岡山地方裁判所 昭和25年(ヨ)98号 決定
申請人 品川白煉瓦株式会社岡山工場労働組合
右代表者 組合長
被申請人 品川白煉瓦株式会社
申請
一、申請の趣旨
一、相手方は、申請人組合員が品川白煉瓦株式会社岡山工場内に在る申請人組合事務所に立入ることを妨げてはならない。
二、相手方は、申請人組合と被申請人会社品川白煉瓦株式会社は被申請人会社岡山工場の争議解決のために互に誠意を以て団体交渉をなさねばならない。
との御命令を求める。
二、申請の理由
一、訴外品川白煉瓦株式会社は東京都千代田区丸ノ内丸ビル内に本店を有し、白煉瓦の製造販売を目的とする会社であり、岡山県和気郡片上町東片上八十八番地に岡山工場(右工場は第一、第二、第三工場に分れ、事務所は第三工場内にある)を置いて白煉瓦を生産している。
相手方代表者は右岡山工場長として同工場の運営一切を総括する責任者であり工員の賃金決定権をも有している。
二、申請人組合は右工場従業員五七五名を以て組織せられる労働組合であり、上級団体たる岡山地方窯業労働組合連合会(和気郡片上町大字西片上所在)に加盟している。
三、申請人組合は昭和二十四年十月中相手方の申入れに依り組合員二〇〇名の解雇を承認し次いで同年十二月には越冬資金を二、〇〇〇円とする会社案をも承認した。その際来春早々賃金制度を改正し組合の面目の立つような給与を支給する旨の相手方の言質を得た。
蓋し右工場の賃金は八、〇〇〇円ベースと言うものの工場で生産するトン数を全工員で割り一人当り五トンに達することを条件とする能率給で保証給(所謂本俸)は一日三〇円、月七五〇円にすぎず他は複雑で工員にはさつぱり解らぬ計算方法で算出されるのみならず同地方の窯業労働者の平均賃金九、一五四円に比し低いからである。
四、然し右賃金問題では労資の意見が合わず組合は四月十七日大会を開き四五三票対二二票を以てストを含む実力行使を決し翌十八日相手方に対し闘争の通告をした。
五、組合は以後工場の一部人員に対する一時間乃至四時間の部分ストを約十囘二十四時間ストを一度行いつつ相手方に対し殆んど毎日のように団体交渉の申入れを行つたが相手方は闘争態勢を解かぬ限り団体交渉には応ぜられぬと通告し(疏第二号証)今日に至る迄一囘の団体交渉も出来ぬ仕末である。
六、この状勢を憂えた片上町長(工場事務所のある第三工場所在地)と伊部町長(第一第二工場所在地)とが調停に立つたが相手方は現在の闘争委員では団体交渉出来ぬと突ぱね、温厚な片上町長も憤慨して手を引いて了つた(疏第三号証)。
七、相手方はこのように組合の内部事項に介入することが多く四月十九日には組合に対し職員全部(この内所謂利益代表者は、相手方から言われる迄もなく組合員から除いてある)を組合員と認めぬと通告し(疏第四号証)種々巧妙な圧迫を加えたので職員で組合に加入していた者はこれを恐れて殆ど組合を脱退し第二組合を作つて了つた(当時の組合員六八〇名中の一〇五名)。
相手方は待つてましたと許り早速これを確認し(労働組合を使用者が確認するとはおかしなことで御用組合たること明かである)これと団体交渉に入つて会社案を承認させた(疏第五号証)。
八、相手方は五月二十日工場閉鎖を宣言し第二組合員丈を工場に入れて作業させ申請人組合員の工場立入を禁じた(疏第六号証)。
尤も団体交渉には応じないと称した闘争委員丈は入れると称し第三工場正門から組合事務所迄の通路に執行吏がするように繩を張つてその通行を許したが(疏第七号証)、
他の組合員は入れぬ従つて雨の降る日に組合員は傘をさし正門前で打合せする仕末で組合活動も何も出来ぬし第一往来妨害にもなることであるし上級団体の役員などは門にも近よれぬ次第である。その外やつと入門を許された闘争委員が入つて行くと見なれぬ大男が四五人後をついてくる聞いて見ると邑久郡から召集された元どこかの拳闘クラブにいたという男達で相手方から二四時間勤務を命ぜられているが何だか馬鹿々々しく感ぜられるから五時には帰りますと恥しそうに答える仕末である。
九、以上相手方の行動は拳闘クラブ員でなくても馬鹿々々しく感ぜられる事であるがこれに依て組合員は甚大な損害を受ける。
第一に正当な組合活動の権利を不法に侵害された組合事務所に入れなくては事実上組合活動も出来ぬし工場内の空地でこそ組合員大会を開き組合としての意思決定も出来る闘争委員以外の入門を禁止する相手方は不法に労働者の団体行動権を侵害するものでありこれに依て組合は甚大な損害を受けること明かである。
第二に労資双方は争議中と雖も団体交渉をなし争議の解決に努める義務がある(労調法第二条第四条)相手方は組合が四月十七日の大会でストを含む実力行使を決するに当り闘争中組合活動の全権を委任した闘争委員(執行委員はその内一名を除き全部闘争委員)とは団体交渉出来ぬと言うがこれは組合の運営に介入する行為で不当労働行為たること明かであり(労組法第七条第三号)且つ労組法第六条第七条第二号にも違反する。
第三にこれらの行為は単に組合を困らすための手段であると言うのは工場閉鎖といいつつ第二組合員には作業させ且つ申請人組合員中の数十名に対しては二十日以後出勤して作業せよと命じているからであり(疏第八号証皆同じものなので一通丈を提出する)明らかに組合切崩しのための措置であることがわかる。
一〇、凡そ最近位使用者側が無茶なことをやり出した時期はない。こうした措置に対しては裁判所がきつく元を締めて下さらぬと切角の民主主義法則も目茶苦茶である。
申請人組合は甚大な損害を受けるので本訴提起を準備中であるがその確定を俟つてはその間組合活動も団体交渉権の行使も出来ず償うことの出来ぬ損害あり相手方は唯当然なすべきことをなすに止まるのであるから茲に申請趣旨記載の御命令を得度く本申請に及ぶ。
(疏明省略)
岡山地方裁判所 御中
一、保証 無保証
二、主 文
一、被申請人会社は申請人組合の組合員が、岡山県和気郡片上町大字東片上所在の被申請人会社岡山工場内にある申請人組合の事務所に立入ることを妨げてはならない。
一、被申請人会社は申請人組合と被申請人会社岡山工場の争議解決につき申請人組合の誠意ある団体交渉の申入れに対し誠意を以つて団体交渉をしなければならない。
(裁判官 中島貢 菅納新太郎 辻川利正)