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岡山地方裁判所 平成5年(行ウ)5号 判決

原告

倉敷金融株式会社

右代表者代表取締役

大野武彦

被告

倉敷市長 渡邊行雄

右訴訟代理人弁護士

石井辰彦

右指定代理人

三宅英邦

原茂樹

中野武士

事実及び理由

第二 事案の概要

一  争いのない事実

1  原告は、平成四年六月一六日被告に対し、大野武彦(原告代表者)、大野淑子、大野文彦の住民基本台帳法(以下「台帳法」という。)七条一号ないし一一号の二に定める各事項を記載した住民票の写し及び大野俊彦、大野雅美、石原敏枝の同条一号ないし九号に定める各事項を記載した住民票の写しの各交付請求(以下「本件第一請求」という。)をした。

2  被告は、同条七月二七日右各請求に対し、不交付処分(以下「本件第一処分」という。)をした。原告は、同月二九日被告に対し、右処分につき異議申立てをした。被告は、同年一〇月五日右申立てを棄却した。原告は、同月二三日岡山県知事に対し、右不交付処分につき審査請求をしたが、右請求に対する決定はなされていない。

3  原告は、平成四年一二月一六日被告に対し、大野武彦、大野淑子、大野文彦、大野正彦の台帳法七条全号の記載のある住民票の写しの交付請求(以下「本件第二請求」という。)及び同条全号の記載についての住民基本台帳の閲覧請求(以下「本件第三請求」という。)をした。

4  被告は、平成五年一月一一日右各請求に対し、不交付処分(以下「本件第二処分」という。)及び閲覧拒否処分(以下「本件第三処分」という。)をした。原告は、同月二五日岡山県知事に対し、右処分につき審査請求をしたが、右請求に対する決定はなされていない。

原告は、被告の本件第一ないし第三処分は違法であるとしてその取消しと、右各処分により業務上の被害や精神的苦痛を受けたとして、その損害金の内金として一〇万円の支払を求めている。

二  争点

1  原告は、本件第一、第二請求に際し、台帳法一二条二項の定める「請求事由」を明らかにしているか否か。また原告の本件第一、第二請求は、台帳法一二条四項の定める「不当な目的」によるものか否か。

2  本件第三処分は、台帳法一一条三項、同法施行令一四条一項に基づく適法なものか否か。

〔中略〕

第三 争点に対する判断

一  争点1について

1  前記争いのない事実に〔証拠略〕を総合すると、原告は、平成四年六月一六日被告に対し、別紙一の請求事由により本件第一請求をしたこと、大野淑子は原告代表者と住居を同じくする同人の妻、大野文彦は原告代表者と住居を同じくする同人の長男、大野俊彦は原告代表者の弟、大野雅美は大野俊彦の妻、石原敏枝は原告代表者の母の妹であること、倉敷市の住民基本台帳担当者は、別紙一の請求事由では合理的必要性が認められないとして、請求事由の具体化や請求事項の限定、請求者を原告から原告代表者個人に変更すること等の指導をしたが、原告は、あくまでも右交付請求どおりの住民票の写しの交付を求めたこと、原告は、貸金業法に基づく登録更新に必要な事項を記載した住民票の写しを別途交付請求しており、右写しは平成四年七月二七日交付されていること、原告は、平成四年一二月一六日被告に対し、別紙二記載の請求事由に基づき本件第二、第三請求をした(大野正彦は原告代表者の次男である。)ことが認められる。

2  そこで検討するに、住民基本台帳及び住民票には、氏名(台帳法七条一号)、出生年月日(同条二号)、男女の別(同条三号)、世帯主及び世帯主との続柄(同条四号)、戸籍の表示(同条五号)、住民となった年月日(同条六号)、住所(同条七号)、転入届の年月日(同条八号)、選挙人名簿に登録された者についてはその旨(同条九号)、国民健康保険の被保険者の資格に関する事項(同条一〇号)、国民年金の被保険者の資格に関する事項(同条一一号)、児童手当の受給資格に関する事項(同条一一号の二)、その他住民の福祉の増進に関する事項で、住民基本台帳の閲覧等の請求により個人の秘密を侵すおそれがないと認められるもののうち、市町村長が住民に関する事務を管理し及び執行するために必要であると認めるもの(同条一三号、同法施行令六条の二)が記載される。

台帳法は、住民の居住関係の公証という住民基本台帳の目的(台帳法一条)から、何人でも、市町村長に対し住民基本台帳の閲覧、住民票の写しの交付を請求することができる(同法一一条一項、一二条一項)としたうえで、住民の個人情報、プライバシーの保護の観点から、住民基本台帳や住民票の記載事項等から知り得た事項については、何人にも個人の基本的人種を尊重しつつ使用すべき責務を課し(同法三条四項)、また住民基本台帳の閲覧や住民票の交付を請求するものは、右請求に際して自治省令で定められた場合を除いて、請求事由を明らかにしなければならず(同法一一条二項、一二条二項)、右請求が不当な目的によることが明らかなときは、市町村長は右請求を拒むことができる(同法一一条四項、同法一二条四項)としている。右住民票の記載事項や住民票の写しの交付制度等の趣旨に鑑みれば、請求を拒否できる「不当な目的」とは、他人の住民票の記載事項を知ることが社会通念上相当と認められる必要性ないし合理性がないにもかかわらず、その記載事項を探索等しようとすることと解すべきであり、請求に際して明らかにする「請求事由」は、右「不当な目的」の判断資料となる程度の具体性が要求される。

そこで本件につき検討するに、本件第一、第二請求は自治省令による請求事由を明らかにすることを要しない場合に該当しないから、原告は、住民票の写しの交付請求に際して、その請求事由を明らかにする必要があるところ、まず別紙一1記載の事由のためには台帳法七条所定の住民票の記載事項が必要であるとは考えられず、原告代表者本人尋問によっても右必要性に関する合理的な説明はなされていない。また、原告が住民票を必要とした者は、いずれも原告代表者の親族であり、原告代表者自身が右事項の多くを既に知っているものと推認されるから、別紙一1の事由からは本件第一請求の合理的な必要性は認められない。別紙一2の事由については、原告は被告から既に貸金業法に基づく登録更新に必要な事項を記載した住民票の写しの交付を受けているから、本件第一請求の合理的必要性を基礎づけるものではない。別紙一3の事由はその趣旨に不明確な点があるが、原告本人尋問によれば、本件のような請求に基づき住民票の写しが交付されている実例を示し、住民票の写しの交付に関する県その他の関係機関の市町村に対する行政指導を促したいということのようであるが、後記のように本件第一ないし第三処分は適法であり、原告が主張する行政指導を促す理由はないから、右事実からは本件第一請求の合理的必要性は認められない。別紙一4及び別紙二については、原告本人尋問の結果を踏まえても、その趣旨は不明確であり、本件第一、第二請求の合理的必要性は認められない。かえって原告が本件第一処分の異議申立てにおいては異議理由とした別紙三の内容や原告本人尋問によれば、原告の本件第一ないし第三請求の真の目的は、原告の業務遂行上、借主の状況に関するあらゆる資料を収集するための方法を探ることにあると推認される(原告が本件第二、第三請求において、台帳法七条一三号の事項を特に必要としていることからも推認される。)ところ、右目的は不当な目的であることは明らかである。

よって、本件第一、第二請求は、合理的な必要性を明らかにしない請求であり、不当な目的によることが明らかな請求であるから、台帳法一二条二項、四項によりこれを拒否した被告の本件第一、第二処分は適法である。

二  争点2について

〔証拠略〕によれば、倉敷市では、台帳法一一条三項、同法施行令一四条一項、二条により、住民基本台帳そのもの閲覧に代えて、氏名、出生年月日、男女の別、住所を記載した書類を作成し、右書類を閲覧に供していることが認められるから、閲覧請求に対しては右書面を閲覧させれば足り、それ以上にその余の事項や住民基本台帳そのものの閲覧請求は拒否できるというべきであり、被告の本件第三処分は適法である。原告の主張は、独自の見解にすぎず採用できない。

第三 結論

以上から、被告の本件第一ないし第三処分はいずれも適法であり、原告の請求は理由がないからいずれも棄却する。

(裁判長裁判官 將積良子 裁判官 吉波佳希 遠藤邦彦)

別紙一

一 原告取締役(大野雅美、石原敏枝については監査役)として、引き続いて当職が適当かどうか確認のため、住民基本台帳法七条一号ないし一一号の二(大野俊彦、大野雅美、石原敏枝については同条一号ないし九号)までの記載された住民票の写しを必要とするものであり、貸金業の規制等に関する法律(省令第四条)の重要な使用人として準備をするためのものである。

二 貸金業の規制等に関する法律に基づき、住民票の写しを登録更新届出書(登録番号、中国財務局長(四)第〇〇〇〇一号)に添付書類として、中国財務局長宛に提出するため。

(登録番号、中国財務局長(三)第〇〇〇〇一号)は現在。

三 住民票の写しの写しを住民基本法(以下「法」という。)第三一条に基づき、岡山県、広島県及び関係官庁に提出して、行政指導の添付書面とする。

(倉敷市以外の市町村においては法に基づく法第七条、第一一条、法第一二条が正しく理解されていない為)。

四 当社役職員に対し、又他の同業者に住民票の写しの写しを本人の同意を得て閲覧させる為

別紙二

請求者は登録番号中国財務局長(四)第〇〇〇〇一号の貸金業者である。

近年、消費者金融等において、多重債務者問題等、世間を騒がせていますが、請求者として、すでに住民基本台帳法についても研究中であるが、更に、役職員等に対して、その記載内容等に、代表者個人の家族全員の住民票の写し(現物、又は、コピー)を示すことで、より適確に請求者の業務目的を達成できる。

又、場合によっては、裁判所等に証書として提出する。

なお、選挙人名簿の登録については、請求者に対し、関係者より、その資料の提出があった。尚、大野淑子、及び大野文彦については、請求者の取締役であり、この件については倉敷市は、すでに熟知している。

大野正彦については、請求者の役員として選考中である。

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