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岡山地方裁判所 昭和24年(ワ)146号 判決

原告 松尾武夫

被告 鈴木清子

一、主  文

原告と被告との間に於て別紙目録<省略>記載の店舗は訴外草野金造こと日下金造の所有なることを確認する。

訴訟費用中原告と被告との間に生じたる部分は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文第一、二項同趣旨の判決を求め、其の請求原因として、

一、原告は昭和二十一年一月初旬岡山市巖井字青二十一。二千六十二番地宅地二十一坪を該地上に建物建築の目的で右宅地所有者である訴外小野眞佐路より期間の定めなく賃借した。

二、其の頃訴外草野金造こと日下金造(以下單に訴外金造と略称する)は原告に対し右宅地の東北隅約六坪地上に別紙目録記載の店舗(住宅に非ず)を建築する爲め、該土地の轉借方を申入れて來た。

三、そこで原告は訴外金造に対し、原告が將來右二十一坪地上に建物を建築せんとするときは、無條件にて直ちに右店舗を收去し其の敷地約六坪を原告に返還する約定で賃料は無料と定め右轉借の申入を承諾した。

四、其の後昭和二十一年五月中訴外金造は右約六坪地上に別紙目録記載の如き建坪五坪二合五勺の何時にても取崩し持運びを爲し得べき所謂一時使用の爲めのルーフイング葺店舗一棟(住宅に非ず)を建築した。

五、然るところ原告は昭和二十一年十月頃右二十一坪地上に建物を建築せんとし、其の頃訴外金造に対し前記約定に基き右店舗を收去して其の敷地約六坪の返還方を求めたが應じないので已むなく設計を縮少し同年十一月五日建坪十三坪の木造瓦葺平家建住宅一棟を建築した。

六、以上の次第で原告と訴外金造間の前記轉貸借契約は原告が右住宅建築に着手したる昭和二十一年十一月五日(竣工は昭和二十二年二月四日)に於て期限到來し、終了したものであつて、右金造は前記轉借地約六坪上にある別紙目録記載の店舗を收去して其の敷地約六坪を原告に返還すべき義務がある。

七、加之に右宅地二十一坪の内西側約十坪(東西約一間半南北約六間半)は都市計画の必要上公共用として買收され、其の結果原告所有の前記十三坪の建物は殆ど取毀さねばならぬ状態にある。

八、原告は訴外金造に対し以上を理由として同訴外人所有の別紙目録記載の店舗を收去せしめ且つ其の敷地約六坪を原告に明渡さしむる確定判決による債権を有している。

九、右店舗の所有者である訴外金造は被告の爲に該店舗の家屋台帳上の所有名義を被告名義とされ、從つて同店舗に対する所有権を侵害せられいるに拘らず被告に対し之が所有権確認を求むる等の所有権侵害に対する排除手続をしない、勿論被告は右店舗が訴外金造の所有なることを否認している。

十、斯る次第で訴外金造は被告に対し右店舗の所有権確認を求むるにつき所謂即時確認の利益を有しているものである。

十一、原告に於ても訴外金造に対する前掲八項記載の債権を保全する必要上債務者である訴外金造に代位して被告に対し前記店舗の所有権が右金造にあることの確認を求むるにつき所謂即時確認の利益を有するものである。

仍て原告は被告に対し本訴請求に及びたりと陳述した。<立証省略>

被告訴訟代理人は原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とするとの判決並に敗訴の場合は担保を條件として仮執行を免るることを得べきことの宣言を申立て、其の答弁として、原告主張の事実中岡山市巖井字青二十一。二千六十二番地宅地二十一坪が訴外小野眞佐路の所有であることは認める。右宅地中西側の約十坪(東西約一間半南北約六間半)が都市計画の必要上公共用として買收せられ、其の結果同地上にある原告所有の木造瓦茸平家建居宅十三坪の建物は殆ど取毀さねばならぬ状態にあることは不知其の余の原告主張事実は否認する。

原告主張の別紙目録記載の店舗は訴外金造の所有に非ずして被告の所有である。從つて右店舗を右訴外人の所有であることを前提とする原告の被告に対する本訴請求は全面的に拒否せらるべく、又被告の右店舗所有による本件繋爭土地約六坪の占有は充分なる権原に基くものであるから何れの点よりするも原告の本訴請求は棄却を免れないものであると述べた。<立証省略>

三、理  由

証人小野藤右衛門の証言により眞正に成立したものと認める甲第一号証成立に爭いなき甲第二乃至七号証に証人小野藤右衛門、同岩佐政乃の各証言、証人日下金造の証言の一部、原告本人松尾武夫の供述並に弁論の全趣旨を綜合すれば、原告は昭和二十一年一月頃岡山市巖井字青二十一。二千六十二番地宅地二十一坪を同地上に建物を建築する目的で右土地所有者である訴外小野眞佐路より期間の定めなく賃借したこと、其の頃訴外金造は原告に対し右二十一坪の東北隅約六坪を同地上に「バラツク」建築の目的で轉借方を申入れたこと、原告が將來右二十一坪上に建物を建築せんとするとき訴外金造は無條件にて直ちに右約六坪地上の「バラツク」を收去し其の敷地約六坪を原告に返還する約定で賃料は無料とし原告は訴外金造に右約六坪を一時轉貸したこと、訴外金造は其の後昭和二十一年五月頃右約六坪地上に別紙目録記載の店舗を建設所有していること、其の後同年十月頃原告は右二十一坪地上に建物を建築せんとして其の頃右金造に対し前記約定に基き別紙目録記載の店舗を收去して其の敷地約六坪の返還を求めたが、訴外金造は之に應じなかつたので原告は已むなく設計を縮少し其の頃同地上に木造瓦葺平家建十三坪の建物の建築に着手し其の後右建物が竣工したこと、原告の右十三坪の建物建築着手により原告と訴外金造との間に於ける前記約六坪の土地轉貸借契約は茲に期限が到來したこと、前記二十一坪の宅地の西側約十坪(東西約一間半南北約六間半)は都市計画の必要上公共用として買收され、該計画実施の曉には原告が建築した前記十三坪の建物は殆ど取毀さねばならないこと、原告は訴外金造に対し以上を理由として同訴外人所有の別紙目録記載の店舗を收去せしめ其の敷地約六坪を原告に明渡さしめる確定判決による債権を有していること、右目録記載の店舗の所有者である訴外金造は被告の爲め該店舗の家屋台帳上の所有名義を被告名義にされ從つて右店舗に対する所有権を被告により侵害されているに拘らず被告に対し之が所有権確認を求める等所有権に対する侵害排除の手続をしていないことを認め得べく、右認定に反する証人草野加代、同草野意三美、同浅野辰治郎の各証言及び証人日下金造の証言部分並に被告本人鈴木清子の供述は何れも措信し難く他に右認定を覆へすに足る証拠はない。而して別紙目録記載の店舗の家屋台帳上の名義人である被告に於て訴外金造の右店舗に対する所有権を否認する以上、同訴外人は右店舗の権利享有につき現在の危險存するものと謂うべきが故に訴外金造は被告との間に於て右店舗が自己の所有なることの確認を求めるにつき所謂即時確定の利益を有するものと謂はなければならない。然り而して原告に於ても訴外金造に対する前掲確定判決による債権を保全する必要からして、右訴外人に代位して被告に対し別紙目録記載の店舗の所有権が同訴外人にあることの確認を求めるにつき、これまた所謂即時確定の利益を有するものと謂はなければならない。果して然らば原告の本訴請求は正当として之を認容すべきものとす。被告は敗訴の場合に於ては担保を供して仮執行を免るることを得べきことの宣言を申立てているので此の点につき考えてみるに、原告の被告に対する本訴請求の要旨は原告が訴外金造に対して有する債権を保全する必要上同訴外人に代位して被告に対し別紙目録記載の店舗の所有権が右訴外人にあることの確認判決を求むるものであることは其の主張自体により明白なるところ、原告の右請求の如き場合に於て裁判所は申立によるも職権によるも仮執行の宣言を爲すべきものでないことは民事訴訟法の規定に徴し明なところである。從つて被告の右申立は失当として之を却下すべきものとす。

仍て訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條第九十三條を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 菅納新太郎)

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