岡山地方裁判所 昭和45年(ワ)701号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕そうしてみると原告が蒙つた以上の損害中、弁護士費用関係を除くその余の分の合計額は八七万七四三五円であることが明らかであるところ、被告ら主張の五の前段の事実は当事者間に争がないので、光生病院における治療費一八万八八三二円を加算した一〇六万六二六七円が弁護士費用関係を除く原告の損害ということになる。
しかるところ、さきに認定したように本件事故の発生については原告にも過失があり、その程度を斟酌すれば、原告は右損害中四割にあたる四二万六五〇七円(円位以下四捨五入)の賠償を被告ら各自に対して請求しうるとしなければならない。
ところが被告ら主張の五の後段の事実も当事者間に争がなく、原告は弁護士費用関係以外の損害について合計四四万七五六一円の給付支払を遅くとも昭和四五年七月一一日までに受けているのであるから、最早右賠償債権はもとよりこれが遅延損害債権も消滅してしまつていると言うほかはない。
今日、交通事故による損害賠償請求の訴訟において、原告が訴による救済を求めるに必要な限度の弁護士費用の出捐は、事故と相当因果関係のある損害として、一般に認められているけれども、それは右出捐以外の損害について賠償債権が成立している場合に限ることは疑う余地がない。しかし本件のように、このような賠償債権がたとえ成立していても、弁済等で消滅に帰した場合には、当該消滅の原因が弁護士の訴訟活動等によつて生じたと認められる等の特別の事情の存する場合を除き、原則として弁護士費用の出捐の如何なる部分をも事故と相当因果関係のある損害となすことはできないと解すべきものである。そして本件につき叙上例外を認むべき事情は全立証をもつてしても証明されていないのである。したがつて、当裁判所は、弁護士費用の出捐の如何なる部分をも、右出捐以外の損害に加算して、しかる後これに過失相殺その他の判断を加えるという方法を用いなかつた。 (裾分一立)