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岐阜地方裁判所 昭和52年(む)323号 決定 1978年1月24日

主文

本件忌避申立を却下する。

理由

一、本件忌避申立の趣旨および原因は本決定書末尾添付の申立人ら作成の忌避申立書記載のとおりであり、その要旨は、(イ)頭書被告事件(以下「本被告事件」という)の担当書記官甲野太郎(以下「甲野書記官」という)は、本被告事件の審理の際の看守配置問題につき、「弁護人は裁判長の指示に無条件で従うべきだ」との発言をなし、加えて、裁判所の頭越しに岐阜刑務所当局と打合せをなし、独自にその下地作りをした、および、(ロ)同書記官は、右事件の第一回公判開廷後五分程経過した時点で、浅井正主任弁護人に対し「閉廷後所長が用事があるそうですから所長室に案内します」と記載されたメモを交付した、というのであって、右(イ)の点は、同書記官が、自ら、岐阜刑務所当局のなす公平な訴訟指揮と裁判の独立に対する介入に左袒し、結果的に裁判の権威の失墜をもたらしたものであり、また、右(ロ)の点は、同書記官が、審理の途中で自己の任務を中断、放棄して司法行政上の事務をなし、その結果裁判の独立を侵害し裁判の威信を失墜させ十分な審理の促進を阻害したものであり、結局、同書記官を本被告事件から排除することなしには、本被告事件についての公平な事務処理を期待することはできないばかりか、裁判の公正および信頼を確保することも不可能である、というのである。

二、よって案ずるに、一件記録および当裁判所の事実調査の結果に徴すると、甲野書記官について、申立人ら主張の前記(ロ)の事実の存することが認められる。しかしながら、裁判所書記官忌避制度の趣旨は別紙忌避申立書二(一)(1)に記載されたとおりであるところ、もとより甲野書記官において、本被告事件ないしはその当事者と特別な関係にあることは認められないのであって、一件記録および右忌避申立書の記載からうかがわれる本被告事件の内容および審理の経過を考慮しても、右(ロ)の事実が存することから、同書記官に本被告事件について公平な事務処理を期待することができないものといえないことは明らかである。次に、申立人ら主張の前記(イ)の事実については、当裁判所の事実調査の結果によるも、その事実は認められない。なお、法廷における戒護職員の位置等の問題は、最終的に裁判長(または開廷をした一人の裁判官、以下同じ)の所謂法廷警察権の行使に委ねられるべき事柄であって、仮にこの点に関する書記官の言動に不服があるとしても、前記忌避制度の趣旨に鑑み、それだけではこれを忌避の理由とはなし得ないものというべく、裁判長に対して適切な法廷警察権の行使を促すことによってこれが解決を図るべきものである。

三、してみると、本件忌避申立は理由がないから、これを却下することとし、主文のとおり決定する。

(裁判官 三宅俊一郎)

<以下省略>

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