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岡山家庭裁判所 平成11年(家)2131号・平11年(家)2132号・平11年(家)2133号

主文

一  各申立人の寄与分をそれぞれ金1873万円と定める。

二  被相続人Aの遺産を次のとおり分割する。

1  別紙遺産不動産目録記載の各土地の被相続人A持分3分の2につき、その2分の1(持分3分の1)宛を申立人両名の取得とする。

2  相手方は、各申立人に対し、別紙遺産不動産目録記載の各土地の相手方持分9分の2(平成7年6月13日第×××号をもって登記されたもの)につき、その2分の1(9分の1)宛を遺産分割を原因としてそれぞれ各申立人に移転する旨の各共有持分移転登記手続をせよ。

3  上記遺産取得の代償として、申立人Y2は相手方に対し、金1283万円及びこれに対する本審判確定の日の翌日から各支払済まで年5分の割合による金員をそれぞれ支払え。

三  本件手続費用中、鑑定人Bに支給した金50万円は申立人両名の平等負担とし、その余は各自の負担とする。

理由

第1申立の要旨

一  (相続の開始、相続人及びその法定相続分)

Aは平成6年12月21日死亡し、その嫡出子たる申立人両名及び相手方が相続し、その法定相続分は、各3分の1であり、遺言は存在しない。

二  (遺産及び遺産管理等の状況並びに特別受益)

1  被相続人の遺産は、別紙遺産不動産目録記載1ないし3の土地(以下1ないし3土地という)の各共有持分3分の2及び同目録4記載の建物(以下本件建物という)であり、1ないし3土地の各共有持分3分の1についてはいずれも申立人Y2が所有し、その旨の登記を経由している。そして、1ないし3土地につき、平成7年6月13日付で、平成6年12月21日相続を原因として被相続人持分3分の2につき、申立人両名及び相手方がその法定相続分各3分の1(共有持分各9分の2)宛で取得する旨の登記が相手方の手続きによって経由されている。

2  申立人Y2は特別受益として、別紙受益不動産目録記載の土地(以下受益宅地という)につき、昭和53年10月28日、昭和54年2月1日、被相続人から順次持分3分の1宛合計3分の2の持分贈与を受けその旨の登記を経ている。

3  受益宅地上の1角に本件建物が存在し、これに申立人両名が居住し、その近隣に存する1ないし3土地は市街化調整区域内にある農地であり、かねてから被相続人及び申立人両名が自作により肥培管理、耕作し、今日に至っている。

相手方は永年にわたり俸結生活を送り、現在は定年退職しているが非農家である。

三  (寄与分)

申立人両名は、次のとおり被相続人に対して尽くし、その寄与によって、出費を節減するなどした結果、相続財産の維持保全がはかられたものである。

寄与分は次のとおりそれぞれにつき最低限でも2320万円と評価されるべきである。

1  (経済援助)

被相続人は、本件遺産たる農地約2・5反、申立人Y1の農地約2反、申立人Y2の農地約2・5反合計7反余で農業経営をしていた。

しかし、農機具を購入したり多量の農薬を買い入れるだけの利益は出ず、申立人Y1は当時e病院職員として勤務する俸給(昭和38年から平成元年までの平均年収150万円)の中から、申立人Y2はf病院職員として勤務する俸給(昭和41年から平成6年までの平均年収150万円)の中から、それぞれ年額50万円程度の購入資金をそれぞれ25年間にわたり拠出してきた。

従って、それぞれ1250万円の寄与分がある。

2  (農業経営に対する手伝い)

申立人両名はそれぞれ、早朝出勤時までの3ないし4時間、帰宅後3ないし4時間、無報酬で被相続人の農業経営の手伝いを25年間にわたり行ってきた。

1日1人当たりそれぞれ2500円の平均日当とし、年間100日の労働日数として、25年間分の換算をすると1人当たり約620万円となる。

3  (療養看護)

被相続人は、昭和55年頃から痴呆気味となり、昭和60年頃から日中も寝たり起きたりの生活となり、昭和63年頃からはほとんど寝たきりとなり、平成3年頃約3か月間b病院に入院した後、c分院に転院し、死亡するまで入院生活を送った。

申立人両名は共同して被相続人に対し、初相続人が自宅療養していた時期には、出勤前身の回りの用意をし、帰宅後後始末をし、特に申立人Y2は昼休みの休憩時間に帰宅して世話をし、被相続人がc分院に入院してからは帰宅後病院に通って介護し、被相続人のベッドの下で一晩を過ごしたり、深夜帰宅するなどして療養看護に努めた。

介護費用を1人当たり1日5000円とし、年間、150日それぞれが関わったとして6年間分の換算をすると、1人当たり450万円となる。

四  (遺産の評価)

取引価格を重視して高額な不動産鑑定結果が出されているが、本件遺産は市街化調整区域内にある農地であり、現実に取引価格による売却をすることは困難であって、いずれも申立人両名が引き続き利用して生計をたててゆく資本となっているのであるから、収益性を重視して評価すべきである。

相続税評価基準により、固定資産評価額に所定の倍率を乗じると、鑑定評価額の5分の1ないし6分の1になるが、これは、相続税評価基準が相続人において引続き利用して生計を立ててゆくことを考慮して収益性を重視している結果である。

五  (分割の方法)

申立人両名は、遺産たる農地の持分各3分の2及び建物をそれぞれ2分の1の割合で取得し、相手方に対し、共同して代償金を支払う方法での分割を求める。

第2当裁判所の判断

一  調査官の調査報告書、審問結果を含む本件記録によると、第1の一(相続の開始、相続人及びその法定相続分)及び二(遺産及び遺産管理等の状況並びに特別受益)の事実が認められるほか次のとおり認定することができる。

1  (遺産及び特別受益の評価)

鑑定人の鑑定評価は、本件各土地の評価につき、近隣の取引事例を参照して比準価格を試算し、本件各土地の個別事情による価格調整をして結論を導いており、本件遺産は市街化調整区域内にある農用地ではあるものの、近隣取引においては、宅地等の見込地価格として考えられ、収益価格から乖離している現状にあることに着目して評価をなしている。上記評価の過程は一応首肯しうるところではあるが、結果的には全く収益価格を顧みないところとなっており、そのために、農地については、相続税課税標準額の5ないし6倍に評価される結果となっている。そこで、本件においては、相続人が継続して農業を営み生計をたててゆくことを考慮し、収益価格の要素を加味し相続税課税標準と照らし合わせた修正として、本件農地について、鑑定価格の1割を減殺した価格をもって相当価格と認める。従って、相続時価額は、1土地につき4250万円、2土地につき1899万円、3土地につき116万円、本件建物につき27万円、受益宅地につき1625万円、平成9年2月25日時点価額は、1主地につき4292万円、2土地につき1918万円、3土地につき118万円、本件建物につき13万円と評価される。なお、遺産分割の価格については、鑑定結果における平成9年2月25日時点から後に評価額に見るべき増減があったものとは認め難いので、上記時点での価格をもって相当とする。

そして、本件受益宅地以外に特別受益の存在を認めるべき資料はない。

2  (寄与分について)

<1> 被相続人のため、申立人らが、農機具を購入したり多量の農薬を買い入れるための農業経営にかかる資金を援助してきたことを認めうる具体的な資料は見出せない。

<2> 申立人両名及び相手方は昭和35年相手方が結婚するまでは被相続人と同居し、それぞれに被相続人の農業経営を手伝っていたが、昭和35年以降は、相手方が年に数回農業の手伝いに帰って来る程度であったのに対し、申立人両名は、朝夕あるいは休日、無報酬で被相続人の農業経営(7反余りの農地の耕作)の手伝いをするなど農業経営に深く関わり年間80日程度、35年間にわたり行ってきた。そしてその結果、遺産たる農地を維持保全できたものと推認される。

而して、農業経営は申立人両名の生活の一部を支える結果ともなっているので、寄与を考えるに当たっては日当相当分の半額をもって計算するのが相当である。農業労働に対する日当は、岡山県農業会議による大都市通勤地帯周辺の農業臨時雇賃金(女性)1日8595円をもって相当とする。

従って、8595/2×80×35 = 1203万3000円が申立人ら1人当たりの農業寄与分と換算される。

<3> 被相続人は、昭和58年頃から足腰が弱くなり失禁が頻繁になって、オムツ交換、入浴、身体の清拭、食事等の生活介護が必要となり、痴呆が進み、平成3年頃約3か月間b病院に入院した後、c分院に転院し、死亡するまで入院生活を送った。

申立人両名は共同して被相続人に対し、被相続人が自宅療養していた時期には、出勤前身の回りの用意をし、帰宅後後始末をし、特に申立人Y2は昼休みの休憩時間に帰宅して世話をし、被相続人がc分院に入院してからは帰宅後病院に通って介護し、被相続人のベッドの下で一晩を過ごしたり、深夜帰宅するなどして療養看護に努めた。

そしてその結果、遺産を維持保全できたものと推定される。

介護費用については、健康保健法及び船員保険法の規定による看護の給付を行う場合の看護料の支給基準(岡山県告示)に基づき、1日当たり3720円とし、年間平均150日それぞれが関わったとして1人当たり12年間分の換算をすると、3720×150×12 = 669万6000円と算定される。

そうすると、申立人両名の寄与分は1人当たり合計1873万円(1万円未満四捨五入)と認定される。

3  (分割方法)

遺産たる1ないし3土地持分及び本件建物については、その管理状況、今後の利用見込み、相共有者、当事者の意見希望等本件に著れた一切の事情を考慮すると、申立人両名にその2分の1宛を現物取得させ、申立人らから相手方に対し、上記取得の代償金を支払わせる方法以外には分割の方法はないものと認められる。

相手方は、現状のままで不分割のままとどめるよう主張し、当裁判所もその意向をできるだけ汲むべく配慮してきたところであるが、本件において分割を禁止すべき事由は窺われないうえ、仮に分割を禁止して不分割のままにしておくとしてもこれは相続関始時から5年を超えてはならないことになっており(民法256条、908条参照)、現時点では既に相続開始時から5年が経過しようとする時期に来ているから、もはや不分割のままとどめおくことはできないことに帰する。

4  (代償金額の算定)

叙上認定したところからすると、次のとおり算定される。

<1> 具体的相続分率

相続開始時における相続財産価額は、4250万+1899万+116万+27万 = 6292万円となる。

みなし相続財産額は、6292万+1625万(特別受益)-1873万×2(寄与分) = 4171万円となる。

従って一応の相続分は、相手方、申立人Y1がそれぞれ4171万÷3=1390万円、申立人Y2が0円(特別受益の方が相続分を超過)となり、一応の具体的相続分は、相手方が(6292万-1873万×2)/2=1273万円、申立人Y1が1273万+1873万=3146万円、申立人Y2が1873万円となる。そうすると、具体的相続分率は、相手方が1273/6292、申立人Y1が3146/6292、申立人Y2が1873/6292となる。

<2> 具体的相続分

分割時における相続財産額は、4292万+1918万十118万+13万 = 6341万円となる。

従って、具体的相続分は相手方が6341万×1273/6292=1283万円となり、全遺産を申立人両名が折半して取得することになれば、申立人Y1の具体的相続分率が3146/6292=2分の1になることから申立人Y1はその具体的相続分率に相応した遺産を取得する結果となるので、上記相手方が取得すべき金額については、申立人Y2がすべてを代償金として負担すべきこととなる。

二  してみれば、申立人両名にそれぞれ1873万円宛の寄与分を定め、被相続人の遺産分割として、遺産を申立人両名に各2分の1宛取得させ、申立人Y2において、遺産取得の代償として代償金1283万円を相手方に対し負担させるべく、また、これに沿った登記手続きをなさしめるべきこととなる。

而して、本件手続費用につき、鑑定人Bに支給した金50万円は申立人両名の負担とし、その余は各自の負担とするのを相当と認める。

よって、主文のとおり審判する。

(別紙)

遺産不動産目録

1 岡山市<以下省略>

田 4570m2

のうち、共有持分3分の2

2 岡山市<以下省略>

田 2022m2

のうち、共有持分3分の2

3 岡山市<以下省略>

畑 142m2

のうち、共有持分3分の2

4 岡山市<以下省略>

木造瓦葺平家建 居宅 1棟

床面積 51.40m2

以上

(別紙)

受益不動産目録

岡山市<以下省略>

宅地 495.87m2

のうち、共有持分3分の2

以上

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