岡山地方裁判所 平成元年(わ)878号 判決 1990年6月14日
本店所在地
岡山県井原市上出部町一一二三番地
吉岡絹綿株式会社
右代表者代表取締役
吉岡利治
本籍
岡山県井原市上出部町一一二三番地
住居
右同
会社役員
吉岡利治
昭和二五年四月二九日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官山本弘出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告会社吉岡絹綿株式会社を罰金一八〇〇万円に、被告人吉岡利治を懲役一年二月に各処する。
被告人吉岡利治に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社吉岡絹綿株式会社は、岡山県井原市上出部町一一二三番地に本店を置き、寝具の製造・販売を目的とする資本金一〇〇万円の会社法人であり、被告人吉岡利治は、同会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人吉岡は、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外して簿外預金に入金するなどの方法により所得を秘匿した上
第一 昭和六〇年六月一日から翌六一年五月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が四五二五万九三五九円で、これに対する法人税額が一八二〇万八八〇〇円であつたにもかかわらず、昭和六一年七月三一日、岡山県笠岡市五番町五番四八号所在の所轄笠岡税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五四二万二六九七円でこれに対する法人税額が一二七万六五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、右正規の法人税額と右申告税額との差額一六九三万二三〇〇円を免れ
第二 昭和六一年六月一日から翌六二年五月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が四三三七万三八二二円で、これに対する法人税額が一六八六万三五〇〇円であつたにもかかわらず、昭和六二年七月三一日、前記笠岡税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一二九万五四九四円でこれに対する法人税額が零円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同会社の同事業年度における正規の法人税額一六八六万三五〇〇円を免れ
第三 昭和六二年六月一日から翌六三年五月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が一億二六七万一一八五円で、これに対する法人税額が四一八三万七九〇〇円であつたにもかかわらず、昭和六三年七月三〇日、前記笠岡税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が七六万六七九九円でこれに対する法人税額が零円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により、同会社の同事業年度における正規の法人税額四一八三万七九〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
( )内の数字は、検察官請求の証拠等関係カード記載の証拠番号を示す。
判示全事実について
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書(50、51)、大蔵事務官に対する各質問てん末書(30ないし49)
一、吉岡秀治(20ないし24)、畑地雅夫(25ないし27)の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、検察事務官作成の電話受発書(29)
一、大蔵事務官作成の各調査書(6ないし19)
一、大蔵事務官作成の告発書(1)
一、商業登記簿謄本(54)
判示第一の事実について
一、法人税確定申告書(平成二年押第二一号の一)
判示第二の事実について
一、法人税確定申告書(同押号の二)
判示第三の事実について
一、法人税確定申告書(同押号の三)
(法令の適用)
法律に照らすと、被告人吉岡利治の判示第一ないし第三の各所為は、法人税法一五九条一項に該当するところ、右各違反行為は、被告会社の代表者が同会社の業務に関してしたものであるから、同法一六四条一項により同会社に対しても同法一五九条所定の罰金刑を科することとし、被告会社については情状により同条二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により所定の罰金額を合算した金額の範囲内で、被告人については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内でそれぞれ処断することとし、被告会社を罰金一八〇〇万円に、被告人を懲役一年二月に各処し、被告人に対しては情状により同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 藤田清臣)