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岡山地方裁判所 昭和27年(行)14号 判決

原告 井上元朔 外七名

被告 久米村選挙管理委員会

一、主  文

原告等の請求を却下する。

訴訟費用は原告等の負担とする。

二、事  実

原告等訴訟代理人は、被告久米村選挙管理委員会が昭和二十七年九月二十日為し、同月二十五日原告等に通知した原告等の久米村議会解散請求の署名簿の署名に対する異議申立を却下した決定は之を取消す。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として久米郡久米村の住民赤木一夫外四百余名は昭和二十七年八月十三日同村議会の解散請求の署名簿を被告である同村選挙管理委員会に提出して、これに署名し印を押した者が選挙人名簿に記載された者であることの証明を求めたところ被告選挙管理委員会は右署名簿の証明を終了し同年九月一日より七日迄右署名簿を関係人の縦覧に供した。しかして原告等外二名の者は右署名中、自署でないもの、村長解職請求の署名である旨欺かれてなした署名、其の他合式の手続によらない署名等計二百八十六の無効署名があることを発見し、同月七日被告選挙管理委員会に異議の申立をした。然るに被告選挙管理委員会は右異議申立につき、何等実質的調査をすることなく、同月二十日、審査期間が満了したとの理由で異議申立却下の決定をし、同月二十五日原告等に之を通知した。しかして地方自治法第七十四条の二、第七十六条によれば選挙管理委員会が解散請求の署名簿の署名に関する異議の申立を受けた場合は其の日から十四日以内にこれを決定しなければならないと規定しているが、之は速かに右決定を為さしめようとの趣旨に出でるものであり、右十四日の期間を経過した場合選挙管理委員会は異議申立に対し実質的調査を経て決定を為す義務から免れる旨を定めたものではないし、又右却下の決定は原告等の異議申立権を侵害するので被告選挙管理委員会が実質的調査をなすことなくして為した本件却下の決定は違法である。よつて行政事件訴訟特例法(地方自治法第七四条の二第八項の規定による訴ではない)の定める所に従い之が取消を求める。なお、被告は地方自治法第二百五十七条第二項に従つて本件の如き場合は異議申立を斤ける旨の決定があつたものとみなすことが出来るので本件却下の決定は違法ではない旨主張するが、同条の趣旨は選挙管理委員会が異議申立を受けた日から十四日以内に決定を為さない場合に、異議を申立てた者に出訴権を与えるに在り、十四日の期間を経過すれば選挙管理委員会は実質的調査をなすことなく漫然却下の決定を為し得る旨を認めたるにあるものではないと述べた。

被告訴訟代理人は原告等の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。との判決を求め、答弁として原告等主張事実中、原告等主張の日時に原告主張の如き署名簿が被告選挙管理委員会に提出され、被告選挙管理委員会が署名の証明を終了し関係人の縦覧に供したこと、原告等外二名から原告等主張の如き理由で異議申立があつたが、被告が原告等主張のような理由をもつて異議申立却下の決定をなしその主張の日原告等に之が通知をなしたことはいずれもこれを認めるが、本件署名簿の署名中無効署名の存する事および右却下の決定の違法に関する主張はいずれも否認する。なお、署名簿の署名に関し異議申立があつた場合は選挙管理委員会は申立を受けた日から十四以内に之を決定しなければならないのであるが被告選挙管理委員会は委員長及び委員の辞職に伴い委員会が構成出来ず、本件異議申立受理後十四日の期間満了直前に委員長及び委員が充足された為期間内に調査を完了することは不可能であつたので期間満了を理由とする却下の決定を為したものであるが、斯る場合地方自治法第二百五十七条第二項により異議の申立を斥ける旨の決定があつたものとみなすことが出来るので被告委員会の右異議却下決定は違法ではないと述べた。

三、理  由

久米郡久米村の住民赤木一夫外四百余名の者が昭和二十七年八月十三日、同村議会の解散請求の署名簿を被告である同村選挙管理委員会に提出し、署名の審査証明を求めたところ、被告選挙管理委員会は右署名の証明を終了し、同年九月一日より七日迄右署名簿を関係人の縦覧に供したが、同月七日原告等外二名の者が右署名中に無効の署名ありとして被告選挙管理委員会に異議の申立をし、被告選挙管理委員会は右異議申立につき実質的調査をすることなく同月二十日調査期間が満了したとの理由で異議申立却下の決定をし、同月二十五日原告等に之が通知をなしたことは当事者間に争いがない。しかして原告等は右実質的調査を経ずしてなされた異議却下の決定は違法であるとして本訴に於て其の取消しを求めるものであるが、地方自治法上署名の効力に関する争訟以前の過程における行政処分の違法を主張して直ちに右の如き却下決定の取消訴訟を裁判所に提起することを認めた規定は存しない。同法第七四条の二、第二五五条の二等の規定に徴すると右署名の効力の争以前の行為たる本件却下の決定は独立した争訟の対象になるものでなく、結局これに対しては出訴を許さないと解するのを相当とする。しかして原告等は右却下の決定は原告等の異議申立権を侵害し、此の点に於て原告等に対する権利侵害ありたる旨主張するけれども被告選挙管理委員会に於て異議受理の日から十四日以内に地方自治法の定むる所に従つて之が決定をしない場合には異議申立を斥ける決定があつたものとみなして地方自治法第七十四条の二第八項によつて争い得る道が原告等に与えられておるのであり、他面異議申立をしただけでは被告選挙管理委員会が審査した結果これに対し正当であると決定するかどうかは未だ不明である。従つて原告等のいわゆる異議申立権の侵害の如きも精々反射的形式的な不利益に止まり、いまだいわゆる抗告訴訟出訴の利益を肯定するだけの根拠と目することは出来ないというべきである。

以上の次第で原告等の本訴請求は、不適法たるを免れないから他の争点について判断を下すまでもなく、これを却下すべく訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十三条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 三関幸太郎 中原恒雄 裁判官原田博司は差支えにつき署名押印ができない。 裁判官 三関幸太郎)

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