岡山地方裁判所 昭和46年(行ウ)4号 判決 1983年5月25日
(原告の表示)
昭和四六年(行ウ)第四号事件
原告1
粟井敬
外四二名<2〜43>
昭和四七年(行ウ)第二号事件
原告1
福田咲代
外三五名<2〜36>
昭和四六年(行ウ)第四号事件原告ら訴訟代理人
弁護士
寺田熊雄
同
豊田秀男
同
一井淳治
同
嘉松喜佐夫
同
浦部信児
同
奥津亘
同
内藤信義
同
佐々木斉
昭和四六年(行ウ)第四号事件原告らのうち、原告吉元きぬ及び同土居能明を除くその余の原告ら訴訟代理人
弁護士
内藤功
同
雪入益見
同
榎本信行
同
新井章
同
関康雄
昭和四七年(行ウ)第二号事件原告ら訴訟代理人
弁護士
寺田熊雄
同
豊田秀男
同
嘉松喜佐夫
同
浦部信児
同
奥津亘
同
内藤信義
同
佐々木斉
昭和四七年(行ウ)第二号事件原告らのうち、原告吉元守及び同吉元萩子訴訟代理人
弁護士
一井淳治
昭和四七年(行ウ)第二号事件原告らのうち、原告吉元夏子、同吉元守及び同吉元萩子を除くその余の原告ら訴訟代理人
弁護士
内藤功
同
雪入益見
同
榎本信行
同
新井章
同
関康雄
(被告の表示)
昭和四六年(行ウ)第四号事件及び昭和四七年(行ウ)第二号事件被告
防衛庁長官
谷川和穂
昭和四六年(行ウ)第四号事件及び昭和四七年(行ウ)第二号事件被告
呉防衛施設局長
鮫島正夫
昭和四六年(行ウ)第四号事件及び昭和四七年(行ウ)第二号事件被告ら訴訟代理人
弁護士
田淵洋海
昭和四六年(行ウ)第四号事件及び昭和四七年(行ウ)第二号事件被告ら指定代理人
木村要
外四名
昭和四六年(行ウ)第四号事件及び昭和四七年(行ウ)第二号事件被告防衛庁長官指定代理人
川久保悳
外四名
昭和四六年(行ウ)第四号事件及び昭和四七年(行ウ)第二号事件被告呉防衛施設局長指定代理人
天野英孝
外一名
主文
一 昭和四六年(行ウ)第四号事件原告ら及び昭和四七年(行ウ)第二号事件原告らの訴えをいずれも却下する。
二 訴訟費用は、右各事件を通じ各事件原告らの負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 昭和四六年(行ウ)第四号事件原告ら及び昭和四七年(行ウ)第二号事件原告らの請求の趣旨
1 被告防衛庁長官は、別紙図面(一)記載の黒斜線部分に対する射撃訓練をしてはならない。
2 被告呉防衛施設局長は、原告らに対し、別紙図面(一)記載の赤線内の部分への立入を禁止してはならない。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。
二 被告らの本案前の主張
主文と同旨
三 請求の趣旨に対する被告らの答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
(以下においては、昭和四六年(行ウ)第四号事件を「甲事件」、昭和四七年(行ウ)第二号事件を「乙事件」といい、甲・乙各事件原告らを総称して「原告ら」、右各事件被告防衛庁長官を「被告長官」及び右各事件被告呉防衛施設局長を「被告局長」という。)
一 甲・乙各事件の原告らの
請求原因
1原告らはいずれも別紙当事者目録記載の肩書地に居住するものであつて、各自、後記の入会権・環境権を、甲事件原告1ないし38、乙事件原告1ないし34はそれぞれ後記の通行権を、甲事件原告3、10、18ないし20、22、24、27、28、30、31、35、42、43、乙事件原告3、12、13、31、はそれぞれ後記の耕作権を有するものである。
被告長官は自衛隊法八条に基づく自衛隊の総括者であり、被告局長は防衛庁設置法五三条、五四条に基づく自衛隊の用に供される財産の管理者である。
2(一) 被告長官は別紙図面(一)記載の黒斜線部分(以下「東弾着地域」という。)に対し、昭和四六年六月二四日、二五日、二九日、三〇日に自衛隊員八〇〇名を動員し、七五ミリ砲、一〇五ミリ砲、TNT火薬の火器類を使用して軽砲の実弾射撃訓練を行おうとしていた。また、同年七月においては一二日、一三日、一九日、二二日、二三日、二八日、二九日の七日間、同年八月においては一〇日、一一日、一二日、一六日、一七日、一八日、一九日、二〇日、二一日、二六日、二七日の一一日間、同年九月においては八日、九日、一〇日、一一日、二〇日、二一日、二二日、二三日の八日間、それぞれ前記のような実弾射撃訓練が行われることが予定されておつたのであり、以後将来にわたり、継続反覆しさらに日をつめて同地域に対し実弾射撃訓練が行われることが予想される(以下、将来におけるそれを「本件射撃訓練(行為)」という。)。
(二) 前記の昭和四六年六月二四日、二五日、二九日、三〇日の実弾射撃訓練の実施に当たり、被告局長は、前各同日午前六時から午後七時までの間、別紙図面(一)記載の赤線内の部分(以下、この部分を、便宜上「日本原演習場」又は「本件演習場」という。実際の演習場は、同図面のうち赤斜線部分を含むものである。)への原告らの立入を全面的に禁止した。
このように前記(一)記載の実弾射撃訓練が行われるときには、被告局長は本件演習場内への原告らの立入を全面的に禁止するものと予想される(以下、将来におけるそれを「本件立入禁止措置」という。)。
3(一)入会権について
(1) 原告ら全員の有する入会権の対象地域は別紙図面(二)のうち黄線内の部分、原告らのうち宮内地区居住者の有するその対象地域は同図面(二)のうち青線内の部分、原告らのうち広岡及び豊沢地区居住者の有するその対象地域は同図面(二)のうち茶線内の部分である。ところで、宮内、広岡、豊沢の各部落民が有する入会権の対象である山林は、別紙「入会権の対象範囲」に記載のとおりであつて、その大部分は本件演習場内に存在する。
(2) 入会権の内容、形態
原告らの有する入会権の内容は、肥料及び家畜の飼料のための採取を中心とするが、燃料用の雑木、下枝の採取も含まれる。
奈岐山一帯は、山頂までかなり豊富な草木に恵まれていたため、入会の規制はさして厳重なものではなく、毎年八十八夜ごろ「クチアケ」と称して、その日からいつせいに採草、採木のため入山していた。使用する道具の制限とか運搬する手段又は一度に採取する量についても別段の規制はなかつた。また、非農家、本家、分家の区別による差別もなかつた。
(3) 原告ら及びその先祖は、被告らが主張するような雑草・雑木・下枝の採取の許可申請や要望をしたのではなく、旧陸軍省による買収の前後を問わず、同一場所に対し同一内容の入会権の行使をしていたのである。したがつて、入会の期間、場所、数量、採取方法、運搬方法、採取物についても従来(江戸時代)からの慣行に従い、被告ら又は旧陸軍の指示や命令に従つたことはない。そして、旧陸軍の演習は、原告ら及びその先祖の入会権行使に支障のない範囲でされたり、又は原告らの権利を不法に侵害してされたりしたのである。
(二)耕作権について
(1) 甲事件原告3、10、18ないし20、22、24、27、28、30、31、35、42、43、乙事件原告3、12、13、31はおよそいずれも別紙図面(二)記載の緑線内の部分に存在する耕作地(以下「本件耕作地」という。)を、各自耕作している。
(2) 原告ら及びその先祖が、現行民法の制定その他近代法典の整備の時期以来今日まで連綿として本件耕作地の耕作を継続している事実は何人も否定しえない。そして、原告らの耕作権の消長変化は、当事者の意思、適用法規の変遷という二つの観点から考察されなければならず特に、一方の当事者が国であるため、高権的原理の支配的な行政法規の変遷に伴い、右耕作権に何らかの特殊な変化を来たしたかを追究することが重要である。
(3) 普通財産当時の耕作関係
本件耕作地については、旧陸軍省所管当時、「農作物耕作ノ為土地ノ使用及収益」を目的とする賃貸借契約が締結された。国有財産法の施行(昭和二三年)に伴い従前の国有財産の貸付は新法によつてしたものとみなされ(四二条一項)、しかも普通財産については私法上の賃貸借契約の目的とすることができる(二〇条一項)のであるから、右賃貸借契約に基づく原告らの耕作権は農地賃借権(小作権)として私権性を有することはいうまでもない。
原告らは国に対し土地使用の対価として毎年一回農業委員会の決定にかかる小作料標準額に準拠した金額(農地法二四条の二)を支払つてきたのみならず、国によつて右耕作権の処分(譲渡)につき通常小作権なみの扱いが与えられていたのである。
したがつて、右耕作権については、特殊の規制のない限りは農地法の適用を受くべきものである。
(三)通行権について
(1) 原告らが通行権を有する道路は、別紙図面(三)記載のAB1C1D1E1F1G1の各点を結ぶ道路(以下「甲道路」という。)とAB2C2D2E2F2G2の各点を結ぶ道路(以下「乙道路」という。)の二つである。
(2) 原告ら主張の通行権は、合意に基づいて取得したものである。
原告ら(甲事件原告1ないし38、乙事件原告1ないし34)の所属する宮内部落は、不動産制度が創始される以前から甲道路の背後に所在する岡山県勝田郡奈義町大字成松コトガ谷六〇一番、六〇二番、同町大字小滝小屋場六一一番、同町大字宮内奈義山六六五番一及び同町大字細尾六六八番の五筆の山林を所有し、さらに乙道路の背後に所在する同町大字是宗に志ん坊一〇一〇番の山林に入会権を有していた(右山林は明治四三年五月宮内部落が買い取り所有権を取得したものである。)。右の各山林においては登記制度ができる前から採草、植林がなされ、宮内部落民は伐採した木材などの運搬用道路ないしは山林管理を行なうための道路としての甲乙の各道路を通行使用して現在に至つた。
ところで、甲乙の各道路用地は明治四一年に旧陸軍省に買収されるまでは私有地であり、各道路の通行は、道路敷所有者との合意に基づく通行地役権によるものであつた。旧陸軍省は右買収に当たり宮内部落民の通行地役権を承認したうえで所有権を取得したのである。
被告らは、旧陸軍省が宮内部落民の有した通行地役権を承認のうえで買収するはずがない旨主張するが、次の各事実に照らして旧陸軍省が通行地役権を承認のうえ買収したことは明白である。
イ 宮内部落民が旧陸軍省による買収後も全く従前どおり公然と甲乙の各道路を通行してきたこと。
ロ 木材などの運搬用具が、牛、荷車、自動車と移り変わるのに応じ通行権を有する宮内部落民が買収前と同様に道路の拡幅や整備を行つてきたこと。
ハ 買収後、宮内部落民の行う道路使用や拡幅整備について拒否されたり抗議を受けたことのないこと。
ニ 旧陸軍省買収当時の農業は、もつぱら採草したものを唯一の肥料として営まれており、採草とその運搬用道路は農業経営の基礎であつたこと。
ホ 甲道路のうち、C1D1間の道路の一メートルから三メートルへの拡幅は、原告らの要求に基づき行われたこと。
(3) 通行地役権の時効取得
甲乙の各道路は、不動産登記制度創設以前に採草植林及び木材運搬用の道路として原告らの先祖が自己のためにする意思をもつて開設し、以来現在に至るまで、宮内部落民が、牛、荷車、自動車と運搬用具が変化するのに応じて、自己のためにする意思をもつて拡幅し、また補修や整備を行い、その費用と労力により維持、管理をしてきたものである。
このように宮内部落民の通行は、継続かつ表現のものであるばかりか、平穏かつ公然とされ、当初から善意・無過失であった。すなわち、甲乙の各道路敷が旧陸軍省に買収され国有地となつた明治四一年以降も、平穏かつ公然と占有し、善意・無過失であつたから、国有地となつたのち一〇年の経過により甲乙の各道路の通行地役権を時効により取得している。
よつて、本訴において右通行地役権の時効取得を援用する。
(4) 囲繞地通行権
原告らは、予備的に、甲乙の各道路につき囲繞地通行権の主張をする。宮内部落所有の前記(2)の各山林は、いずれも宮内部落民が利用する公道に至るまでは右道路以外に通行の方途のない袋地であるから、原告らは囲繞地通行権を有する。
(四)環境権について
(1) 原告らはいずれも東弾着地域に近接する宮内、広岡、豊沢の各部落に居住し、平穏かつ安全に農業、牧畜、酪農等の業を営んで生活している者である。
(2) 環境権は憲法一三条・二五条に依拠するものである。
憲法一三条は、国家の国民に対するその生命、自由及び幸福追求の権利(基本的人権)の保障規定である。そして、右の基本的人権の実現は、国民が健康な心身を保持し、安全かつ快適な生活を営むことができる環境、すなわち良好な環境の確保なくしてはありえない。良好な環境の条件としては、種々考えられるが、少なくとも次の四項目が満たされる必要がある。すなわち、(イ)現在及び将来の人が健康で安全かつ快適な生活を営むために必要で十分な自然的・文化的・社会的環境及び環境資源が確保されていること、(ロ)動植物及びその生育環境など自然の生態系が良好に保全されていること、(ハ)人が健康で安全かつ快適な生活を営むために必要で十分な生活環境(人の生活に密接な関係がある財産及び公的設備、施設を含む。)が保全、整備されていることである。そして、国家が良好な環境の確保に悖る行為をしようとする場合、国民が国家に対してその行為の阻止を憲法一三条に基づき請求できることは当然である。
憲法二五条は、国家がすべての国民に健康で文化的な最低限度の生活を営む権利(基本的人権)を保障した規定である。右の基本的人権も良好な環境の確保なくしては、とうてい実現しえない。したがつて、国家により良好な環境の破壊行為がされようとする場合、国民が国家に対してその行為の阻止を憲法二五条に基づき請求できることも当然である。
ところで、憲法一三条及び二五条はいわゆるプログラム規定ではない。憲法の右各条項は、いずれも国民の権利として宣言規定されている。本条の権利は正しく憲法上の権利であつて、憲法の規範が裁判の規範にならないいわれはなく、右各条項に基づいて裁判による救済を求めうることは当然である。
4 原告らへの影響
本件射撃訓練及び本件立入禁止措置を事前に差し止めなければ、原告らは、これらによつて回復不可能な損害を被るに至る。
(一) 被告長官の予定している実弾射撃訓練が実施された暁にはその火器の性質からして東弾着地域はその現状を全く一変するほどの損害を被るであろうことは確実であり、東弾着地域の下枝、下草の成育を不可能ならしめ、もつて原告らの有する右地域の入会権を侵害し、原告らに回復不能の損害を生じさせる。
(二) 東弾着地域は前記部落有の山林地域に至る甲乙の各道路に近接しており、右山林には部落において植林をし、常に維持管理する必要があるにもかかわらず、実弾射撃訓練期間中は右各道路の通行は事実上全く不可能に至る。
(三) 本件耕作地は、実弾射撃訓練の弾道下にあり、かつ東弾着地域に近接しており、実弾射撃訓練中は誤射又は流れ弾による不慮の事故の発生する危険性は高く、またその爆発音も高く、原告らは安んじて農作業に従事できない。
(四) 被告長官のする実弾射撃訓練は、その使用火薬の巨大性からみて、その発射音、爆発音等は、原告らの平穏かつ安全な生活をおびやかし、その受忍限度をはるかに超えるものであり、かつ家畜類の生育、乳牛の搾乳に対して著しく悪影響を及ぼすことは明らかである。
被告らは、環境破壊の具体的事実が乏しいと主張するが、試射が行われたときの射撃音響のすさまじさは顕著な事実であつて、現に試射の行われている西地区では射撃音が聞こえないように公会堂に特殊施設を施しているぐらいである。実弾射撃訓練は、原告らの生活を徹底的に破壊する。弾道下にある耕作地の耕作は、訓練期間中は危険なため、全く不可能となる。農耕は、それに着手する時期によつて収穫量が大きく左右されるのであつて、一日なり二日なり予定変更を余儀なくされたにすぎない場合にも、結果として収穫の大半を失つてしまうということもまれではない。
被告らは、逐次訓練期間を延ばし、遂には一年の大半を訓練期間として予定しようとしているのである。また、牧畜及び酪農に対する悪影響もはかり知ることができない。動物は極度に神経質であるから、実弾のすさまじい破壊音がいかなる結果をもたらすかはすでに明らかであつて、原告ら居住地区内にある水島牧場の乳牛の搾乳量が試射のさい激減したことは公知の事実である。
試射なるが故に誤射の可能性も当然考えられる。旧陸軍時代に住居のすぐ近くに砲弾が打ち込まれたことは、原告ら地域においても有名な話であり、また、射撃に供された不発弾をもて遊んでいた二人の子供が、その破裂によつて死亡したことも原告らの脳裏を離れないのである。昭和四四年に陸上自衛隊が試射を行つたとき、下草刈をしていた農民の至近距離に試射弾が落下し、後日、その無謀ぶりが国会で取り上げられ、その結果、当時の中曽根防衛庁長官は、地元部落の諒解なしには試射を行わない旨を宣言するに至つた。
良好な環境といえるためには、まず安全であることが必要であるが、原告らの安全は全く剥奪されている。安全とは結果として危険が発生しないことのみを意味するものではなく、危険の発生に対する危惧感が存しないことの方がより重要である。口径一〇〇ミリを越す長距離弾道弾の実射が予定されているのであるから、わずかの誤差によつても、原告らの安全はたちまちにして剥奪されてしまうのである。誤差が生じないことに対する保障はどこにもない。原告らは、射撃訓練が行われれば、常に安全に対する心からの憂慮や不安をもつて生活することを余儀なくされるのである。このように原告らの生命身体に対する直接的危険性は大であるのみならず、この危険に対する原告らの不安は、はかり知れないものがある。
(五) 被告局長のする立入禁止措置によつて、原告らの入会権、耕作権及び通行権の行使は妨げられ、実質上その権利の行使は不可能となる。
5 本件射撃訓練及び立入禁止措置の違法性について
(一) 自衛隊法及び防衛庁設置法は日本国憲法九条に反し、違憲無効であるから、被告らの前記行為もその根拠法規が違憲であつて無効な行為である。
その詳細は以下に述べるとおりであるが、本件訴訟において、自衛隊及びその関連法規が違憲であるか否かという点は実体に対する判断を含めて回避することのできない争点である。
(1)イ 憲法九条の規定は憲法前文に掲げる平和主義に立脚して定められており、その一項において、自衛戦争、制裁戦争をも含めたいかなる戦争をも放棄することを定め、その二項において、右戦争の全面的放棄を現実に保障すべく陸海空軍の一切を、そしてまた陸海空軍以外の軍隊か又は軍という名称をもたなくとも、これに準じ、若しくはこれに匹敵する実力をもち必要ある場合には戦争目的に転化できる人的物的手段としての組織体の一切を保持しないと定めたものである。したがつて、本項において一切の「戦力」の保持が禁じられたものである。なお、右の「陸海空軍」とは通常の観念で考えられる軍隊の形態であり、それは「外敵に対する実力的な戦闘行動を目的とする人的・物的手段としての組織体」である。
ロ 陸海空の自衛隊は以下に記述するその編成・行動・規模・装備・軍事能力・演習訓練及び対米軍関係等に照らし、明らかに「外敵に対する実力的な戦闘行動を目的とする人的物的手段としての組織体」であるから軍隊であり、したがつて、陸海空の各自衛隊は憲法九条二項によつてその保持を禁じられた「陸海空軍」という「戦力」である。そして、このような各自衛隊の組織・編成・装備及び行動などを規定している自衛隊法(昭和二九年六月九日法律第一六五号)その他これに関連する法規は、いずれも同様に憲法の右条項に違反し、憲法九八条により効力を有しえないものである。
A 陸上自衛隊について
陸上自衛隊の定員は一七万九〇〇〇人、自衛官以外の定員は一万二八七九人、計一九万一八七九人であり、昭和四五年末現在の自衛官は一五万七五七一人である。
その組織及び編成は、幕僚監部のほか、長官の直属部隊として五方面隊(北部・東北・東部・中部・西部)等を配し、方面隊総監部のほか師団(二〜四)を基幹とし、これを支援する特科団(砲兵)又は特科群、戦車群、施設団、航空隊、教育団又は教育連隊、地区補給処分及び地区病院を基準として編成されている。
その装備及び能力としては、迫撃砲、榴弾砲、加農砲、ロケット、無反動砲及び対戦車誘導弾ホークなど列国陸軍の保有する火器のほとんどを保有し、戦車、自走砲、装甲車、固定翼航空機、ヘリコプター等を有しており、旧陸軍と自衛隊の実力を比較すれば、陸上自衛隊の二次防完成時においてさえ、すでに次のとおりである。
自衛隊の師団
火力(一分間の発射弾量)20.5トン、火力密度(戦闘正面一平方メートルに対する一分間の銃砲による有効破片弾子)1.9、火力の効力比三、機動力一〇
旧陸軍の師団
火力(一分間の発射弾量)9.5トン、火力密度(戦闘正面一平方メートルに対する一分間の銃砲による有効破片弾子)0.6、火力の効力比一、機動力一
演習及び訓練としては、一九七一年に北海道で行われた陸上自衛隊北部方面隊航空科運用演習(ヘリコプターを中心とし、ベトナム戦争の戦訓を学び、航空機の運用を中心とした近代戦のあり方について、実際の演習で確かめ、四次防計画の資料とするのが目的である。)、又は一九六八年一〇月三日に東富士演習場で行われた公開治安演習(暴徒の鎮圧を目的とする。)など戦闘行為を目的とする演習及び訓練が随時行われている。
B 海上自衛隊について
海上自衛隊の定員は三万七八一三人、自衛官以外の隊員の定員は四七五九人、計四万二五七二人であり、昭和四五年末現在の自衛官は三万六八六九人である。
その組織及び編成は、海上幕僚監部のほか、長官直轄部隊として自衛艦隊、地方隊、教育航空集団、練習艦隊及び中央通信隊群その他がある。
その装備及び能力としては、警備艦として護衛艦、潜水艦、駆潜艦、魚雷艇など、その他特務艦、支援船を含め総トン数として一六万一〇〇〇トンの艦艇を有しており、また対潜しよう戒機、ヘリコプター等を保有し、海上戦力はトン数において世界第一〇位、隻数で第八位である。その総トン数においては旧海軍よりも少ないが、艦船武器の進歩により旧海軍と比較しその戦闘力の過小評価は許されない。
その演習及び訓練としては、米海軍との合同演習を重視して実施しており、米極東戦略に組み込まれた演習をしている。
C 航空自衛隊について
航空自衛隊の定員は四万六六一七人である。
その組織及び編成は、幕僚監部のほか、長官の直轄部隊として航空総体、飛行教育集団、航空団及び保安管制気象団その他がある。
その装備及び能力としては、F一〇四J、F4EJファントム、F86Fなどの戦闘機、ナイキアジャックス及びナイキJなどの地対空ミサイル、情報兵器としてのバッジシステムを保有し、世界的にみてもインド、イタリアについで第九位の空中戦力を有している。
そして航空自衛隊は、米戦略のもとに組み込まれ、米空軍との共同軍事行動を前提として装備及び訓練の施されているものである。
D 自衛隊総体について
「陸海空軍」とはその実体に則して言えば、名称の如何を問わず、対外戦闘行為を目的として組織訓練された武装集団をもつて構成される国家機関であり、陸海空の各自衛隊は右に述べたとおりの人員装備、編成からして、又、その機動力、火力等戦闘能力、演習訓練の実態からみてもまさに右にいう陸海空軍にほかならない。現在、東アジアにおいては社会主義諸国をのぞいて第一位の軍隊であるといわれている。又、旧陸海軍と比較しても装備、戦闘力(とくに火力、機動力)の点ではるかに優位にあるといいうるものである。
そして、自衛隊は、日米安保条約、MSA協定、その他諸条約、協定及び合意議事録等により、米軍の極東戦略の一環として位置づけられ、米軍との共同作戦が準備計画され、さらには三失研究にも現われているように、韓国軍隊との共同作戦も準備計画されている。
ところで、自衛隊が共同作戦を予定している米軍の極東戦略の本質は、ベトナム戦争に明らかなとおり社会主義国又は民族解放運動に対し戦略と干渉を目的とし、アジアにおける反共諸国軍隊(日本も含まれる。)を合わせ用いることにより、その使用する兵器、戦術、戦法において大量殺りくを特徴としている。したがつて、これと共同作戦を行う役割をもつ自衛隊は米軍の不法かつ残虐な対外侵略行動の共犯者たる性格を帯有することとなり、このような自衛隊の保持は憲法をいかに解釈しようともその違憲性は明白である。
また、自衛隊はその予算規模においても、各年平均して第一次防一五一〇億円、第二次防二三〇〇億円、第三次防四六八〇億円、第四次防は一兆四〇〇億円であり、その予算の伸び率は世界の諸外国においてもその例を見ず、第四次防の予算をもつてすれば、わが国の防衛費は、米・ソ・中国・西ドイツ・フランス・イギリスについで世界第七位であつて、列強と何ら異なるところがない。
ところで、自衛隊の精神教育は旧軍隊の軍人精神の承継、反共反人民の教育であり、終局的には上官の命令に絶対服従して敵と戦闘し、このため自己の生命をも投げ打つ軍人、軍隊をつくることにある。そして、旧軍隊の精神面での伝統の承継、皇国史観的歴史教育による祖国愛、社会主義国家、革新政党、労働組合に対する敵対意識の植えつけがその内容であり、この教育内容に照らしても自衛隊は帝国主義的軍隊というべきである。
さらに、前記の自衛隊の予算規模の拡大増加(軍事費の増加拡大)は日本における軍需産業体制の確立、成長と相まつており、又、一方では三菱グループ(三菱重工、三菱電気)による兵器産業の独占的支配を生み出しており、産・軍複合の途を歩んでいる。
(2) 本件演習場及び陸上自衛隊日本原駐屯地について
イ 昭和三九年三月、本件演習場は防衛庁の行政財産とされ、昭和四〇年三月から六月にかけて陸上自衛隊第一三師団特科連隊第二大隊と第一三戦車大隊の隊員合計六〇〇名が移駐し、「陸上自衛隊日本原駐屯地」なるものができあがり、昭和四六年三月には第一三特科連隊の主力が移駐を完了し、同月現在の隊員合計二一五〇名、一〇五ミリ榴弾砲四門、一五五ミリ榴弾砲一六門、高射機関砲二四門、戦車四〇両を保有する中四国では最大かつ第一級の陸上自衛隊基地となつたものである。
ロ ところで、右の特科とはいわゆる砲兵のことであるが、対地火力の基幹として敵の縦横にわたる火力戦闘を行うものであり、一〇五ミリ、一五五ミリ榴弾砲はそのための中距離の目標をカバーするための火器として機動性、発射速度、弾丸効率等に優れている(なお、実弾射撃訓練に使用される一〇五ミリ榴弾砲の有効射程距離は9.5キロメートルであり、一五五ミリ榴弾砲にあつては12.7キロメートルであり、その射程距離のため従来の弾着地域では射撃訓練をまかなえず、東弾着地域を新設したものである。)。
また、右戦争のうち国産六一式戦車は九〇ミリ戦車砲を有し、その射程は二〇キロに及び、装甲貫徹力は一〇〇メートルで約二〇センチメートルであり、列国現有のあらゆる戦車を撃破できる能力をもつ。
これらに明らかなとおり、陸上部隊のうちでもその基幹である特科機甲部隊を中心とする「陸上自衛隊日本原駐屯部隊」は破壊的な威力を有しており、まさに憲法で禁じられた「戦力」の具現にほかならない。
(3) また、被告局長のする実弾射撃訓練のための本件立入禁止措置は、防衛庁設置法四一条一項に定める「演習場の施設を……管理すること」との権限規定によりされたものであるが、防衛庁設置法もまた前述のとおり憲法に違反し効力を有しない法律であるから、防衛庁設置法の右法条に根拠を有する本件立入禁止措置は、有効なる法令上の権限規定を欠く許されざる行為である。
(二) 合意の存在
(1) 被告らと原告らとの間には、被告らは原告らの同意なくしては射撃訓練を行わない旨の合意が存在するところ、原告らは、いまだかつて一度も被告らの右射撃訓練に同意したことはない。したがつて、被告長官が射撃訓練を行うこと及びそれが前提となる被告局長の本件演習場内への立入禁止措置は、違法であつて許されない。
(2) 昭和四〇年七月一〇日、被告らの代表者陸上自衛隊中部方面総監と奈義町長須一源平との間に、「日本原演習場の使用等に関する協定」(以下「使用協定」という。)が締結された。右使用協定五条は「この演習場地域における実弾射撃は、諸般の情勢が整い、関係地元当局との相互了解に達するまで、実施しないものとする。」と規定している。右五条中の「関係地元町当局」とは、演習場に関係ある地元部落及び奈義町を指すことは明らかである。
奈義町長の右の締結行為は原告ら地元部落民に対する関係では無権代理行為であつたが、原告らの意思に沿うものであつたので、原告ら地元関係部落はこれを追認し、現在に至つているものである。
被告らは、使用協定が演習場の使用・管理及び地元の利害関係の調整・相互便益化を図ることを本旨とする、と述べているが、演習場内での原告らの耕作権及び通行権との相互調整・便益化を除外しては、その本旨に悖ることになる。したがつて、奈義町長が演習場内での相互の利害関係の調整・便益化を図るところのその地位は、明示ないし黙示にしろ、原告らの代理又は機関としてしか意味を有しない。原告らは、右協定五条を肯定したからこそ、町長をもつて原告らの代理人として黙示の承認(追認)を与えたのである。したがつて、代理人たる町長は、原告らの承認なくして、勝手に右五条を撤回したり削除したりすることはできないのであつて、勝手な行動は無権代理行為となり、法的効果は発生しない。原告らは、町長に、右五条の撤回ないし削除の権限を付与したことは一度もない。
(3) 使用協定五条は、地元の同意がない限り自衛隊は実弾射撃をしないことを取り決めているのであるから、協定当事者の具体的義務を定めたものというべきである。
6 結論
以上の次第で、被告長官の実弾射撃訓練行為及び被告局長の立入禁止措置は違法であるばかりか、将来これを継続することが明らかであり、一旦これらが実施されれば原告らの権利は現状に回復することが不可能であつて、事前の差止めを認めないことによる損害は回復すべからざるものがあり、かつ、現行法上他に適切な救済方法も存在しないので、原告らは被告らに対し、請求の趣旨記載のとおり前記各行為の差止めを請求するものである。
二 被告らの本案前の主張
<以下、省略>
理由
第一 日本原演習場の概要
<証拠>を総合すると、以下の事実が認められる。
本件演習場は、岡山県の北東部に位置し、行政区画上勝田郡奈義町及び勝北町にまたがつて存在する面積約一一一五万九五〇〇平方メートルの演習場であつて、陸上自衛隊が実施する射撃訓練その他の訓練のために使用されている。そして、本件演習場は、那岐池から近藤高地までを結んだ線を境として、その東側部分を東地区、西側部分を西地区と称されており、それぞれの地区に射撃訓練のための弾着地域が設けられている。
本件演習場は、明治四一年ごろ旧陸軍省が買収して以来、旧陸軍において演習場として使用してきたが、終戦に伴い昭和二〇年一一月一日に大蔵省が旧国有財産法施行令(大正一一年勅令第一五号)二条により旧陸軍省から引継を受けてこれを管理するに至り、その後昭和二七年七月二六日に、日米安保条約三条に基づく日米行政協定二条一項に基づいて締結された「行政協定に基く日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」により、これを在日アメリカ合衆国軍に提供したが、昭和三二年一〇月一四日に使用解除となつて大蔵省に返還され、じ後同省(中国財務局)の管理するところとなつた。そして、本件演習場は昭和三九年三月三一日に総理府(防衛庁)所管の行政財産となり現在に至つているのであるが、その間にあつて、陸上自衛隊は昭和三三年四月一日以降これを前記のとおり射撃訓練等のために継続使用(右所管換えの時点までは三か月毎に更新の大蔵省の特別使用の承認による。)している。
なお、本件演習場の南側に接して奈義町内に陸上自衛隊日本原駐屯地が存在するが、これは昭和四〇年三月に開設されたもので、現在、陸上自衛隊中部方面隊第一三師団の第一三特科連隊及び第一三戦車大隊が駐屯している。右第一三特科連隊は一〇五ミリ榴弾砲、一五五ミリ榴弾砲及び高射機関砲等の火器を装備した部隊である。
第二 原告らの地位
原告らは、いずれも本件演習場付近(宮内、広岡、豊沢の各部落)に居住する住民であつて、その全部が環境権のほか右演習場内に入会権を、甲事件原告1ないし38、乙事件原告1ないし34(いずれも宮内部落民)が右演習場内に通行権を、甲事件原告3、10、18ないし20、22、24、27、28、30、31、35、42、43、乙事件原告3、12、13、31(いずれも宮内又は広岡部落民)が右演習場内に耕作権をそれぞれ有する、と主張しているものである。
第三 本件演習場における射撃訓練及び立入禁止の状況
<証拠>を総合すると、以下の事実が認められる。
一 射撃訓練及び立入禁止に至るまでの手続等
まず、中部方面隊の方面総監部によつてとりまとめられた各師団、連隊及び部隊等の概略の訓練計画書が、毎年各四半期の始まる約二か月前に日本原駐屯地の業務隊長に提出され、これを受けた業務隊長は、右訓練計画を調整したうえ、四半期毎の演習場使用計画書を作成する。そして、右使用計画書は、当該期の始まる三〇日前までに日本原演習場対策委員会(業務隊長、地元町長及び関係各部落の代表委員等で構成され、奈義町と勝北町に各別に設置されている。)に付議され、本件演習場の具体的使用日程が決定されることになつている。
次いで、右具体的使用日程は、業務隊長から中部方面総監部及び射撃訓練予定の各部隊に通知され、これを受けた各部隊はその日程の中で細部の射撃訓練実施の態様等を決めて、これを業務隊長に通知する。業務隊長は、射撃訓練実施の一週間前までに、奈義町長、勝北町長、岡山県警察本部長及び津山営林所長等の関係各機関の長に対して、射撃訓練の日時、使用火器の種類及び立入禁止区域等を記載した「実弾射撃実施等について」と題する文書で通知する。これを受けた前記各町当局は、地元の関係各部落長に文書で通知し、各部落長はさらに地区住民に対し、回覧及び掲示板への掲示等の方法により周知徹底を図る。一方、各町当局は、射撃訓練実施の一週間前ごろから、毎日、有線放送により射撃訓練実施の日時及び立入禁止措置等について放送をして、その周知徹底を図つている。
さらに、本件演習場の西地区一〇か所、東地区五か所の演習場に通ずる主要道路の側端には、業務隊長名によつて、日ごろから、「射撃を実施する場合には地元民の立入通行を禁止する。」旨の文言及び射撃の種類によつて立入禁止をする区域図を記載した掲示板が設置されており、また、射撃訓練実施の前日までには右掲示板に射撃の具体的内容(日時、種類、立入禁止時間及びその区域)を記載した射撃訓練計画書が貼布され、事前の周知徹底が図られている。
二 射撃訓練の実施状況及び立入禁止措置の実態
1射撃訓練の実施状況等
日本原駐屯地の開設に伴い、第一三特科連隊中の第二大隊及び第一三戦車大隊が同駐屯地に移駐した後である昭和四〇年七月一〇日、業務隊長と奈義町長との間で、本件演習場の使用及び管理に関する事項のうち特に自衛隊と地元との間の利害関係を調整し、相互の便宜を図ることを目的として使用協定(「日本原演習場の使用等に関する協定」)が締結されたが、右使用協定中の本件演習場東地区における実弾射撃は実施しない旨の規定(使用協定五条但書)に基づき同東地区においては射撃訓練が実施されていなかつたところ、主力部隊の同駐屯地移駐が具体化してきたことに伴つて、昭和四五年四月九日、奈義町議会が東地区への試射の実施に同意する旨議決したことにより、同月二一日東弾着地域に対し一〇五ミリ榴弾砲による三発の実弾射撃が実施された。そして、同年八月五日に同町議会が東地区への射撃訓練実施に同意する旨の議決をしたことから、同月一〇日に業務隊長と奈義町長との間で使用協定五条但書を削除する旨の協定が成立した。以上の経過で、被告らは、使用協定の上からは本件演習場東地区での射撃訓練についての障害はなくなつた、との理解の下に、現に後記のとおり射撃訓練を実施している。なお、被告長官は昭和四六年六月二四日、二五日、二九日及び三〇日の四日間に、東弾着地域に対し、七五ミリ及び一〇五ミリ各榴弾砲による射撃訓練並びにTNT火薬の爆破訓練を実施する計画を有していたが、結局、都合により実施されなかつた。
その後、東地区においては、昭和五〇年秋ごろ奈義町内の高円部落寄りの馬天嶺付近に新しい東弾着地域及び射撃陣地が新設、整備されたことに伴つて、同年一二月から迫撃砲、ロケット弾発射筒の射撃訓練が実施されており、その回数は年平均七回程度である。一方、西地区においては、昭和四八年三月一五日から一〇五ミリ榴弾砲、迫撃砲、無反動砲及び小銃等の射撃訓練が実施されており、その回数は年平均二〇回程度である。
2立入禁止措置の実態
射撃訓練実施日までにされる立入禁止に関する措置については前記のとおりであるが、実施当日は、午前八時ごろまでに立入禁止区域の出入口付近の要所に警戒員を配置して誤つて立ち入る者のないように警備するとともに、西地区一〇か所、東地区六か所の演習場内の指定場所に警戒旗(赤旗)を掲揚する。さらに、立入禁止時刻の午前八時からは業務隊員により立入禁止区域内に地元住民等が立ち入っていないかどうかの捜索を実施している。
立入禁止地区は、射撃訓練実施の場所、規模及び態様等により異なるが、東西の各地区において別個にされている現在の射撃訓練の際の立入禁止区域は別紙図面(四)のうち黒線内の部分である。昭和四五年四月二一日に西地区から東弾着地域に対する三発の試射が実施されたときは、本件演習場全域が立入禁止となつた。なお、東西の各地区にある弾着地域は常時立入禁止区域となつている。
第四 本件各差止請求の適法性
原告らは、被告長官が本件演習場において実施する射撃訓練及び被告局長がする本件演習場内への立入禁止措置について、いずれも抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」である旨主張するので、この点について順次判断することとする。
そこで、まず右判断の前提として、行政事件訴訟法三条一項に定める抗告訴訟の性質及びその対象について検討しておくこととする。行政庁の公権力の行使に当たる行為とは、一般に、行政庁が国民に対する関係で優越的な意思の主体として、国民の意思いかんにかかわらず一方的な意思決定に基づき、国民の権利利益に法律上又は事実上の影響を及ぼす行為であり、このような行為については公定力、すなわち正当な権限を有する行政機関又は裁判所により取り消されるまでは、一応適法であるとの推定を受け、行為の相手方はもとより、第三者もその行為の効力を承認し、又は行為の事実上の結果を受忍しなければならないという効力を有することが承認されている。行政事件訴訟法は、このような公定力という考え方を前提とし、国民が公定力を有するところの公権力の行使により権利利益を侵害された場合の特別の救済制度として民事訴訟とは別に抗告訴訟の制度を設けたものである。したがって、行政庁の行為のうち、右に述べた公定力を有しない行為については、たとえそれが国家の統治作用としてされるものである点において私人の行為と異なる性質を持つものであり、特別の公法的規制が施されている場合であつても、これが民事訴訟(行政事件訴訟法上の当事者訴訟を含む。)の対象となるかどうかはともかくとして、抗告訴訟の対象となることはないとされるのである。一方、行政庁の公権力の行使に当たる行為が前記のように行政庁により優越的な立場から一方的な意思決定に基づいてされるものであること、さらにこれが公定力を有するものであることからして、そのうち、少なくとも国民の権利利益を侵害又は制約する行為については、法治主義の要請から、法律による特別の授権に基づき、法の定めた要件を具備する場合にのみすることができるとの制約が生ずることになる。したがつて、このことから逆に、行政作用としてされる特定の行為が公権力の行使に当たる行為に該当するかどうかは、その行為の根拠法規が行政庁に対し優越的な意思の発動としてその行為を行わせ、かつ国民に対しその結果を受忍すべき一般的拘束力を与えることとしているかどうか、また、これを適法化するための要件を定め、かつ行政庁がこの要件の充足の有無を判断して行動すべきことを要求しているかどうかを、行政法規に基づき、その趣旨、目的や行為の性質をも勘案し、個別具体的に検討してこれを決定しなければならないことになる。
一 射撃訓練差止請求の適法性
1本件射撃訓練は、わが国の防衛及び公共の秩序の維持という自衛隊の主たる任務(自衛隊法三条)を遂行するため、防衛庁の長であり、かつ自衛隊の隊務の統括者である被告長官(国家行政組織法一〇条、防衛庁設置法三条、自衛隊法八条)により、防衛庁の権限に属する教育訓練(防衛庁設置法五条二一号)の一環として行われるものであつて、陸上自衛隊の各部隊の錬成及び自衛隊員としての実力の養成等を目的とする事実行為としての性質を有するものと解される。
ところで、行政庁の事実行為についても、それが公権力の行使に当たる行為である場合には抗告訴訟の対象となるものと解されるが、その事実行為が私的行為と区別されて抗告訴訟の対象となる公権力の行使に当たる行為といいうるためには、抗告訴訟の性質及びその対象に関する前記理解からすれば、その事実行為が行政庁の一方的な意思決定に基づき、特定の行政目的のために国民の権利利益に実力を加えて行政上必要な状態を実現させようとする権力行為であることを要するものと解すべきであり、したがつて、公権力の行使に当たる行為といえるかどうかは、当該事実行為がその根拠となる行政法規に照らして権力行為といえるかどうかを前記の観点から検討して決めなければならない(この点について、原告らは、本件射撃訓練は一般国民にはとうてい許されることのない軍事行動のための訓練であるから当然に公権力の行使に当たる旨主張する。しかしながら、行政作用のうちで特定の行為が公権力の行使と認められるためには法律による個別具体的な授権が必要であることは前記のとおりであるから、射撃訓練が、その行為の性質上、一般国民には許されることのない防衛行政作用であるからといつて、この一事のみをもつて、直ちにこれを公権力の行使に当たる行為ということはできない。)。
2そこで、以上の理解の下に本件射撃訓練の公権力性について検討する。
(一) 陸上自衛隊が昭和五一年から昭和五六年までの間、本件演習場の東地区において、年平均七回程度の迫撃砲及びロケット弾発射筒による射撃訓練を実施したことは前認定のとおりであり、将来、本件演習場の西地区の砲陣地から東地区の弾着地域に対する射撃訓練を実施する意向を有していることは弁論の全趣旨から窺われるところである。一方、原告らの全員又は地域によりその一部の者が入会権を有すると主張するその対象地域は別紙図面(二)のうち黄、青及び茶線内の部分のとおりであるから、陸上自衛隊が本件演習場の東地区において昭和五一年から昭和五六年までの間に実施した射撃訓練の地域と重複し、また、原告らの一部の者が耕作権を有すると主張する耕作地及び原告らの全員が通行権を有すると主張する甲乙の各道路は別紙図面(二)のうち緑線内の部分及び同図面(三)のとおりであるから、その所在位置は右射撃訓練実施地域の外側であるが、将来、本件演習場の西地区の砲陣地から東地区の弾着地域に対する射撃訓練が実施されることになれば、甲乙の各道路についてはその弾道下に位置することとなり、右耕作地についてはその弾道下に位置することはないが、射撃訓練に伴う危険が及ぶ範囲に位置することになるということができる。
したがつて、仮に原告らが有すると主張する入会権、耕作権及び通行権が存在するとした場合には、現在及び将来における射撃訓練の実施によつて、原告らの右各権利の行使が何らかの事実上の制約を受けることは否定できない。
(二) 次に、本件射撃訓練が原告らにおいて有すると主張する右各権利に対し何らかの制約を課し、その受忍を強要しうるものであるかどうかについてみるに、陸上自衛隊の教育訓練に関する法令をつぶさに検討しても、防衛庁が教育訓練を行う権限を有することを定めた前記の防衛庁設置法五条二一号のほかには、防衛庁の内部部局である防衛局が自衛隊の部隊訓練の基本に関する事務を所掌することを定めた同法一二条五号、同じく内部部局である人事教育局が防衛局の所掌に属するものを除く職員の教育訓練の基本に関する事務を所掌することを定めた同法一四条五号、陸上幕僚監部が陸上自衛隊の教育訓練の計画の立案に関する事務を所掌することを定めた同法二三条二号、方面総監部(防衛部訓練課)が教育訓練の実施計画、演習に関する事務を所掌することを定めた方面総監部及び師団司令部組織規則一七条等の教育訓練の事務所掌を定めた法令並びに防衛諸計画の作成等に関する訓令(昭和五二年四月一五日防衛庁訓令八号)等があるのみである。そして、右諸法令はいずれも教育訓練についての防衛庁ないし自衛隊における組織内部の事務分掌に関するものであつて、一方的に相手方の受忍を強要しうることを定めた規定としては、予備自衛官に対する訓練召集命令に関する自衛隊法七一条及び訓練のための漁船の操業の制限又は禁止に関する同法一〇五条がみられるのみであつて、他に受忍を強要しうることを認めた規定は存在しない。
加えて、本件射撃訓練は、被告長官の権限に基づき、自衛隊が公用財産である本件演習場をその供用目的に従つてみずから使用し、実施されるにすぎないものであつて、その性質上、本件演習場内に本件射撃訓練の実施を妨げる権利が存在しないことを前提とするものであり、仮に存在する場合には収用等の方法によりこれを消滅させたうえで実施することによつても十分その目的を達することのできる性質のもの、換言すれば、本件演習場内に権利を有する者にその受忍を強要してまで本件射撃訓練を実施しなければならないといつた緊急事態を予想しえない性質のものである(それ故、被告長官は原告らが本件演習場内に有すると主張する権利を、むしろ有しないとの立場から本件射撃訓練を実施しようとしているのである。)。
以上によれば、本件射撃訓練については、本件演習場内に権利を有する者に対し、その権利の侵害又は制約を受忍させることのできる根拠規定はなく、またその性質からしても右のような受忍を強要する必要性は存在しないから、これをもつて公権力の行使に当たる行為とみることができないというべきである(なお、前認定にかかる陸上自衛隊日本原駐屯地業務隊長と奈義町長との間の使用協定は、陸上自衛隊と地元住民の双方が、対等の立場で、本件演習場に関する利害関係を調整し相互の便宜を図ることを目的として締結したものであつて、陸上自衛隊が優越的な立場から原告らが有すると主張する各権利に制約を課すことを目的として締結したものではないから、右協定は、被告長官の一方的な意思決定により原告らに公法上の受忍義務を課す根拠とはなりえない。)。
(三) また、原告らは本件射撃訓練をもつてその有すると主張する環境権に制約を課すものである旨主張するけれども、仮に環境権という権利を是認しうるとしても、本件射撃訓練については、これが国民の権利利益を侵害し又は制約する場合においてもなお、その受忍を強要することができる根拠規定のないことは前記のとおりであるのみならず、そもそも本件射撃訓練は公用財産である本件演習場内において実施されるものであつて、その有形力は、性質上、本件演習場外に居住する原告らの権利利益に向けられたものではないし、その結果により生ずる騒音ないし震動については、一般の企業活動において生ずる騒音ないし震動と同様に、所有権等の私法上の権利相互の調整の問題として私法原理により解決することも可能である。したがつて、本件射撃訓練は原告らが有すると主張する環境権(又はその背景にある物権ないし人格権)との関係においても公権力の行使に当たる行為とはいえない。
(四) さらに、原告らは大阪空港事件大法廷判決の考え方からすれば、本件射撃訓練が抗告訴訟の対象となる公権力の行使に当たることは明らかである旨主張するので、これについて付言する。
右大法廷判決は、空港管理権と航空行政権とが同一の機関に属し、かつ、空港管理権に基づく管理と航空行政権に基づく規制とが不即不離、不可分一体的に行使実現されていることを一つの論拠に、空港の供用の差止を求める請求が航空行政権の行使の取消変更ないしその発動を求める請求を包含することになるとしたうえで民事訴訟としては不適法であるとしたものである。したがつて、本件においても、右「航空行政権」に対応する「防衛行政権」というものが認められるかどうかがまず問題となる。
そこで、この点を検討するに、右大法廷判決においては、「航空行政権」とは「航空法その他航空行政に関する法令の規定に基づき運輸大臣に付与された航空行政上の権限で公権力の行使を本質的内容とするもの」とされ、具体的には、航空行政権の主管者としての運輸大臣が航空運送事業者に対して免許、認可等の形式で行う様々な規制をもつて航空行政権の行使と把えている。しかしながら、本件射撃訓練においては、教育訓練に関する前記諸法令をみても、右「航空運送事業者」に相当する第三者は存在しないのである。けだし、本件演習場において本件射撃訓練を実施するのはすべて自衛隊員であり、また、その射撃訓練は前記のとおり公用財産である本件演習場をその管理主体がその供用目的に従つてみずから使用しているものにすぎないからである。
したがつて、本件においては、防衛行政権というものを認めることはできないから、右大法廷判決の考え方を本件に援用することはできないというほかない。
3以上において検討したところによれば、本件射撃訓練は抗告訴訟の対象となる公権力の行使に当たる行為であるとは認められないから、その差止請求にかかる本件訴えは不適法というほかない。
二 立入禁止差止請求の適法性
1本件演習場の設置及び管理については、防衛庁(長官)がその権限を有し(国家行政組織法一〇条、防衛庁設置法三条、五条三号)、同庁の機関である防衛施設庁(長官)がその権限を行使し(防衛庁設置法四〇条、四一条)、同庁の地方支分部局である呉防衛施設局がその所掌事務を分掌する(同法五三条、五四条)こととされている。そして、本件演習場は自衛隊の施設に供される行政財産として、被告局長が、国有財産法三条、内閣及び総理府所管国有財産取扱規則(昭和五二年四月六日総理府訓令第二号)二条ないし五条、防衛庁本庁所属国有財産(施設)の取扱いに関する訓令(昭和三八年七月一二日防衛庁訓令第三〇号)三条の各規定により、その管理に当たることとされている。
以上の法令上の根拠の下に、被告局長は本件演習場の管理主体として、射撃訓練の円滑な実施遂行のために本件立入禁止措置をとるものであるから、本件立入禁止措置は本件演習場の管理権に基づく作用であるということができる。
2ところで、自衛隊員に対する射撃訓練その他の教育訓練事務の用に供されている陸上自衛隊の施設であり、かつ国有財産法上の行政財産であるところの本件演習場の管理権は、演習場を演習の用に供するために法律上認められる特殊の包括的な管理権能であつて、同種の私的施設の所有権に基づく管理権能、すなわち物を財産的価値の客体として管理する権能と全く同一のものであるとはいえない。しかし、公物管理権に基づく一定の行為が公権力の行使に当たる行為といえるかどうかは、抗告訴訟の性質とその対象に関する前記理解からすれば、当該行為を行政庁の権限として認めた法の趣旨、目的に照らして、それが個別具体的な法令の授権に基づき行政庁の優越的な意思の発動としてされるものであるかどうかを検討して決定しなければならないことになる。
3そこで、本件立入禁止措置についてこれをみるに、右措置は、本件演習場の管理主体である被告局長が行政財産である本件演習場を射撃訓練その他の教育訓練の用に供するという演習場本来の目的の達成ないしこれに対する障害の除去、予防のためにする行為であるというべきところ、被告局長の管理権の根拠となる前記諸法令には本件演習場への立入禁止措置に関する規定は存在しないので、法は被告局長が本件演習場について立入禁止措置をとる場合でも、その優越的な立場から一方的な意思決定によりこれをなし、その行為の結果を相手方に受忍させることは予定していないものというべきである。したがつて、被告局長の行う本件立入禁止措置をもつて公権力の行使に当たる行為ということはできない。もつとも、被告局長の有する管理権は所有権に基づく管理権能と同等の権能であるから、被告局長は、私人がその所有地に対し所有権に基づいて立入禁止措置をとることができるのと同様に、本件演習場についても立入禁止措置をとることができ、しかして、その場合の法律関係は私人の所有地に関する私人間のそれと実質的には何ら異なるものではない。
4なお、被告らは、原告らが有すると主張する耕作権は国有財産法一八条三項にいわゆる行政財産の目的外使用許可に基づくものであると主張しているので、これを前提として本件立入禁止措置の公権力性について検討するに、<証拠>によれば、原告らに対する国有財産使用許可書には使用上の制限として、その六条一項で「使用を許可した物件は、国有財産法一八条三項に規定する制限の範囲内で使用させるものであり、使用を許可された者は、常に善良なる管理者の注意をもつて維持保存しなければならない。」と、また、同三項で「使用を許可された者は、使用許可期間中であつても業務隊長が演習場内への立入を禁止したときは、これに従うこと。」と定められていることが認められるのであつて、右制限は、使用許可の付款というべきであるから、立入禁止措置がとられた場合に、使用許可を受けた原告らが本件演習場内での耕作使用を制約されるのは、使用許可自体の効果によるものであつて、立入禁止措置自体によるものと解することはできない。したがつて、原告らの耕作使用が目的外使用許可に基づくものであつても、本件立入禁止措置をもつて公権力の行使に当たる行為であるとすることはできない。
5ところで、被告局長が本件立入禁止措置を事実上の行為としてした場合、すなわち本件演習場内に私法上の権利を有すると主張する原告らが右措置に反して立ち入ろうとするのに対して、右権利の存在を否定する被告局長が管理権に基づいてこれを実力で排除した場合、右管理権の根拠となる前記諸法令にはこの点に関する規定が存在しないこと、及びその場合の法律関係が私人の所有地に関する私人間のそれと実質的には何ら異なるものではないことは、いずれも前記のとおりである(なお、入ることを禁じた場所に正当な理由がなく立ち入ることのできないことについては軽犯罪法一条三二号参照)。したがつて、この点からみても、本件立入禁止措置をもつて公権力の行使に当たる事実行為であるとすることもできない。
6また、本件において防衛行政権というものを認めることができないことは前記のとおりであるから、本件立入禁止措置についても、大阪空港事件大法廷判決の考え方を援用する原告らの主張は採用しがたい。
7以上において検討したところによれば、本件立入禁止措置は抗告訴訟の対象となる公権力の行使に当たる行為であるとは認められないから、その差止請求にかかる本件訴えも不適法というほかない。
第五 結論
以上の次第で、原告らの本件射撃訓練及び本件立入禁止措置の差止請求にかかる本件訴えはいずれも不適法であるから、これを却下することとする(なお、本件射撃訓練及び本件立入禁止措置が行政事件訴訟法三条一項の公権力の行使に当たらず、その結果、これらを抗告訴訟において争うことができないことは前記のとおりである。そこで、本件紛争の実態に鑑み、いかなる手続においてこれを解決すべきかについて付言する。まず、本件においては、原告らが本件演習場内に有すると主張する入会権、耕作権及び通行権の各権利関係の存否が明らかでないところに一つの紛争があるのであるから、原告らとしては、右各権利の確認請求又はこれが物権ないし同類似の権利である場合には妨害排除の請求を内容とする民事訴訟を提起することによりその救済を求めることができる(入会部落の構成員が単独で自己の使用収益権の確認請求又は妨害排除請求をすることができることについては最高裁昭和五七年七月一日第一小法廷判決民集三六巻六号八九一頁参照)。また、他の一つの紛争である環境権の侵害については、むしろ物権又は人格権に基づき、受忍限度を超える範囲内で本件射撃訓練の結果により生ずる騒音ないし震動を本件演習場外に発することの差止請求又は損害賠償請求を内容とする民事訴訟を提起することによりその救済を求めることもできる。)。よつて、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。
(白石嘉孝 岡久幸治 黒岩巳敏)
入会権の対象範囲
所在地
台帳面積町、反、畝、歩
入会地種類
入会地所有者
大字
字
地番
成松
大滝
六一三
一九七、八〇六
毛上
成松部落
同
同
六一二
一二一、一〇九
同
同
同
小滝
六一〇
一六六、三〇〇
同
同
同
畔畑
六〇八
七七、二〇九
同
同
同
コトが谷
六〇〇
六八、〇一五
同
同
同
カラ滝
五九九
四三、八二七
同
同
同
シヤレ
五九八
六五、八一〇
同
同
同
わた畑ケ
五九六ノ二
八、一〇〇
同
同
※
同
日照谷
八二、三〇〇
同
同
※
同
かふなる
二二、五一五
同
同
※
同
一ノ渡瀬
六、三二七
同
同
宮内
細尾
六六八
七〇、二〇三
同
大字宮内
同
奈義山
六六五ノ一
一〇四、三〇九
同
同
是宗
右ノ谷
一、〇一六
五〇、一二〇
同
大字是宗
同
中畝
一、〇一三
二一、四〇三
同
同
同
中畝西
一、〇一二
一一七、三〇一
同
同
同
右の谷奥
一、〇一四
六九、六二五
同
同
同
茂知木谷
一、〇一一
八四、二二一
同
同
同
諸仙
一、〇一五
七九、一一九
同
同
同
広郷
一、〇一七
三五、二二三
同
同
同
釜床
一、〇一八
三九、〇〇〇
同
同
同
細尾谷
一、〇一九
一〇、三一七
同
同
同
細尾下
一、〇二〇
六四、五一二
同
同
同
細尾
一、〇二一
三八、二一二
同
同
同
勝尾志り
一、〇二一ノ一
六、七一六
同
同
同
大わた
一、〇〇九
七四、六二六
同
同
同
名畑
一、〇〇八ノ第二
三七、五〇五
同
同
同
名畑
一、〇〇八ノ第一
四二、二二七
同
同
同
ひえ畑
一、〇〇七ノ一
四二、八〇〇
同
同
同
舩ケ谷
一、〇〇六
四〇、八〇四
同
同
同
西谷
一、〇〇五
二九、二二一
同
同
同
同
一、〇〇四ノ一
二五、三〇一
同
同
同
はた
一、〇〇三ノ一
二九、六一〇
同
同
※ 被告らにおいて本件演習場内に存在する、と主張するもの
図面(一)〜(四)<省略>