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岡山地方裁判所 昭和60年(ワ)330号 判決 1992年7月28日

原告

赤岩明

右訴訟代理人弁護士

浦部信児

一井淳治

右訴訟復代理人弁護士

光成卓明

被告

日本国有鉄道清算事業団

右代表者理事長

石月昭二

右訴訟代理人弁護士

松岡一章

被告訴訟代理人

周藤雅宏

福田隆司

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

原告が被告に対し労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する。

第二事案の概要

本件は、被告の職員であった原告が被告がした懲戒解雇処分は無効であるとして、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めたものである。

なお、原告は、第二七回口頭弁論期日(平成四年三月一〇日午前一〇時三〇分)において、本件訴えを取り下げる旨述べたが、被告はこれに同意しない。

一  争いのない事実

1  被告は、日本国有鉄道法に基づいて鉄道事業等を経営する公法上の法人で、公共企業体等労働関係法により、職員の労働関係に関して同法の適用がある公共企業体であったところ、昭和六二年四月一日、日本国有鉄道改革法一五条、同法附則二項、日本国有鉄道清算事業団法九条一項及び同法附則二条により、名称を日本国有鉄道清算事業団と変更した。

2  原告は、昭和四四年二月一七日被告に臨時雇用員として、昭和四五年三月一日職員として採用され、昭和五八年八月一日以降保線管理係において線路の保守作業に従事していた者である。

3  被告総裁代理岡山鉄道管理局長は、昭和六〇年一月三一日、原告に対し、「昭和五九年四月から同年一二月までの間、岡山保線区瀬戸支区において、再三にわたり職員として著しく不都合な行為があったことによる」として、日本国有鉄道法三一条により懲戒免職の処分を発令した(以下「本件懲戒解雇処分」という。)。

二  争点

被告は、原告が前記期間中、企業秩序違反を目的とし又は計画して、<1>点呼妨害、<2>体操妨害、<3>暴言、<4>業務妨害、<5>勤務時間中の組合活動、<6>業務指示違反、<7>暴力行為を繰り返したことは、日本国有鉄道法三一条に該当する事由であり、昭和五八年五月にも同様の事由により停職四月の懲戒処分を受けていること、他の職員の懲戒免職処分の事例との比較からも相当な処分であるとして、本件懲戒解雇処分は有効であると主張する。

これに対し、原告は、懲戒免職処分の理由に該当する事実はなく、仮にあったとしても、原告の行為は、職場内に確立された慣行に基づく労働安全確保等の目的にでた権利行使であり、その事実だけで懲戒免職に付するのは懲戒権の濫用であるとしてその無効を主張している。

第三判断

一  証拠(<証拠・人証略>)によれば、以下の事実を認めることができる。

1  原告は、昭和五九年四月から同年一二月までの間、岡山保線区瀬戸支区所属の保線管理係であって、岡山県赤磐郡瀬戸町瀬戸九一番地五に所在する二階建ての右支区の庁舎(以下「支区庁舎」という。)一階の作業班詰所(以下「詰所」という。)を勤務上の詰所としていた。原告を含む一七人の保線管理係員と重機保線係八人の合計二五人は、この詰所を勤務上の詰所として使用しており、二五人の机と長椅子とが置かれていた。

友信和(以下「友信」という。)は瀬戸支区長、栗政武男(以下「栗政」という。)は計画助役、瀬尾敬吾(以下「瀬尾」という。)は作業助役のそれぞれ瀬戸支区の管理職にあり、支区庁舎の二階事務所を執務場所としていた。

2  瀬戸支区においては、休日以外の毎日、作業を開始するに当たり、点呼を行い、点呼終了後引き続いて体操をおこなっていた。始業点呼は、当日の勤務者を確認し、作業に必要な指示を与えるもので、詰所において、前記管理職の一人ないし三人が詰所の一般職員に対して行うものであり、昭和五九年九月末までは午前八時四五分から開始し、最初に起立、礼をし、着席して点呼をし、約一〇分間程度で終了していたが、同年一〇月一日からは午前八時三五分から開始し、最初に起立、礼をし、起立のまま呼名、作業指示を受け、「点呼を終わります、礼」のかけ声で礼をして終了することになった。そして、体操は、体を柔軟にして作業に順応させる状態にして運転事故、傷害事故の防止をはかるもので、点呼終了後引き続いて庁舎前の広場において、管理職、一般職の全員で約七分間行っていた。

また、同日、終業点呼も以前の午後四時三〇分から午後五時に変更され、勤務時間中の入浴も禁止された。さらに同月一五日からは戸締まりも一般職員が当番制で行うことになった。

3  原告は、昭和五九年四月五日午前八時四八分ころ、同月一一日午前八時五〇分ころ、同月一二日午前八時五〇分ころ、同月一六日八時五〇分ころ、同月二五日八時四七分ころ、同年五月四日午前八時四八分ころ、同月一七日午前八時四六分ころ、同月二二日午前八時四八分ころ、同月二六日午前八時四五分ころ、同月二八日午前八時四五分ころ、同年六月七日七時四六分ころ、同月八日午前八時四八分ころ、同月二八日午前八時五四分ころ、同年七月四日午前八時五〇分ころ、同月一七日午前八時五〇分ころ、同月二〇日午前八時四五分ころ、同月二六日午前八時四八分ころ、同月三〇日午前八時四六分ころ、同月三一日午前八時四六分ころ、同年八月二日午前八時四五分ころ、同月一七日午前八時五〇分ころ、同月二一日午前八時四六分ころ、同月二三日午前八時五〇分ころ、同年九月一一日午前八時五二分ころ、いずれも詰所において点呼中、わざと煙草に火をつけ喫煙するので、友信において直ちに止めるよう注意したが、点呼中喫煙を止めず、点呼の正常な執行を妨害した。

4  一般職員は、点呼に際しては、支区長が定めた位置の机につき、かつ安全用保護靴を着用すべきであるが、原告は、同年四月九日午前八時五四分ころ、これをせず、友信が右の指示に従うように注意を与えたところ、石原栄(以下「石原」という。)と共に友信に走り寄って一〇ないし二〇センチメートルの間近に詰めより、大声で「おい支区長、毎日毎日、安全靴をはけ、とか何とかきびしいことばかりいいやがって、ええ加減にせえ。」と怒鳴り、友信が「厳しいことじゃない、安全靴を着用して点呼を受けるのは当たり前のことです、皆そうしていますよ。」などと説得したが、これを聞かず、さらに「何じゃと、支区長がきてからあ、厳しいことばかり言いよるじゃねえか、組合の掲示を取ったり、旗を取ったり、悪いことばかりしよるがなぁ」と怒鳴り、「妨害しないで体操しなさい、靴を着用しなさい」という友信に追いすがり、怒鳴り続け、二階に上がる階段下まで追いかけてきて「反動、友信」と体操に出ようとする友信の背中に向かって怒鳴り、友信の体操を五分間妨害した上、他の職員の服務に精神上少なからぬ悪影響を与えた。

5  原告は、同月一七日午前八時五〇分ころ、詰所で点呼中、石原と共に、「作業班の雑務はどうするのだ、雑務を常時一人定めるようにせよ。」との旨の言葉を点呼中の友信に向かって大声で叫び、点呼の正常な執行を妨害した。

6  原告は、同年五月二日、午前八時四五分ころから五五分ころまでの間の点呼中に、点呼をしている友信に対し、「石原の処分はおかしい。」などと大声で叫び続け、点呼の執行を妨害し、午後五時七分ころ、石原外四名とともに支区庁舎二階の支区事務室で友信が執務中、同人の制止にもかかわらず、同室に入り込み、友信の机に石原に対する懲戒処分発令書を投げつけた上、「処分の理由は何ならあ。」などと怒鳴り、約一〇分間にわたり同室で騒ぎ立てた。

7  原告は、同九日、午前八時四五分ころ、詰所において点呼中、わざと喫煙し、友信が注意したのに取り止めなかった上、「支区長の ドロボー」、「反動支区長」などと大声叫び、点呼の執行を妨害し、午前八時五二分ころ、友信が点呼終了直後瀬戸支区庁舎前の広場において、体操を始めようとした際、石原、保線管理係員三村明彦(以下「三村」という。)、同片岡公夫(以下「片岡」という。)とともに、庁舎の詰所から一斉に走り出て、友信の顔の一〇ないし三〇センチメートルまでいづれも顔を近づけ、大声で「おい、こらぁ、支区長、班旗を返せえ」と他の三名と共に友信の耳元近くで怒鳴り続け、友信は、耳がガンガンする程であった。友信が「君達、今何の時間か知っているだろうね、体操する時間だ、君達は体操もせず、支区長を妨害もしている、私はもちろん他の良識ある多くの職員が迷惑している、直ちに囲みを解いて体操しなさい」旨言うと、さらに原告は、「旗を返せえ云よんじゃ、返すんか、返さんのか」と怒鳴り、石原が「旗はわしらの命じゃ、組合の顔じゃ、組合の顔にドロを塗るんか」と怒鳴ったので、友信が「君、今何と言った、組合云々と言ったな、今君達は組合員として行動しているんだな、現在は勤務時間だ、許されぬ行為だ」と云うと原告は、「何い、なめーきなこと言うな、このアホー」など早口でまくし立て、他の三名と共に交互にあるいは同時に同声で怒鳴り続け、「君達に警告する、直ちに囲みを解き、体操しなさい、これ以上続けると、勤務成績に反映されるだけではすまないと考える、特に赤岩、三村君はサンダル姿、石原、片岡君は運動靴姿じゃないか、仕事をする格好じゃない、再度言う、直ちに仕事につく用意をしなさい。」と言う友信や「今何時だと思っている、仕事につく用意をしなさい」という瀬尾に対し、「今日は、けえで止めたるが、返さにゃ、毎日でも言うからのう」と言って、漸く原告外三名は八時五七分ごろ、作業班詰所に入っていったが、原告ら四名の行為は、約五分間にわたって、友信の体操を妨害し、また、他の職員の服務に精神上少なからぬ悪影響を与えた。

なお、右の原告らが返せなどという班旗は、赤地に原告の所属する国鉄労働組合(国労)瀬戸支区分会という文字を白く染めた旗であって(<証拠略>)、同年三月三〇日に、瀬戸支区庁舎の材料倉庫の建物に、被告(国鉄)の承諾なく掲揚されたので、友信及び瀬尾が庁舎管理権に基づいて同日徹去したものである。

8  原告は、同月一八日午前八時四五分ごろから五二分ごろにわたって点呼中、故意に上半身裸となり、衣服を針、糸などで繕いをし、その上喫煙するので、友信支区長において注意したが、右の行為を取止めず、点呼の正常な執行を妨害した。

9  原告は、同年五月三一日午前八時五〇分ごろから九時ごろにかけて、点呼中、わざと喫煙し、友信支区長が注意しても取止めなかった上、「雨の日は仕事は無理じゃ、仕事をやめえ」と大声で叫んで点呼の正常な執行を妨害した。

10  原告は、同年六月一九日午前八時四五分ごろから、五三分ごろにかけて、詰所において点呼中故意に喫煙し、友信の注意をきかず、取り止めずに点呼の執行を妨害した上、点呼終了後、片岡とともに、「たばこを吸うなあ、わしらの勝手じゃ」などと大声を発した上、二階執務室に上ろうとする友信支区長を追いかけて来て、階段下で大声を挙げた。

11  原告は、同月二六日午前八時一〇分ごろから八時一五分ごろにかけて、詰所で、重機保線係員に対する点呼の行われている際、これとは、関係がないのに、「雨の日は仕事はできんのじゃ」などと大声を出し、右の点呼の執行を妨害した。

12  原告は、同月二九日午前八時五五分ごろ、作業班詰所において、点呼中、石原、片岡とともに「保健婦や産業医の巡視のときは、作業班におらせー」などと大声を出し、点呼の正常な執行を妨害した。

13  原告は、同年七月九日午前八時五三分ごろから九時ごろまでの間、友信が詰所において、職員一人ずつに、氏名札を手渡している際、片岡及び佐藤修己(同じく保線管理係員)とともに、同室土間に氏名札を投げ捨て、さらに片岡と二人で、手渡し作業を行なっている支区長に一〇ないし二〇センチメートルの間隔に接近し、ひつこくつきまといながら、「組合に話がねえものがつけられるか」などと大声で騒いで、友信の右作業を妨害した。

なお、右の氏名札は、職員に誇りと責任をもってその職務に当るとの意識昂揚のため、制服着用のときこれを胸にとりつけるように、昭和五八年九月二〇日より定められているもので、昭和五九年七月二日より以前にも各職員に交付したが、原告が中心となって、石原とともに各職員から氏名札をとり上げて、これを管理職に返してきたものである。

14  同月一一日午前一〇時ころ、いわゆる<善>体制(線路保守の改善合理化事業)の実施に伴う軌道工事監督標準(国鉄と軌道工事請負業者との間にとりきめた、工事の方法、その仕切りの精度などに関する基準)の説明をするため、岡山保線区の助役中桐和昭が詰所に来ており、友信が当日は安全検討会を行なう日程となっているが、先に友信において労働安全衛生について説明し、次に中桐助役より右工事監督標準の説明をする旨切出すと、原告は、石原、片岡とともに、前部に出て来て、友信、中桐助役、栗政、瀬尾に詰めより、大声で「今日、そんなものをやるようになっとらん、やめえー、中桐おめえーは本区に帰れ、今日は安全検討会をやれー」など口々にわめき、友信が労働安全衛生の話を続けようとしても原告らは外の数名とともに、騒然とし、栗政、瀬尾が静かにしなさいと再三注意したが、十分な説明をすることができずに終った。

原告は次いで、一〇時一五分ごろ、中桐助役が軌道工事監督標準要領について、資料の配布をした上、説明を始めようとした際、石原、片岡、安達広行(以下「安達」という。)、三村、山田節男(以下「山田」という。)の五名とともに、中桐助役、友信、栗政、瀬尾の座っている前部に出て来て、とり囲み、「今日は安全検討会だ、説明会は別にしろ、やめえ」と大声でわめき、軌道工事監督標準要領についての説明会業務を約一五分間妨害した。

15  原告は、同月二五日午前九時ころから九時一五分ころまでの間、友信及び瀬尾が職員に、同年四月一日付の昇給発令通知書を交付している際、同人らを三村、片岡らとともに取り囲み、ひつこくつきまとい、「三・八の理由は何ならあ」「差別昇給じゃ、撤回せよ」などと大声を出し続けた。

なお、昇給は、四号俸昇給する定めとなっているが、欠格事由あるものは、一号俸ないし四号俸の昇給をさせないもので、原告は、欠格四号、三村は欠格三号、石原および片岡はいずれも欠格二号、安達は欠格一号であった。そして、「三・八」とは、「三項八号」とも通称し、被告(国鉄)と原告の所属する国労(国鉄労働組合)との間の労働協約である「昇給の実施に関する協定」の第三項に、「昇給所要期間において別紙の昇給欠格条項に該当する場合は、その者の昇給から減ずる」と定められ、その「別紙」(略)の昇給欠格条項の八号に「勤務成績が特に良好でない者、一号俸以上減」との定めがなされていることを指すものである。

また、原告は、同日午前一〇時ころ、詰所において、友信が業務研究会を開催し、<善>の内容である軌道工事監督標準示方書の説明を始めたところ、三村、片岡、石原、安達、および保線管理係員面田とともに、「研究会の内容が気に食わない」などと大声を出して、前部の席に座って説明していた友信に一〇ないし二〇センチメートルの個所まで詰めより、取り囲んで、「業研を止めえ、皆に資料が無え」などと大声で怒鳴り、右の説明業務を一〇時二六分ごろまで妨害した。

さらに同日午前一一時五〇分ころ、友信が安達に欠格一号の昇給通知書を手渡したところ、安達は大声で「理由は何なら、欠格の覚えは無え」などと言って、友信支区長に詰寄り、これを合図とするように、原告は、片岡、石原、山田及び安達とともに、友信および瀬尾に一〇ないし二〇センチメートルの距離に詰め寄って取り囲み、「差別昇給を撤回せぇ」「友信の独断と偏見じゃ」などと大声で怒鳴り、一二時六分ごろにようやく囲みを解いたが、友信及び瀬尾が詰所を出て二階に上ろうとするや、原告らは階段下まで右両名を追いかけて、「支区長のバカヤロー、欠格号俸を返せえ」などの悪口雑言をあびせかけた。

同日午後二時三〇分ころ、安全検討会が終了した後、原告は、石原、片岡、安達とともに友信を取り囲み、「三項八号の理由を言え」「支区長のアホゥ」などと大声で騒ぎ立て、約一四分間支区長を監禁した状態を続けた。特に原告においては、友信の正面に、一〇センチメートルほどのところまで顔を近づけて大声で叫び続けた。

原告は、また、同日午後三時三〇分から四時までの間、詰所において、友信及び栗政が同年八月分の作業計画の説明を行った際、石原、片岡、山田とともに、「機械グループの夜重(重機保線係の夜間作業をいう)の回数が多すぎる、減らせ」などと大声を出しながら、前部の席で説明している友信、栗政に詰めより、一〇ないし二〇センチメートルまでも近づき、机をたたくなどの、業務妨害行為をした。

16  瀬戸支区の職員は、詰所備付けの「出務表」に毎日の出勤を示すための捺印をする定めとなっていて、その捺印を確認することによって、各日の点呼における当日の勤務者の確認が行われることとなっていたのに、原告は、何度注意を受けても、毎日の捺印をせず、毎月末ごろの二七日から三一日までの間にまとめて捺印することが同年九月末日まで続いた。そして、同月二八日午前八時五〇分ごろ、点呼終了後に友信が出務表を確認すると、同日捺印せられたと見られる七月分の原告の捺印のうちの同日分がさかさに押捺せられているので、原告に、まとめて捺印することの注意をするとともに、「赤岩君、反対に捺印している、間違いですか、今後は気をつけなさい」と注意したところ、原告は、前記片岡、三村、山田の三名とともに、前部の友信の傍にどっと走り寄ってきて、一〇ないし二〇センチメートルの個所まで詰め寄り、取り囲んで、「どねん押そうと、わしらの勝手じゃ」などと大声で怒鳴り、九時ころようやく脱出した友信を詰所の外の二階に上る階段下まで追いかけて、「支区長のアホウ」、「バカヤロウ」等の暴言を吐いて結局約一〇分間にわたって、友信の業務を妨害した。

17  瀬戸支区においては、毎月二五日までに翌月の年休請求の、毎週木曜日までに次週の年休請求の、各申出をさせて、これによって、各月、各週の作業計画を樹てているところ、同年八月六日、山田が突発年休請求をして欠務したので、友信が、午前八時四五分ごろ、点呼中に、突発年休請求をして欠務することを自粛するよう、必要があって休務するときはその理由を正しく申出るよう、訓示したところ、原告は、前記の片岡、石原とともに、「年休は自由年休じゃ、なんで管理者に言う必要があるんなら」などと大声を出し、九時ごろ点呼の終るまで同様のことを言って騒ぎ立て、点呼の正常な執行を妨害した。

18  原告は、同月八日午前八時五五分ころ、詰所において、点呼の終了直前に、質問と称し、大声で「年休は自由じゃ、管理者に言わんでええ、何で理由を言わにゃおえんのか」と言ったので、友信が、「週間計画確定後の年休申込は業務に支障を生ずる、特に、当日の朝に申込む突発は支障を生ずること議論の余地がない」と説明して、点呼を打切ったところ、片岡、石原とともに、前部の席の支区長の傍に詰め寄り、一〇センチないし二〇センチメートルの処に近づき、大声で「休むとき何んで理由を言わにゃならんのなら、アホウ」「このバカ、アホウ」など暴言をはき、約五分間にわたって業務を妨害した。

19  友信は、同月九日午前八時四五分から点呼を始め、<1>八月一〇日のストを自粛するよう、次いで、<2>支区庁舎前の山陽本線(上り)線路上に、西瓜の皮を二、三枚投げ捨てた職員がいるようだ、このことは、線路を保守する者として最低のマナーだ、直ちに片付けなさい、という旨の訓示をしたところ、その点呼の訓示中、すでに、原告は、三村、片岡、石原とともに、「何なら、その言い方は」、「ストと西瓜の皮と何故一緒に言うんなら」などと騒ぎ、八時五三分ごろ友信が点呼を打切ると同時に、原告らは、わっと友信に走り寄り、一〇ないし二〇センチメートルのところまで詰め寄った上、原告は、三村とともに、大声で怒鳴りながら、友信の正面に立ち、「西瓜を捨てたんがどうした、わしらがしたのを見たんか」、「西瓜の皮が何じゃ、点呼で言わんでもええがな」などと言って、午前九時ころまで友信に対する囲みを解かず、体操を妨害した。

20  原告は、同月一七日午後四時三五分ころの終業時刻前に、詰所で「来るな、全斗煥」という文言のある組合機関紙の原稿のようなものを書いていたので、友信が勤務時間中(一七時〇五分まで)であるので組合活動はしないように注意したところ、「わしらの自由な時間じゃ、ほっとけえ」などと大声を出し、片岡、山田とともに友信を取り囲み、午後四時五〇分までの約一五分間にわたって、その身体の自由を拘束し、監禁したと同様の状態に置き、その間罵り、暴言、雑言をあびせ続け、また友信の勤務執行を不能とした。

21  原告は、同月二〇日午前八時四五分ころから五五分ころまでの間、詰所において、点呼中、「支区長は、軌道工事監督標準(前記の七月一一日に中桐助役の説明したもの)の説明を十分にしとらん、もう一度説明せよ」などと大声を出し、点呼の正常な執行を妨害した。

22  原告は、同月二二日午前八時五〇分ころ、詰所において点呼中、わざと喫煙したので瀬尾が注意すると、「煙草を吸ようらにゃ質問できんのじゃ、おめえは黙っとけ」などと暴言を吐き、かつ点呼の正常な執行を妨害した。

23  原告は、同月二九日午前八時四五分ころ、詰所において点呼中、「産業医が来たのをわしらにゃ言わなんだ」と大声を出し続け、約一〇分間にわたって、点呼の正常な執行を妨害した。

また、原告は、同日午後一時ころから詰所において、翌月の九月分の月間作業計画の説明会が行われた際、栗政が、その説明に入ると、三村、片岡、山田の三名とともに、「一―一―五は、わしらの仕事じゃねえ、協定違反じゃ」などと大声を出し始め、わっと友信、栗政の席に詰め寄って、大声で同様なことを怒鳴り続けた。

友信及び栗政は、「一―一―五は作業グループの任務にちゃんとあるし、協定違反ではない、説明会の妨害をするな」と、何回も警告したが、効果なく、原告らは、約一時間にわたって説明を妨害し、栗政が作業計画内容を読上げて終了したが、説明は十分な効果を上げなかった。

なお、「一―一―五」というのは、作業についての電算符号で通称「総搗き固め」という作業を指すものである。

この作業は、原告ら保線管理係員(作業グループという)により、各枕木の下にバラス(礫)をタイタンパー(搗き固め機)を使い、その震動によって詰め込む手作業に近い作業であるが、昭和五六年より、大型の「ブラツサーマルタイ」という機械が導入され、瀬戸支区にも一台備えられ、これを、重機保線係員が使用し、同じ作業を、効率を著しく高めて行なうことができるようになったので、この作業方法を主体とするものであるが、橋の前後などの右の大型機械を使用することができないかないしは適当でない個所がある場合の作業は、以前と同じく保線管理係員において施行する旨、労働組合との間の協定で定められているものである。

24  原告は、同月三〇日午前八時五〇分ころ、詰所において、点呼中、わざと喫煙し、支区長の注意にかかわらず取止めず、また、前日と同じく「一―一―五は作業グループ(原告ら保線管理係員)の仕事じゃねえ」などと大声を出し、点呼の正常な執行を妨害した。

25  原告は、同月三一日午前八時四五分ごろ、作業班詰所において、点呼中、わざと喫煙し、その上、「昨日も言うたが、支区長は作業グループをばかにしている。」と大声を出し、点呼の正常な執行を妨害した。

26  原告は、同年九月四日午前八時四五ごろから八時五六分ごろまでの間、詰所において、点呼の行われている間中、わざと喫煙した上、「一―一―五の作業は協定、協約違反じゃ」などと騒がしい声を発し続けたので、瀬尾が注意したが取り止めず、点呼の正常な執行を妨害した。

27  原告は、同月六日午前八時四五分ごろ、この日は、友信及び栗政がともに鉄道学園に入所していたため、瀬尾が単独で、作業班詰所において、点呼を始め、当日の列車運転状況及び作業指示を終了した後、同月一二日に予定した安全検討会はライニング(線路を直線に保つための機械)講習会のため、一九日に変更する旨、告げたところ、煙草を吸いながら、石原とともに、前部の瀬尾助役の席に走り寄り、四〇ないし五〇センチメートルの所に詰め寄った上、大声で、「なんで変更するんなあ、どうしてなら、きちっと理由を言え」などとわめき、瀬尾が「赤岩君、タバコをやめなさい、危いじゃないですか」、「あんた達その態度は何ですか、まだ点呼中ですよ」、「ほんとうに静かにしないと点呼妨害だけではすみませんよ」と制止、注意したが、さらに、「点呼中がどうしたん」などと言って、騒ぎを止めず、その上、瀬尾が、当日の点呼で職員に対して、私服で列車に乗降する場合は必ず改札口より出入し、これと異った個所より乗降をしないように、との瀬戸駅長から要請された注意を、原告と石原が正面に立っているため、背延びをして、二人に構わないようにして、他の職員に伝えたところ、「職員通路のに何で悪いんなら」などとひつこくくいさがり、瀬尾助役において「職員通路であっても、私服を着てホームから出入りすることはお客様から見て非常に感じが悪いからやめて欲しいと言っておられるのです」「赤岩君も石原君も早く自分の席に戻りなさい、聞けないんですか」と注意しても、「駅の誰が言うとんなら、と聞きようるんじゃ、それを早く言え」などと大声を出し続け、点呼を約六分間遅延させるとともに、保線管理係員の作業への出発を約一〇分遅れさせた。

28  原告は、同月一二日午前一一時五〇分ころ、詰所において、「裁判に結集しよう」という文言のある国労岡山施設分会の文書の原稿を書いていたところ偶々友信がこれを見つけ、勤務時間中であるから取り止めるよう注意したが、原告は取り止めなかった。

29  原告は、同月一九日午前八時四五分ごろから八時五五分ごろまでの間、詰所において、点呼中、「安全検討会のあった日の昼から、マルタイ(前掲の大型機械)の回送作業を計画したのはけしからん、やめろ」などと大声を出し続け騒いで、点呼の正常な執行を妨害した。

30  原告は、同月二〇日午前八時五〇分ごろから九時ごろまでの間、瀬戸支区庁舎前広場において、石原、片岡、三村とともに、体操中の友信をとり囲み、三人だけでの作業指示を止めて、八人共同で作業をさせろ、との意味で「機械グループ(重機保線係員)三人だけの仕事はあるまあが」など大声を出し、支区長の体操を妨害した。

31  原告は、同月二一日午前八時五三分ないし八時五八分ごろまでの間、詰所において、片岡、石原とともに、点呼終了後、(このような事実はないのに)「ダニがいて衛生状態が悪い」などと大声を出して騒ぎ立て、他の職員の体操の正常な施行を妨害した。

32  同月二七日午前八時五五分ころ、詰所において、友信が三村に対し、同人の机上に大きな赤い石炭箱のような箱を置いていることについて、勤務する詰所にふさわしくなく、勤務意欲を阻害するものであるので、「その箱は風紀上よくないし、業務に支障する、自主的に撤去しなさい、三回注意するから、それまでに撤去しないと私が保管する」旨注意を与えたところ、三村が大声、怒声を発して騒ぎ始め、友信が体操に向うため同室を出たところを原告は、三村、片岡とともに追いかけてきて、二階に上る階段下付近で友信を取り囲み、一〇ないし二〇センチメートルの近くに詰めより、三村が「何でそんなことを言うんなら、私物じゃ、赤い物がおえん理由を言え」、「もし取ったりしたらおめえの机をメチャメチャにしてやる」と怒鳴って腹部を支区長に押しつけているのに共同して、原告は友信の左側、片岡は右側にいて、三村と同様の大声を発し、ことに原告は「友信のアホ、バカ、死ね」などの発言をくり返し、友信や瀬尾らが制止しても、約一〇分間右の状態を続け、体操を妨害した上友信に多大の恐怖感を与えた。

33  原告は、同年一〇月一日午後四時三〇分ころ、勤務時間中に入浴するものがいないかどうか見るため支区庁舎一階の浴室前に来た友信及び栗政を、片岡、三村及び山田とともに取り囲み、大声で「わしらあ、風呂に入るんじゃ、そこをどけ」などと叫び、「君達、静かにしなさい、先日説明したとおり、今日から時間内入浴は許さない、上司からの命令だ、君達は現在の厳しい国鉄情勢を考えてみなさい、甘えている時ではない」と言う友信に対し、原告はなおも、「手や足を洗わせえ」と叫び続け、「手足を洗うなら、そこの洗面所で洗いなさい、風呂に入らなくてもよい」と言った友信らの前後に、顔を付け合せるほどに接近し、取り囲んで、騒ぎ続け、友信と栗政を取り囲み炊事場から出ることができないようにして二人を完全に監禁した状態に置いた。その状況は約二〇分間も継続した。

34  原告は、同月三日午前八時三五分、点呼の開始にあたり、平尾恒保線管理長が「起立」、「礼」と声をかけたが起立せず、点呼に当る瀬尾が「服装の整正」をしなさいと指示したところ、逆にわざわざシャツ、パンツ姿となって着替えを始め、しかもわざとたばこを吸いはじめ友信が取止めるよう注意しても止めず、さらに瀬尾が「呼名」を開始したのに、呼名に応じなかった上、友信が、一〇月一日以降、作業終了後庁舎の「戸締り」をしない職員がいる、これは重大な業務指示違反で業務放棄である、一六時三〇分からすみやかに実施すること、との指示をすると、山田と二人で、「なにー、支区長、わしらにゃ、そんな仕事はあるまーが」などと騒ぎはじめ、栗政が、時計の整正、ダイヤ照合をし、瀬尾が当日の作業の概略の指示をし、平尾保線管理長が当日の作業責任者の指定などをし、金田俊夫保線副管理長がさらに作業の具体的指示をし、松田厳重機保線長が重機保線係員に作業指示をし、さらに瀬尾の音頭で安全唱和をしている間、山田、片岡、三村、石原、とともに、騒ぎ続けて、右の点呼の執行を妨害した。

35  原告は、同月四日午前八時三五分始業点呼開始とともにシャツ、パンツ姿となり、たばこを吸いながら着替え始めるので、友信が注意すると「着替える時間が無えんじゃねえか」と大声でわめき、瀬尾が呼名をしても原告は返事をせず、午前八時四二分、瀬尾の音頭による安全唱和の終了後、質問の形をとって「助役が列車を止めた、説明をせえ」などとわあわあ言い始めた。そして、友信が「そうした問題は安全検討会の問題だ、本日の点呼に関係がない」と言い、また原告が安全靴を着用していないことにつき注意した後、保線管理職員の前記三村明彦の傍らに行き、「以前から警告しているように<1>机の上の赤い大きな箱は取り去りなさい、点呼、業務に支障する、<2>組合バッヂやワッペンを外しなさい、それは職務規程違反だし、勤務時間中の組合活動になる」旨注意したところ、原告は、三村、石原と三人で友信を取り囲み、大声の怒声を発し始め、同人が、詰所の外に出て、階段前部の体操をする場所に歩いて出てきたところを、三人で再び取り囲み、「支区長、おい友信、わしらのことよりも瀬尾の列車を止めたことはどうなんなら」などと、ツッカケ姿で、原告は友信の正面に、右側は三村、左側は石原が、顔のすぐ側に寄って来て大声でわめき続け、友信が「君達、勤務時間中は職員だ、この様な妨害行為をして恥かしいと思わぬのか、囲みを解いて体操をしなさい」などと言ったが、八時五一分ごろ体操が終るまで同人を取り囲んで体操を妨害した。

36  原告は、同月五日午前八時三五分、点呼が始まり瀬尾が服装の整正の指示したが、シャツ、パンツ姿で、頭に黄色のタオルでねじり鉢巻をし、足もとは裸足につっかけをはき、喫煙をし続け、瀬尾助役が「赤岩くんの服装は何ですか、仕事のできる服装になってない、早くしなさい」と指示したのに対し、「あんたらのやることは何なら、着替える時間がどこにありゃ」と大声を出し、瀬尾助役が「静かに」「静かにしないと点呼妨害ですよ」と注意してもなお「何が静かにせえなら、あんたらの言う通りになると思いよるんか」などと言って片岡とともにわいわいと騒ぎたて、呼名点呼が開始されると、「なんであんたらに敬称略で呼ばれるんなら」などと騒ぎ立てた。

37  原告は、同月八日午前八時三五分、点呼中に瀬尾が服装の整正を指示したところ、片岡とともにシャツ、パンツ姿になり作業服への着替えを始めたので、同日の点呼に立会った岡山保線区長小山弘男(以下「小山」という。)が「赤岩、片岡の両君、いまごろになって着替えちゃだめじゃないか、もっと職員として自覚を持ちなさい」と言うと、三村とともに「区長、何なら」「着替える時間がねえんじゃがなあ」などと大声で騒いだ。そして、八時四七分ごろ、小山が友信とともに、詰所の後部座席に行き、原告に対して、服装などについての注意をしようとすると、原告は、片岡、石原とともに小山を囲み大声の怒声で、作業服への着替えの時間に関する抗議の暴言を吐き続け、友信が「妨害です、囲みを解きなさい」と数回も注意したが、「おめえにゃ、関係ねえ」などと暴言を吐いた。

38  原告は、同月九日午前八時三五分、点呼開始の直後、片岡とともにシャツ、パンツ姿になり着替えを始め、友信が点呼時の起立、呼名に対する返事、および服装の指示は定められたとおり実施するよう、また突発年休が本日一件あり、これは職員としてあるまじき行為である、各自の自覚を求める旨の指示をしたところ、「何い、支区長ならようて、わしらならおえんのか。」と大声を出して点呼を妨害した。

また、原告は、同日午前八時四二分、点呼終了後、当日点呼に立会っていた岡山保線区の企画担当助役である難波保(以下「難波」という。)が友信とともに詰所後部座席付近に近づき、点呼に際しては立席し、安全靴を着用するよう注意し、三村に対し、机の上の赤色の箱を撤去するよう求めたところ、三村、片岡とともに難波を取り囲み、その耳もとで「バカ野郎、アホウ、独断、偏見」などという言葉を大声で発し続けて騒ぎ立て、友信の強い制止にもかかわらず、体操は全くできず、約八分間にわたって業務妨害を続けた。

39  原告は、同月一二日午前八時三五分、点呼中に瀬尾が服装の整正をしなさいと注意すると、片岡とともに、シャツ、パンツ姿になり、作業服に着替え始め、当日の点呼に立会っていた岡山鉄道管理局の労働課長佐野博久が「君達は何をしているんだね、点呼が始まってから、私達の前で着替えるとは何事だ、時間までにきちっとしなくてはだめだ」と注意すると、「なにー、おめえ何者なら、点呼が早うなって着替える時間が無うなったんじゃが、この時間に着替えるようになろうが」と大声を出し、佐野労働課長の前に迫って行き、片岡、三村、石原とともに佐野課長に向って騒ぎ立て、友信が「赤岩、片岡、三村、石原君達の行為は点呼妨害だけでなく、労長(労働課長の通称)に対する職務妨害です、静かにしなさい」と注意したが、瀬尾が呼名し、栗政が時計、ダイヤの照合をし、瀬尾らが作業指示を行っている間も、労働課長を取り囲んで騒ぎを続けた。

さらに、原告は、八時四三分点呼終了後、同じくこの日の点呼に立会していた岡山鉄道管理局の内田雅夫保線課長、岡山保線区長小山が、詰所後部に行き、原告及び片岡に関する注意を与えようとせ(ママ)ると、片岡、石原とともに注意に耳を傾けるどころか、反対に右の二人をも取り囲んで大声を発し続け、その職務の妨害をした。

40  原告は、同月一五日午前八時三五分点呼中、瀬尾が「服装の整正をしなさい」と注意すると、片岡とともにパンツ姿となり作業服に着替え始めた。そして、友信が一〇月一二日夕方の点呼でも指示したように本日一五日から、黒板に指示した順番で、戸締りを実施すること、原告、片岡らは点呼前に着替えをきちんとし、点呼中たばこを吸うのをやめるよう指示をしたところ、原告は、片岡、三村とともに中心になって、大声を出し始め、友信が「静かにしなさい、業務妨害である」と注意し、栗政が時計、列車ダイヤの照合をし、瀬尾らが作業指示をする間も、片岡、石原、三村らとともに騒ぎ続け、さらに八時四三分に安全唱和の上点呼を終った後に友信を取り囲み、約五分にわたって友信の業務を妨害した。

41  原告は、同月一六日午前八時三五分、点呼中、片岡とともにパンツ姿となり、作業服への着替えを始め、瀬尾の呼名に対して「おまえらに呼名で呼ばれることはない。」と言い放ち、当日立会していた難波が作業指示の終了後に、提案推進月間であること、並びに運転事故防止運動期間中であることについての訓示した上、「点呼はきめられたとおりきちっとやりなさい、瀬戸支区の実態は悪い、特に赤岩、片岡君、点呼に入ってから着替えるとは何事だ、反省しなさい」と注意したところ、片岡とともに、難波、友信の前に走り寄って来て、大声で、「わしらの名前を名指しで呼びやーがったな、あやまれ、撤回しろ」などと騒ぎ友信が「後ろに下りなさい、静かにしなさい、点呼妨害です」と注意したにもかかわらず、八時四五分に点呼終了後も、原告は、片岡、三村、山田とともに難波を取り囲み、わあわあ、ぎゃーぎゃーと大声、怒声を浴びせ、八時五二分ごろまで続けて業務を妨害した。

さらに、原告は、同日午後四時五八分に終業点呼の際、栗政が「連絡事項」を述べようとすると、「連絡事項なんかどうでもええ、着替えて帰る時間がない」と言い、瀬尾が翌日の作業指示を行なった上、戸締り当番は戸締りをするようにと言うと、(戸締り当番による戸締を実施するよう注意した最初である)、「忙しいのに出来るか」と言い、その都度、片岡、三村とともにわいわいと騒がしい声を出し点呼を妨害した。

42  原告は、同月一七日午前八時三五分、点呼中、瀬尾が「服装の整正をしなさい」と言うと同時に、片岡とともにパンツ姿になり作業服への着替えを始めたので、友信が「赤岩、片岡の両君は、わざと着替えを作業班詰所の中で点呼中に行っている、妨害行為です」と注意すると、「助役が服装の整正言うたじゃねえか、どこが悪いんなら。」と反抗し、続いて、八時三七分に、友信が「昨日指示された戸締り業務を拒否し実施しなかった者がいる、指示違反であるので、しかるべき処置をとる、良識ある職員はこの趣旨を十分わかってほしい」と注意したところ、山田、片岡、三村、石原とともに、大声で「何い、支区長、指示であろうが命令であろうが、わしらあせんのじゃ、勝手にどうでもすりゃええがな」などと騒ぎ始め、その後に栗政が時計と列車ダイヤの照合をし、瀬尾らが作業指示を行い、さらに安全唱和をする間も、騒ぎを続けた。しかも、点呼が八時四四分に終了した後、石原において、友信支区長に対し、「昨日、学園でワッペンに不当介入したろうがあ」と言い出し、友信が「関係ないことだ、君もワッペン取りなさい、勤務時間中の組合活動だよ」と言うと、原告は、石原、三村とともに友信を囲んで、さらに大声で騒ぎ、八時五〇分ごろまで、この状態を続けた。

同日午後四時四一分ころ、友信が栗政、瀬尾とともに階下に降り、当日の戸締り当番の職員である原告と片岡、石原、三村に対し、業務として戸締りを実施するよう指示しようとしたところ、原告は、室外のベランダの長いすで、インスタントラーメンを食べており、瀬尾が「赤岩君、こんな所で何ですか」と注意するとともに、「君は今日は戸締りの当番ですよ」と注意しても、「何を言ようるんなら、わしゃーそばを食べとんじゃ」と返事した。そして、原告は、片岡、石原とともに詰所の線路側出口付近で友信と栗政を取り囲み、大声で、「支区長、おい、戸締りよりも、さっきの言い方や態度は何なら、わしが呼んでも下に降りなんだじゃねえか、あやまれ、人間じゃねえ、便所がつまっとったから呼んだんじゃ」などとわあわあぎゃーぎゃーと騒ぎ業務を妨害した。

さらに同日午後五時四分ころの点呼終了と同時に、原告は、片岡、石原、山田、三村とともに、友信、栗政、瀬尾を取り囲んで、口々に、「点呼が遅え、早うせえ、鍵がかかっとんなら外の入口から早う入れ」など大声を出し騒いだが、他の職員が帰宅し始め、自然に囲みも解かれたものの、庁舎および車庫の戸締りは放置されていたので、三人の管理職において右戸締を行なった。

43  原告は、同月一八日午前八時三五分、点呼中、瀬尾が「服装の整正をしなさい」と言うと、片岡とともにパンツ姿になり、作業服に着替え始め、瀬尾が呼名を開始すると、山田とともに「居るんじゃから、わかろうがー」などと言い、午前八時四三分ごろ、点呼終了の直前にたばこを吸いながら、友信に向かい、「支区長、昨日の便所の件はどうなんなら、言うてみい」とつっかかった上、さらに、友信が原告に点呼開始とともに着替えをしたこととたばこを吸ったこと、つっかけ姿でいたことについての注意をし、他の職員にもそれぞれ注意を与えたところ、点呼終了後に、石原、三村とともに友信支区長の側に来てわあわあぎゃーぎゃーと大声で罵り騒ぎ立てた。

44  原告は、同月一九日午前八時三五分、点呼中、瀬尾が服装の整正を指示すると、パンツ姿になって作業服への着替えを始め、瀬尾が呼名を始めると、「おまえらに呼名で呼ばれる理由はない。」などと大声を出して点呼を妨害した。

45  原告は、同月二〇日午前八時三五分始業点呼開始されると、シャツ、パンツ姿となり、長椅子の上で作業服への着替えを始め、瀬尾が服装の整正を言った上で呼名を始めると、「呼名されるわけはない」と大声を出し、たばこを吸い始めた。その後、栗政が、時計と作業ダイヤの照合の上、「本日も前日の列車事故により、運転休止の列車が多い、また列車によっては二分ないし四分程度の遅れが予想される、注意して下さい」と指示したところ、原告は、「列車の遅れがあっても作業させるんか、人を何と思っとんなら」と大声を出し、さらに点呼後体操に入ろうとしたのに、重ねて「計画、(栗政助役が計画助役であるので、栗政助役に対する呼びかけである)列車が遅れとるのに仕事をさせるんか」と大声を上げて、前に出て、片岡、三村、石原とともに栗政を取り囲み、「仕事はせんと言わんが列車の遅れのあるときはあぶねーから注意だけではだめだ、人間は注意ばかりしていることはできない」などと大声を出し、片岡において「作業を考え直せ」など発言して騒ぎ、瀬尾が「作業のできない遅れではない、作業につきなさい」、栗政が「現場見張りも十分につけてあるし作業はできる。出発の時間もある、早く作業につきなさい」と説いて、ようやく作業に出発したが、それは通常より六分ないし八分遅れた出発となった。

46  原告は、同月二二日午前八時三五分点呼中、瀬尾が服装の整正をしなさいと指示すると、たばこを吸いながらパンツ姿になり作業服への着替えを始めた。そして、友信が「西明石における一〇月一九日の事故(特急寝台列車の脱線、顛覆事故で、多数の負傷者を出したもの)の結果、国鉄に対する批判が急速に高まった、我々はこの時期にやらねばならぬことはやる。きめられたことは確実に実行することだ、一〇月一日の点呼改正以来、起立しない人、呼名の返事をしない人がいるが、各自反省しなさい」と指示したところ、三村が「何い、支区長、えらそうなことを言うなー」と言うと、原告は、片岡、石原とともに、これに同調して騒ぎ、大声を出した。

47  原告は、同月二三日午前八時三五分始業点呼中、瀬尾が「服装の整正をしなさい」と指示すると、パンツ姿になり、詰所の後部の更衣室に入って行き、栗政による時計の照合の指示の始まるころに、上着を着ながら帰って来た上、点呼終了前の安全唱和の際、三村とともに、唱和のリズムに合せて、「瀬尾助役、列車を止めて、マルにする」と唱え点呼を妨害した。

48  原告は、同月二四日午前八時三五分始業点呼中、栗政が「服装の整正をしなさい」と指示すると、たばこを吸いながらパンツ姿になり、作業服への着替えを始め、友信が呼名を開始すると、石原、片岡、三村とともに、「呼び捨てにするなあ」などと騒ぎ、点呼終了前の八時四二分ごろの安全唱和の際、原告は三村とともに唱和のリズムに合せて、「瀬尾助役列車を止めてマルにする」と唱え点呼を妨害した。

同日午後四時五〇分、友信が栗政とともに、階下の器具材料倉庫、車庫などが開け放しで戸締りがされていないことを確認したので、詰所に入り、同日の戸締り当番の石原、片岡、三村、原告の四人に次々に個別的に戸締りをするよう指示したが、原告は、他に電話をかけていて、返事をせず、友信の戸締りの指示を無視する態度を見せた。

そこで、一七時の終業点呼で、友信が黒板に張ってある当番表にもとづき戸締りを実施すること、一七時の点呼は制服で行い、着替えはその後ですることを指示したところ、点呼終了後、原告は、石原、片岡、三村、山田とともに友信を取り囲み、「指示内容が反動だ」などと大声を出したが、一七時五分終業ベルが鳴り自然に散会したものの、戸締りは、栗政が当日終業点呼に立会した岡山保線区の難波とともに実施した。

49  原告は、同月二五日午前八時三五分始業点呼中、瀬尾が「服装の整正をしなさい」と指示すると、片岡とともに、更衣室に入って制服をもって出て来て、詰所の中央部の長椅子の上でパンツ姿になり、着替え始めた。友信が指示として、「毎日言っているように着替えは始業時までに行うこと、八時三五分の点呼開始時には服装整理をしておくこと、赤岩、片岡の両君は、点呼開始後皆の前で着替えを行っている、妨害行為である」と告げると、原告は、たばこを吸い、ズボンを着用しながら、「何い、外に言うこたあねえんかあ」と大声を出した。

さらに、点呼終了後、原告は、はだしで椅子の上であぐらを組み、針で縫い物をし、友信が「赤岩君、安全靴も着用せず、あぐらを組んで体操すべき時間に縫い物をしている、重傷だね、確認する、体操しなさい」と注意すると、原告は、「好きなことを言いようらー」と応じた。

50  原告は、同月三〇日午前八時五分、早出の点呼中、パンツ姿となって、詰所の前部の方に出て来て、出務表に捺印しようとするので、友信が「赤岩君、何ですか、その姿は、恥かしいと思わぬのか、早く着替えなさい、点呼妨害です」と注意すると、原告は、「捺印するところが判らなんだんじゃあ、ハハハ……」と笑って言い返し、瀬尾も他の二人の職員に比して原告の態度が見苦しいので「早く着替えて指示を聞きなさい、今何の時間だと思っているのだ」と注意をすると、原告は、着替えながら「何を言うとんなら、服を着替える時間がねえんだ、ここでも聞こえとるからええ」などと大声で言い、八時一一分点呼終了後、「計画、わしら今日の作業でレールを何本選ぶか判りゃせん、指示不足じゃ」というので、栗政が「何を聞いとるんです、点呼で指示している、責任者の指示に従いなさい」と注意した。

51  原告は、同月三一日午前八時三五分点呼中、友信が指示、連絡事項として、「職員の申出による休職について」の外に、出務表の捺印は八時三〇分までにすること、八時三〇分になると出務表を引上げる旨述べると、片岡とともに後者の指示に関して騒いで点呼を妨害した。

その上、点呼終了後、友信と瀬尾が点呼妨害、服装未整正についての注意のため詰所後部に行き、瀬尾が「赤岩君、片岡君、何ですか、点呼中パンツ姿になって着替えをするし、点呼妨害するし、また、君らの足は何だ、裸足につっかけじゃないか、厳重に注意し確認する。」と注意を与えると、原告は、瀬尾の顔の五ないし一〇センチメートルのところまで自分の顔を近づけ、ぎゃーぎゃー叫び立て、三村、片岡は友信の前に立ち塞がりわあわあと叫び、八時五〇分までの約六分間この状態を続け、体操もせず、友信、瀬尾の業務の妨害をした。

この日の戸締り当番は、原告と片岡、三村、石原との四名が指定され、詰所の黒板にその旨掲示されていたが、午後四時四五分、友信が戸締り確認のため階下に降りると、車庫、倉庫などが戸締りされないまま開放されていたので、右四名に再度指示するため、妹尾とともに、詰所に入ったところ、原告は、詰所内で、ヘアードライアーを使い頭を整えていたので、友信は「赤岩君、戸締りをしなさい、指示します、ヘアードライアーなど使う時間ではない、やるべきことはきちんとしなさい」と指示、注意すると、原告は、十数秒間無言で頭にヘアードライアーを当て続けていたが、突然に、大声で、「邪魔するなあ、ここの窓は閉まっとるじゃあねえかあ、わしの所はしとるー」と叫んだ。友信は「作業班詰所の窓は寒いから朝から閉まっている、私が指示しているのは、車庫、倉庫だ、指示に従う意思がないんだな、確認する」と言うと、原告はなおも騒いで結局戸締りをしなかった。

52  原告は、同年一一月一日午前八時三五分ころ点呼中、パンツ姿になり作業服に着替え始めた上、八時三九分ころ、「今日の作業に岡山へ器具更換に行くとか、材料の選別だとかと言っているが、週間計画に書いとらんじゃねえかあ」などと大声で言い始めたので、友信が「週間計画に明示してあるし、細かいことは作業責任者の指示によって実施する、これ以上騒ぐと、業務妨害である、静かにしなさい、点呼中です」と注意しても、たばこを吸いつつ大きい声で騒ぎ続けた。

次に八時四一分ごろから、当日の点呼に立会っていた難波が西明石の飲酒事故について、広島局の殉職事故について、一〇月一日の点呼改正についての訓示の外、原告が点呼中わあわあ騒ぐのはよくない、反省せよ、と注意したが、この間も、原告は、三村、片岡、石原とともにぶつぶつわあわあと騒いでいた上、栗政が「点呼中です、人の話は静かに聞きなさい」と注意しても、「いや、点呼中じゃねえ」などとわあわあ言って点呼を妨害した。

さらに点呼が終わると、原告は、山田、片岡、三村、石原とともに、管理職四人のいる詰所前部に飛ぶようにして集まり、管理職を取り囲んで騒ぎ始め、友信が「君達、体操する時間だ、囲みを解いて体操しなさい、業務妨害で確認します、特に赤岩君はつっかけ姿、片岡君は運動靴、三村君もつっかけ、ともに仕事をする格好じゃないね、何事だと思っているんだ」と注意すると、「なんだとお、ぎゃーぎゃー、話をそらすな、わあわあ」と他の三人とともに叫び、ことに原告は、この際は、友信の顔の数センチメートル前まで口を近づけ、大声でわめいて業務を妨害した。

53  同月六日午前八時三二分、瀬尾が詰所で、出務表を調べたところ、片岡公夫だけの捺印がないので、「出務表の捺印をしてない方があるが、時間が過ぎているので引揚げますよ、片岡君、片岡君、(詰所奥のロッカー室をのぞいて)、片岡君」と三回呼んでも、応答がなかったため、出務表を持とうとすると、原告は、「なんで八時三〇分になったら引揚げにゃいけんのなら、今までは点呼が終わるまで置いとったじゃねえか、なんでなら、言うてみい」と、瀬尾の正面に近づいて大声をだし、瀬尾が「何回も同じことを言うもんじゃない、そこをどきなさい、ツバが散る」と注意すると、原告は「押して(捺印のこと)ねえのを知っていてなんで持って上るんなら」などと耳元で大声をだし、瀬尾が「だから片岡君をさがして廻ったじゃないか、それから、赤岩君、君の服装は何だね、ジャンパーにジーパンじゃないか、今何時だと思っているんだ」と重ねて注意しても、原告は「あんたらあ、そがあなことしか知らんのか、印を押したり、服を着替えたりするのは仕事が始ってからでええんじゃ、八時三〇分までは自分の時間じゃ」と言い返した。そして、八時三五分から点呼が行われたが、点呼の間中、原告は、自分の作業服を持って作業班詰所内を歩き廻っていた。点呼終了後、友信、栗政、瀬尾は、原告と三村、片岡、山田のいる所に行き、瀬尾が原告に「赤岩君、そんな格好で点呼中歩き廻るのは点呼妨害だよ、注意して置く」というと、原告は、「あんたにゃ、関係ない」と返答し、瀬尾が「聞く意思は全くないんだなあ」と言うと、原告は「あんたにゃ関係ない」とくり返した。

54  原告は、同月七日午前八時三五分点呼中、わざと喫煙し、友信の注意にかかわらずとり止めようとしなかったが、点呼終了直前に、重機保線係の松浦善郎から、「支区長、作日適任証のない技術係に大型の運転やクレーンの操作をさせたのは問題じゃろが」と言ったのに対し、友信が「支区長の責任で指示することもありうる、適任証はなくとも資格や免許はもっている人だ、問題ない」と答えたことから、八時四三分点呼終了直後、右の松浦、石原、片岡、三村、山田とともに、わっと友信、栗政、瀬尾を取り囲んで騒ぎ出し、「違反じゃねえかー、団交に出すぞお」と大声を出し、瀬尾が「静かにしなさい、妨害はやめなさい」と言うと、「何い、おめえは黙っとれ」などと叫んだ。

なおこの際、友信が原告らに対し、「ワッペンをとりなさい、体操をしなさい、安全靴を着用しなさい」とくり返し注意したが、原告らは、従わなかった。

55  原告は、同月一二日点呼が始まって四分たった午前八時三九分、パンツ姿で更衣室から出てきて、作業服への着替えを始め、点呼を始め、点呼を妨害した。

56  原告は、同月二九日午前七時五六分、栗政に電話し、「今日年休をとる」と申込みをしたが、栗政が「今日の仕事は信号係立会のもとで、万富構内四一イ号分岐器のむら、通り直しです、君がいなかったら困る、年休は他の日に振りかえて取りなさい」と時季変更権の行使をしたのに、「用事があるから休むんじゃ、認めえ」と言い、栗政が「認めないと言っていない、今日の業務に支障するので、他の日に取って下さい、八時三〇分までに出勤しなさい」と指示したが、原告は、「八時三〇分までに間にあわん、年休を認めえ」などと言い、友信が電話を替わって切るまで騒いだため、重機保線係の早出組(五人)の点呼が八時五分開始予定であったが、約六分遅れ、八時一一分開始となった。

同日午前八時四九分、友信が点呼終了後、支区庁舎前で体操をしていると、八時四九分瀬戸駅着の電車で赤ジャンバーに紺色ズボンの原告がホームに下り、支区庁舎前に歩いて来て、顔をひきつらせながら、友信の五〇センチメートルほど前に立ち、大声で「おい、支区長、何で年休を認めんのじゃ」と言い、友信が「今日の仕事は君が必要なのだ、服を着替えて仕事につきなさい、皆君を待っている」と答えると、原告は、「わしが年休を申込んだ事実と拒否したことを認めえ」と迫り、友信が「拒否でなく、時季の変更だ」と答えると、原告は「何だとお、時季変更権たあ、何なら」などと大声を出し、友信が「仕事につくのか、つかぬのか、仕事をするのなら服を着替えなさい、支区長に対する妨害をするな」と言っても、原告は「業務に支障する言うたが、国鉄の業務は何なら」と言うので、友信が「関係ない、君の仕事は保守作業だ、君は仕事につく意思はあるのか、今八時五五分だ、妨害を止めて仕事につきなさい」と言うと、原告は渋々詰所に入ったものの、右の原告の言動のため、友信は八分間にわたって体操ができず、また、作業班の出発は約一五分遅延した。

57  原告は、同年一二月四日午前八時三五分ころ、点呼中詰所の後部のストーブにあたって、喫煙し、友信が「点呼中にストーブにあたるとは何事だ、席につきなさい」と注意したにもかかわらず「何なら、外に言うことがあろうがあ」と言葉を返し、友信が「赤岩君、たばこを止めて席につきなさい」と指示したが、従わず、呼名に対する返事も、いつものようにしなかった。

点呼終了後、詰所において、保線管理係員米田稔の祖父の葬式が点呼で告げられなかったことについて友信が「米田君の父は養子で、その父の実家の祖父で、こういった場合通常連絡していない」と述べたところ、原告は、紺シャツにつっかけ姿で、片岡、三村とともに友信を取り囲み、大声を出し始め、「連絡せんから葬式に行かれんじゃねえか、行かせえ」などとわあわあ言いながら、三人とも体をぐいぐいと押しつけ、友信が「三人とも、妨害行為もいい加減にして体操しなさい、三人とも安全靴もはいていない、直ちに仕事のできるようしなさい」と注意すると、三村が大きな腹部でぐいと友信を押し、友信は二、三歩後ろによろけた。こうしているうち午前八時五〇分になって、体操の時間は終ったので、友信が「君達は自ら体操もせず、管理者に体操をさせなかった、真の妨害行為だ」と言うと、原告は、「あやまるんか、あやまらんのか、頭を下げえ」、片岡は「あやまらんのなら、何ぼでも言うぞ」、三村は「都合のええこたあ言いやがって、必要なこたあ言わんのか」などと言って騒いだ。

この結果、作業グループは、一〇分遅れて九時一〇分にようやく出発した。

58  同月一三日午前八時三五分点呼が開始され、瀬尾が呼名をしたのに対し、片岡は「人の名前を呼び捨てにするな、わからんのか」と大声で叫び、瀬尾が「静かにしないと、呼名が聞えませんよ」と制止したが、片岡は三村と雑談し続けたので、点呼終了後、友信と瀬尾は、片岡、三村、原告のいる詰所の後部に行き、瀬尾が「片岡君は点呼中ずっと騒いだじゃないか、どういうことですか、恥しいと思いなさい、それにその足もとは何ですかつっかけで、仕事をする気があるんですか、赤岩君も同じだ」と注意すると、原告は、「あんたが騒ぐから作業指示がわからんかったじゃねえか、どうするんなあ」と言いながら、火のついたたばこを瀬尾の目もとに近づけ、瀬尾が重ねて「赤岩君は、素足でつっかけじゃないですか」と言っても、「ほっとけ」と言い、友信が「何ですか、その態度は」と注意しても椅子の上に立って友信の顔の上に乗りかかるようにして、「わしゃ八時三〇分から着替えりゃえんじゃ、何が悪いなら」などと言って、体操の開始を八分間遅延させた。

59  原告は、同月一七日始業点呼開始前の八時二五分ごろから、三村、片岡とともに、当日行なわれる瀬戸管理室の塩見副管理長の養父の葬儀に業務用のマイクロバスを出せと瀬尾助役に詰めより、騒ぎを起こし、三村が「助役、公用車を出さない、どうしてなら」とたづねるので、瀬尾が「公用車を出して、作業計画を倒し(不履行するの意味)てまで葬儀に行くことはなりません」と答えても、三村は「行く言うて連絡とっとる者もおるんでぇ、結果としてバスを出したから、作業が倒れようが、そんなことは別じゃろうが(仕方がない、との意味)」と重ねて言うので、瀬尾は「こういった厳しい時期に公用車はだめです」と言うと、原告は、三村とともに自分の顔を瀬尾助役の顔につきつけて、「どういうように厳しいんなら、言うてみい、何が厳しいんなら」と言うので、瀬尾が「何が厳しいのかわからない様な認識のないことではだめです」と言っても、原告は「だから、なにが厳しいんなら」「厳しいことの意味もわからんくせに何を言ようるんなら」とくり返し、瀬尾が「君達は作業服に着替えなさい、今何時と思っているんですか、勤務時間ですよ、もう一分したら点呼ですよ」と言うと、原告は「それがどうしたん、知っとるよ、今三三分じゃが」、「服を着替えることは知っとら、あんたに言われんでも」などと言った。

八時三六分に点呼が開始されたが、瀬尾の服装の整正の指示と呼名の後、友信が「赤岩、片岡君は点呼までにはきちんと服装着替えをして置くように」と注意すると、原告はパンツ姿のままで、「あんたに言われんでもちゃんとしょうります」と言い返し、点呼中、片岡、三村とともにわいわいと騒ぎ、点呼終了後、友信、栗政、瀬尾が注意に行き、原告に対して瀬尾が「三村、赤岩君もこの辺(ストーブの周辺)に寄って雑談しないように」と注意したが原告は「何が雑談なら」と言い返した。

60  原告は、同月一八日午前八時三四分ころ、点呼中、瀬尾が本日は雨天なので雨衣を用意して安全作業に徹するよう指示したところ、「雨だから雨衣を着て作業せえと言いようるが」と大声を出し、瀬尾、栗政、友信が「点呼中だから、静かにしなさい」と注意しても、原告は「何をあんたらあ言いようるんなら、わしは基本を言うとるんじゃ、雨が降ったら材料が不足しておる物をつくるとかあ言うが、例えば明日使用する「埋木を作るとか、ハンマーの柄が折れているのを直すとかいろいろあろうが、あんたらがそういう計画をせんからよう」、「こういう雨の日を利用してそういう作業をしたらどうなんなら」などと大声でくり返し点呼を中断させた。そこで、友信が「赤岩君は、質問と称しての点呼妨害と認める、またそれによって点呼が中断したことは、非常に罪が重い」と注意すると、原告は、「何い」と言って、詰所の奥のストーブ付近から、前部の管理者席まで約一メートルのところに、片岡、石原とともに走り寄って、「何が点呼妨害なら、何が中断なら」と大声を出し、瀬尾が「自分の席につきなさい、赤岩君、片岡君、石原君」と言うと、原告は「健康管理につききちっと言うてみい」「じゃから言よるじゃろうが、職員の健康面や安全面についてどがあに考えとるんなら」と大声を出し、片岡、石原も同じ趣旨の発言をし、わいわいぎゃーぎゃーと騒いだ。そして、瀬尾において「まだ点呼中ですよ、石原君も赤岩君も片岡君も」と注意しても、原告は、友信の顔の三ないし五センチメートルのところまで指を差して「ほんなら、今埋木やこう有ると思うよるんか」、瀬尾に向って「どう考えとんなら、言うてみい」と言うので、瀬尾が「雨の日だからといって中で作業することにはなりません」と言うと、原告は「中で作業するせんの話じゃない、明日の作業まで埋木が要ろうが」というので、瀬尾が「とにかく後へ下がりなさい」と言った上、「埋木とか器具とかいうものは、器具、材料作業(毎月に一日は数名の職員の作業として計画されるもの)の中で行っています」と言い、友信が「下がりなさい、わからないのか」と言うとようやく、原告、片岡、石原の三名は三メートルほど後に下がったので、約一二分間中断した点呼を再開し、瀬尾において、作業に対する注意事項からやり直して、点呼を終えた。

61  原告は、昭和五二年ころから本件と同様の職務妨害行為を繰り返しており、昭和五八年五月には停職四カ月の懲戒処分を受けている。

62  原告は、昭和六〇年一月三一日、本件懲戒解雇処分を受け、三村、石原、片岡も原告とともに同日懲戒解雇処分を受けた。

以上の事実を認めることができ、これに反する(証拠略)の結果は、前掲各証拠に照らして採用しない。

二  右認定の事実によれば、原告は、上司の再三の注意、指示等にもかかわらず、なんら正当な事由なく、業務妨害、勤務時間中の組合活動、業務指示違反を繰り返し、他の職員に悪影響を及ぼし、秩序を攪乱したものであり、右事由は、日本国有鉄道法三一条に該当する。

原告は、右の行為は職場内に確立された慣行に基づく権利行使であると主張し、原告本人尋問の結果中にはこれに沿う部分があるが、右のとおり、原告の行為は著しく企業秩序を乱すものであり、到底、正当な権利行使とはいい得ず、本件懲戒解雇処分が社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権を逸脱したものとは認められない。

三  よって、本件懲戒解雇処分は適法であり、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用について民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 梶本俊明 裁判官 岩谷憲一 裁判官 下村眞美)

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