岐阜家庭裁判所大垣支部 昭和38年(少)84号 決定 1963年7月10日
少年 H(昭一七・三・一九生)
主文
本件申請はこれを却下する。
理由
本件申請理由の要旨は、本人は昭和三七年一月一一日当裁判所において窃盗保護事件につき特別少年院に送致する旨の決定を受け、愛知少年院に入院し、昭和三七年三月一八日に二〇歳に達し、昭和三八年一月一〇日を以て送致のときから一年を経過するので、昭和三七年一一月二七日当裁判所において本人を昭和三八年七月一〇日迄を限度として同少年院に収容を継続する旨の決定を受け、同少年院に収容中のものであるが、当裁判所の収容継続決定後二回に亘り煙草持ち込み又は喫煙の規律違反をなし、謹慎の処分を受けたのに拘らず、更に最近、同種規律違反がある事が発覚し調査中である。これ等の経緯に徴し、本人の犯罪的傾向は未だ矯正されていないというべきであり、少年院から退院させるに不適当であると認めるので、少年院法第一一条第二項により向後五ヵ月間本人の収容を継続する旨の決定の申請に及ぶというにある。
ところで本件は再度の収容継続決定の申請にかかるものであるから先づこの点について判断すると、保護処分は、原則として二〇歳未満の者に対して科せられる不定期的な処分であつて、例外として二十歳を超えるものであり、成人に対しては定期刑を課するのが原則であるから、二〇歳を超える少年院在院者に対する収容継続決定は成人に対する定期刑の理念を取り入れて、送致した裁判所が先になした送致決定に定期性を附与するために、期間を定める性格のものと解するのが相当である。そうであるとすれば、その決定した期間の終了によつてその在院者に対しての処分は総て終つたものというべきであり、少年法第四六条、刑事訴訟法第三三七条第一号が規定されている趣旨とあいまつて少年院法第一一条第五号の特別の規定のある場合を除いては、更に収容期間を延長することは許されないものと解すべきである。少年院法第一一条第二項において、故らに「前項の場合において」と規定したのは、前記解釈の如き法意に出で、同条第二項による少年院長の収容継続申請の対象範囲を、同条第一項に規定する収容中二〇歳に達し、或は二〇歳に達したもので送致後一年を経過するに至つた在院者に限つたものであつて、裁判所の収容継続による在院者を含ましめない趣旨であると解するのが相当であると思料する。
以上の次第で、本件申請はその余の点について判断するまでもなく不適法であるというべきであるから、これを却下することとし、主文のとおり決定する。
(裁判官 河合長志)