岡山地方裁判所 昭和50年(ワ)222号 判決 1977年2月24日
原告
塚本清士
ほか一名
被告
国
主文
1 被告は原告らに対し、それぞれ金一五七万七五九一円および内金一四七万七五九一円に対する昭和五〇年五月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 その余の原告らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用はこれを五分し、その二を被告の、その余を原告らの負担とする。
4 この判決は、原告ら勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。
事実
第一申立
一 原告ら
1 被告は原告らに対し、それぞれ金四三〇万円および内金四〇〇万円に対する昭和五〇年五月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 被告
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
3 担保を条件とする仮執行免脱の宣言
第二主張
一 請求原因
1 事故の発生
訴外亡塚本敬二は昭和五〇年二月三日午前二時三〇分ころ岡山市内の国道二号線新京橋南側自転車通行可の区分帯(以下、本件区分帯という。)を自転車に乗つて西進中、同橋南側西詰階段(以下、本件階段という。)の上端から右自転車もろとも下方の市道上に転落し、脳挫傷、頭蓋骨々折、頭皮挫裂創の傷害を負い、同月七日午前三時四二分死亡した(以下、本件事故という。)。
2 責任原因(設置管理の瑕疵)
新京橋は岡山市内の中心部を東西に通ずる国道二号線の一環をなす被告が管理する道路橋であり、右道路橋の国道部分は人車の交通が頻繁で、中央部には車道部分が、その両端の南北側には各幅員約三メートルの歩道部分があり、さらに右歩道部分には車道寄りに幅員約一・五メートルの自転車通行可の区分帯が白線をもつて標示されていたところ、本件区分帯は本件階段直前において、東から西へ下り勾配のまま急角度で北に曲がつて(右折して)、車道と歩道とを区分するガードロープの切れ目、即ち間隔約二・七メートルの間を通り抜けて車道南側路側帯内に進入する形状となつており、他方、歩行者専用部分は右歩道部分の西端からそのまま西に直進して本件階段に下降する構造となつているので、夜間本件区分帯を東から本件階段方向に向けて自転車で西進してきた場合、本件階段はその直前に至つてはじめて現認可能であり、しかも、本件階段の下端は同橋橋脚下南側沿いに西方に向かう市道と接続しているため、同橋上の本件階段手前から西方を遠望すると右市道が前記国道二号線の歩道部分の一部分をなし、右歩道部分と右市道とが一見接続しているかの如き観を呈していた。
右のとおりであるから、本件区分帯を自転車が西進してきた場合、下り勾配により加速しているところに、本件階段に気ずかず、あるいは気ずいても北に向かつて車道へ急転把することを強いられること等により本件階段上端から転落する等の危険は十分予想しうるところであつた。
したがつて、被告は右危険を防止するために、安全な自転車道を設置し、あるいは、階段の存在および転落の危険を警告する標識その他照明施設、防護施設を設置する等の措置をとる必要があつたのに、本件区分帯が歩道から車道へ進出する路上部分に白ペイントでゼブラの標示(路上障害物の接近を表示する記号)をし、本件階段最上部即ち本件区分帯と本件階段の境目に駒止および二本のデリニエーターを設置したのみで、他に何らの危険を警告する標識等も設置しておらず、また右デリニエーターも容易にぬきとれる状態にある(本件事故発生当時、別紙図面イ、ロの二本のうちイの一本がぬきとられていた。)等、被告には道路の設置管理に瑕疵があつたというべきである。
3 原告らがこうむつた損害
(一) 敬二の逸失利益
敬二は原告塚本清士が代表取締役である都ナシヨナル電化株式会社に勤務し、昭和四九年度給与所得は金八一万九〇〇〇円であつた。同人は死亡当時満二七歳であつたから今後少くとも三六年間は右年収額を下まわらない収入を得たはずである。そこで、同人の生活費を右収入の五〇パーセントとみて、年毎の複式ホフマン式計算法により年五分の中間利息を控除して現価を算定すると、左記計算式のとおり、金八三〇万二〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨)となる。
819,000(年収額)×(1-0.5)(生活費控除)×20.275(ホフマン係数)=8,302,612
原告らは敬二の両親であつて、敬二の死亡に伴い右損害賠償請求権金八三〇万二〇〇〇円の各二分の一である金四一五万一〇〇〇円を相続により取得した。
(二) 原告らの慰藉料
原告らが前記会社の後継者ともたのむべき敬二を失つた悲嘆は甚大であり、これを慰藉するにはそれぞれ金二五〇万円が相当である。
(三) 弁護士費用 原告らそれぞれ金三〇万円
4 結論
よつて、原告らは被告に対し、それぞれ前記3(一)、(二)の合計金六六五万一〇〇〇円のうち敬二の本件事故における過失を斟酌して金四〇〇万円と前記3(三)の金三〇万円との合計金四三〇万円および内金四〇〇万円に対する本訴状送達の翌日である昭和五〇年五月一四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する認否
1 請求原因1は不知。
2 請求原因2のうち、新京橋が岡山市内の中心部を東西に通ずる国道二号線の一環をなす被告が管理する道路橋で、同橋の国道部分は自動車の交通が頻繁であること、同橋の南北両側には各幅員約三メートルの歩道があり、歩道上には車道寄りに幅員約一・五メートルの自転車通行可の区分帯が白線をもつて標示されていること、本件階段の下端が市道につながつていることは認めるが、その余は争う。
新京橋の両側歩道には従来自転車通行可の区分帯はなく、自転車は車道部分を進行していたが、昭和四八年四月三日付岡山県公安委員会告示第一七号をもつて右歩道部分に自転車通行可の区分帯が設けられたものである。
本件事故現場付近の歩道部分は幅員約三メートルの比較的平担な見とおしのよい直線の道路であり、本件階段の上端部分には危険防止のため白ペンキを塗つた鉄筋コンクリート製の駒止(高さ一五センチメートル、幅二〇センチメートル)とその上に路端標示のため八〇センチメートルの間隔でプラスチツク製の二本のデリニエーター(路面からの高さ約一メートル)が設置され、本件自転車通行可の区分帯が本件階段の手前で車道部分に連絡する個所は北に曲つているが、その彎曲度は内径八メートルであつて、自転車は容易に曲ることができる状態であり、さらに、右連絡部分の手前区分帯上の路上には自転車誘導のためのゼブラが標示され、また、右駒止の地点から東方約一〇メートルの車道中央分離帯には高さ八メートルの四〇〇ワツト水銀灯が設置されていて、本件事故現場付近の照度は六・五一ルツクス(満月の照度は〇・二ルツクス)であるから、本件事故現場においては通常の注意をもつてすれば本件のごとき事故は発生しないものといえる。
さらに、道路管理者は道路の保全等のために毎日巡回(一定の時間により毎日一回、勤務を要しない日を除く。)、夜間巡回(一ケ月二回、一〇日と二〇日を標準としている。)、異常時巡回(豪雨、台風等異常気象時等緊急事態が発生し予想されるとき)の各巡回を行い、本件事故発生の前々日である二月一日(土)午前一一時三〇分ころの巡回においても本件事故現場付近には何らの異常も認められなかつた。
以上のとおりであるから、被告には道路の設置管理に何らの瑕疵はない。
本件事故は敬二の一方的過失によつて生じたものである。
敬二は本件事故当時清酒にして約四合ないし五合相当の飲酒をしたうえ、昭和五〇年一月三〇日岡山市巌井の私立関西学園高校の自転車置場において盗難にあつた自転車を、不馴れでその構造性能欠陥等を十分知つていないにもかかわらず、運転し、本件階段の上端部分に設けられた駒止、デリニエーターに気ずかず、転落したものである。
したがつて、敬二には酒気を帯びたうえで不馴れな自転車を運転し、危険防止のための前方注視を怠つた過失があり、右過失により本件事故が発生したものであるから、本件事故は被告の道路の設置管理と何らの因果関係もないというべきである。
3 請求原因3は不知。
第三証拠〔略〕
理由
一 本件事故の発生
成立に争いのない甲第二号証、乙第一三ないし第一六号証、第一九号証、本件自転車の写真であることに争いがない乙第一二号証、証人難波律子の証言によれば、請求原因1の事実を認めることができ、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
二 責任原因
1 新京橋が岡山市内の中心部を東西に通ずる国道二号線の一環をなす被告が管理する道路橋であり、右道路橋の国道部分は自動車の交通が頻繁な場所であること(なお、右事実によれば、人および自転車の交通も相当程度に達する場所であるものと認められる。)、同橋の南北両側には各幅員約三メートルの歩道があり、右歩道部分には車道寄りに幅員約一・五メートルの自転車通行可の区分帯が白線をもつて標示されていること、本件階段の下端が市道につながつていることは当事者間に争いがない。
そして、成立に争いのない甲第四号証、乙第一号証の二八、第二ないし第四号証、第八、第九号証、被告主張の写真であることについて争いのない乙第五、第六、第一〇号証、証人飯塚一宏の証言により真正に成立したと認められる乙第七号証、同証言によれば次の事実が認められる。
(一) 一級国道二号線の一環をなす新京橋は、建設省中国地方建設局岡山工事事務所の設計管理によつて昭和三八年三月二九日に竣工した岡山市内を流れる旭川の東岸岡山市小橋町二丁目(旧表示国清寺町)と西岸同市京橋町(旧表示船着町)との間に架橋された道路橋で、その道路幅員は二三メートル(中央分離帯一メートル、南北両車道各八メートル、南北両歩道各三メートル)で、アスフアルトコンクリート舗装されていること。
(二) 本件階段は新京橋南側歩道の西端に位置し、車道部分に沿うようにして漸次下降して、下の市道に連絡する階段であつて、コンクリート造の幅二・六五メートル、高さ五・八四メートル(本件階段の下端から途中踊場まで二・六四メートル、踊場から上端まで三・二〇メートル)の可成り急角度のものであること。
(三) 新京橋南側歩道は同橋中央部分付近から西に向かつて下り勾配になつており、東から本件階段に至るまで直線で見とおしがよいけれども、本件階段の存在および右階段下の状況は、右階段上端付近まで来ないと見とおせないこと。本件階段の東方から本件階段を遠望すると、本件階段下に連絡している市道部分があたかも本件歩道部分の一部分であるかの如く見え、本件歩道部分から市道部分まで直進することが可能であるかのような錯覚を一時的に生じさせる状況であること。
(四) 当初、新京橋の南北側各歩道上には自転車通行可の区分帯はなく、自転車は車道を通行していたが、昭和四八年四月三日付岡山県公安委員会告示第一七号により、右歩道上に右区分帯が白線をもつて標示されるに至つたこと。
(五) 本件事故発生当時、本件階段の上端即ち、歩道部分の西端には、長さ二・六五メートル、幅二〇センチメートル高さ一五センチメートルのコンクリート製の駒止が設置され、右駒止上には右階段の南縁部分から北へ七八センチメートルの地点および同地点からさらに北へ八三センチメートルの地点、即ち別紙図面イ、ロの各地点に高さ一メートルのポール状の二本のデリニエーターが設置されていたこと。そして、本件区分帯は本件階段の手前五メートルの地点から右に曲がつて車道と歩道を区分している縁石およびガードロープの切れ目を通り抜けて車道南側の路側帯と連絡するようになつており、右曲線部分の南側歩道と北側車道上には自転車誘導のためゼブラの標示がなされていた(その状況は別紙図面記載のとおり)こと。また、新京橋には中央分離帯等に水銀灯螢光灯等数十基が設置されて明るく、本件事故現場付近にも本件階段の上端から北東に約一一メートルの中央分離帯に高さ八メートルの四〇〇ワツト水銀灯が設置されてあり、夜間本件階段の上端付近における照度は六・五一ルツクスである等、右近辺の状況は容易に見とおせる明るさであつたこと。
(六) 本件事故現場付近を含め、国道二号線の兵庫県赤穂郡上郡町から岡山市下撫川までの間は岡山国道工事事務所岡山維持出張所のパトロール員が毎日定期巡回、一ケ月二回の夜間巡回などを行つていたこと。
以上のとおり認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。(なお、原告塚本清士本人尋問の結果中、前記デリニエーター二本のうち一本が本件事故発生当時ぬきとられていた旨の供述部分は容易に信用できない。)
右認定事実によれば、新京橋の歩道および本件階段は元来歩行者のみを対象として設置されたものであるが、その後本件区分帯の設置により歩道上を自転車が通行するようになつたのであるから、右自転車の速度および右歩道が本件階段方向に向かつて下り勾配であることならびに自転車が本件区分帯を東から西進した場合、遠方から見ればそのまま直進することもできるかのような錯覚を一時的に生じさせる状況であるところ、歩道が突如切断されて前方に急角度に下降する本件階段となつていることを総合勘案すれば、右場所は自転車が歩道部分から本件階段ないしは下の市道に転落する危険を包蔵するところということができる。
そして、本件事故現場付近のように、元来歩行者のみを対象として設置された歩道部分が、のちに自転車の通行を許すようになつたことにより、その転落の危険性を内蔵するにいたつた場合においては、新たにそれ相当の顕著な危険防止の標示あるいは防護柵の設置を要するというべきである。
ところで、本件事故発生当時は本件事故現場付近には、前記認定のように、本件階段の上端に駒止、デリニエーター二本が設置され、本件区分帯が右階段の手前で右に曲がる部分にゼブラの標示がなされていたが、これらはいずれも路端の標示、障害物の接近等の標示等の役割を有するにすぎず、他に具体的に本件階段の存在および転落の危険を警告する標識あるいは防護柵等何ら設置されていなかつたものである。
したがつて、東方から本件区分帯を進行して本件階段付近にさしかかる自転車の交通の安全を確保するためには、自転車運転者の前方注視と障害、危険物の早期発見に全てを委ねることなく、前記ゼブラ、駒止、デリニエーター以外にも、自転車通行が事実上不可能であることを遠方から認識できるような通行禁止柵または防護柵などを設置する措置が必要であつたものというべく、これらの設備がないため自転車の速度が高速になつた際、その運転者の一瞬の不注意によりあるいは一瞬他の障害物等に注意を奪われることによつて、歩道切断部分の発見が遅れ、事故発生の危険を蔵しているから、これらの設備のない本件事故現場付近の道路は通常そなえるべき安全性を欠き、被告は道路の管理に瑕疵があつたものといわなければならない。
2 成立に争いのない乙第一一号証の一、二、第一三ないし第一六号証、第一九号証、被告主張の写真であることについて争いのない乙第一二号証、証人間島芳広、同難波律子の各証言、原告塚本清士本人尋問の結果によれば次の事実が認められる。
敬二は当時つきあつていた岡山市赤坂本町一の二三光荘内の難波律子宅から自宅に帰る途中に本件事故に遭遇したこと。敬二は本件事故発生の前夜午後八時ころから友人間島芳広とビール、ウイスキー等を飲み、本件事故発生当時には血液一ミリリツトル中アルコール含有量は〇・八八ミリグラムに達する状態であつたこと。敬二が本件事故時運転していた自転車は所有者西崎慎一が本件事故発生の日の三日前にあたる昭和五〇年一月三〇日に同市巌井所在の関西高校の自転車置場において盗難にあつたドロツプハンドル型の自転車であること。敬二は自家用自動車は所有していたが、自転車は所有しておらず、通常夜間に自転車に乗ることもなく、ふだん難波律子宅に行くような場合は自動車を使用していたこと。
以上のとおり認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。
右認定事実によれば、敬二は飲酒し、不馴れな者には運転操作の難しいドロツプハンドル型自転車を運転していたことが認められる。
そして、前記のように、本件事故現場付近は夜間でも水銀灯の照明により一応の見とおしがきき、本件階段の上端には駒止およびデリニエーターがあり、本件階段の手前には本件区分帯が右に曲がる旨の白線の標示があるにもかかわらず、敬二が直進して転落したことからすると、敬二は本件階段にさしかかつた際、前方注視が充分でなかつたことが推認できる。しかし、敬二は不馴れなドロツプハンドル型自転車を運転し、途中事故等に遭遇することなく本件歩道上まで進行してきていることおよび前記アルコール含有量を総合勘案すれば、その判断能力は減退し、やや注意散漫な状態であるが、前方注視することは可能であつたということができ、もし本件事故現場付近に相当な距離から、歩道部分が切断されて本件階段となり自転車通行が不可能であることを確認させるような前示通行禁止柵または防護柵の諸設備があれば、敬二においても早期にこれに気付き、本件階段に転落することを避けることができたであろうことは十分に推認することができるので、前示道路の瑕疵と本件事故との因果関係を肯定することができる。
他方、敬二においても本件事故発生について飲酒のうえ不馴れな自転車を運転し、前方注視が十分でなかつた過失が認められることは前示のとおりであるから、本件事故発生における敬二の過失の割合は、前記被告の道路の管理の瑕疵と対比し、八割と認めるのが相当である。
三 原告らがこうむつた損害
1 敬二の逸失利益
成立に争いのない甲第一、第二号証、原告塚本清士本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第三号証、同本人尋問の結果と弁論の全趣旨によれば、敬二は死亡当時二六歳(昭和二三年六月一三日生)の健康な男子で、同人の父である原告塚本清士が代表取締役である都ナシヨナル電化株式会社に勤務し、その年間収入額は原告ら主張の金八一万九〇〇〇円を下まわらないことが認められる。右事実によれば、敬二は本件事故にあわなかつたならばなお六二歳までの三六年間は就労して、右と同額の収入を得たであろうと推認するのが相当であり、しかもその間の同人の生活費は右収入額の五割として、敬二の死亡による逸失利益を年毎のライプニツツ式計算法により年五分の中間利息を控除して現価を算定すると、左記計算式のとおり金六七七万五九一四円となる。
819,000(年間所得)×(1-0.5)(生活費の控除)×16.5468(ライプニツツ係数)=6,775,914
ところで、前記二2認定のように、本件事故発生につき敬二の過失もその一因をなしており、その過失割合は八割とするのが相当であるから、右損害のうち被告に負担さすべき額はその二割である金一三五万五一八二円となる。
成立に争いのない甲第一号証によれば、原告らは敬二の父母であることが認められるから、原告らは敬二の死亡にともない右金一三五万五一八二円の二分の一にあたる金六七万七五九一円をそれぞれ相続により取得したものというべきである。
2 原告らの慰藉料
前記二認定の本件事故の態様、敬二の過失割合、敬二と原告らとの前記身分関係、その他本件にあらわれた諸般の事情を考慮すると、原告らが敬二の死亡によつてこうむつた精神的苦痛に対しては、それぞれ金八〇万円の慰藉料をもつて相当とする。
3 弁護士費用
本訴事案の難易、訴訟の経過、原告らの請求額と認容額等その他諸般の事情を考慮すると、被告において負担すべき原告らの弁護士費用はそれぞれ金一〇万円をもつて相当とする。
四 結論
以上のとおりであるから、原告らの本訴請求は、被告に対し、それぞれ前記三1、2、3の合計金一五七万七五九一円および右金員から前記弁護士費用一〇万円を除いた内金一四七万七五九一円に対する本訴状送達の翌日であることが本件記録上あきらかな昭和五〇年五月一四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるから、これを認容し、その余は失当としていずれも棄却し、訴訟費用の負担について民訴法九二条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条を(被告の担保を条件とする仮執行免脱の宣言の申立については相当でないからこれを付さない。)それぞれ適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 西内英二 見満正治 矢延正平)
別紙図面 平面図
<省略>