大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

岡山地方裁判所 昭和59年(わ)366号 判決 1985年11月14日

本店の所在地

岡山県浅口郡里庄町大字里見字下原二、八〇〇番地

法人の名称

特機産業株式会社

代表者の住所

岡山県浅口郡里庄町大字新庄一、八八八番地

代表者の氏名

金井衡平

右の会社に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官小西俊雄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告会社を罰金一、五〇〇万円に処する。

訴訟費用は全部被告会社の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告会社は、岡山県浅口郡里庄町大字里見字下原二、八〇〇番地に本店を置き、各種電動娯楽機器の製造販売業を営むものであるが、同会社の取締役としてその業務全般を統括していた石塚祐において、同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、昭和五七年九月一日から昭和五八年八月三一日までの事業年度における所得金額は三億四、八〇九万四、三二〇円で、これに対する法人税額は一億四、四〇一万九、七〇〇円であったにもかかわらず、翌期への売上繰延べ、架空仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五八年一〇月二五日、同県倉敷市玉島阿賀崎二丁目一番五〇号玉島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一億三、八九五万七、三七六円でこれに対する法人税額は五、六一九万六、〇〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により右事業年度の正規の法人税額との差額八、七八二万三、七〇〇円の法人税を免れたものである。

(証拠の標目)

一  第一回公判調書中の被告会社代表者金井衡平の供述部分

一  被告会社代表者金井衡平の当公判廷における供述

一  被告会社代表者金井衡平の大蔵事務官に対する質問てん末書六通及び検察官に対する供述調書

一  石塚祐の大蔵事務官に対する昭和五九年一月一七日付、同年二月一日付、同月二日付、同月七日付、同月八日付、同月二三日付、同月二四日付、同年三月一七日付各質問てん末書及び検察官に対する供述調書三通(但し、昭和五九年五月一四日付については第一九項の二四行目ないし二五行目の「山佐へ向けて出庫して」という部分及び二六行目ないし二八行目全部と、第二〇項の二四行目ないし二九行目全部を除く)

一  谷本博の大蔵事務官に対する質問てん末書二通及び検察官に対する供述調書抄本二通

一  石塚トシ子の大蔵事務官に対する質問てん末書四通及び検察官に対する供述調書

一  磯田光子の大蔵事務官に対する質問てん末書三通及び検察官に対する供述調書

一  佐野慎一の大蔵事務官に対する質問てん末書二通及び検察官に対する供述調書

一  井岡政美(二通)、千原玖朗(二通)、北澤正行、前田好男、東山秀雄、山岸弘忠、石本ミツ子、石塚孝の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の「脱税額計算書説明資料」と題する書面

一  登記官作成の登記簿謄本

一  押収してある法人税決議書綴一綴(昭和五九年押第一二七号の一)

(法令の適用)

判示所為は法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、本件は免れた法人税の額が五〇〇万円をこえる場合であるので、情状特に本件のほ脱税額が八、七八二万三、七〇〇円もの多額にのぼり、ほ脱率は六〇パーセントに及んでいること、不正行為の内容も、架空仕入代金を仮名預金等によって所得を秘匿するというもので、その態様も芳しくないことなどに徴し、同法一五九条二項を適用し、罰金額は免れた法人税の額に相当する金額以下とし、その罰金額内で処断すべきであるが、本件当時被告会社の実質上の経営者であった石塚祐は既に死亡し、現在被告会社代表者が名実ともに経営に当たり、本件につき深く反省の情を示していること、被告会社は本件にかかる本税及び重加算税等を納付済みであるほか、対外取引においても相当の経済的打撃を受けたことなどの事情を斟酌のうえ、被告会社を罰金一、五〇〇万円に処し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して全部これを被告会社に負担させる。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 鈴木正義)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例