広島地方裁判所 平成元年(わ)573号 判決 1989年10月16日
本籍
広島県豊田郡川尻町大字川尻二三二四番地
住居
同郡安芸津町大字風早一二八五番地の一
無職
西明岩夫
昭和七年一月二日生
右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官吉池浩嗣出席の上審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役一年及び罰金一六〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、広島県豊田郡安芸津町大字風早一二八五番地の一において、広島相互衛生社の名称でし尿汲み取り運搬及び浄化槽清掃業を営んでいたものであるが、所得税を免れようと企て、
第一 昭和六〇年分の実際の所得金額が五二三〇万七一三一円で、これに対する所得税額が二二三九万九四〇〇円であるにもかかわらず、収入にかかる記帳を全く行わず、適宜過少な収入金額による収支決算書を作成するなどの方法により右所得の一部を秘匿した上、同六一年二月二四日、広島県竹原市竹原町北堀一五四八番地の一七所在の竹原税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一六一二万二七九四円で、これに対する所得税額が四六九万二〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により所得税一七七〇万七四〇〇円を免れた
第二 同六一年分の実際の所得金額が六〇三六万七三一七円で、これに対する所得税額が二九四四万三八〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により右所得の一部を隠匿した上、同六二年二月一六日、前記竹原税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一五七〇万八三一二円で、これに対する所得税額が四三七万九一〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により所得税二五〇六万四七〇〇円を免れた
第三 同六二年分の実際の所得金額が五九六九万二六五八円で、これに対する所得税額が二七二八万九一〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により右所得の一部を隠匿した上、同六三年二月一六日、前記竹原税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一七〇六万〇六八四円で、これに対する所得税額が四七三万七〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により所得税二二五五万二一〇〇円を免れた
ものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書二通
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一三通
一 被告人作成の上申書
一 西明シキブ及び西明勇(二通)の検察官に対する各供述調書
一 西明シキブ及び西明勇の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 検察事務官作成の捜査報告書(検105号)
一 大蔵事務官作成の調査書二七通(検一号ないし検27号)及び領置てん末書(検34号)
(法令の適用)
罰条
所得税法二三八条一項、二項
刑種の選択
懲役刑と罰金刑を併科
併合罪の処理
刑法四五条前段、懲役刑につき、刑法四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定加重)、罰金刑につき、刑法四八条二項
労役場留置
刑法一八条
懲役刑の執行猶予
刑法二五条一項
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 青柳勤)