岡山地方裁判所津山支部 平成元年(ワ)23号 判決
原告
杉本節子
ほか一名
被告
津山小野田レミコン株式会社
ほか一名
主文
一 被告らは、原告杉本節子に対し、連携して金四六三万四四九九円及び内金四一三万四四九九円に対する昭和六〇年一一月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告杉本茂則に対し、連帯して金七〇万〇七六八円及び内金六〇万〇七六八円に対する昭和六〇年一一月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、これを五分し、その一を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。
五 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一原告らの請求
(原告らは、収入の主張を減額しているので、それに基づき算定するに、結局、次のとおり請求するものと解される。)
一 被告らは、原告杉本節子に対し、各自金一四九九万七二八一円及び内金一二九九万七二八一円に対する昭和六〇年一一月二九日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告杉本茂則に対し、各自金二六八万八六四〇円及び内金二二八万八六四〇円に対する昭和六〇年一一月二九日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 本件事故の発生
(1) 日時 昭和六〇年一一月二八日午前一〇時四五分ころ
(2) 場所 津山市材木町一三二八番地の二五先道路上
(3) 加害車両 大型貨物自動車(岡八八は二四八八)
(4) 被害車両 普通貨物自動車(岡山四〇な五四九八)
(5) 事故態様 右日時、場所において、被告佐藤義長運転の加害車両が原告杉本節子運転の被害車両に追突したものである。
2 責任原因
本件事故は被告佐藤の安全運転義務違反に基づいて発生したものであるから、同被告は民法七〇九条により、被告津山小野田レミコン株式会社は、加害車両の保有者であるから自賠法三条により、また、被告佐藤の使用者であり、本件事故が業務中の事故であるから、民法七一五条一考により、原告らに対し、各自損害賠償責任がある。
3 損害額
(一) 原告節子分
(1) 本件事故による受傷内容
<1> 傷病名 頸椎捻挫、腰部打撲傷等
<2> 治療期間
(ア) 入院
(a) 自 昭和六〇年一一月二九日 至 同年一二月九日(一〇日間)
平野病院
(b) 自 昭和六一年一月八日 至 同年同月三一日(二四日間)
近光整形外科診療所
(c) 自 昭和六一年五月二一日 至 同年七月一二日(五三日間)
近光整形外科診療所
以上合計八七日間
(イ) 通院
(a) 昭和六〇年一一月二八日(一日間)
角田医院
(b) 自 昭和六〇年一二月一〇日 至 同年同月一六日(通院期間七日間、内実日数五日)
平野病院
(c) 自 昭和六〇年一二月一七日 至 昭和六一年一月七日(通院期間二二日間、内実日数一一日)
近光整形外科診療所
(d) 自 昭和六一年二月一九日 至 同年五月二〇日(通院期間九三日間、内実日数四三日)
近光整形外科診療所
(e) 自 昭和六一年七月一三日 至 現在
近光整形外科診療所
<3> 後遺症
頸部痛、めまい、吐き気、左上肢痛、左手指のしびれ、右第二、四指のしびれ、頸椎第五、第六椎体間に軽度の変形、頸部の不撓性、左手指チアノーゼ様変色、皮膚温の低下、左手握力の減退、左頸部、肩甲部に圧痛等の後遺症が残った。
右後遺症は現在もなお継続しており、被告節子の就労に大きな制約を与えており、右後遺症を自賠責後遺症等級にあてはめると一二級より重い後遺症と考えられる。
(2) 本件事故による損害
<1> 入院雑費 金一〇万四四〇〇円
(ア) 入院日数 八七日
(イ) 日額 金一二〇〇円
(ウ) 計算 八七日×一二〇〇円=一〇四四〇〇円
<2> 通院交通費 金一一万〇九四〇円
(ア) 通院回数 一二九回
(イ) 一回の片道バス代 金四三〇円
(ウ) 計算 四三〇円×二×一二九回=一一〇九四〇円
<3> 休業損 金一五四一万〇六〇四円
(ア) 休業期間 自昭和六〇年一一月二八日 至昭和六二年九月二七日(一年一〇ケ月)
(イ) 損害
(a) 「浦島太郎」分
原告節子は本件事故前の昭和五九年一二月二四日から開店した「浦島太郎」なる喫茶、お好み焼、焼肉、カラオケスナツク等の飲食業を経営していたが、本件事故が開店後一年未満である昭和六〇年一一月二八日に発生したため、その収入所得の公的証明が得られない。
しかしながら、精肉類、酒類の一ケ月の仕入高のみでも平均金二五万二九九一円であり、通常、仕入額の数倍が売上額とされているところからみると、平均売上額は約金一二六万円(五倍とみる)である。そうすると、小料理、酒場、お好み焼屋の平均所得率は約三七パーセントであることから、「浦島太郎」の所得を計算すると月約金四六万六二〇〇円になる。
「浦島太郎」は原告節子が一人で切り盛りしていたのであるから、右金額が全て一ケ月の損害となる。
(b) 化粧品販売分
原告節子が関与しているミキモト化粧品の販売手数料は、月金一五万五五二五円である。
(c) 日本生命分
日本生命津山支部から紹介手数料として受け取っていた一ケ月の平均手数料収入は金七二三七円である。
(d) 店舗手伝い分
原告節子と夫とその母が従事していた杉本食料品店の一ケ月の平均売上高は、金二四〇万円である。
そのうち、所得率は一四・九パーセントと考えられるので、所得は一ケ月金三五万七六〇〇円となる。
そのうち、原告節子の稼働内容、役割からみて、右所得への寄与度は二割とみるを相当とするから、同原告は一ケ月に金七万一五二〇円の所得を得ていたことになる。
(e) 計算合計金一五四一万〇六〇四円
四六万六二〇〇円+一五万五五二五円+七二三七円+七万一五二〇円=七〇万〇四八二円
七〇万〇四八二円×二二月=一五四一万〇六〇四円
<4> 後遺症に基く逸失利益 金五一三万五五九八円
(ア) 労働能力喪失率 一四パーセント
(イ) 労働能力喪失期間 五年
(ウ) 月収 金七〇万〇四八二円
(エ) ホフマン係数 四・三六四
(オ) 計算 七〇万〇四八二円×〇・一四×一二×四・三六四=五一三万五五九八円
<5> 慰藉料 金四一〇万円
(ア) 傷害分 金二一〇万円
(イ) 後遺症分 金二〇〇万円
(ウ) 計算 二一〇万円+二〇〇万円=四一〇万円
<6> 弁護士費用 金二〇〇万円
<7> 以上<1>ないし<6>合計 金二六八六万一五四二円
計算 一〇万四四〇〇円+一一万〇九四〇円+一五四一万〇六〇四円+五一三万五五九八円+四一〇万円+二〇〇万円=二六八六万一五四二円
(3) 損害填補後の損害額
<1> 利得額 金一一八六万四二六一円
<2> 差引計算 二六八六万一五四二円-一一八六万四二六一円=一四九九万七二八一円
<3> 残額 金一四九九万七二八一円
<4> 遅延損害金起算日 本件事故の翌日
(二) 原告茂則分
(1) 本件事故による損害
<1> 休業損害 金二二八万八六四〇円
(ア) 職業 食料品店経営
(イ) 休業期間 自 昭和六一年六月一日 至昭和六二年九月三〇日(一年四ケ月)
(ウ) 事故前店舗収入 金三五万七六〇〇円
同原告の寄与度 四割
(エ) 計算 三五万七六〇〇円×〇・四×一六=二二八万八六四〇円
<2> 弁護士費用 金四〇万円
<3> 以上合計 二二八万八六四〇円+四〇万円=二六八万八六四〇円
(2) 遅延損害金起算日
前同
4 よつて、原告らは、被告らが各自、原告節子に対しては金一四九九万七二八一円及び弁護士費用控除後の金一二九九万七二八一円に対し本件事故の翌日である昭和六〇年一一月二九日から、原告茂則に対しては金二六八万八六四〇円及び弁護士費用控除後の金二二八万八六四〇円に対し本件事故の翌日である昭和六〇年一一月二九日から各支払済みに至るまで、民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うよう求めるため本訴に及んだ。
第三当裁判所の判断
一 請求原因1は当事者間で争いがない。
二 請求原因2は、原告節子と被告らとの間では争いがない。
三 原告節子の損害について検討する。
1 請求原因3(一)(1)については、全般的には、乙六、原告節子の供述(第一、二回)、また、そのうち、とりわけ傷病名、近光整形外科診療所治療分及び後遺症については近光利樹証言により肯認できるが、更に、個別的には、以下の証拠により肯認できる。
<2>(ア)について
(a) 甲四、一八
(b) 甲六、二〇、二二、乙五
ただし、期間の終期は昭和六一年二月一七日、入院日数は四一日の算定間違いと認める。
(c) 甲一一、一二、一三、二六、二七、二八、乙五
<2>(イ)について
(a) 甲三、一七
(b) 甲四、一八
(c) 甲五、六、一九、二〇
(d) 甲八、一〇、一一、二二、二四ないし二六
ただし、期間の始期は昭和六一年二月一八日、通院期間は九二日、実日数は四二日の算定間違いと認める。
(e) 甲一三ないし一六、二八ないし三二、乙一、二
<3>について
甲一四、三三、乙五
後遺症の程度については、前記原告節子の供述等からこれが相当頑固なものと認められることや、右書証や近光証言から他覚的所見も認められることなどを考慮し、一二級相当と認める。
なお、症状固定日は、甲一四、三三、原告節子の供述(第二回)を総合して、昭和六一年一〇月三一日と認める。
2 請求原因3(一)(2)について検討する。
(一) <1>について
入院日数は一〇四日の算定間違いと認めることとなる。
日額は金六〇〇円が相当である。
一〇四日×六〇〇円=六万二四〇〇円
したがつて、金六万二四〇〇円を認める。
(二) <2>について
通院回数は一一一日分を認める(前記<2>(イ)(e)の期間中前記症状固定日までの通院期間を、甲一三ないし一五により五二日と判断した。)。
単位交通費は原告節子の供述(第一回)により主張どおりを認める。
一一一日×四三〇円×二=九万五四六〇円
したがつて、金九万五四六〇円を認める。
(三) <3>について
(1) 休業損害の賠償対象たるべき休業期間は、昭和六〇年一一月二八日から前記症状固定日である昭和六一年一〇月三一日までの一一ケ月というべきである。
(2) (イ)(a)ないし(d)は、乙三、四、原告節子の供述(第二回)及び弁論の全趣旨により肯認さるべきものである。
すなわち、月収は主張どおり金七〇万〇四八二円とする。
七〇万〇四八二円×一一月=七七〇万五三〇二円したがつて、金七七〇万五三〇二円を認める。
(四) <4>について
主張どおりの与件を認め(ただし、月収は右のとおり。)、したがつて、金五一三万五五九八円を認める。
(五) <5>について
傷害慰謝料については金一二〇万円、後遺症慰謝料については金一八〇万円を認めるのが、その程度、態様、治療状況等諸般の事情を考慮して相当である。
したがつて、金三〇〇万円を認める。
3 原告節子が損害の填補として金一一八六万四二六一円を得ていることは当事者間に争いがない。
したがつて、損害填補後の原告節子の損害額は次のとおりとなる。
六万二四〇〇円+九万五四六〇円+七七〇万五三〇二円+五一三万五五九八円+三〇〇万円-一一八六万四二六一円=四一三万四四九九円
すなわち、金四一三万四四九九円。
4 弁護士費用は、本件事案の態様、認容額等諸般の事情を考慮し、金五〇万円が相当である。
5 以上の次第で、原告節子の請求は、金四六三万四四九九円及び内金四一三万四四九九円に対する不法行為の後である昭和六〇年一一月二九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容すべきこととなる。
四 原告茂則の請求について検討する。
1 原告茂則が、従前母及び原告節子とともに杉本食料品店を営業していたこと、原告節子が本件事故のため店の手伝いができなくなつてからは、原告茂則と母とで店を切り盛りしていたこと、母が仕事中に腰の怪我をして入院するに至つたため、少なくとも昭和六一年六月から昭和六二年七月まで店を閉じたことは、甲三六、原告茂則の供述及び弁論の全趣旨により認めることができる。
しかして、店の閉店自体は直接的には母の入院によるものであることが明らかと考えられるが、その原因たる怪我は、甲三六によると「転倒して腰の骨にひびが入つた」というものであり、原告茂則の供述によると「物を提げた時、腰の骨を折つた」というものであつて、何れにせよ自損事故的なものと窺え、また、偶然性の強いものと考えられる。
したがつて、右怪我と本件事故との間に因果関係があるとすることには相当躊躇を覚えるが、しかし、本件事故により原告節子が店の手伝いを出来なくなつたため、母がより働かざるを得ず、為めに無理をした結果右怪我に至つたということも一概に否定出来ないものを含むとも考えられる。したがつて、本件事故が店の閉店の一因をなしていると考えることは可能といえるが、右母の怪我が本件事故による働き過ぎのみを原因とするとは到底考えられず、結局、これら諸般の事情に鑑み、本件事故と相当因果関係ある閉店による損害はその三割程度と判断することとする。
2 店の事故前収入は、前記のとおり一ケ月金三五万七六〇〇円である。
原告茂則の寄与度は、主張どおり四割と認める。
三五万七六〇〇円×〇・四×一四×〇・三=六〇万〇七六八円
したがつて、結局、金六〇万〇七六八円を休業損害として認める。
3 弁護士費用は、本件事案の態様、認容額等諸般の事情に鑑み、金一〇万円が相当である。
4 前記本件事故の状況等により、被告佐藤は民法七〇九条により、被告会社は民法七一五条により、原告茂則に対して右損害の賠償義務があるものと認める。
5 以上の次第で、原告茂則の請求は、金七〇万〇七六八円及び内金六〇万〇七六八円に対する不法行為の後である昭和六〇年一一月二九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める限度で認容すべきこととなる。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 佐藤拓)