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岡山地方裁判所 平成3年(ワ)320号 判決 1992年3月06日

原告(反訴被告)

古川龍二

被告(反訴原告)

立川明澄

主文

原告(反訴被告)の被告(反訴原告)に対する別紙交通事故目録記載の交通事故に基づく損害賠償債務は、金八七万五〇三二円及びこれに対する平成三年一〇月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を超えて存在しないことを確認する。

被告(反訴原告)は、原告(反訴被告)に対し、金一二万円及びこれに対する平成二年四月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

原告(反訴被告)のその余の本訴請求を棄却する。

原告(反訴被告)は、被告(反訴原告)に対し、金八七万五〇三二円及びこれに対する平成三年一〇月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

被告(反訴原告)のその余の反訴請求を棄却する。

訴訟費用は、本訴反訴ともこれを二分し、その一を原告(反訴被告)の負担とし、その余を被告(反訴原告)の負担とする。

この判決第二、第四項は、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  本訴

原告(反訴被告、以下「原告」という。)の被告(反訴原告、以下「被告」という。)に対する別紙交通事故目録記載の交通事故に基づく損害賠償債務は金二八万円を超えて存在しないことを確認する。

被告は、原告に対し、金一八万円及びこれに対する平成二年四月二二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴

原告は、被告に対し、金一九一万七四〇五円及びこれに対する平成三年一〇月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  争いのない事実

原被告間の交通事故の内容は、別紙交通事故目録記載のとおりである(以下「本件事故」という。)。

本件事故について、原告は民法七〇九条の不法行為責任及び自賠法三条の運行供用者責任を負い、被告は民法七〇九条の不法行為責任を負う。

被告は、本件事故により負傷し、その人身損害の填補として、労災保険から六二万九三〇八円及び自賠責保険から八〇万七三六五円の合計一四三万六六七三円を受領した。

二  争点

本件の争点は、原被告の過失割合及び損害額である。

第三争点に対する判断

一  原告の損害 三〇万円

原告本人尋問の結果、甲第二、第六号証及び弁論の全趣旨によれば、本件事故により原告運転車両(以下「原告車」という。)は前部バンパー、フエンダー、ボンネツト等を破損し、その修理のために原告は代金二五万円を要したことが認められる。

原告が本件事故により原告車の代車を使用し、これに費用を要したことを認めるに足りる証拠はない。

甲第二号証によれば、原告車は初度登録年が昭和六二年で、本件事故当時登録後三年近く経過している車両であることが認められ、右経過年数や前記破損の部位、修理代金額等に鑑みると、原告車のいわゆる評価損は、修理代金の二割程度に当る五万円と認めるのが相当である。

以上によれば、原告の損害は三〇万円である。

二  被告の損害

1  治療費

乙第一ないし第四号証、被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件事故により、右大腿、右腰部、右手右肘打撲傷、頸部捻挫、左背部捻挫の傷害を受け、平成二年四月二一日から同月二三日まで川崎病院に通院し(実日数二日)、同月二六日から同月二九日まで三愛病院に通院し、同月三〇日から同年六月一三日までの四五日間同病院に入院し、同月一四日から同年一一月三〇日まで同病院に通院し(同病院への通算通院実日数二二日)、治療を受けたことが認められ、右入通院による治療費は合計六七万三三五八円を要したことが認められる。

2  入院雑費

前記認定のとおり被告の入院期間は四五日であつたところ、入院雑費は一日あたり一二〇〇円と認めるのが相当であるから、その合計は五万四〇〇〇円となる。

3  休業損害

乙第五号証、被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告はエステージ株式会社岡山店に饗宴係として勤務し、月当り二二、三万円程度の給与を得ていたが、本件事故による傷害の治療のため平成二年四月二二日から同年六月一四日まで欠勤し、一八万五〇〇〇円の減給となつたことが認められる。

4  慰謝料

前記認定の原告の傷害の部位内容や入通院期間等を考慮すると、その慰謝料としては七二万円と認めるのが相当である。

5  修理代

乙第八号証の一ないし三、被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、本件事故時の被告運転車両(以下「被告車」という。)の修理代金見積額は九九万一七二〇円であつたことが認められる。

6  評価損

乙第六、第七、第九号証、被告本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、被告は、本件事故の約三週間前に被告車を付属品等を含めて代金二七三万円余で買い受け、右事故当時の走行距離は一八七六キロメートルであつたこと、被告は、右事故後他に新車を購入するに際して被告車を下取りに出したところ、その査定価格は八〇万円であつたことが認められ、右認定の買受後事故までの経過期間、走行距離、査定額に、前記修理代金見積額を総合考慮すると、被告車のいわゆる評価損としては、修理代金見積額の三割程度に当る三〇万円と認めるのが相当である。

7  合計

<1> 人身損害

前記1ないし4の小計 一六三万二三五八円

<2> 物的損害

前記5、6の小計 一二九万一七二〇円

三  過失割合

甲第一ないし第三号証、第五号証、原被告各本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

本件事故現場は、南北に通じる中央分離帯のある片側三車線の幹線道路(以下「南北道路」という)に、東西に通じる幅員約六・五メートルの道路(以下「東西道路」という)が交差する交差点であり、南北道路の中央分離帯は交差点部分では一九・五メートルの間途切れている。

交差点の東西道路東側入り口付近から、南北道路北方向の見通しはよく、同道路を南進してくる車両の見極めは容易であるが、同道路南方向の見通しは中央分離帯の樹木に遮られてよくなく、中央分離帯の向こう側を北進する車両の見極めは容易ではなかつた。

被告は、本件事故直前、被告車を運転し、交差点を右折して南北道路の北進車線を北進するつもりで、交差点の東西道路東側入り口付近に停止し、右方向遠方に南北道路を南進してくる車両のヘツドライトを認め、左方向に中央分離帯の向こう側を北進する車両のライトを樹木の切れ目に認めたものの中央分離帯の向こう側から右折してくる車両はないものと考え、南進してくる車両が交差点に到達する前に右折進行できるものと判断して被告車を交差点に進入させ、南北道路の中央分離帯の切れ目の手前まで進めたところ、あまり見通しのよくない左方向の中央分離帯の向こう側北進車線から右折してこようとする車両が現れ、被告車の進路を遮る形で停車したため、被告は、被告車を東西に向け南北道路の中央分離帯寄りの二車線にかかるようにして停車させることを余儀なくされた。

一方、原告は、原告車を運転し、南北道路の南進車線のうち中央分離帯寄りの車線を走行していたところ、左側車線前方を同方向に進行するワゴン車を追い抜こうと考えて加速し、制限速度五〇キロメートル毎時を越える時速六五ないし七〇キロメートル毎時で本件交差点手前付近にさしかかつたが、ワゴン車に気を取られて前方注視を欠いたまま高速運転をしていたため、同車が左方向に車線変更をしたことによつて、はじめて自車の進路前方二、三〇メートルにほぼ東西方向を向いて停車している被告車を発見し、急制動の措置をとつたが間に合わず、原告車の前部を被告車の右側面に衝突させた。

以上のとおり認められる。

右認定事実によれば、本件事故について、原告は、前方注視を欠いたまま交差点に制限速度を大幅に超過した高速で原告車を進入させた過失があり、被告は、狭路から広路に進入し交差点を右折するについて、左方向に対する見通しが十分ではなく安全確認も十分には行えない状態であつたにもかかわらず、左方向からの北進右折車は存在しないものと速断し、その前提の下に右方向からの南進車両の到達前に交差点を右折し通過できるものと考えて、被告車を交差点に進入させた結果、予想に反して現れた北進右折車のため進行を阻まれ、原告車の進路を塞ぐ位置に停車することとなつた点において過失があり、両者の過失の内容、性質、道路状況等を総合考慮すると、双方の過失割合は、原告が六、被告が四と認めるのが相当である。

四  賠償額

1  原告

以上によれば、被告が原告に賠償すべき損害額は、前記修理代金等三〇万円の四割に当たる一二万円である。

2  被告

以上によれば、原告が被告に賠償すべき損害額は、前記人身損害一六三万二三五八円についてはその六割に当たる九七万九四一四円となり、前記物的損害一二九万一七二〇円についてはその六割に当る七七万五〇三二円になるところ、被告は、人身損害の填補として、労災保険から六二万九三〇八円及び自賠責保険から八〇万七三六五円の合計一四三万六六七三円を受領したから、人的損害については既に填補済みであり、残るのは右物的損害七七万五〇三二円のみである。

また、本件事案の内容、審理の経過、認容額等に鑑みると、被告の弁護士費用としては一〇万円と認めるのが相当である。

従つて、原告が被告に賠償すべき損害額は、物的損害及び弁護士費用の合計八七万五〇三二円である。

第四まとめ

以上によれば、原告の本訴請求は、原告の被告に対する本件事故に基づく損害賠償債務は金八七万五〇三二円及びこれに対する本件事故の後である平成三年一〇月三一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を超えて存在しないことを確認し、被告に対し、金一二万円及びこれに対する本件事故の後である平成二年四月二二日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、被告の反訴請求は、損害金八七万五〇三二円及びこれに対する本件事故の後である平成三年一〇月三一日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条を、仮執行の宣言について同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 矢延正平)

(別紙) 交通事故目録

一 日時 平成二年四月二一日午後九時四二分頃

二 場所 岡山市野田二丁目一〇番二〇号先道路上

三 原告運転車両 普通乗用自動車(岡五八む三二五)

四 被告運転車両 普通乗用自動車(岡山五九ほ八二二四)

五 態様 原告運転車両の前部が被告運転車両の右側面に衝突

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