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広島地方裁判所 平成2年(ワ)962号 判決 1996年8月07日

原告

川原洋子

右訴訟代理人弁護士

山田延廣

平川浩子

大国和江

足立修一

被告

株式会社石﨑本店

右代表者代表取締役

石﨑信三

右訴訟代理人弁護士

那須野徳次郎

生田博通

主文

一  被告は、原告に対し、七五〇万七〇九七円及びうち五二〇万二一五一円に対する平成二年一一月九日から、うち一七九万七六三三円に対する平成六年六月二日から、うち五〇万七三一三円に対する平成七年一〇月一二日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の金員請求及び確認請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告に対し、一一七四万〇一四六円及びうち七二八万〇八一四円に対する平成二年一一月九日から、うち三六六万五四六〇円に対する平成六年六月二日から、うち七九万三八七二円に対する平成七年一〇月一二日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告と被告との間において、原告の基本給が平成六年五月一日以降月額二三万六一六五円であることを確認する。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  右1及び3につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  当事者

(一) 被告は、資本金一億二〇〇〇万円、建築一式工事、土木建築材料の製造・販売及び自動車用ガラスの加工・販売等を業とする会社で、大州(従業員約九五名・うち女性約三〇名)及び防府(同約一四〇名、うち女性約六〇名)に各工場を有し、従業員約四三〇名を擁する会社である。

このうち大州工場は、株式会社マツダ車(ママ)の自動車用ガラス等の加工を主たる事業としている(なお、大州工場は、平成三年八月、矢野に移転し、名称を広島工場矢野に改めた。)。

(二) 原告は、昭和二五年四月二一日生まれの女性であって、昭和五六年九月末に被告に入社し(大州工場勤務)、自動車用ガラスの加工に従事している。

2  賃金格差の存在

(一) 被告の賃金及び賞与等の決定方法

(1) 給与(本給)

被告の従業員の賃金のうち、給与については、就業規則二七条により、別に定める給与規定によるものとされ、同規定によると給与は本給(以下「基本給」という。)・諸手当(住宅手当等)及び割増給(時間外・休日勤務割増給等)で構成され、基本給の額は雇入れに際し、本人の学歴・能力・経験・技能・作業内容等を勘案して各人毎に決定するとされている。

そして、定期昇給が毎年三月一日に遡って行われ、各人の基本給(但し、年度によっては住宅手当も加算された時もある。)に各人の昇給率(賃上げ率)を乗じた金員が昇給額となる。

なお、被告の給与の支給方法は、当月締め・翌月一五日支払で日給月給制である。

(2) 賞与

賞与についても、就業規則二八条により別に定める給与規定によるとされ、同規定によると「会社は原則として毎年七月及び一二月に会社の業績を考慮したうえ、従業員の勤務成績などに応じて賞与を支給する」とされている。

この賞与額は、基本給に被告が算出した各人の係数(月数)を乗じて計算される。

なお、毎年賞与は、七月分につき七月一五日、一二月分につき一二月一五日までには支払われている。

(3) 時間外・休日勤務割増給

就業時間(大州工場は、午前八時から午後五時)外及び休日勤務に対しては、前記時間外・休日勤務割増給が支給され、この計算方法は、

<省略>

によって計算される。

(二) 初任給差別

被告は、現業部門の中途採用の従業員の初任給につき、男子従業員に対しては年齢のみを基準として初任給を決定しているのに、女子従業員には年齢を考慮せず、高卒の新入女子従業員の初任給しか支給していない。

ちなみに、平成二年度の男子従業員の初任給は、一八歳から五〇歳の者につき、一二万八〇〇〇円から一七万五二〇〇円の間であるのに、女子従業員は一律一二万円である。

(三) 初任給差別の重大性

前記(一)のとおり、被告では、初任給を基準に毎年の昇級(ママ)額及びこれを加算した基本給が決定され、さらにこの基本給を基準として時間外割増給及び賞与が決定されるため、初任給の格差は以後の給与、時間外割増給及び賞与のすべてに対し格差を与えることとなり、その影響は重大である。

そこで、本訴では初任給差別に基づく基本給その他の損害を請求する。

3  男子従業員との差額金の請求

(一) 労働基準法四条、一三条による差額賃金請求

憲法一四条は、法の下の平等の基本原理を定め、これを受けて労働基準法三条は国籍・信条・社会的身分を理由とする労働条件の差別的取扱いを禁止し、同法四条は、特に、女子であることを理由として賃金について男子と差別的取扱いを行うことを禁止している。

したがって、これに反する賃金の定め(個別労働契約・賃金規則)は民法九〇条の公序良俗に反する差別であり、無効になる。

本件で、被告は、女性であることのみを理由として、原告の初任給につき男子従業員と差別したものであるから、原・被告間の労働契約は賃金に関する部分に限り無効となる。

この無効になった部分については、労働基準法一三条により(又は類推適用により)、男子従業員の労働条件が適用され、原告は、男子従業員と同等の初任給が決定されたものとして計算された賃金の支払請求権を有する。

(二) 債務不履行に基づく損害賠償請求

被告は、労働契約上、労働基準法四条、一三条又は民法上の信義則に基づき、原告ら女子労働者を男子労働者と平等に取り扱う義務がある。

被告は、この平等取扱義務に反し、初任給決定において原告が女子であることのみを理由に他の男子労働者に比して低い初任給を決定した。また、この低額の初任給のため、原告のその後の給与が他の男子労働者に比して低額であるにもかかわらず、被告はその是正を放置してきた。

よって、原告は、被告に対し、債務不履行による損害賠償請求権に基づき、男子従業員の賃金との差額分の賃金相当の損害を請求しうる。

(三) 不当利得返還請求

右3(一)のとおり、原被告間の初任給以降の労働契約のうち、賃金に関する部分は無効であり、この無効になった部分については労働基準法一三条により男子従業員の労働条件が適用され、被告は、原告に対し、男子従業員と同額の初任給を支払うべきところ、これを支払わなかったため、原告は、男子従業員の賃金との差額分につき損害を被り、被告はその結果、右と同額の不当な利得を得ているから、原告は被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、男子従業員の賃金との差額分の金員を請求する。

(四) 不法行為に基づく損害賠償請求

被告は、原告に対して、初任給の決定について男子従業員との関係で差別的取扱いを行い、かつその後も是正を怠り放置したものであり、これは労働基準法三条、四条、民法九〇条に反する違法なものである。

よって、原告は、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として、男子従業員の賃金との差額分の金員を請求する。

4  男子従業員との差額金

(一)(1) 被告は、男子中途採用者の初任給を年齢のみを基準として決定しているので、原告のあるべき初任給(基本給)を決定するためには、同年齢・同時入社の男子とそれを対照するのが一番容易でかつ合理的であるが、この者は存在しない。

そこで、原告と年齢及び入社が一番近い宮尾和彦(昭和五四年一二月入社・昭和二九年一月二七日生まれ、以下「宮尾」という。)の基本給を取り敢えず損害額の計算基準とする。

宮尾の初任給は一二万円であり、原告の入社時である昭和五六年度における宮尾の基本給は、一二万八〇〇〇円であった。

(2) 原告の支給されるべき初任給(基本給)

原告は、右宮尾よりも三歳年上であり、初任給において年齢を加味すれば、少なくとも昭和五六年度及び同五七年度の基本給は右宮尾の金額以上に算定されていたはずであるが、取り敢えず昭和五六年度の基本給は右宮尾と同額の一二万八〇〇〇円と推定して計算した。

(3) 基本給の差額分

<1> 原告の昭和五七年度以降の賃金上昇率(実績)は、別表宮尾分A(「基本給の差額」)のうち「原告の賃上げ率」欄記載の率である。

<2> 昭和五六年度の支給されるべき基本給である一二万八〇〇〇円を基準に、翌昭和五七年度の基本給を計算すると、右一二万八〇〇〇円に右<1>の賃上げ率を乗じて算出した金額(百円未満は四捨五入、但し、平成三年度以降は一円未満四捨五入)である同年度の別表宮尾分Aのうち「支給されるべき基本給額」欄記載の金額の一三万四七〇〇円となる。

<3> このように、前年度の支給されるべき基本給額に、当年の賃上げ率を次々乗じて計算していくと、原告の昭和五七年度から平成六年度までの支給されるべき基本給は、別表宮尾分Aのうち「支給されるべき基本給額」欄記載の金額である。

<4> 原告が被告から昭和五六年一一月から平成七年四月までに実際に受給した基本給額は、別表宮尾分Aのうち「原告の基本給額」欄記載の金額である。

<5> この「実際に受給した基本給額」と「支給されるべき基本給額」との各年度の差額(毎年三月一日から翌年二月末日までが一年度である。)の小計は、別表宮尾分Aのうち「一年間の差額」欄記載の金額となる。

<6> 昭和五六年一一月から平成七年四月までの差額合計は、別表宮尾分Aのうち「一年間の差額」欄記載のとおり六七七万八四四八円となる。

(4) 賞与の差額分

<1> 賞与は、前記2(一)(2)のとおり、基本給に被告が決定した各人の係数(月数)を乗じて計算されるところ、原告の昭和五七年度から平成六年度までの賞与の計算の基礎となる月数(実績)は、別表宮尾分B(「年間一時金の差額」)のうち「原告の月数の換算」欄の月数となる。

<2> 原告の本来支給されるべき各年度の賞与は、前記各年度の「支給されるべき基本給額」に該当年度の右<1>の月数を乗じたものであり、別表宮尾Bのうち「支給されるべき年間一時金額」欄記載の金額となる(千円未満は四捨五入、但し、平成三年度以降は一円未満四捨五入)。

<3> ところが、原告が実際に支給を受けた各年度の賞与金額は、別表宮尾分Bのうち「原告の年間一時金」欄記載の金額であって、これと支給されるべき賞与との各年度における差額は、別表宮尾分Bのうち「差額」欄記載の金額となる。

<4> この各年度の平成六年度までの差額合計は、別表宮尾分Bのうち「差額」欄記載のとおり二六六万〇〇五六円となり、これが賞与分損害(差額)である。

(5) 時間外・休日勤務割増給の差額分

<1> 時間外・休日勤務割増給は、前記2(一)(3)に記載の計算によって支給されるところ、原告のこれまでの基本給を基礎として右計算によって算出された昭和五六年度から平成六年度までの各年度の一時間当たりの右割増給は、別表宮尾分C(「時間外・休日勤務手当の差額」)のうち「原告の手当/時間」欄記載の金額である。

<2> これに対し、前記4(一)、(3)<3>の本来「支給されるべき基本給額」を基準に算出した各年度の右割増給の一時間当たりの単価は別表宮尾分Cのうち「支給されるべき手当/時間」欄記載の金額となる。

<3> 前記<1>と<2>の一時間当たりの差額は、別表宮尾分Cのうち「一時間の差額」欄記載の金額となる。

<4> 原告の昭和五六年度から平成六年度までの各年度の時間外及び休日勤務時間数は別表宮尾分Cのうち「原告の時間数」欄記載の時間である。

<5> この時間数に前記<3>の各年度の「一時間の差額」を乗じた金額が各年度の右割増給の差額となり、この合計は別表宮尾分Cのうち「一年間の差額」欄記載のとおり三〇万一六四二円となる。

(6) 総計

右(3)ないし(5)の総計は、九七四万〇一四六円となり、これが原告の昭和五六年一〇月から平成七年四月までの給与分の差額合計となる(別表「原告の賃金と男子従業員三人の推定賃金の差額一覧」のうち宮尾の「総合計」欄記載の金額)。

(二)(1) 仮に、宮尾を比準者とすることが相当でないとしても、原告の属性に近い男子中途採用者の推定初任給を基準とした賃金の差額の平均を算出して、その差額分を請求し得る。

原告の属性に近い男子中途採用者としては宮尾のほか、次の二名が判明しているので、昭和五六年の初任給額をそれぞれ次のように推定した。

(2) 豊岡一(以下「豊岡」という。)は、昭和五七年一〇月入社、被告防府工場勤務、昭和二四年一二月二六日生まれである。

豊岡は、防府工場勤務であるが、被告の従業員で組立工として採用されたものなので、一応対象とする。

豊岡は原告よりも遅く入社したため、昭和五六年の初任給というものはありえないので、昭和五七年の豊岡の初任給額一二万円を原告の同年の賃上げ率五・二パーセントで割り引いた金額である一一万四〇〇〇円(但し一〇〇円未満は四捨五入)を昭和五六年度の初任給と推定した。

(3) 正田悟(以下「正田」という。)は、昭和五八年一〇月入社、被告大州工場勤務、昭和二五年八月二一日生まれである。

正田は、原告よりも遅く入社したため、昭和五六年の初任給というものはありえないので、昭和五八年の正田の初任給額一二万五〇〇〇円を原告の同年の賃上げ率五・三パーセント及び昭和五七年度の賃上げ率五・二パーセントで割り引いた金額である一一万二八〇〇円(但し一〇〇円未満は四捨五入)を昭和五六年の初任給と推定した。

(4) 以上の宮尾、豊岡、正田の推定初任給をもとに、右(一)と同様の計算方法で昭和五六年一一月から平成七年四月までの基本給、一時金、時間外手当の差額の合計を算出すると、以下のとおりになる(別表宮尾分AないしC、同豊岡分AないしC、同正田分AないしC及び別表「原告の賃金と男子従業員三人の推定賃金の差額一覧」参照)。

宮尾 基本給の差額 六七七万八四四八円

一時金の差額 二六六万〇〇五六円

時間外手当等の差額 三〇万一六四二円

差額の合計 九七四万〇一四六円

豊岡 基本給の差額 三六五万一四二〇円

一時金の差額 一四四万一四七〇円

時間外手当等の差額 一六万三三九三円

差額の合計 五二五万六二八三円

正田 基本給の差額 三三五万〇七八九円

一時金の差額 一三二万三九〇六円

時間外手当等の差額 一五万〇一六九円

差額の合計 四八二万四八六四円

以上の宮尾、豊岡、正田との差額の合計の平均を求めると、六六〇万七〇九七円となる(なお、原告は、豊岡につき、基本給の差額三五六万五〇〇八円、一時金の差額一四〇万九三五三円、時間外手当等の差額一六万一三六七円、正田につき、時間外手当等の差額一五万〇一六八円を主張するところ、右各金額算定の過程に明白な違算が認められるから、これを前記のとおり訂正し、右訂正後の金額を主張するものと解する)。

(5) 従って、原告は、被告に対し、少なくとも三名の推定初任給を基準とした賃金の差額の平均である六六〇万七〇九七円を男女差別に基づく賃金の差額相当額として請求する。

5  慰謝料請求

原告は、これまで被告に対し何度も男女賃金差別の是正を申し入れたが、被告は全くこれを是正しようとしなかった。この結果、原告は、男子との賃金差別という屈辱を味わいながら同一労務を継続してきた。

また、原告は訴訟提起に至るまで、被告に対し、何度も男女賃金差別是正を要求してきたが、被告は、嫌ならやめろなどと言い、一円たりとも是正しないという態度を示した。

よって、被告の本件男女差別により原告の受けた精神的苦痛は重大であり、これを慰謝するには金一〇〇万円が相当である。

6  弁護士費用

原告は、男女賃金差別の是正を求めるには訴訟提起による外には途はなく、他の同僚女性を代表する形で本訴提起に至ったが、この訴訟提起・遂行を原告訴訟代理人らに委任し、この着手金・報酬として少なくとも請求額の一割以上を支払う旨約した。

よって、弁護士費用として一〇〇万円を請求する。

7  賃金の確認請求

(一) 本件男女賃金差別に対し、男子との差額金の支払のみが認められても、原告に現在支給されるべき賃金の支払請求権があることが確認されなければ、以後も新たな賃金差別が生ずるおそれがあり、抜本的解決にはならないから、右確認請求を認めるべきである。

(二) 労働基準法一三条に基づく確認請求

右3(一)のとおり、原・被告間の労働契約の賃金の定めは公序路(ママ)良俗に反し、無効であり、その無効となった部分には、労働基準法一三条により男子の労働条件が適用されるのであるから、原告は、男子従業員の初任給を基準として計算した賃金を有することの確認を請求しうる。

(三) 労働契約による確認請求

また、右3(二)のとおり被告は女子労働者を男子労働者と平等な取扱いを行う契約上の義務があるから、原告は、労働契約に基づき、男子従業員の初任給を基準として計算した賃金を有することの確認を請求しうる。

(四) 原告と年齢及び入社が一番近い宮尾和彦との比較において算定した、平成六年五月一日現在の原告に支給されるべき基本給額は、別表宮尾分Aの中の「支給されるべき基本給額」平成六年度欄記載のとおり、二三万六一六五円であるから、原告は、労働基準法一三条又は労働契約に基づき、平成六年五月一日以降、原告の基本給が月額二三万六一六五円であることの確認を請求する。

8  よって、原告は、被告に対し、主位的に労働基準法四条、一三条に基づく差額賃金請求権又は債務不履行による損害賠償請求権もしくは不当利得返還請求権に基づき、予備的に不法行為による損害賠償請求権に基づき、一一七四万〇一四六円及びうち七二八万〇八一四円に対する平成二年一一月九日から、うち三六六万五四六〇円に対する平成六年六月二日から、うち七九万三八七二円に対する平成七年一〇月一二日から、各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、被告との間において、平成六年五月一日以降の原告の基本給が月額二三万六一六五円であることの確認を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2(一)  同2(一)の各事実は認める。

(二)  同2(二)の事実は否認する。

(三)  同2(三)は争う。

3  同3は争う。

4(一)  同4(一)(1)の事実のうち、宮尾の入社年月日、生年月日、初任給額及び昭和五六年度の基本給額は認め、その余は争う。

(二)  同4(一)(2)は争う。但し、原告が宮尾より三歳年上であることは認める。

(三)  同4(一)(3)の事実のうち、<1>及び<4>は認め、その余は争う。

(四)  同4(一)(4)の事実のうち、<1>及び<3>のうち原告が実際に受けた各年度の賞与金額は認め、その余は争う。

(五)  同4(一)(5)の事実のうち、<1>及び<4>は認め、その余は争う。

(六)  同4(一)(6)は争う。

5(一)  同4(二)の(1)、(4)、(5)は争う。

(二)  同4(二)(2)の事実のうち、豊岡が昭和五七年一〇月入社、被告防府工場勤務、昭和二四年一二月二六日生まれの男子、被告会社の従業員であること及び同人の初任給が一二万円であったことは認め、その余は争う。

(三)  同4(二)(3)の事実のうち、正田が昭和五八年一〇月入社、被告大州工場勤務、昭和二五年八月二一日生まれの男子であること及び同人の初任給が一二万五〇〇〇円であったことは認め、その余は争う。

6  同5ないし7は争う。

三  被告の主張

1  男女賃金差別の不存在

(一) 被告の中途採用者の初任給は、その給与規定(八条)に基づき、本人の学歴・能力・経験・技能・作業内容等を勘案して、各人ごとに決定されるものであり、男女の差別はない。

(二) 労働基準法四条は、労働者が「女子であること」以外の合理的理由、例えば、労働者の職務、能率、技能等によって、賃金に差異(格差)のあることまで禁止するものではない。さらに、我が国では、広く一般に年功賃金制が承認されているから、勤続年数ないしは経験年数の差により賃金に差異(格差)のあることも労働者が「女子であること」以外の合理的理由の一つに加えられるべきである。

したがって、ある女子従業員と男子従業員との間の賃金上の差異すなわち格差を「女子であること」を理由としてなされた不当な賃金差別であるというためには、少なくとも、その男女従業員の具体的な職務、能率、技能、勤続年数ないしは経験年数等が同一と評価できるものであることが前提でなければならない。

我が国の賃金統計上、男女間に大きな賃金格差があるからといって、その格差が専ら「女子であること」を理由として生じた、不当な賃金差別に由来するものであると一概に断じ得ないことはもちろん、被告会社で男女別、年齢別に賃金統計をとった場合に、仮に男女間に賃金格差が認められたとしても、それを不当な賃金差別に由来するものであると一概に断ずることはできない。

具体的な男女間の賃金差別の問題は、専ら比較の対象たる女子従業員と男子従業員との対比において、その職務、能率、技能、勤続年数ないし経験年数等について個別的、具体的に判断されるべきである。

2  宮尾と比較することについて

(一) 宮尾は、昭和五四年一二月七日、被告に入社し、大州工場製造課に在籍していたが、同人は入社前、入社後も生かすことのできる技術、技能について一〇年以上にわたる経験を有していたので、原告の入社した昭和五六年には、すでに高度の技術と経験を有する改善業務を主として担当し、昭和五八年一二月には大州工場製造課改善班所属となり、現在まで専ら改善業務に従事している。

他方、原告は、入社後現在まで一貫して大州工場製造課に在籍して加工業務に従事しており、入社前においても託児所又は保育所等に勤務したことがあるのみで、入社後も生かすことのできる社外経験は全くなく、技術上の資格や高度の技能を有するものでもない。

(二) 我が国で広く採用され、普及されている終身雇用制度、類型別(ないし総合職、補助職のような職種別)雇用制度のもとにおいて、ある類型間の職務レベルを比較するには、短期的・限界的・個別的観点からなされるべきものではなく、長期的・平均的・総合的観点から、制度の趣旨を踏まえつつ、慎重に見極めたうえ、類型的になされるべきものである。

被告における経験工は、<1>特殊技能を要するメンテナンス作業及び生産技術作業、<2>フォークリフト運転による物流作業、<3>高密度・高負荷・複雑(操作・品質)な繰り返し定形(ママ)作業及び<4>量産開始初期の品質確認、作業標準整備、指導等の職務に従事し、素人工は、<1>単純・軽負荷の繰り返し定形(ママ)作業及び<2>補助作業に従事する者であり、経験工について短期的に見れば、労働需要のアンバランス、欠勤等による素人工の工数不足を補うため、あるいは教育目的のため素人工の職務を担当することもある。

このような被告における経験工、素人工の職務類別につき、これを前記のように、長期的・平均的・総合的観点から見れば、その間には明らかに類型的に有意な差が存在し、両者が同一労働に従事しているということはできない。

宮尾の改善班における担当職務は経験工の右<1>の特殊技能を要するメンテナンス作業及び生産技術作業であり、原告が入社以来担当してきた職務は、素人工の右<1>の単純・軽負荷の繰り返し定形(ママ)作業である。この両者の担当職務には明らかに有意の差があり、これを「同一労働」と評価することはできない。

(三) 以上のとおり、原告と宮尾は、在籍する職場も、担当職務も全く異なり、その技能においても格段の差があるばかりでなく、勤続年数ないし経験年数にも大きな差があるのであるから、原告と宮尾の賃金を比較することは失当である。

3  宮尾、正田、豊岡の三名の賃金の平均と比較することについて

正田はフォークリフト運転による物流作業に従事し、豊岡は高密度・高負荷・複雑作業に従事していて、いずれも宮尾同様、元経験工であったから、右2と同様、原告と正田、豊岡の賃金を比較するは失当である。

したがって、宮尾、正田、豊岡の三名の賃金の平均と比較することはできない。

4  賃金請求権の消滅時効

(一) 賃金請求権はその請求権発生時から二年間の経過により時効消滅する(労働基準法一一五条)。

本件訴えの提起は平成二年一〇月二六日であるから、被(ママ)告が請求する賃金の差額請求権のうち、昭和五六年一〇月一五日支払分から昭和六三年一〇月一五日支払分までの給与(時間外、休日勤務割増給を含む)並びに昭和五六年一二月支払分から昭和六三年七月支払分までの賞与についての各差額賃金請求権は、請求権発生時から本件訴え提起までの間に二年以上経過している。

(二) 被告は、原告に対し、平成三年九月四日の本件口頭弁論期日において、原告の右賃金請求権の時効を援用する旨の意思表示をした。

5  不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効

(一) 原告は、入社後四、五年したころ、すなわち、昭和六〇年ないし同六一年頃までには、男性と女性は同じ仕事をしており又は女性の方が高度の仕事をしているのに、女性の賃金は新入社の年齢の若い男性より何万円も安く、原告はそのことに仕事を放り出して帰りたいほどの不満を持った、そして、そのことにより昭和六三年には労働組合の執行委員になり男女賃金格差是正に取り組んだというのであるから、原告は、遅くとも昭和六一年一二月三一日までには、同じ仕事をしている男子従業員より不利に取り扱われたと認識していたものであり、その違法性と併せて損害を知ったものというべきである。

従って、昭和六一年一二月三一日以前に賃金の支払期が到来したものについては遅くとも昭和六一年一二月三一日が時効の起算日であり、その後に賃金の支払期が到来したものはその賃金の支払期が時効の起算日である。

(二) 昭和五六年一〇月一五日支払分から昭和六二年一〇月一五日支払分の給与請求権(時間外、休日勤務割増給を含む)並びに昭和五六年一二月支払分から昭和六二年七月支払分までの賞与請求権はその起算日から三年経過した。

(三) 被告は、原告に対し、平成七年六月二一日の本件口頭弁論期日において、右不法行為に基づく損害賠償請求権の時効を援用する旨の意思表示をした。

四  被告の時効の主張に対する認否及び反論

1  賃金請求権について

右三の4(一)の事実は認める。

2  不法行為に基づく損害賠償請求権について

右三の5(一)及び(二)の各事実は否認する。

不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、「損害を知りたるとき」とされているところ、この「損害」とは「不法な損害」と解されている。

原告は、入社後四、五年した時点では、男子従業員との間の賃金格差があることについて漠然と認識していたにとどまり、しかもその当時被告には客観的な賃金の支給基準が存在しなかったこともあり、原告は男子従業員との間の賃金格差の存在を具体的には知り得なかった。また、原告は昭和六三年四月の団体交渉では、会社側の作成した男女別全職種の平均賃金に基づき、男女に格差があり、これを是正するように求めたもので、その格差の生ずる原因及び原告自身の格差の具体的内容・金額は把握し得ていなかった。

原告は、平成二年七月、従業員からの事情聴取を行い、職業安定所の求人票を手に入れたとき、同年入社の女子の初任給が一律に一二万円であるのに対し、男子の初任給は一二万八〇〇〇円から一七万五二〇〇円であることを認識したが、原告の入社時である昭和五六年当時のことについては同じような状況であったことが漠然と推測できたにとどまる。

原告は、賃金格差が違法な差別に基づくものではないかとの認識を持ちながら、提訴後も調査を続けた結果、男女従業員に給料明細を個々に提出してもらい、大量観察に近い方法によって、被告における具体的な賃金格差の実態とその格差が違法な賃金差別に基づくものであるという認識に到達することができたものである。

したがって、原告が違法性及び損害を知ったのは、本件訴訟提起後であるから、不法行為に基づく損害賠償請求権は時効消滅していない。

3  消滅時効の援用の濫用

被告は、原告に対し公序良俗に反する賃金差別を昭和五六年から平成二年七月まで約一〇年にわたり行い、しかも昭和六三年以降は度重なる原告らの差別改善の申し入れがあるにもかかわらず、これを漫然と放置し、男女差別を是正するどころか、逆に二度にわたる給与調整で格差を拡大させてきたのであって、原告の差額賃金請求権及び不法行為に基づく損害賠償請求権につき消滅時効の援用を認めることは、被告の右の違法行為を容認する結果となる。

よって、被告の右消滅時効の援用は権利の濫用として許されない。

第三当裁判所の判断

一  請求原因1及び2(一)の事実は当事者間に争いがない。

二  被告における男女の初任給格差について

1  労働基準法四条は、男女同一賃金の原則を宣明して、「使用者は、労働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。」としている。

一般に、男女間に賃金格差がある場合、労働者側でそれが女子であることを理由としてなされたことを立証するのは実際上容易でないから、公平の観点から、男女賃金格差がある場合には、使用者側でそれが合理的理由に基づくものであることを立証できない限り、右格差は女子であることを理由としてなされた不合理な差別であると推認するのが相当である。

そこで、本件において、被告の従業員のうち、原告ら中途採用女子と男子との間の初任給格差の存否及び右格差がある場合、それが合理的理由に基づくものであったか否かを検討する。

2  原告の初任給は九万六〇〇〇円、宮尾の初任給は一二万円、昭和五六年度の基本給は一二万八〇〇〇円、豊岡の初任給は一二万円、正田の初任給は一二万八〇〇〇円であったことは当事者間に争いがない。

3  証拠(<証拠・人証略>)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 原告は、高校卒業後、約六年間保育所及び託児所で保母として勤務した後、昭和五六年九月二八日、被告に入社したが、入社後四、五年した頃から、新たに入社してくる年齢が若い男性の賃金が自分より高いことを知り、同じ仕事をしているのにおかしいという不満が残った。しかし、被告は賃金体系を公表していなかったことから、当時、なぜ右のような格差があるのかは知ることができなかった。

(二) 原告は、昭和六一年労働組合の執行委員に選出され、昭和六三年四月六日の労使協議会(賃上げ団体交渉)で労働組合としてはじめて、被告に対し男女賃金格差是正の申入れをした(<証拠略>)。

この年の男性の平均賃金は一六万二八一三円(平均年齢二九・五歳、平均勤務年数五・七年、扶養家族一人)であったのに対し、女性の平均賃金は一二万六九三八円(平均年齢三六・五歳、平均勤務年数五・六年、扶養家族〇・一人)であった。原告は、被告に対し、この数値を基に、勤務年数はほぼ同じで女性の方が年齢が高いのに、女性の平均賃金が男性より三万五〇〇〇円も低いのはおかしいと指摘した(<証拠略>)。

これに対し、被告は、「すぐにはできないが、男女雇用平等法もあるのでだんだんには変えなければならないだろう。」と回答した(<証拠略>)。

(三) 平成元年四月一一日の賃上げ団体交渉で、被告は給与調整を発表した(<証拠略>)。

これは、初任給の高騰により、入社八年までの従業員の勤続年数による賃金差が小さい点を是正するために行われたもので、二三歳から三〇歳までの大卒と、二一歳から二九歳の短大卒、一九歳から二六歳の高卒が対象となり、平均二二九一円の調整がなされた。

しかし、製造現業職の女性は、年齢が高かったため、右調整の対象となった者はいなかった。そこで、男性と同じ仕事をしているのに男女間の賃金格差が大きいという問題が課題として残された(<証拠略>)。

また、平成二年春の給与調整では、高騰した大卒男子の初任給とのバランスをとるということで、高卒男子について、一九歳四〇〇〇円、二〇歳五〇〇〇円、二一歳六〇〇〇円、二二歳から三〇歳までが七〇〇〇円の調整があった。しかし、女性は基本給一三万円未満の者が一律一七〇〇円の調整を受けたにすぎなかった(<証拠略>)。

さらに、平成二年夏の一時金支給において、被告は、勤続三年未満の者は住宅手当がないものとして扱った点では男女平等であったが、三年以上の男性は全員住宅手当七五〇〇円をもらっているものとして扱ったのに対し、三年以上の女性については、右のような扱いをしなかった(住宅手当はもらっている人はもらっている者として扱うが、もらっていない人はもらっていない者として扱った。<証拠略>)。

製造課の女性の中では、その時点で住宅手当をもらっていたのは二人だけだったので、女性たちから強い抗議が出た。

(四) 右のように平成元年、平成二年の給与調整及び一時金支給において、主に男子従業員を対象とした調整が行われたため、男女賃金格差がさらに拡大した。

そこで、原告は、平成二年八月五日、他の女子従業員とともに、労働組合として男女賃金格差是正に取り組むよう、労働組合の執行委員長に要求した(<証拠略>)。

右要求を受けて、労働組合は、平成二年八月二九日の労使協議会において、(1) 新賃金体系における男女賃金格差是正の有無、(2) 一時金支給時の住宅手当七五〇〇円の女性に不利な扱いの廃止、(3) 中途採用者の男女初任給格差是正、という申入れをしたところ、当時の被告代表者白井隆康は、右(1)につき、新賃金体系でそれまでの男女格差は拡大も縮小もない、(2)につき、一時金支給時の女性に不利な住宅手当の考え方は組合のいうとおりなので今後はやめる、(3)につき、中途採用者の初任給の男女格差は世間一般の考え方としてあるし、そうしないと求人が困難であること、男女の初任給格差がある理由としては女性の場合体力が劣る、出産育児がある、勤続年数が短い、仕事に対する姿勢、会社の期待度が違う、需給のバランスがある、転勤が困難、残業規制など法的保護がある、と説明し、労働省と広島県商工会議所の統計資料を示した(<証拠略>)。

(五) 原告は、新賃金体系においても格差が是正されないことを知り、社内での解決は望めないと判断し、平成二年一〇月二六日、本訴を提起した(<人証略>、弁論の全趣旨)。

(六) 平成二年一一月二六日、被告において、新人事制度の説明会があった。新人事制度の眼目は、職能資格制度を導入し、職員の能力の発展段階を資格等級ごと(一級から一〇級)に区分し、この等級を軸として効果的な能力の開発や能力の活用をはかり、それに基づき公正な処遇を行うということにある(<証拠略>)。

新人事制度のもとでは、職務遂行能力の発展段階に応じた賃金である職能給が賃金の基本となる。職能給とは、資格給(各人の職務遂行能力により決定された資格に対して支払うものであり、資格等級ごとに定額である)と習熟給(各資格等級の中における各人の習熟度すなわち、職務遂行レベル・知識技能レベルの向上の累積に対し支払うもので、初任習熟給に毎年の人事考課によって決定される定期昇給額を積み重ねる)からなる(<証拠略>)。

被告従業員各人の移行賃金については、各人の現賃金は下げない、若年層の現住宅手当七五〇〇円の有無をそのまま新職能給の差とすることは納得性、公平性に欠けるということを考慮して、習熟給は、現基本給+七五〇〇円+八〇〇〇円(女子のみ)+主任、副主任の現役職手当-資格給とすることとなった(<証拠略>)。

労働組合からは、来年度から高卒男女の賃金が同一になる世間の動向があるので今年度の新規高卒男女初任給の八〇〇〇円の格差をなくすため女子のみ全員底上げするという説明があった(<証拠略>)。

平成二年一二月一日、新人事制度が施行され、男性は七五〇〇円、女性は一万五五〇〇円それぞれ賃上げして、男性の新規高卒初任給は一二万八〇〇〇円から一三万五五〇〇円に、女子の新規高卒初任給は一二万円から一三万五五〇〇円になり、男女の新規高卒の初任給は同額になった(<証拠略>)。

しかし、中途採用の女子は右の八〇〇〇円のみ格差が是正されただけで、依然として男性との賃金格差は残った(<証拠略>)。

4  右2及び3の事実によれば、被告において、原告ら中途採用女子と男子との間の初任給及びこれを基礎としたその後の賃金につき格差のあったことが認められ、右格差が合理的理由に基づくものであるとは認め難い。

5(一)  もつとも、証人S及び同M1は、中途採用男女従業員の初任給格差を認めつつ、新人事制度施行以前は、初任給の決定基準として、経験工、素人工という区分があり、経験工は高密度・高負荷・複雑作業を行い、素人工は単純繰り返し作業を行っていたこと、素人工はその年の高卒の事務職の初任給と同じであるが、経験工の初任給は経験や資格、意欲を考慮して決定していたこと、いずれの職務に就くかは採用面接の際、本人に作業場、作業内容を見てもらい、本人の希望によって決めていたこと、女子は経験工を希望しなかったので、結果的に女子は全員素人工となり、男子で素人工を希望した者は、素人工の給料では低すぎるということで就職を辞退したため、男子は全員経験工になったこと、平成二年一二月からの新人事制度の実施によって、従来の素人工、経験工の区別はなくなり、初任給の決定方法も一本化され、中途採用者の場合は以前の経験、知識で会社に役立つものであれば、誰でも初任給に反映されるようになった旨証言する。

しかしながら、被告の従業員のうち、男性も含めて、面接時に単純な仕事と複雑な仕事があるとか、どちらを選ぶかなどという話を聞いた者はいないこと(<証拠・人証略>)、男子従業員は、採用面接の際、被告の面接担当者が年齢を基準とした賃金表のようなものを見て初任給が決まったと供述していること(<証拠・人証略>)、作業標準票に基づく単純繰り返し作業をするものが素人工であるとすれば、右作業には男性も女性も従事していること(<証拠略>)、製造課の仕事はすべてガラスに部品を取り付ける作業で、男性も女性も作業内容は同じであったこと(<証拠略>)、T1は、昭和五六年頃から二年間、被告が経験工の職務であると主張する改善班の仕事を宮尾和彦とともに行っていたこと(<証拠・人証略>)、Sは、経験工、素人工の区別があることは公表していなかったが、経験工は多能工、素人工は組立工として本人に通知している旨証言するが、他方、M1は、経験工イコール多能工ではなく、経験工及び素人工の中にそれぞれ多能工が存在する旨証言し、被告の内部でも初任給決定の基準となる経験工と素人工の概念や区別が必ずしも明確でないこと、以上の事実が認められる。

右事実によれば、被告において、新人事制度の導入前に経験工、素人工という区別があり、女子は全員素人工となったという右S及びM1の各証言は信用できず、他に中途採用男女の初任給格差に合理的理由があったことを認めるに足りる証拠はない。

(二)  さらに、右S及びM1は、原告と宮尾との賃金の格差について、宮尾は一一年余りの社外経験があり、入社時に将来色々な資格を取ったり、大いに能力を発揮する可能性があると考えられたこと、宮尾はアーク溶接の資格、ガス溶接の資格、研削砥石取替の資格、フォークリフトの資格、低圧電気取扱いの資格を有しているが、原告は、入社前に保育所か託児所で働いていたのみであって現在も資格、特殊技能はないこと、原告は、ムーンルーフのウェザーたたきこみを主に八年以上行っているが、これは単純な軽負荷の繰り返し定型作業であって、宮尾が行ってきた複雑、高密度な作業とは職務内容が異なるから、原告と宮尾とでは会社に対する貢献度が違う旨証言する。

しかしながら、証拠(<証拠略>)によれば、宮尾は、入社時の面接の際それまでの職歴について聞かれたが、溶接の仕事について特別に聞かれたことはなく、入社後溶接の仕事をしてもらうという話もなかったこと、面接の後工場を見て回ったが、自分もこの仕事(組立)をするのだと思ったこと、昭和五五年六月、ガス溶接の資格を取りに行くように指示があったため、右資格を取得し、その後も各種の資格を取ったが、賃金には反映されなかったこと、同人は、昭和五四年に入社してから約一年三か月組立作業に従事し、昭和五六年三月から改善班で改善業務を行い、昭和五七年七月、フォークリフト運転技能の資格を取得して、同年八月からリフト作業に従事したこと、他方原告は、入社後、主にカペラバックウィンドーの端子付け、サバンナサイドガラス部品接着、ムーンルーフのウェザーたたきこみという組立作業を行い、現在に至っていることが認められ、これによれば、原告と宮尾は、入社後の職務内容、資格取得の有無については差異があるものの、両名とも、入社時には資格を有していなかったほか、等しく組立作業に従事していたことが認められる。

加えて、後掲各証拠によれば、平成元年に被告に入社したIは、入社前一六年間マツダの製造部門に勤務し、ガス溶接、フォークリフトの免許を有していたが、平成二年に被告に入社したWは、入社前に飲食業を営んでおり、組立の経験はなく、フォークリフトなどの免許も有していなかったこと、右両名は被告のミラー職場で共に働いたが、右Iの平成元年度の初任給は、一五万六七〇〇円であったのに対し、右Wの平成二年度の初任給は、一七万二三〇〇円であり、また、右Wの初任給は、右Iの平成二年度の賃金より五五〇〇円高かったこと(<証拠略>)、新制度施行後である平成三年度中途採用者の初任給についても、入社前マツダ車の部品組立を約三年間、マツダ車のエンジン部分のスポット溶接を約八年間の経験があるM2の初任給も、電話交換手、病院の受付事務という職歴のみであるM3の初任給も、共に一三万九六五六円と、新規高卒男女の初任給と同じであるのに対し、入社前はトラック運転手という職歴のみであるT2の初任給は一八万一四九三円であったこと(<証拠略>)が認められ、また、被告において入社前の経験を評価する客観的基準のなかったことは、証人(S及び同M1)の証言するところである。

右事実及び前記5(一)で認定の事実によれば、被告において初任給決定の際に入社前の経験や資格が考慮されていたという事実は認められない。

以上のとおり、原告と宮尾は入社時には、同じ組立作業に従事していたこと、組立作業の中に経験工、素人工という明確な区分はなかったこと(5(一))、初任給決定の際に入社前の経験や資格が考慮されていたとは認められないことから、右両名の間の初任給格差に合理的理由を見出すことはできない。

(三)  なお、被告は、正田、豊岡も宮尾と同様、もと経験工であり、原告と職務内容が異なるから、原告と正田、豊岡の賃金を比較することは失当であると主張するが、前記認定のとおり、被告において、素人工と経験工の明確な区別はなく、原告と正田及び豊岡との間の職務内容に有意な違いがあるとは認められないから、被告の右主張も理由がない。

6  よって、被告における中途採用男女の初任給格差(たとえば、原告と宮尾、豊岡及び正田ら男子従業員との間の初任給格差)には合理的理由が認められないから、原告が女子であることのみを理由としてなされた不合理な差別であると認められる。

三1  差額賃金請求(主位的)について

原告は、本件賃金差別は、女子であることのみを理由とするものであって、労働基準法四条に反するから、原・被告間の労働契約は賃金に関する部分に限り無効であり、この無効になった部分は同法一三条により(又は類推適用により)男子の労働条件が適用されることになるから、原告は、男子従業員と等しい初任給が決定されたものとして計算された賃金と現実に支給された賃金との差額について賃金請求権を有すると主張する。

そもそも、賃金は、労働の対価として使用者が労働者に支払うものであって(労働基準法一一条)、その性質上一律的な規定になじまないものであるから、賃金の具体的内容、特にその額については、労働契約や就業規則等の使用者と労働者との意思表示によって定めるほかはない。

もっとも、労働基準法一三条は、労働基準法の直律的効力を定め、民法の私的自治に対する例外として、当事者の意思表示なくして法律効果を発生させることができるとしているが、同条の「この法律に定める基準」とは、「達しない労働条件」という文言から明らかなように、労働時間や休日、休暇などのように具体的、数量的な基準を指すものと解され、賃金の場合には具体的な金額を確定することができる基準でなければならないから、それ自体として内容の明らかでない、「女子であることを理由として差別しないこと」が右の基準に該当すると考えることはできない。

また、本件では、「基本給の額は雇入れに際し、本人の学歴・能力・経験・技能・作業内容等を勘案して各人毎に決定する」(被告の給与規定八条)と規定されているのみで、賃金表などの客観的な支給基準が存しないため、原・被告間の労働契約が賃金に関する部分に限り無効であるとしても、この無効になった部分に補充すべき賃金規定の内容が一義的に明確ではないため、同条にいう「この法律に定める基準」を確定できないから、同法一三条を適用する余地はない。

さらに、賃金表などの客観的な支給基準が存在せず、賃金額の決定に際し、被告の具体的な意思表示又は裁量行為が必要とされる本件において、被告の具体的意思表示がないにもかかわらず原告について男子従業員と同等の初任給が決定されたものと解する見解は、意思表示の解釈上無理があり、採用することができない。

したがって、差額賃金請求権はこれを認めることができないから、原告の右主張は理由がない。

2  債務不履行に基づく損害賠償請求(主位的)について

原告は、被告には労働契約上女子従業員を男子従業員と平等に取り扱う義務があるにもかかわらず、原告に対し、男子従業員より低い初任給を決定したとして、債務不履行に基づき差額賃金相当の損害賠償を請求する。

しかしながら、前示のとおり賃金の決定には被告の意思表示が必要であると解されることから、原告の主張するように労働契約の内容として、被告に対し、原告に男子労働者と同等の初任給を支給すべき債務を認めることは解釈上困難であるし(被告の意思表示がないにもかかわらず実質上賃金債権の発生を認めることになる。)、また、不履行とされる被告の債務の内容についても、決定されるべき賃金額が一義的に明確ではなく、被告にとって債務の内容が特定を欠き明確とはいえないから、男女平等取扱義務に反する初任給の決定を債務不履行とする原告の主張は理由がない。

3  不当利得返還請求(主位的)について

原告は、被告は原告に対し、男子従業員と同等の初任給を支払う義務があるのに、これを支払わなかったため、原告はその後も右初任給を基準とした男子従業員との賃金差額につき、右差額賃金相当の損害を被り、被告はその結果不当な利得を得ているとして、不当利得返還請求をする。

しかし、右三1で述べたとおり、被告の意思表示にかかわらず、被告に男子労働者と同等の初任給を支払う義務を認めることはできないから、不当利得返還請求も認めることができない。

4  賃金の確認請求について

原告は、労働基準法一三条もしくは労働契約に基づき、宮尾と同等の初任給が決定されたものとして計算した平成六年五月一日以降の基本給の確認請求をする。

しかし、前述のとおり、客観的な賃金の支給基準が存しない本件においては、労働基準法一三条もしくは労働契約上、被告の意思表示がないにもかかわらず、原告と被告との間で、原告につき宮尾と同等の初任給を支払う旨の労働契約が成立し、差額賃金請求権が発生したものと解することはできないから、右確認請求は認めることができない。

四  不法行為に基く(ママ)損害賠償請求(予備的)について

前記一、二の認定説示によれば、被告は、女子であることのみを理由として、原告と男子従業員との間で初任給差別をし、その後も是正することなく放置して賃金差別を維持したものであるから、右差別は労働基準法四条に反し、公の秩序に反するものとして不法行為を構成するというべきである。

したがって、原告は、不法行為に基づき、被告に対し、右初任給差別と相当因果関係のある損害の賠償を請求することができる。

五  損害額について

原告は、男子従業員の初任給は年齢のみを基準として決定されているから、原告と同職場で、年齢及び入社時期が一番近い宮尾の基本給を基準として損害額を計算すべきであると主張する。

たしかに、被告の男子に対する初任給決定は年齢との相関関係が強いことが認められるが(<証拠略>)、年齢が一歳上がるごとに初任給が一定額ずつ上がるような明確な賃金体系が採用されていたことを認めるに足りる証拠はなく、また、男性については年齢のみが考慮されていたというのであれば、豊岡、正田に比べて宮尾の初任給は低くなるはずであるが、宮尾(入社時二五歳)、豊岡(同三二歳)も初任給は一二万円であるから、年齢のみが初任給の基準とされているわけではないと推認される。

また、入社時の年齢のみを考慮するならば、宮尾よりも、正田(同三三歳)、豊岡の方が原告の入社時の年齢(三一歳)に近く、入社時期も豊岡の方が宮尾より近い。

したがって、本件で宮尾の賃金を捉え、宮尾との比較においてのみ差額を算出するのは相当でないが、他方、豊岡は原告(大州工場勤務)と異なり防府工場の従業員であるし、また、原告との格差が最も少ない正田のみを基準とするのも妥当でないから、結局、原告と年齢・入社時期の近似する宮尾、豊岡、正田の三人の初任給額を基準としてそれぞれ原告との賃金格差を算定し、その平均額をもって原告の本件損害額とするのが損害賠償法を(ママ)支配する衡平の理念に照らし、最も合理的であると考える。

そうすると、宮尾については、昭和五六年度の基本給(争いがない。)を昭和五六年入社の場合の初任給と推定し、豊岡、正田については各人の初任給額(争いがない。)を原告の賃上げ率で割り引いた金額を昭和五六年入社の場合の初任給と推定し、右各人の推定初任給を基準に原告の各年度の賃上げ率(争いがない。)を乗じて昭和五六年一一月から平成七年四月までの基本給、一時金、時間外手当の差額の合計を算出すると、それぞれ別表宮尾分、同豊岡分及び同正田分の各AないしCのうち各「合計欄」記載の金額のとおりであり、原告と右三名の差額の合計の平均額は別表「原告の賃金と男子従業員三人の推定賃金の差額一覧」のうち差額の「総合計」の「平均額」欄記載のとおり、六六〇万七〇九七円となるから、原告の本件損害額は、右六六〇万七〇九七円と認めるのが相当である。

六  慰謝料請求について

一般に、不法行為に基づく財産上の損害の賠償にあっては、たとえその不法行為によって被害者が財産的損害のみならず精神的損害を被ったとしても、財産的損害が賠償されれば、これによって、通常、精神的損害も慰謝されたものとみるのが相当であるが、財産上の損害の賠償があってもなお慰謝され得ない精神的損害を被った場合には、加害者において、右事情による損害を予見し、または予見し得べかりし場合に限り、これを賠償すべき義務があるものと解すべきである。

これを本件についてみるに、右二3で認定したところによれば、原告は、昭和五六年の入社時から本件訴え提起に至るまで、被告により違法な賃金の差別的取扱いを受けてきた者であり、被告に対し、労働組合の執行委員として、昭和六三年四月から、労使協議会で毎月一回男女賃金格差是正の申入れをし、同月六日の賃上げ団体交渉において、被告も「すぐにはできないが、男女雇用平等法もあるので、だんだんには変えなければならないだろう」と答えていたにもかかわらず、被告は右格差を是正しなかったばかりか、平成元年四月及び平成二年春の給与調整並びに平成二年夏の一時金支給の際には、主に男子従業員を対象とする調整を行った結果、男女賃金格差はさらに拡大するに至ったこと、平成二年八月の労使協議会において、労働組合からの男女賃金格差是正の申入れに対し、当時の被告代表者白井隆康は、各人の能力を賃金の基準とする新賃金体系においても、一時金支給の際の住宅手当についての男女不平等は是正するが、それまでの男女賃金格差は拡大も縮小もない、中途採用者の初任給の男女格差も是正しない旨説明するに及んで、原告は、もはや社内での解決は期待できないと考え本件訴えを提起するに至ったこと(なお、被告は、本件訴え提起後、女子従業員の賃金を一律一万五五〇〇円賃上げしたが、中途採用男女の賃金格差は八〇〇〇円是正されただけで、なお賃金格差は存続した。)、以上の事実が認められることからすれば、原告は、入社以来約一〇年に及ぶ長きにわたり、被告から女子であることを理由にいわれなき賃金差別を受けてきたものの、これに甘んじて耐えてきたわけではなく、被告における男女賃金差別是正のため積極的に取り組み、労働組合の執行委員等の立場で繰り返し被告と交渉を重ねてきたが、被告において右差別を是正しようとしないばかりか、数次にわたる給与調整等で男女間の賃金差別をさらに拡大させ、剰え新賃金体系においても中途採用者の初任給の男女格差を是正しない旨言明するに及んで、もはや被告との交渉による賃金差別是正の問題の解決は期待できないものと考え本訴を提起したものであるから、原告は、被告の右のような頑な対応により、賃金差別是正のための真摯な努力を無視され、これにより差額賃金相当の賠償がされたのみでは慰謝されない精神的苦痛を被ったものと認めるのが相当であり、また、被告においても、原告の右精神的苦痛による損害の発生を予見し得たものと認められる。

したがって、被告は、原告に対し、右精神的損害の賠償をすべきであるが、原告の右精神的苦痛を慰謝するためには、前示認定の諸事情等を勘案すると、三〇万円が相当である。

七  不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効について

被告は、原告は、遅くとも昭和六一年一二月三一日までには、男子従業員より不利に取り扱われたと認識していたものであるから、右時点を消滅時効の起算点とすべきであるとする。

前記二3(一)で認定したところによると、原告は、入社後四、五年したころには原告は男性と同じ仕事をしているのに、新入社の年齢の若い男性よりも賃金明細書を比較してみると、賃金が低いとわかるようになったが、この時点では、被告が客観的な賃金体系を公表していなかったことなどから、いまだ男子従業員との間に違法な賃金差別があることを漠然と認識していたにとどまり、具体的には知りえなかったことが認められる。

しかしながら、前示認定のとおり(前記二3(二))、原告は、昭和六三年四月六日、賃上げ団体交渉で、労働組合としてはじめて、会社に男女賃金格差是正の申し入れをしたが、その際、その年の男女の平均賃金、平均年齢、平均勤務年数、扶養家族についての具体的数値を基に、被告に対し、勤務年数はほぼ同じで女性の方が年齢が高いのに、女性の平均賃金が男性より三万五〇〇〇円も低いのはおかしいとの指摘をしたことが認められるから、原告はこの時点では、男女の賃金格差が女子であることのみを理由とする、違法なものであることを認識していたものと認めるのが相当である。

したがって、本件不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、右昭和六三年四月六日とすべきところ、同日から三年以内の平成二年一一月八日に原告が本件訴えを提起したことは本件記録上明らかであるから、不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効をいう被告の主張は、その余の点につき判断するまでもなく理由がない。

八  弁護士費用

原告らが本件訴訟の遂行を原告訴訟代理人らに委任し、その報酬を支払う旨約したことは弁論の全趣旨により認められるところ、本件訴訟の内容、経過及び認容額その他諸般の事情を勘案すると、本件と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害としては、六〇万円が相当である。

九  結論

以上によれば、原告の本訴請求は、不法行為に基づく損害賠償として、七五〇万七〇九七円及びうち五二〇万二一五一円(昭和五六年一一月から平成二年九月までの差額賃金相当損害金、慰謝料及び弁護士費用の合計額)に対する平成二年一一月九日から、うち一七九万七六三三円(平成二年一〇月から平成六年四月までの差額賃金相当損害金)に対する平成六年六月二日から、うち五〇万七三一三円(平成六年五月から平成七年四月までの差額賃金相当損害金)に対する平成七年一〇月一二日から、各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を認める限度で理由があるからこれを認容し、その余の金員請求及び確認請求はいずれも失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条本文を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松村雅司 裁判官 金村敏彦 裁判官 村上未来子)

宮尾分A 基本給の差額 6,778,448円

<省略>

宮尾分B 年間一時金の差額 2,660,056円

<省略>

宮尾分C 時間外・休日勤務手当の差額 301,642円

<省略>

豊岡分A 基本給の差額 3,651,420円

<省略>

豊岡分B 年間一時金の差額 1,441,470円

<省略>

豊岡分C 時間外・休日勤務手当の差額 163,393円

<省略>

正田分A 基本給の差額 3,350,789円

<省略>

正田分B 年間一時金の差額 1,323,906円

<省略>

正田分C 時間外・休日勤務手当の差額 150,169円

<省略>

原告の賃金と男子従業員三人の推定賃金の差額一覧

(昭和56年11月~平成7年4月)

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