岐阜地方裁判所 昭和40年(ワ)236号 判決 1969年12月25日
原告
積水化学工業株式会社
代理人
品川澄雄
弁理士
酒井正美
被告
岐阜プラスチック工業株式会社
代理人
旦良弘
外二名
弁理士
石田長七
外二名
右当事者間の損害賠償請求事件について、当裁判所は次のとおり中間判決する。
主文
本訴請求中、請求の原因(損害の数額の点を除く)は理由がある。
事実《省略》
理由
一(争いのない事実)<省略>
二(本件特許の技術的範囲)
1 右争いのない事実によれば、原告が有する本件特許発明の要旨は別紙(一)第一目録記載のとおりであり、次の構成要件を有するものと認められる。
(一) 型内に於て賦型された成型品を型から取出すに際しての成型品の離型方法であること。
(二) 型を分割すること。
(三) 成型品が附着せる側の金型に内装したるピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめること。
(四) 成型品表面と成型品を附着せる金型面との間に流体を圧入すること。
2 被告はプラスチックス製品製造に際し成型品と型との間に圧縮空気を圧入して離型すること、および、ピンにより押出して離型することはいずれも本件特許の出願前に公知公用であると主張し、右主張事実は<証拠>によつて認められるところである。ところで、特許発明は、その構成要件全体の有機的結合中に技術的思想を表現するものであるから、一部に公知公用事項を含むからといつて本件特許が無効となるいわれはなく、本件特許の構成要件から右部分を除外して考えことも許されない。ただ単に特許の技術的範囲を判断するに当り、これを二義的なものとして把握すべきであるというに留まるものと考える。
3 <証拠>(本件特許の特許公報)および鑑定人Kの鑑定の結果によると、本件特許方法はその作用効果として、
(一) 圧縮空気が成型品と成型品の付着するコアー表面との間に侵入し、成型品とコアー面とを離間し、更に圧縮空気と接触する成型品の表面に均一な圧力を加えて押し出し離型を容易ならしめること。
(二) 従つて軟質ポリ塩化ビニール、ポリエチレン等の如き柔軟なる樹脂を素材とする成型品或いは成型品の表面に比して著しく薄肉の成型品若くは軟質の樹脂を素材とし、一部アーダーカットのある成型品等を成型する場合においても成型品を損傷し、或いは変形歪曲する虞れがないこと。
(三) 成型品を直接、しかも短時間に冷却する作用を有すること。
を認めることができるが、前記公知公用事項を斟酌すれば、右(三)(二)は本件特許発明において特に新規性・進歩性を有するものではなく、本件特許方法により右(一)の作用効果を達する点が重視されるべきである。
4 本件特許は「ビンの移動により流体の噴出口を生ぜしめ」ることを一構成要件としており、これは成型の際に噴出口が閉じられていることを前提としている。そこで本件特許方法においてピンとピン挿入孔開口部内壁との間の嵌合度、すなわち気密であることを要するか否かにつき考えるに、先ず金型内に常時圧縮空気を満たしておく例(以下単に第一例という)と、成型品の離脱に必要な時にのみ金型内に圧縮空気を送る例(以下単に第二例という)とを区別すべき
ある。<証拠>によれば、本件特許方法においては金型のコアー表面に流体の噴出口を常時設けるときは樹脂が噴出口に流入する故成型の際に噴出口を閉じるものであること、第一例ではピンの押出と同時に弁体(ピン頭部を指す)とピン挿入孔嵌合部(開口部と同義である。)内壁との間に間隙が生じ、空気室内の圧縮空気がこれを通じ成型品と成型品の付着せるコアーの表面との間に圧入されること、すなわちピン自体が流体の弁の役割を果すべく、「弁体はコアーの表面を損わぬ如くピン挿入孔開口部内壁に気密に嵌合しうる如く」なること、他方第二例ではピンの押し出しと同時又は少時の時間的遅れを以て機械的或いは電気的方法により操作パルプを作動せしめ、圧縮空気がピン挿入孔内壁とピンとの間に生じた間隙を通じて成型品と成型品の附着せるコアーの表面との間に圧入されること、ピンは一端がコアーの表面を損わぬ如くピン挿入孔のコアー表面への開口部内壁と嵌合し得る如き弁体となること、右二例を通じて、ピン挿入孔の押出板に面する側はパッキングおよびパッキング押えによりピンとピン挿入孔内壁との間を気密に保つていること、が認められる。以上の事実によれば第二例(被告の離型方法がこれに当ることは前記争いのない事実から直ちに導かれるで)は、ピン挿入孔の底部側では気密であることを要するが、ピンとピン挿入孔開口部内壁との間は必ずしも気密であることを要するものではなく、樹脂が噴出口に流入するのを防ぐ目的を達し得る程度の嵌合度でよいものと認められる。<反証排斥>。
なお、本件特許および被告の離型方法におけるごとき円錐型弁の嵌合度について日本工業規格の定めはないが、通常の円筒型ピンについてこれをみるに、<証拠>によれば、JISB五一〇八をもつて、ピンとピン挿入孔との間には0.030ないし0.060ミリメートルの範囲内の細隙が寸法公差として許容されていることが認められる。被告提出の<証拠>(JISB二〇七一および二〇七二)は水や油の漏入を防ぐための構造を定めたものであつて、本件について適切でない。
三(被告使用の金型の特定)
被告が昭和三七年秋ごろから同四〇年二月上旬に至る間、プラスチックス成型品を製造するに際し使用した金型については前記のごとく、別紙(二)ないし(四)の各目録一中、(ロ)の構造を有するか否か、或いは円錐型頭部が円錐型孔開ロ部内壁に気密に嵌合していたか否かの点のみが争点である。
1 <証拠>によれば、(一)昭和三九年(モ)第四二〇号証拠保全申請事件について、同年六月四日、被告会社稲葉工場で被告使用の金型各種の検証がなされたこと、右金型類は特に分解はしなかつたが、圧縮空気を通ずるとピン(押出桿と同義である。以下同じ)が約九センチメートル突出し、これを調べたものであること、右ピンには空気溝が刻んでなく、孔その他圧縮空気の噴出口と思われる装置が何処にも見当らなかつたこと、ピンの先端を指で押えつけ、ピンが突き出ないように注意しながら、圧縮空気の圧力を加減して通ずると、それでもピンの表面とピン挿入孔内壁との間隙から絶えず空気が吹き出し、紙片を近付けるとこれを吹き上げたこと、告被側ではこの空気はピンを押し出す圧縮空気が漏れて出て来たものであるが、工程上の障害にはならないと説明したこと、右の空気が吹き出す間隙は目ではその存在を確認できず、ピンを横に押してもがたつかないこと、実際の離型状況を検証すると、成型品はピンの当つている辺りのみが突き出、今にも底が突き破られそうな瞬間に音を立てて、或いは立てないで金型から離脱するものであること、(二)昭和三九年(ヨ)第一五九号特許権侵害禁止仮処分申請事件について、同年九月二四日、前記工場において被告使用の金型各種の検証がなされたこと、右検証に際し、被告の代理人は被告の成型品を成型する主源動力は押出ピンが突出する力であつて、圧縮空気は押出ピンの移動により極めて少量が金型と成型品との間に流入するが金型と成型品表面との間の真空部分を満たす程度の補助的役割しか果さず、押出ピンと押出ピン挿入孔内壁との間の間隙から、押出ピンが戻つてからでも外部へ放出されるものと指示説明したこと、金型は分解しなかつたが雄金型を一見したところ、押出ピンと押出ピン挿入孔内壁との間の間隙を発見できず、指でゆすぶつても全然がたつかなかつたこと、金型に圧縮空気を送入すると押出ピン頭部を強く指が押えても押出ピンと押出ピン挿入孔内壁面との間から右空気が噴出し、紙片を近付けるとこれを吹き上げたこと、指の力を少しでもゆるめると押出ピンが圧縮空気の圧力で押し出されたこと、指を離すと押出ピンが金型面から勢い良く突き出たこと、ピンは9.2センチメートル突き出たこと、押出ピンの突出と同時に押出ピンと押出ピン挿入孔内壁との間に間隙が生じ、そこから相当な勢いで圧縮空気が噴出したこと、実際の離型状況を検証すると、成型品が中心部から徐々に半円形に膨らみ、四ないし五センチメートル位に膨れた瞬間ポッと音を発して金型から離脱するものであること、雄金型が雌金型から分離しはじめるころからシューッという音が聞ええはじめ、離脱後間もなく止つたことが認められる。
2 次に前記争点に関する被告側の見解の変遷をみるに、<証拠>によれば(一)弁理士仙波正は被告の依頼により被告使用の金型につき昭和三九年二月二〇日付鑑定書を作成したが、同号証添付の図面は、ほぼ別紙(五)<別紙省略>の図面のとおりであつて、イ号の(2)方法或いはロ号方法におけるごとく、凹切部或いは間隙について特に触れていないこと、右仙波正は被告の金型において圧縮空気はピンを移動させるために使用され、押出板のような機械力を使用しない点で本件特許の方法と異なる。右空気は逃げる所がないのでピンが飛び出した隙間から前方へ逃げるのは当然であるとの鑑定をなしたこと、(二)被告側は前記各検証期日(昭和三九年六月四日および同年九月二四日各実施)において前記のごとき説明をなしたこと、(三)前記仙波正が被告の依頼により昭和三九年一一月一〇日付鑑定書訂正書を作成し、押出ピン頭部に空所を有する図面を添付したこと(凹切部については触れていない)、右空所は空気の通行は許すが注入原料の通行は許さない程度のものであり、空気は右空所から漏れて成型品の表面へ逃げること、ピンは押出板で機械的に動かされるのではなく、圧縮空気によつて背後から押されて飛び出すものであるとの鑑定をなしたこと、(四)その後、被告は前記仮処分事件において昭和三九年一一月一四日付準備書面、同四〇年一月一八日付準備書面、同年三月一〇日付準備書面により順次、本件におけるロ号方法のごとき主張をなすに至つたものであることを認め得る。
3 次に前記争点に関する被告側作成の設計図等をみるに、<証拠>によると、本件で被告の主張するロ号方法のために用いられる金型が既に昭和三七年一一月には訴外G工業株式会社等において設計されたものとされていること、被告がこれにつき「合成樹脂成型品の押出し装置」(ママ)として昭和三九年一二月一五日実用新案の出願をなし、更に「プラスチック押出成型の際の金型押出しピン」として同四〇年一月一七日実用新案の出願をなし、共に同四三年六月一一日公告に付されたことを認めることができる。
4 <証拠>によると、検乙第六号証の一ないし二一は、従前被告がリス容器、リスバケツ、リスマークたらい、同洗桶、同くずかご、同ショルダーバケツ、同ベビーバスの製作に使用した押出ピンおよびバネであつて昭和四〇年二月二〇日をもつて使用を取止め、同年三月五日に訴外N倉庫運輸株式会社に寄託されたものであることが認められる。よつて右検乙第六号証の各押出ピンを前記設計図等と比較対照するに、右各押出ピンは四ケ所の凹切部を有するものであるが、前記設計図が規定するような正確な角度や長さを有する凹切部ではなく、酷評すれば単にヤスリをかけたに過ぎないものとも見られる程粗雑なものであつてピン先端の周囲は使用による摩粍損傷のため不規則に欠けているものもあることが認められる。
5 <証拠>は原告会社の従業員が昭和三九年中に岐阜、大阪等の市場で購入した被告の製作、販売にかかるプラスチックス成型品であることが認められ、右各成型品をみるにいずれも底部にピンの跡があり、その周囲にいわゆるバリなるプラスチックス原料が流れ込んだ跡が存すること、中にはピン跡の周囲に圧縮空気中に含まれていた水蒸気が放射された跡がついた成型品や、ピンと圧縮空気の競合的離型作用の結果とみられる二重のカスリ傷のついた成型品が存在することが認められ、これにより被告が使用した金型のピンおよびピン挿入孔内壁との間には被告主張のごとき間隙が存在したものと認められる。
6 以上認定の事実を総合すれば、被告が昭和三七年秋ごろから同四〇年二月上旬に至る間、プラスチックス成型品を製造するに際し使用した金型はすべて同種であつて、別紙(三)第三目録および別紙第四目録<目録省略>の各一(イ)ないし(ハ)の構造を併有すべく設計されたものであり、実際に使用された金型も円錐型頭部が円錐経孔開口部内壁と円輪状の細隙を残して嵌合し、円錐型頭部の外周面に凹切部を設けたものであると認められるが、右凹切部とこれに対応する保持面との分布角度や長さにおいて設計図に比し、著しく粗雑なものということができる。
四(被告の離型方法におけるピンの移動と圧縮空気流出の先後関係)
右に認定の被告の金型を使用した場合、「ピンの移動により流体の噴出口を生ぜしめ」といの本件特許の構成要件を充足するものということができるか、すなわち被告の押出桿がバネを装備し移動するものであることは弁論の全趣旨から認められるが、その移動と圧縮空気の噴出との先後関係如何を次に検討することとする(その余の構成要件を充足することは、前示のとおり争いがない)。
先に三1で検討したとおり<証拠>の記載を総合すると、
昭和三九年当時、被告会社の金型はこれに圧縮空気を加減して通ぜしめ、ピンの先端を指で押えつけても、なおピンの表面とピン挿入孔内壁との間隙から絶えず空気が噴出し、紙片を近づけるとこれを吹き上げるものであること、しかし右間隙は目で確認できない程微細のものであつて、ピンを指で押してもがたつかないこと、指の力を少しでもゆるめると押出ピンが圧縮空気の圧力で突出すること、指を離すとピンが勢いよく突出すること、右突出と同時に押出ピンと押出ピン挿入孔内壁とに間隙(目撃し得るもの)が生じ、相当な勢いで圧縮空気が噴出すること、実際の離型状況をみると、まず成型品のピンの当つているあたりが突き出て、音を発し離脱するものであることが認められる。右事実によれば、ピンの移動に先立ち圧縮空気が若干噴出するものの時間的、量的には僅少であり、円錐型をしたピンが移動して、これにより拡大された間隙から流出する空気が成型品の離型に決定的な役割を果すもの、すなわち被告の離型方法は、ほぼ原告主張の<省略>とおりであつて、ピンの移動により圧縮空気の噴出口が実質的に生ずるものと認められる。右認定に反する<書証>の記載は被告の離型方法における圧縮空気の非定常性、金型と成型品との密着力等の具体的諸条件を捨象したものであつてにわかに採用し難く、いわゆる背圧を立証したとされる<書証>記載の実験も、押出桿の移動測定棒の径が著しく大きく、円板に圧縮空気がかかる面積を少くさせ、かつ0−リングと蓋および右測定棒との接触面積を大きくすることにより摩擦係数を高め、よつて測定棒の移動を困難ならしめているものと認められること、殊に乙第二五号証においてはいわゆる背圧を発生せしめ、ピンが全く動かなかつたという、乙第二四号証とは全く異なる異常な結果をもたらす意図で故意に鉄製蓋により金型を密閉し、押え蓋をのせ、これを締付ボルトで締付け、押え蓋の内側の周縁からピンの頭部の周囲までの距離を約一〇ミリメートルに固定せしめ、中を完全に密閉状態とし、背圧が大気に全く連通しないように工作したものであることを考えれば、全く措信さるに足りないものである。前出甲第一五号証によれば、実際の離型には一平方センチメートル当り約五キログラムの圧力の圧縮空気を使用するものであり、ピンに緩装したスプリングは一平方センチメートル当り約三キログラムの圧力の圧縮空気に抗することができない品質のものであることが認められるのであるが、仮りに右乙第二四号証の記載中、一平方センチメートル当り三ないし五キログラムの圧力の圧縮空気による実験の項を採用しても、圧力が高まるにつれ、ピンの移動が早まつていくこと、空気がピンの移動より先に噴出するとしても僅か一〇〇分の三秒程度先行するに過ぎないものと認められるのであつて、被告の主張を裏付けるに足りるものではない、他に前記認定を覆すに足りる証拠はない。
五(本件特許と被告の離型方法との対比)
右に認定の被告使用金型の構造および右金型を使用した場合のピンの移動による圧縮空気の実質的噴出を考えると、被告の離型方法は前記の本件特許の各構成要件を具備し、かつ同一の作用効果をもたらすものであり、被告が意識的に設けた円錐型頭部における凹切部および円錐型頭部と円錐型孔開口部との間の細隙はイ号の(2)に記載の程度では寸法公差に近く、何ら新らしい作用効果をもたらすものではないものと認められる。<証拠>(特許出願公告昭三五―一六五八一の特許公報)、<証拠>(昭和三九年一三四号特許判定書)によれば押出ピンと金型との間隙を空気の通行は許すも注入原料の通行を許さない程度に保たせることを特徴とする成型品の押出し装置が、或いは特許出願公告に付され、或いは本件特許の範囲に属しないものと判定されたことが認められるが、いずれも本件のごとき、移動によつて間隙が拡大する円錐型のピンでなく、移動の前後により間隙の大きさが変化しない円筒型のピンの例であつて本件に適切でない。前出の乙第二二号証、二三号証によれば前記三3認定のとおり、被告がロ号方法について二種の実用新案の出願をなし、公告に付されたことを認めることができるが、これをもつて本件特許に触れないとする根拠とすることはできないものである。また<証拠>によれば、被告が昭和四〇年二月二〇日に従前の金型の使用を止めて新たに円錐型頭部を金具で固定し、圧縮空気の噴出のみで成型品を離型する、いわゆるGP式離型装置を採用したところ、ピン押出による離型作用が伴わないため、離型に際し余分の人手を要するようになり、かえつて離型が困難になつたことが認められる。思うにピンに固定せしめる位であれば、ピンが不要であるばかりでなく、頭部を円錐型にする必要もないものである。被告の従前の離型方法が本件特許と同様に成型品の離型を押出ピンと圧縮空気の噴出との適当な競合的作用によりなしていたものであつたからこそ、これをいわゆるGP式に切換えたことにより、かえつて作業能率が低下したのである。
なお、本件特許発明のピンの移動を甲第二号証記載の実施例からみると、型の分割に際して、ピンが押出板に衝突することにより移動し、或いは、ピンは静止していて型の移動により型とピンとの相対的移動が行なわれるものであり、他方被告の離型方法において押出桿の移動は圧縮空気が円板を押圧することによつて行なわれるもので、両者はその移動操作に相違があるが、本件特許発明ではこのピンの移動操作を発明の要旨とせず、この点は単なる技術的事項に過ぎないものと認められる。
よつて、被告が昭和三七年秋ごろから同四〇年二月上旬に至る間、リス容器等のプラスチックス成型品を製造する際に使用した離型の方法は、原告の本件特許の方法と同一であり、原告の特許権を侵害するものと認められる。
六(結論)
被告が原告の有する本件特許権を侵害した右の事実から、反対の主張・立証がない本件においては、特許法一〇三条により、被告はその侵害の行為について過失があつたものと推定される。したがつて原告は被告に対し同法一〇二条に基き、損害賠償を請求する権利を有するものである。よつて原告の本訴請求の原因(損害の数額の点を除く)は理由があるから、当裁判所は民事訴訟法一八四条前後段により、数額に関する判断を終局判決に留保し、主文のとおり中間判決をなす次第である。
(丸山武夫 川端浩 太田幸夫)