岡山地方裁判所 平成3年(行ウ)15号 判決
原告
山縣壽雄
右訴訟代理人弁護士
水谷賢
被告
岡山市長 安宅敬祐
右訴訟代理人弁護士
服部忠文
理由
一 地方自治法二四二条の二の住民訴訟は、普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法二四二条一項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実について、住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え、もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とする。したがって、本条の住民訴訟の対象は、財務的処理を直接の目的とする財務会計上の事項に限られ、それ以外の一般行政上の事項については、たとえそれが間接的に地方公共団体の財産に影響を与えるものであっても、住民訴訟の対象とはならない。
二 道路の障害物の除去について
弁論の全趣旨によれば、道路(一)及び道路(二)の道路敷地が市の所有であること、道路法が定める市道であること、道路(一)に障害物(一)が、道路(二)に障害物(二)があること並びに道路(一)及び(二)につき占用許可が降りていないことが認められる(なお、被告は、障害物(二)は用悪水路部分にあると主張しており、証人保崎〓は、道路(二)のうち原告が市道であると主張している障害物(二)の建物の西端部分の敷地は、用悪水路の維持管理のための泥上げ場又は水路敷であって用悪水路の一部であり、市道の一部ではない旨供述するが、そのいずれであるとしても、右敷地部分が岡山市の所有であることは弁論の全趣旨より明らかである。)
道路管理としての道路の障害物の除去は、円滑な道路交通の確保のための道路行政上の行為であって、財務的処理を直接の目的とする財務会計上の事項には当たらないから、地方自治法二四二条の二の住民訴訟の対象とはならない。したがって、被告が道路管理者として道路を常時良好な状態に保つよう維持すべき義務を負っているにもかかわず、道路の障害物の除去を怠っていることは道路の管理を違法に怠るものであるとする原告の主張は失当である。
なお、原告は、占用料相当額の財産的損害が市に発生しているから、市の財産の管理を怠る事実にあたる旨主張する。しかし、除去しないことの結果として財産的損害が発生するとしても、それによって道路行政上の行為が財務会計上の行為となるわけではないから、右主張は採用できない。
他方、当該障害物によって、道路としての効用が妨げられているのみならず、道路敷地の土地としての財産的価値が減少しているような場合には、障害物の除去は市有財産の管理行為に当たると解しうる場合がある。これを本件についてみると、障害物(一)は、ダンボールや商品等の容易に移動可能なものであり、現に商品については夜間は道路から移動されており(原告本人尋問)、障害物(二)は、その大半部分が道路に隣接する用悪水路上にあり、道路には、わずかに建物の西端部分がかかっているが、用悪水路との境界付近の一部分にすぎない。
したがって、障害物(一)及び(二)のいずれもその置かれている部分の土地の財産的価値を減少させるものとはいえず、被告が道路(一)及び(二)の各障害物を除去しないことをもって、住民訴訟の対象となる財産の管理を怠る事実があるとはいえない。
三 市道路線の認定について
市道路線の認定は、円滑な道路交通の確保という非財務的見地から行われる道路行政上の行為であり、道路の敷地部分の土地の財産的価値の維持保全を直接の目的とする財務会計上の財産管理行為には当たらない。当該道路につき市道路線の認定がなされることにより市道の面積及び延長距離が増加し、結果的に市の税収が増加するとしても、それは路線認定の付随的な効果にすぎないから、これを理由として財務会計上の財産管理行為であるということはできない。
したがって、被告が道路(三)につき市道路線の認定をしたいことをもって、住民訴訟の対象となる財産の管理を怠る事実があるとはいえない。
よって本件訴えはいずれも不適法であるから却下し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 池田亮一 裁判官 吉波佳希 濱本章子)
道路目録
(一) 岡山市春日野五―一、白神食品北・西側道路
ただし、別紙図面(一)の黄色部分
(二) 岡山市東畦一三六―九、石我照男方南側通路
ただし、別紙図面(二)の黄色部分
(三) 岡山市東畦一三六―九地先、道路
ただし、別紙図面(二)の赤色部分
障害物目録
(一) ダンボール、空箱その他商品類一式にして、別紙図面(一)黄色部分に位置するもの。
(二) 石我照男所有の木造瓦葺二階建建物のうち、別紙図面(二)の黄色部分
別紙図面(一)
<省略>
別紙図面(二)
<省略>