大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

岡山地方裁判所 昭和46年(ワ)638号 判決 1973年9月11日

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(原告の請求の趣旨)

一、第一次的主張。

被告は原告に対し金四二万四、〇〇〇円と、これに対する昭和四七年一月一五日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

仮執行宣言。

二、第二次的主張。

被告は原告に対し左の約束手形一通を振出し交付せよ。

振出人   被告

額面    金四二万四、〇〇〇円

満期    昭和四五年一二月三一日

支払場所  岡山相互信用金庫旭東支店

支払地   岡山市

振出地   岡山市

振出日   白地

受取人   白地

訴訟費用は被告の負担とする。

三、第三次的主張。

被告は原告に対し金四二万四、〇〇〇円と、これに対する昭和四七年五月一九日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

仮執行宣言

(右請求の趣旨に対する被告の答弁)

第一次的ないし第三次的の各主張に対し、それぞれ、主文同旨。

(原告の請求の原因)

一、第一次的主張について。

1、被告は訴外関西亜鉛鍍金工業株式会社に対し、左の約束手形一通を振出し交付した。

額面    金四二万四、〇〇〇円

満期    昭和四五年一二月三一日

支払場所  岡山相互信用金庫旭東支店

支払地   岡山市

振出地   岡山市

振出日   白地

受取人   白地

2、右訴外関西亜鉛鍍金工業株式会社は訴外株式会社日商に、同株式会社日商は原告に、いずれも、右手形を裏書譲渡した。

3、原告は右手形を所持していたところ、昭和四五年九月同手形を盗取られたので、直に、岡山簡易裁判所に対し、同手形につき、公示催告の申立をなし、同四六年八月一九日除権判決を得た。

そのうえで、原告は右手形の振出日を昭和四五年八月二〇日と補充した。

4、よつて、原告は被告に対し、右手形金四二万四、〇〇〇円と、これに対する訴状送達の翌日である昭和四七年一月一五日から支払ずみまで商事法定利率の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二、第二次的主張について。

仮に、第一次的主張が認められないとすれば、右事実を前提として、商法第二三〇条第二項を準用し、原告は被告に対し、本件白地手形の再発行を求める。

三、第三次的主張について。

仮に、第一次的主張および第二次的主張が認められないとすれば、原告は、本件手形上の権利が時効により消滅するのを待つて、手形法第八五条の利得償還請求権を行使するほかないのであるが、本件手形は盗取され除権判決を得ているのであるから日時の経過により当然時効により消滅することが明白であり、従つて本件の場合には既に手形上の権利が時効により消滅した場合に準じて利得償還請求権を行使し得るものと解すべきである。

よつて、原告は被告に対し、被告が本件手形上の権利が消滅したことによりうけた利益である金四二万四、〇〇〇円と、これに対する本件請求の趣旨等訂正申立書の送達の日の翌日である昭和四七年五月一九日から支払ずみまで商事法定利率の年六分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(右請求の原因に対する被告の認否)

一、第一次的主張について。

1、請求原因1項について、同手形を振出した事実は認めるが、交付先は、訴外関西亜鉛鍍金工業株式会社ではなく、訴外株式会社西部機電社である。

2、請求原因2項は不知。

3、請求原因3項のうち、本件手形について除権判決のあつたことは認めるが、その余は不知。

4、白地手形について、除権判決がなされてもそれによつて該手形自体が復活するわけではないから、それのみでは白地を補充して手形上の権利を行使することはできない。

してみると原告が本訴提起にあたり白地を補充する旨の手形外の意思表示をしたからと言つてこれによつて白地補充の効力を生じたものとすることはできない。

二、第二次的主張について。

原告主張を裏付ける手形法上の規定が存しない。

三、第三次的主張について。

原告の主張は、手形法第八五条の要件を充たしていない。

よつて、いずれにしても、原告の請求は失当であり棄却さるべきである。

(証拠)(省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例