答えた。これに対し、原告らは中止のみを求めるものではないということであったため、調停が続行されることになった。同日の調停ではこの点の意思確認だけが行われた。

3  同年九月二日、原告三輪唯夫若しくは原告松島勢至のいずれかからメナードランドに電話があり、本件ゴルフ場計画の担当従業員である西松が応対したところ、担当者と一度会いたいとの内容であったため、滝藤は、同月四日午後七時ころから一時間半ほど、岐阜県養老郡養老町の「魚仲」という店で、原告三輪唯夫及び原告松島勢至と会った。右原告両名から、「許可はもうおりたんだが、いつから着工するのか。」とか、「他に売却しないでほしい。」などといった話がされた。滝藤は、本件開発予定地を他に売却する意思はないこと、準備工事には入るけれども正式工事に着工する時点ではまた連絡するつもりであることなどを伝えた。右原告両名からは、更に、工事の着工を強行しないで欲しいとか、ゴルフ場以外の利用目的はないのかなどといった発言がされ、滝藤は、一番良い方法がゴルフ場開発であり、簡単に変更することはできないが、一応検討する旨答えた。

4  同年九月に入り、上鍛治屋地区の広報会長である草野孝(以下「草野」という。)は、上石津町の企画課長や前記西松から本件許可処分があったことを聞かされた。同地区は以前から本件ゴルフ場計画に反対との立場をとっていたため、同月七日に地区の役員会を開いて対応を協議した結果、上鍛治屋地区総集会を開くことが決まった。右総集会は同月一五日の午後八時から公民館で開かれたが、原告らもこれに参加していた。草野は、本件許可処分について、「八月二八日に県知事の許可がおりたということを聞きましたので、今まで反対ということできておりますので、どういうふうに対応したらいいか」などと尋ねたところ、色々と議論がされた結果、それまでメナードランドとの話し合いができていなかったから、まず農業用水の水利関係について話し合いをしなければならない、その後に態度を決めようとの結論になった。また、本件許可処分がされた以上こちらからメナードランドに対して条件交渉を持ちかけることはしないということになった。

5  また、原告らは、本件公害調停において、同年一〇月一八日付け意見書を提出したが、これには「八月二八日付けで開発許可を得たと聞いているが、そうであれば一件書類を秘匿する必要性もないので、調停を円滑かつ合理的に進めるために、計可申請に添封した資料一式を公開するよう求める。」、「本件ゴルフ場については、すでに林地開発許可がなされたと聞いているので、造成工事の方法、ゴルフ場管理の在り方などについて、本調停においてとりまとめていきたいと考えるので、申請人らは調停継続を希望する。」と記載されていた。

6  更に、上石津町議会議員でもある原告三輪唯夫は、従前から町議会の報告書として「視点・論点・みんなの声」と題する文書を作成し、これを上石津町内において配布していたが、右報告書の同年一二月五日付け第六号には、上石津町長の発言を引用するものとして、「メナードについては、一応の県の許可が下りているので、それを前提に問題を出し合いながら解決していきたい。」との内容を記載したうえ、これに対する右原告のコメントとして、「メナードの件は、県が許可したといっても、当初、両者(メナード、町長)とも六地区の同意と水利権者の同意を前提に進めると明言していますので、両者とも約束を守るべきです。このことは指導要綱にもあり、解決していないからです。」との旨を記載していた。

7  その後、同年一二月一五日の上石津町議会定例会において、議員として出席していた原告三輪唯夫は、質問の中で、「八月二九日、県から内々にメナードゴルフ場開発が認可されました」、「また住民の反対理由を真剣に受けとめず何も意見書をつけず認可した県に対し、不信感が募るばかりです。」、「企業はゴルフ場の着工届を県へ出しましたが、」などと発言し、上石津町長も、これに対する答弁として、「三輪唯夫議員の立場から色々とご指摘がございました。そして今一応認可になった時点での一つの経緯をお話頂いたというふうに解しております。」、「工事について細心の注意を払って、そして下流への影響の無いように、また住民への影響の無いようにするのが、企業の責任であろうというふうに思います。県もそういうことを念頭において、そしてこの開発許可を出しておるわけでございます。」などと発言した。また、同町企画課長は、「ゴルフ場についてご質問いただいておりますが、メナードの開発につきましては、去る八月の二八日付けで、県知事の土地開発協議の承認が下りております。」などと発言した。

三1  右二認定の事実によれば、遅くとも、原告らは、原告らがそろって出席した平成七年九月一五日実施の上鍛治屋地区総集会の時点で、本件許可処分があったことを了知したものと推認するのが相当であるから、本件訴えの提起は行政事件訴訟法一四条一項所定の出訴期間の経過後にされたもので不適法であるというべきである。

2(一)  右認定に対し、原告らは、本件許可処分の通知書やその写しを示されたことはなく、メナードランドから本件許可処分があったとの通知や連絡を受けてもいないのであって、せいぜい「処分がなされたかもしれない」という程度の認識しか持っておらず、これでは処分があったことを知ったとはいえないなどと主張する。

しかしながら、前記二で認定したとおり、原告らは、共に本件公害調停を申請し、その手続において、本件許可処分があったことを前提に造成工事の方法やゴルフ場管理の在り方などについてとりまとめをしていきたいから調停継続を希望する旨記載した意見書を提出し、また、原告三輪唯夫は、自らが作成・配布している町議会の報告書に、本件許可処分があったことを前提に問題を解決していきたい旨記載しているほか、上石津町議会定例会においても本件許可処分があったことを前提に質疑を行ったうえ、岐阜県に対し、住民の反対を真剣に受け止めることなく意見書も付けずに本件許可処分をしたとして、不信感が募ると発言しているものであり、かかる事情に照らせば、遅くとも右1認定の時期には、原告らが本件許可処分があったことを了知していたものと推認できることは明らかであって、原告らが本件許可処分の通知書やその写しを実際に見せられていないといった事情によって右認定が左右されるものではない。

(二)  更に、原告らは、右(一)指摘の発言等は本件許可処分がされているのではないかとの不安感からある程度許可処分を先取りして発言するなどしたものにすぎず、これをもって原告らが本件許可処分があったことを了知していたことの根拠とすることは許されないなどと主張するが、右(一)指摘の発言等の内容、それがなされた機会等に鑑みれば、現実に本件許可処分がされ、本件開発予定地での工事が始まることを当然に予定したうえで、それに対する規制を実現するとの目的で行動していたことは明らかであって、単に本件許可処分を先取りして発言したに過ぎないと解することはできない。

また、そもそも、原告らが公害調停や町議会において右意見書の提出や発言等を行うに当たり、本件許可処分について真実「処分がなされたかもしれない」などといった程度の曖昧な認識でいたのであれば、調停委員や町長等に対し、本件許可処分の存否を確認するのが当然であって、かかる行動をとっていないことは、本件許可処分があったことを原告らが了知していたとの事実を裏付けるものである。

3  なお、原告らは、仮に本件許可処分があったことを了知していたとしても、いつ右処分がされたのかという時期の点については特定できていなかったから、出訴期間は経過していないなどと主張するが、いわゆる第三者である原告らについては、原告らが、諸般の事情から、処分があったことを了知した日を基準に出訴期間を定めるのであって、処分がされた時期を問題にするものではないから、原告らの右主張には理由がなく、これを採用することもできない。

四  以上のとおり、本件訴えの提起は行政事件訴訟法一四条一項所定の出訴期間の経過後にされたものであって、その余の争点について判断するまでもなく却下を免れないものであるから、訴訟費用について行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条、六五条一項本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 福田晧一 裁判官 夏目明德 真鍋秀永)

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