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岐阜地方裁判所 昭和58年(わ)277号 判決 1984年4月04日

裁判所書記官

坂井暁

本店所在地

岐阜県中津川市津島町三番二四号

商号

中津紙工株式会社

代表者住居

同市駒場三一三番地

代表者氏名

酒井久一

本籍

同市駒場四九三番地

住居

同市駒場三一三番地

職業

会社役員

酒井久一

昭和四年五月二八日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官松浦由記夫出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人酒井久一を懲役一年に、被告人中津紙工株式会社を罰金一一〇〇万円にそれぞれ処する。

被告人酒井久一に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人中津紙工株式会社は、岐阜県中津川市津島町三番二四号に本店を置き、紙の製造加工及び印刷等を業とするもの、被告人酒井久一は、同会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人酒井久一は、被告人会社の業務に関し、在庫の一部を除外するとともに、架空の人件費及び外注費を計上するなどの方法により、所得の一部を秘匿して、法人税を免れようと企て、

第一  被告人会社の昭和五五年四月一日から昭和五六年三月三一日までの事業年度において、実際所得金額が六八二〇万四一六八円でこれに対する法人税額が二五六〇万六〇〇〇円であるのに、右所得金額中四二三四万九一八五円を秘匿した上、昭和五六年五月三〇日、同市西宮町二番二号所在の中津川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二五八五万四九八三円でこれに対する法人税額が八六八万六二〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、前記正当税額との差額一六九一万九八〇〇円の法人税を免れ、

第二  被告人会社の昭和五六年四月一日から昭和五七年三月三一日までの事業年度において、実際所得金額が九五八〇万七七七六円でこれに対する法人税額が三七七八万七三〇〇円であるのに、右所得金額中五九四〇万八六七四円を秘匿した上、昭和五七年五月三一日、前記中津川税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三六三九万九一〇二円でこれに対する法人税額が一二八五万二三〇〇円である旨の虚偽過少の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、前記正当税額との差額二四九三万五〇〇〇円の法人税を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全般につき

一  被告人酒井久一の当公判廷における供述

一  被告人酒井久一の大蔵事務官に対する供述を録取した質問てん末書(一〇通)及び同被告人の検察官に対する供述調書

一  澤田稔(七通)、可知進(四通)及び保母勇(一通)の大蔵事務官に対する各供述を録取した各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書八通(昭和五八年四月一五日付のものは判示第一の事実につき、同年五月二八日付のもの(記録証第一五八号)は判示第二の事実につき)

一  被告人酒井久一及び澤田稔作成の各上申書

一  中央相互銀行中津川支店長亀山正己作成の証明書

一  大蔵事務官田中和夫作成の証明書三通(記録証第一六七号、同第一六八号及び同第一六六号)

一  押収に係る架空外注計算書一綴(昭和五八年押第八一号の八)、元帳、(経費一)一綴(昭和五五年一〇月より昭和五六年三月までの分。同号の九)及び金銭出納メモ一綴(同号の二四)

判示冒頭の事実につき

一  昭和五八年五月九日付会社登記簿謄本

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官田中和夫作成の証明書三通(記録証第一六二号、同第一六五号及び同第一六三号)

一  押収に係る所得税源泉徴収簿一綴(昭和五八年押第八一号の七)

判示第二の事実につき

一  市岡豊明の大蔵事務官に対する供述を録取した質問てん末書

一  大蔵事務官作成の査察官報告書

一  岐阜相互銀行中津川支店長渡邊道明作成の証明書

一  島田良作作成の証明書

一  大蔵事務官田中和夫作成の証明書(記録証第一六四号)

一  押収に係る経費元帳一綴(昭和五六年四月一日より昭和五七年三月三一日までの分。昭和五八年押第八一号の一〇)

(法令の適用)

被告人酒井久一の判示所為は事業年度ごとに法人税法一五九条一項に該当するので、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において同被告人を懲役一年に処し、被告人会社については事業年度ごとに法人税法一五九条一項、一六四条一項に該当するので、情状によりいずれも同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により判示各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内において被告人会社を罰金一一〇〇万円に処し、被告人酒井久一に対し、諸般の情状を考慮し刑法二五条一項一号を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 山川悦男)

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