大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。
官報全文検索 KANPO.ORG
月額980円・今日から使える・メール通知機能・弁護士に必須
AD

岡山地方裁判所津山支部 昭和61年(ワ)120号 判決 1992年9月30日

原告

川本貞子

ほか一名

被告

豊福恒世

ほか一名

主文

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告らは、各自、原告ら各自に対し、各金六四四万八三五六円及び内金五八六万二一四二円に対する昭和五六年八月二九日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、歩行中、普通貨物自動車に衝突された被害者が、約一年後に意識喪失による転倒で脳障害を負い、更に交通事故の五年後に急死したところ、これらが右交通事故に起因するものであるとして、被害者の遺族が、加害車両の運行供用者に対しては自動車損害賠償保障法三条に、その運転者に対しては民法七〇九条に、それぞれ基づいて損害賠償を請求した事案である。

一  前提事実

1  本件事故

昭和五六年八月二八日午後四時二二分ころ、津山市南新座四六番地付近路上において、被告豊福が所有し、被告内山が運転する普通貨物自動車が、歩行していた川本和夫(昭和一二年七月一二日生。以下「和夫」という。)に衝突し、同人を転倒させる交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(当事者間に争いがない。)

2  本件事故の態様

本件事故は、被告内山が加害車両を運転して東進中、右前方に停車中のバスの陰から路上を北進して歩行横断しようとした和夫に、至近距離に到つて気付き、急ブレーキをかけたが間に合わず、加害車両前部を同人に衝突させ、路上に転倒させたものである。

(当事者間に争いがない。)

3  被告らの責任原因

本件事故は被告内山の前方不注視により生じたものであるから、同被告には、民法七〇九条により和夫に生じた本件事故による損害を賠償する責任があるし、被告豊福は本件加害車両の運行供用者であるから、右被告には、自動車損害賠償保障法三条により前同様の責任がある。

(当事者間に争いがない。)

4  和夫の受傷と入通院

本件事故後の和夫の入通院は次のとおりである。

(一) 本件事故により左鎖骨々折(偽関節)、左足第一中骨々折、左足第二中骨々折、頭部外傷、多発挫傷等の傷害を負い、昭和五六年八月二八日の事故当日から同年一二月二六日まで、西川整形外科医院に入院(一〇月一四日偽関節のために骨移植術施行)し、その後も同医院に通院した(通院の最後は昭和六〇年七月一九日、通院日数は計一二四日間)。

(乙六、八、一〇、三六)

(二) 右入院と並行して、昭和五六年九月三日から同年一二月八日まで、歯欠落治療のため、内田歯科医院に通院(通院日数一〇日)した。

(乙六、弁論の全趣旨)

(三) 昭和五八年四月一一日から同月三〇日まで、及び同年九月一二日から同月二一日まで、いずれも左鎖骨偽関節治療のため、津山中央病院に入院し、同年三月九日から同年九月一〇日まで、同様に同病院に通院(通院日数一七日)した。

(甲一五の一、二、一六ないし二七、三二)

(四) 和夫の左鎖骨偽関節等については、昭和六〇年七月一九日付で症状固定の診断(西川整形外科医院)がなされ、後遺傷害一二級一二号の認定(左肩関節運動制限、左肩関節痛)がなされている。

(乙三六、甲八)

5  和夫の急性硬膜下血腫受傷とその治療

(一) 和夫は、前記本件交通事故による受傷治療中の昭和五七年七月一七日、歯磨き中に急に意識を喪失し、井戸端で転倒した。意識喪失状態は二~三分続き、その後次第に頭痛がひどくなり、同年七月二八日、高見病院で受診のうえ、急性硬膜下血腫の診断により国立療養所津山病院に入院し、七月二九日開頭手術(右血腫除去)を受け、同年九月二日まで入院した。

(甲一〇の一ないし三、一一の一ないし三三、乙五)

(二) 更に、和夫は、昭和五八年一二月一二日、痙攣発作と意識障害、吐血により救急車で角田医院に入院し、同年一二月一五日、開頭手術(硬膜下及び脳内血腫除去)を受け、昭和五九年一月一〇日まで入院した。

(乙三、四、甲五五の一、五六、五九)

(三) 和夫は、右退院後も、痙攣発作、急性硬膜下血腫、脳内血腫の傷病名で、角田医院に通院したが、昭和五九年一〇月二九日に症状固定の診断を受けている。

(乙三、四)

6  和夫の死亡

前記昭和五九年一〇月二九日の症状固定診断(角田医院)、同昭和六〇年七月一九日の症状固定診断(西川整形外科医院)後も、和夫は、頭痛、眩暈、左上肢筋力低下、二か月に一回位の意識喪失を伴う全身痙攣発作等を訴えていたところ、昭和六一年九月一日、歩行中に倒れ、右胸部を痛打した後、風邪をひき、同月六日に死亡した。当時、死因は急性大葉性肺炎(糖尿病、高血圧症、肝障害併発)と診断されている。

(原告貞子の第五回弁論調書三一ないし三三項、四八ないし五五項、証人谷末喜の証言、乙三五。なお、和夫死亡の事実については当事者間に争いがない。)

7  原告らの承継

原告貞子は和夫の妻、原告庄司は和夫と原告貞子との子であり、相続により、各二分の一の割合で和夫の権利義務を承継した。

(当事者間に争いがない。)

8  損害の填補

本件事故による損害賠償として、合計一六二九万〇一二〇円が支払われている。

(当事者間に争いがない。)

二  原告らの主張

1  和夫の意識喪失は、本件事故による頭部外傷が原因であり、前記井戸端での転倒とこれによる急性脳硬膜下血腫及びその後の意識喪失、痙攣発作も本件事故が原因となつている。少なくとも右各症状につき、本件事故は七割を越える因果関係を持つている。

2  和夫の死亡についても、本件事故、これに起因する右急性脳硬膜下血腫による身体不自由のために体力が弱つていたことが原因となつており、本件事故の寄与割合は五割を下回らない。

三  被告らの主張

1  昭和五七年七月一七日の和夫の転倒、これによる急性脳硬膜下血腫は、本件事故と因果関係がなく、これを原因とする損害について、被告らには賠償責任がない。

和夫の意識喪失は、アルコール退薬症候群によるアルコール性てんかんによるものである可能性が最も高く、他に低血糖症等の原因が考えられるが、本件事故による頭部外傷がその原因とは認められない。

2  和夫の死亡と本件事故との因果関係も存在しない。

3  本件事故そのものについても、和夫にも過失があり、その過失割合は三割を下回らない。

四  争点

1  本件事故の態様と和夫の過失割合(ただし、和夫について三割の過失相殺がなされてやむを得ないことは、原告らも自認している。)。

2  和夫の痙攣発作、意識喪失、これによる急性脳硬膜下血腫と本件事故との因果関係の有無。

3  和夫の死亡と本件事故との因果関係の有無。

4  その他和夫の損害の各費目及びその額の相当性。

第三争点についての判断

一  本件事故の態様と和夫の過失相殺について

1  甲二ないし四及び弁論の全趣旨によれば、次のとおり認められる。

本件事故現場は、吉井川の河川敷にそつた幅約三・四メートルの東行一方通行の歩車道の区分のない道路で、被告内山進行方向(東)に向けて左側には民家等があるが、右側は河川敷となつており、当時右側に二台の車両(一台はバス)が駐車していた。被告内山は、制限時速二〇キロメートルの右道路を時速約三〇キロメートルで進行していたが、民家等のある左側には注意を払つていたものの、右側から歩行者等が出てくるとは考えず、右側への注意を怠つていた。

他方、和夫は、本件事故前、二時間三〇分位の間に酒約五合を飲み、前記バスの陰で放尿した後、酒によつてふらついた状態で、左右の安全を確認せず、道路を横断しようとし、本件事故にあつた。

2  右認定の本件事故の態様に照らせば、本件事故発生につき和夫にも相応の落ち度があり、その損害の賠償については、三割の過失相殺をするのが相当である。

二  本件事故後の和夫の痙攣発作、意識喪失、これによる急性脳硬膜下血腫と本件事故との因果関係について

1  鑑定人山木戸道郎の鑑定の結果によると、次のとおり認められる。

(一) 和夫の本件事故後の頭痛とその原因

診療録によれば、和夫の本件事故後の頭痛については、本件事故翌日の昭和五六年八月二九日から同年九月を中心とするもの、昭和五六年一一月一七日のもの、昭和五七年七月二三日のもの、と大別される。

右一番目のものは、軽度のもので、その原因としては歯痛、本件事故による頭部外傷が考えられるが、CTスキヤンも実施されておらず、詳細は不明である。

二番目のものは、一過性のようであるが、原因は不詳。

三番目のもの(昭和五七年七月一七日の井戸端での転倒後のもの)は、右転倒による急性硬膜下血腫によるものであると考えられる。

(二) 和夫の既往症

和夫には、アルコール依存症、アルコール性肝硬変症、高血圧症、糖尿病の既往症があつたと推定される。

(三) 本件事故後の意識喪失症状の原因

右意識喪失症状の原因としては、アルコール退薬症候群からくるアルコールてんかんによるものである可能性がもつとも高い。原告貞子の供述(第五回弁論調書一一項)による和夫の症状(しやべるときに口が痙攣を起こしたり、手が震えたり白目を見せたり、そういう状態がしばらく続き、それが治まると汗が出てきて、そして寝て起きるとすつきりする。起きたときには自分の痙攣発作を全く知らない。)は、アルコール退薬症候群、アルコールてんかんの症状に酷似している。ただし、アルコール退薬症候群の症状の発現は、規則的、持続的飲酒の場合には軽く、短期に大量に飲酒した場合は重篤に傾き、急速な飲酒停止はむしろ症状の発現を強くすると考えられているので、和夫が西川整形外科医院退院後、断酒と大量飲酒を繰り返したと想定することを前提とする。

本件事故後にCTスキヤンが実施されていないことから、本件事故に起因する外傷性てんかんの可能性も否定はできないが、一般に和夫の年齢層において、外傷性てんかんの原因となる外傷は、重症のものであつて、受傷時に長期の意識障害を認めるもの、頭蓋骨の陥没骨折や開放性骨折、硬膜下血腫等を合併していることが多い。

なお、和夫のアルコール依存症から、飲酒後無意識で転倒するなどして頭部外傷を受け、それが外傷性てんかんの原因になつた可能性も否定できない。

(四) 和夫の急性硬膜下血腫、脳内血腫の原因

昭和五七年七月二八日国立療養所津山病院での開頭手術にかかる急性硬膜下血腫は、約八〇グラムの新しいものと、約二〇グラムの古いものであるが、前者は同年七月一七日の井戸端での転倒によるものと考えられる。後者については不明である。

昭和五八年一二月一五日の角田医院での開頭手術にかかる急性硬膜下血腫は脳内血腫を伴つている。その原因を具体的に特定することは困難である(甲五六によれば、同年一二月一二日朝に全身痙攣発作を伴う意識消失があり、昭和五八年五月ころからの同様の発作と異なり、四〇分位しても覚醒せず、同日午後六時四五分ころ、吐血して救急車で担送されているが、右状況のみでは原因の特定ができない。)。

(五) 和夫死亡の原因疾患

和夫の急激な死亡(診察にあたつた谷医師は和夫の病状に重症感をもたず、その予想に反して急死したと推察される。)状況に照らして、右死亡の原因疾患としては、致命的な脳内出血の再発、急性心筋梗塞、肝硬変症による大量出血等が推測される。

もつとも、和夫は糖尿病(死亡三か月前の昭和六一年六月六日の血糖値一デシリツトル中六三七ミリグラムは糖尿病性昏睡時に匹敵する高血糖)と肝障害(肝硬変症)に罹患し、かなり衰弱していた可能性があり、かかる状態で発熱を伴う急性呼吸器感染症に罹患し、急速な死に到つた可能性もあり、その場合は、第一の死因は急性呼吸器感染症、第二の死因は糖尿病及び肝硬変症と判断される。

なお、和夫の死因を急性心筋梗塞とするならば、糖尿病、高血圧症はこれに大きく影響している。

2  右鑑定結果は、前提とした事実、判断過程等に疑問とするべき事情も見当たらず、採用することができる。

3  そして、これによれば、本件事故後の和夫の意識喪失症状が本件事故に起因するものと認めることは、はなはだ困難といわざるを得ず、他にそのように認めるに足りる証拠もない。

原告らは、意識喪失症の原因中、右鑑定が最も可能性が高いとするアルコール退薬症候群、アルコールてんかんについて、本件事故前には和夫には意識喪失症状は出ていなかつたし、格別大量の飲酒していた訳でもなく(日に三合程度)、西川整形外科医院での一二一日の入院中にも、わずかな外泊中の飲酒を除いて飲酒していないとみられるところ、これにもかかわらず意識喪失症状は出ていないと主張する。

しかし、乙八の四頁目によれば、和夫は西川整形外科医院入院に際して自己の飲酒量を日に三合と申告しているが、甲一〇の二、甲一一の三によれば、和夫は昭和五七年七月一七日の転倒後の高見病院での受診、国立療養所津山病院での入院に際し、日に七~八合の飲酒を申告している。また、甲一〇号証の二、甲一一の一五によれば、和夫は、井戸端での転倒後禁酒し、右入院中も断酒の決意をしていると認められ、鑑定も指摘する如く、その前から飲酒による身体障害を認識しており、断酒を試みたと推認することにも無理がない。加えて、鑑定の指摘する和夫の症状がアルコール退薬症候群、アルコールてんかんによるものに酷似すること(前記1の(三))、本件事故による外傷性のものとするにしては本件事故による頭部外傷の程度が低いこと(同。なお和夫はもともと本件事故による頭部外傷の診断を受けていない。)を考え併せると、前記意識喪失症状をアルコール退薬症候群、アルコールてんかんによるものと断定することはできないとしても、これを本件事故に起因するものと認めることは、右同程度以上に困難といわざるを得ない。

三  和夫の死亡と本件事故の因果関係について

前記鑑定の結果により認定できるところ(二の1)によれば、和夫の死亡と本件事故との相当因果関係の認め難いことは、前記和夫の意識喪失症状の原因が本件事故にあると認め難い以上に明らかである。

四  本件事故による和夫の損害について

1  以上認定説示したところに従つて、右損害について検討する(後記のとおり、既払分との比較において残額のないことが明らかであるから、一応の試算である。)。

(一) 治療費 計一二〇万三四四六円(弁論の全趣旨)

(1) 西川整形外科医院関係 八四万七四二八円

昭和五六年八月二八日から同年一二月二六日の入院及び同年一二月二七日から昭和六〇年七月一九日までの通院分

(2) 内田歯科医院関係 二四万六八八九円

(3) 津山中央病院関係 一〇万九一二九円

左鎖骨偽関節による昭和五八年四月一一日から同月三〇日まで、同年九月一二日から同月二一日までの入院、及びこれによる同年四月一日から同月一〇日まで、同年九月二二日から同年一〇月三日までの通院分

(二) 入院雑費 計一二万〇八〇〇円

前記一の(1)、(3)の入院計一五一日分。一日あたり八〇〇円が相当である。

(三) 休業損害 九四〇万円

植木職人としての月額二〇万円の収入を基礎とし、昭和五六年八月二八日の本件事故時から前記昭和六〇年七月一九日の症状固定診断時までの三年一一か月分(昭和五七年七月以降は前記急性硬膜下血腫の傷害が生じており、右三年一一か月の時期の全部が本件事故による稼働能力零の期間と認めることは問題であるが、その点は置くこととする。)。

(四) 後遺症逸失利益 三九万二〇〇〇円

昭和六〇年七月一九日症状固定、労働能力喪失率一四パーセント(後遺障害一二級一二号)、月収二〇万円、昭和六一年九月六日死亡。

二〇万円×一四月×〇・一四=三九万二〇〇〇円

(五) 慰謝料 計三五〇万円

(1) 前記入通院分 一八〇万円

(2) 後遺症(一二級)分 一七〇万円

2  右のとおり、本件事故に起因する損害は、計一四六一万六二四六円と計算(試算)されるところ、前記のとおり和夫について三割の過失相殺がやむを得ないから、右過失相殺を施すと、賠償するべき損害は、一〇二三万一三七二円となる。

3  そして、被告らによる既払分は一六二九万〇一二〇円であるから、これを控除すれば、既に未払い分は零となることが明らかである。

4  なお、和夫は昭和六一年九月六日に死亡しているが、右死亡は本件提訴後であること、右死亡について本件事故の影響が皆無であるとも認め難いこと等から、信義則上、和夫の後遺症逸失利益を平均稼働可能期間の全部についてみるとすると、右後遺症逸失利益は、四四〇万六九七六円と計算される。

二〇万円×一二か月×〇・一四×一三・一一六(固定当時の四八歳に対応する新ホフマン係数)=四四〇万六九七六円

そうすると、和夫の総損害額は一八六三万一二二二円、過失相殺後の損害額は一三〇四万一八五五円となるところ、前記既払額一六二九万〇一二〇円と比較すれば、このように解しても、すでに未払い分は零となる。

五  付論

1  本件の事案内容に鑑み、和夫の意識喪失症状、更にその死亡について、本件事故が割合的に寄与しているとした場合の試算を試みておくこととする。

2  前記二、三でみたところによれば、和夫の昭和五七年七月一七日の転倒とこれによる急性硬膜下血腫、更に昭和五八年一二月一二日からの角田医院入院にかかる急性硬膜下血腫等について、本件事故の寄与を割合的に認め得るとしても、その割合は最大限四割にとどまり、和夫の死亡についてのそれは、最大限にみても二割にとどまる。

3  右前提に基づいて試算すれば、和夫の損害は次のとおりとなる。

(一) 治療費 計一八一万〇三六〇円

(1) 前記四の1の(一)の分 一二〇万三四四六円

(2) 津山中央病院分一四万四四八三円(弁論の全趣旨)

急性硬膜下血腫術後等治療分

(3) 角田医院分 四六万二四三一円(弁論の全趣旨)

(4) 国立療養所津山病院分

立証なし。

(二) 入院雑費 計一七万四四〇〇円

(1) 前記四の1の(二)の分 一二万〇八〇〇円

(2) 国立療養所津山病院の三七日、角田医院の昭和五八年一二月一二日から昭和五九年一月一〇日の三〇日分の計六七日分 五万三六〇〇円 一日八〇〇円

(三) 付添費 計二〇万一〇〇〇円

右二の(2)の六七日分、一日三〇〇〇円

(四) 逸失利益 一〇三五万四六〇八円

(1) 昭和五六年八月二八日の本件事故から昭和五七年七月二八日の国立療養所津山病院入院までの分 二二〇万円

一一か月、一か月二〇万円の計算。

(2) 右昭和五七年七月二八日から和夫死亡の昭和六一年九月六日までの分 三九二万円

右四九か月間につき、一か月二〇万円、本件事故の寄与割合四割。

(3) 和夫死亡による分 三六二万九六六四円

死亡時四九歳(新ホフマン係数一二・六〇三)、年収二四〇万円、死亡についての本件事故の寄与割合二割。なお、和夫の生活費控除割合は四割とするのが相当と認める。

二四〇万円×一二・六〇三×〇・六×〇・二=三六二万九六六四円

(五) 慰謝料 六八〇万円

(1) 入通院分(前記四の一の(1)の分) 一八〇万円

(2) 同(右以外分) 二〇〇万円

本件事故の寄与割合四割としての額。

(3) 和夫死亡分 三〇〇万円

本件事故の寄与割合二割としての額。

4  以上のとおり和夫の損害は合計一九三四万〇三六八円と試算されるところ、前記のとおり和夫について三割の過失相殺がやむを得ないから、結局賠償すべき損害は、一三五三万八二五七円となる。

そして、被告らの既払額が一六二九万〇一二〇円であるから、右試算によつても、既に未払い分は零となることが明らかといわざるを得ない。

六  結論

以上の次第で、原告らの本件請求は、失当たるを免れないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 小島正夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例