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広島地方裁判所 昭和52年(行ウ)9号・昭52年(行ウ)12号

原告

株式会社第一学習社

右代表者代表取締役

松本清

右訴訟代理人弁護士

開原真弓

国政道明

被告

広島県地方労働委員会

右代表者会長

山根志賀彦

右指定代理人

増原改暦

伊藤仁

中西宣雄

園山照久

土居義博

第九号、第一二号事件被告補助参加人

出版労連第一学習社労働組合

右代表者執行委員長

榊敏正

榊敏正

第九号事件被告補助参加人

小林道子

井上孝子

竹丸光子

下坊和幸

児島文信

児島真知子

藤谷登美子

中谷悦二

右補助参加人一〇名訴訟代理人弁護士

阿左美信義

相良勝美

佐々木猛也

緒方俊平

島方時夫

主文

一  被告が広労委昭和五〇年(不)第一号事件について、昭和五二年二月一九日付でした命令の主文第1項のうち、丸岡智恵子に関する部分を取消す。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の申立

一  請求の趣旨

1  被告が広労委昭和五〇年(不)第一号事件について、昭和五二年二月一九日付でした不当労働行為救済命令を取消す。

2  被告が広労委昭和五〇年(不)第三号事件について、昭和五二年四月一三日付でした不当労働行為救済命令を取消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  第九号事件請求原因

1  被告(以下、被告委員会ということもある)は、補助参加人出版労連第一学習社労働組合(以下、一労という)を、申立人、原告(以下、原告会社ということもある)を被申立人とする広労委昭和五〇年(不)第一号不当労働行為救済申立事件について、昭和五二年二月一九日、別紙第一の命令書のとおり命令した(以下、その主文1ないし3項を第一命令という)。

2  しかし、第一命令は、以下に述べるとおり、多くの事実誤認と判断の誤謬により法律の適用を誤った違法なものである。

(一) 昭和四九年度の新基本給の決定(同命令主文1項関係)について

(1) 原告は、一般社員の新基本給決定については、昭和四四年以来適用している人事考課規程に則り、所定の人事考課表により第三次まで査定をし、最終的には役員会で評価得点を決定して人事考課を行い、更に昭和四九年より作成適用することになった新給与表に当てはめ客観的かつ公正に各人の新基本給を決定したものである。

原告会社には、既に一労および第一学習社全労働組合(以下全労という)という二つの労働組合が存在していたため、昭和四九年度の定期昇給およびベースアップについては、各組合と個別的に団体交渉を重ねた結果、原告と全労との間においては昭和四九年五月一一日に、(旧基本給+旧役職手当+一律四〇〇〇円)×124/100+是正額(+-α)という支給基準で合意に達した。他方一労とは団交では合意に達することができなかったため、昭和四九年一二月二〇日、被告の斡旋により全労と同じ右基準によるということで合意に達した。右合意内容には、原告会社において創立以来実施している人事考課に基く査定評価が含まれていることが当然の前提とされており、一労もそのことは承知していた。原告会社における昇給査定期間は、昭和四八年三月二一日から同四九年三月二〇日までの一年間であり、査定方法は第一次から第三次査定まであって、各査定者は人事考課規程に則り客観的に作成されている人事考課表に基づいて査定を行っている。

(2) 被告は、班長及び一般社員の人事考課の第一次査定者のほとんどは全労に所属しており、その全労は一労に対して批判的であった旨判断している。確かに、原告会社における第一次査定は、直属の上司である主任係長がなしているが、そのほとんどが全労に属していたことは全くの偶然であって、全労に属している故をもって第一次査定者にしたわけではない。

第一次査定を直属の上司である主任、係長が担当することは、原告会社においては組合が結成される以前からの慣行であり、組合が昭和四八年に相次いで二つ結成されたからといって、第一次査定担当者がいずれの組合員であるかということは、原告にとっては全く考慮すべき問題ではない。また、第一次査定は、客観的な基準である人事考課規程および人事考課表によって行うのであるから、被査定者がいずれの組合員であるか、非組合員かということは考慮される余地はない。さらに、全労が一労に対し批判的であったとしても、もともと一つの会社に二個の組合が併存するのはその方針が異なるからであり、組合相互において他をどのように批判していようとも、それは各組合個有の問題であって原告の何ら関与するところではない。

(3) 被告は、原告が決定した一般社員の新基本給は、人事考課の査定結果に基づいて算定した金額どおりではなく、かなりの手直しが行なわれており、その手直しにしても公正であったとは認められない旨説示している。確かに、原告会社においては、昭和四九年から新給与表を作成して給与体系を整備したため、人事考課の査定結果に基づいて算定した金額を新給与表に当てはめているが、その当てはめの方法は全社員を通じて同一であって、各社員がいずれの組合に属しているか、非組合員であるかによって当てはめ方法に差を設けたことはない。また、当てはめの結果定められた新基本給から考えても、人事考課の査定結果に基づいて算定した金額より不利益に変更された社員はほとんどいないはずである。被告は手直しが公正でなかったようにいうが、現実に誰がどのような不利益を受けたというのか明らかでない。

(4) 被告は、原告と一労とがことあるごとに対立抗争を続けていたことを総合勘案した旨説示している。その対立の原因は、一労が原告の人事権に基づく配転命令および就業規則違反行為に対する懲戒処分のすべてに反対して争ったためであるが、そのことと、各社員の一年間の勤務成績に対する査定とは直接関係のないことであり、原告も一労と争っていることを理由として、一労に属する社員の査定を低くしたことは絶対にない。

(5) また、被告は、原告会社の一般社員のうち、一労に所属する者と全労に所属する者及び非組合員とを比較すると、一労所属者は基本給の増加額においても増加率においても低くなっていること、忌部芳郎ほか九名は新基本給において一号低くランクされ、金額で二五〇〇円の差をつけられたこと等を指摘している。しかし、一労所属者中にも平均以上の査定を受けた者がある一方、全労所属者及び非組合員中にも、平均以下の査定を受け、他より二五〇〇円低い新基本給を決定された者も存するのであって、原告が忌部ほか九名を差別したものでないことは明白であり、被告の右認定、判断は明らかに失当である。

原告は、各社員の勤務態度等一八項目の要素を人事考課表に基づいて客観的に評価し、その結果を新給与表に当てはめて新基本給を決定したものであって、所属組合の有無や種別は、右決定には全く関係のないことである。

(二) 昭和四九年四月の昇格人事(同命令主文2項関係)について

(1) 原告会社の役職制度は、上位から順に部長、次長、課長、係長、主任、班長、一般社員となっており、班長には、通常大学卒で入社後二、三年経過した者が昇格しているが、四、五年を要する者もある。また、主任には、通常班長になって二、三年後の者が昇格するが、遅い者は五、六年を要し、全く昇格しない場合もある。原告会社においては、大卒何年、高卒何年というように、入社後の年数の経過によって当然に昇格する制度は採用しておらず、一応の昇格基準年数はあるものの、基本的に各社員の勤務成績や会社に対する貢献度によって抜擢する能力主義を採用しているところである。

(2) 原告は、昭和四九年四月一日付の主任昇格人事を同月一七日に発表し、班長から一〇名、一般社員から四名の者を主任に昇格させたが、いずれも所定の人事考課表による考課査定が優秀で、主任としての適格を有する者を昇格させたものである。中谷悦二及び榊敏正は、勤務成績が不良で担当する職務においても度々不注意なミスを重ね、業務の運営に支障を生じさせ、また、従前懲戒処分も数多く受けていて主任としては不適格であるため、昇格させるに至らなかった。

被告は、班長と主任の職務権限や責任の軽重は明らかでなく、班長に比較して主任が職責上重い職にあるとはいえず、役付手当からみても主任昇格は賃金上の優遇措置と考えられる旨認定しているが、右は重大な事実誤認である。班長から主任に昇格するための基準は、人事考課表の考課要素一八項目が全般的に優秀で、勤怠状況も他の社員の範となり、担当する職務内容の処理能力が十分であり、さらに部下に対する指導育成力や統率力もあり、渉外能力も備えていることである。班長と主任の違いは、担当職務の精通度の質的な相違と同時に部下に対する指導力・統率力にあるのであって、このことは、昭和四九年度まで班長手当が三〇〇〇円ないし五〇〇〇円、主任手当が一万円ないし一万四〇〇〇円と大きく違っていたこと、班長に対する人事考課表(一般事務職用)と主任に対するそれ(管理職用)とが異なっていたことからみても明らかである。また、前述のとおり、主任は係長がいない場合、人事考課の第一次査定者になることからしても、職務の内容上班長との間に明らかな質的相違がある。したがって、主任への昇格は単なる賃金上の優遇措置などでは決してなく、被告の認定は原告会社の実情を全く無視するものである。

(3) 被告は、中谷及び榊が班長として勤務する間、担当する職務において度々過失を重ね、業務の運営に支障を来したこと等について、その事実が明らかでないとしているので、昭和四八年三月二一日から同四九年三月二〇日までの右両名の考課が極めて低いものであったことを以下に詳述する。

(ⅰ) 中谷悦二について

右期間中遅刻二回、早退三回、欠勤一八日があった。また、担当する通信教育指導教材の数学テキストの編集においてミスが多く、原告の信用を著しく傷つけた。考課要素中特に悪かったのは勤務態度、責任感、積極性、正確度、交渉力、信頼性である。懲戒処分は、出勤停止四回、譴責五回である。

(ⅱ) 榊敏正について

右期間中遅刻一回、早退四回、欠勤一日、無断欠勤一日があった。担当する職務においては不注意な初歩的ミスを繰り返し業務を混乱させた。考課要素中特に悪かったのは勤務態度、仕事の知識、理解力、責任感、積極性、正確度、交渉力、信頼性である。

懲戒処分は、出勤停止三回、譴責三回である。

以上のとおり、中谷及び榊は能力的・資質的に主任には不適格であるため昇格させなかったのであって、同人らが一労の役員として活動していたためではない。このことは、昭和四九年四月に一労の初代書記長であった青木三郎が主任に昇格していることから考えても明らかである。

(4) 原告は、右中谷、榊を主任に昇格させなかったことは何ら不当労働行為にあたらないと主張するものであるが、仮にそれが不当労働行為になり得るとしても、主任に昇格していない者を主任に昇格させるよう命ずることは、不当労働行為の救済としての原状回復をこえるものである。主任に昇格させるかどうかは本来原告の裁量にかかり、人事権の最たるものであるから、被告といえども、これにみだりに介入して、使用者に代わってその人事権を行使する権限を有するものではない。

(三) 昭和四九年の夏季一時金及び年末一時金の減額(同命令主文3項関係)について

(1) 原告と一労との間において、昭和四九年夏季一時金の合意は容易に成立せず、昭和四九年一二月二〇日に至って、被告の斡旋により漸く全労と同一基準によるという協定が成立した。このように成立が遅れたのは、一労が昇給について「ノー査定、男女同一年齢同一賃金」といういわゆる出版労連方式を主張し、原告はこれを容認できなかったためである。

右協定成立当時、原告は、全労組合員及び非組合員に対しては既に昭和四九年度夏季、冬季人事考課査定表に基づき査定をしたうえ、各一時金を支給済みであった。そのため、一労組合員に対しても、同様、昭和四九年度夏季、冬季人事考課査定表に基づき算定支給することになったが、右は当然に査定を前提とするものであった。原告会社における夏季一時金の査定期間は、昭和四八年一二月一日から同四九年五月三一日まで、冬季一時金のそれは、同年六月一日から同年一一月三〇日までであった。昭和四九年度夏季・冬季人事考課査定表によれば、通常の人事考課表による査定および出勤状況によって決定された支給額から、さらに懲戒処分による減額が行われることが予定されていたため、処分減額があることは、右査定表を説明する際、一労に対しても十分に説明がなされていた。すなわち、原告は当該組合との団交において、夏季・冬季各一時金の処分減額の基準については、懲戒処分に対する査定基準表に基づいて十分説明をした上で処分減額をしたものである。

(2) 被告は、右査定基準表は原告が一方的に作成したもので、その内容については当該組合と合意に達した事実はないと認定している。確かに、右基準表は冬季分も含め原告が作成したものであるが、原告はその内容を当該組合に対し十分に説明した上で適用したものであり、このことは、冬季一時金について一労の要望により、処分減額率を引き下げた事実からみても明らかである。また、被告は、処分減額率について一労との間で合意に達していないとの指摘をしているが、右基準表は一労だけでなく全社員に共通に適用するものであるから、右程度の減額率であれば、一労の同意がなくとも、原告の裁量によって定め、これを適用することができるというべきである。

(3) 次に、被告は、処分減額の対象となったのはハチマキ・腕章・ワッペンの着用やステッカー貼りなど組合活動に関する行為であり、処分減額を受けた者が一労に所属する従業員のみであったことからすると、原告会社が処分減額をしたことは、一労組合員の活発な組合活動を嫌悪した不利益扱いといわざるを得ないと説示している。しかしながら、原告がした懲戒処分には、正当な組合活動をなしたことを理由とするものは全くない。

(4) 原告が行った懲戒処分は、就業規則第五六条、第五七条に基づくものであり、原告会社の従業員に就業規則違反の行為が認められた場合、その事実を十分確認し、役員会において懲戒処分の決定をして、被処分者に対し文書をもって告知したものである。原告としては、違法な組合活動に関連して発生した具体的な違法行為に対し、企業秩序維持の必要から懲戒処分をもって臨んだものであって、一労の正当な組合活動を抑圧するために処分をした事実はないし、処分による減額の率も一労組合員だけではなく全従業員に対し共通に適用されるのであるから、被告の右認定、判断は誤りというべきである。

(5) 原告は、処分減額を行うことを被告委員会の斡旋段階においても表明しており、このことについては、被告委員会の労働者委員も了承していた。そして、同委員は一労の意向を受けて原告に対し、冬季一時金については夏季一時金よりも処分減額率を引き下げるよう要請したため、原告はこれを受け容れて右引下げを行った経緯がある。このことからみても、一労が処分減額の実施を了解していたことは明らかである。

3  よって、本件第一命令の取消を求める。

二  第一二号事件請求原因

1  被告委員会は、同じく一労を申立人、原告を被申立人とする広労委昭和五〇年(不)第三号不当労働行為救済申立事件について、昭和五二年四月一三日、別紙第二の命令書のとおり命令した(以下、その主文1、2項を第二命令という)。

2  しかし、第二命令にもまた、以下に述べるとおりの違法がある。

(一) 本件出勤停止処分(同命令主文1項関係)について

(1) 原告が榊に対し、昭和五〇年五月八日付で四日間の出勤停止処分を行ったのは、同人が「フレッシュエイジ」六月号の編集において、担当の国語の問題を割り付け、組み発注するに際し、「考え方」欄三か所全部を欠落させ、そのため業務に重大な支障を来させて原告に損害を与えたこと、また、右国語問題の解答の著者原稿を上司や著者に何らの相談もせず二か所にわたり独断で改悪したこと、及びこれらのことについて原告が始末書の提出を求めて反省を促したにもかかわらず、榊が始末書の提出に応じなかったためである。

この点について、被告は榊が原稿を欠落させたり、独断で書き換えたりしたのは編集業務に携わる者として軽率であり、また、始末書の提出を拒んだのも好ましいことではない旨、原告の主張に沿う判断をしながら、他方、榊は原稿を欠落させたことを自ら申し出ているし、書き換えたのも悪意があったとは認められず、また取り上げる程の実害はないと認定して、右出勤停止処分は妥当な措置とはいえないと結論している。

しかしながら、榊が原告に原稿欠落を申し出たのは、印刷所への発送直前に至ってであり、しかも、著者原稿の無断書き換えの事実については何の申し出もせず、右改悪個所は出版部長が点検していて初めて発見したものである。

一編集担当者にすぎない榊に、著者原稿を書き換える権限も能力もないことは明らかであり、このことは原告の当然の編集方針として、従来から周知徹底してきたところである。したがって、榊が著者原稿を書き換えしかも改悪したことは、原告の編集方針に反する行為であり、故意又は重大な過失に基づくものである。確かに、その後原稿は当初のとおりに訂正されたが、榊が欠落と書き換えという二重のミスを犯したため、その訂正をなすべく印刷所及び同僚、上司に及ぼした迷惑は重大である。

また「フレッシュエイジ」六月号は、結局、宣伝ページを半ページ削除し、購読者への発送も二、三日遅延するに至ったが、原告会社のような出版会社にとって、右は重大な実害である。

(2) 次に、被告は、就業規則上出勤停止は懲戒解雇に次いで重い制裁であることからいっても、原告のとった出勤停止処分は妥当な措置とはいえないと判断している。然らば、被告は榊を譴責又は減給処分にすれば妥当というのであろうか。被告は本件が不当労働行為に該当するか否かを判断する権限のみを有するのであり、不当労働行為か否かを離れて処分の軽重までを判断する権限はない。原告としては、榊の前記各行為及び始末書不提出がそれぞれ就業規則第五六条の(5)、(12)、(14)に該当するものと考え、榊が過去六回懲戒処分に処せられていることも考慮して、同第五七条(3)の出勤停止処分に処したのである。したがって、本件処分は、当時榊が一労の副委員長として活発な組合活動をしていたか否かとは全く関係のないことである。

(二) 本件配転命令(同命令主文2項関係)について

(1) 原告が榊を昭和五〇年五月一四日から総務部製版室へ配転したのは、それまで在籍していた出版部編集課、通信教育部指導課のそれぞれ国語担当においてしばしば基本的ミスを繰り返し、ついに五月六日には、「フレッシュエイジ」六月号において担当の国語の原稿を三か所欠落させまた著者原稿を書き換えるという重大なミスが発生したためである。

この点について、被告は榊は編集業務において校正上のミスのことで上司から注意を受けたことが何度かあった程度で、これをもって榊が能力的に不適格ということはできず、原告の主張は到底認め難いと判断している。しかし、榊が所属していた出版部編集課、通信教育部指導課の各直属上司は、榊が基本的ミスを繰り返すため同人に安心して仕事をまかせることができず、同人がした仕事はもう一度点検しなければならない旨、同人の編集業務における能力的不適格性を訴え、部下として指導して行くことが困難であると申し出ているのである。

(2) 右上司が申し出ている榊の能力的不適格性は、(ⅰ)字体や表現において正確さに欠けること、(ⅱ)校正等において、一定の基準線に沿って仕事をすすめていく注意力、集中力が足りないこと、(ⅲ)不注意なミス、初歩的なミスが多いこと(本件の「考え方」の欠落、八回の「国語訳」の欠落が顕著な例である)、(ⅳ)校正の読み合わせにおいて、読み誤りが特に多いこと、(ⅴ)上司の指示、指導したことがなかなか徹底しないこと等多岐にわたっている。同人の直属の上司から以上のような指摘があり、今後指導していくことが困難との申し出があったことに加えて、今回の欠落ミス、独断による書き換え等の事実が発生したため、原告としては、榊の身体的事情をも十分考慮したうえで総務部製版室に配転したものである。なお、総務部製版室は原告の本社一階にあり、組合活動には何らの支障もない。

(3) 被告は、原告と一労との間には対立抗争があり、しかも榊は一労の役員として中心的な役割りを果し、活発な活動をしていたと認定しているが、仮に原告と一労とが対立していたとしても、そのような一般的事実から直ちに本件を不当労働行為と認定することは、論理の飛躍というほかはない。本件配転と榊の組合活動とは全く関係のないことである。

3  以上のとおり、第二命令にも多くの事実誤認と判断の誤りがあって違法であるから、その取消を求める。

二  各請求原因に対する認否

1  第九号、第一二号各請求原因1の事実はいずれも認める。

2  各請求原因2の事実は否認し、その主張は争う。

被告の認定及び判断は、すべて別紙第一、第二の各命令書に記載のとおりである。

第三証拠(略)

理由

第一第一命令関係

一  基本的事実関係について

(証拠略)を総合すると、第一命令理由中の「第1 認定した事実」に記載されている「1 当事者など」「2 本件をめぐる労使事情」「3 49年度の新基本給の決定」「4 49年4月の昇格人事」「5 49年の夏季一時金及び年末一時金の減額」の各事実を、いずれも概ね右記載のとおり認めることができる(但し、右3のうち(5)の丸岡智恵子に関する認定部分を除く。また、右5についても当裁判所の認定は細部において異なるが、これらについては後述する)。

二  昭和四九年度新基本給の決定(主文第1項関係)について

1  原告は、先ず、右新基本給決定の基礎となった人事考課について、その第一次査定者のほとんどが一労に対し批判的な全労に所属していたとしても、右は全くの偶然であって、原告がことさらに全労所属者のみを一次査定者としたものではないと主張する。

なるほど、前掲各証拠によれば、原告会社においては、従前から被査定者の直属の上司である係長(係長を欠く場合は主任)が第一次査定にあたってきたこと、本件当時係長、主任で一労に所属する者はなく、そのほとんどは全労に所属していたことが認められ、新基本給決定の基礎たる査定のために、全労所属者を査定者の地位に就けたものでないことはその主張のとおりである。しかしながら、人事考課表(甲一号証)は一八個もの評価項目を列挙しているとはいえ、結局は査定者の判断・評価にかかるものであって、その主観や感情が影響することは避け難いし、右に認定の労使事情、その他上掲各証拠にあらわれた全労と一労、原告と一労の対立抗争の実情を背景として考えると、査定者が一労組合員に対し、批判的な見地から特に厳しい態度をもって査定に臨んだことは推認に難くないところであり、第一命令理由中の被告の説示(第2の1)もこの点を指摘した趣旨と解される。

2  右のことは、原告の否定にもかかわらず、現実の査定結果からも多分に窺うことができる。すなわち、(証拠略)によれば、当時班長以下で一労に所属する者は二八名、全労に所属する者及び何れにも所属しない者(非組合員、以下、非組と略称することもある)は合計二二名であり、これらの者に対し、第一ないし第三次査定を総合してABCDEの五ランクの格付けが行われた(但し、実際にはA及びEの該当者はなく、Bを標準とし、C、Dを劣位者として、新基本給の決定にあたり、Cについては一〇パーセント、Dについては二〇パーセントの減額修正がなされた)が、一労のうちBは七名、Cは一名、Dは一七名であり、一方、全労・非組のうちBは一九名、Cは一名、Dは二名であったこと、もっとも、後者のD二名のうち一名は、職務の繁忙等を理由に新基本給決定時に事実上B査定と同一の取扱いがなされて、結局、Dは実質的に一名のみとなったことが認められる。このような査定結果は、一労所属者に対し特段に厳しい査定が行われたことを示し、差別取扱いの意思を推認させるものといわざるを得ない。

3  また、前掲各証拠によれば、査定結果により減額修正(C、Dの場合)した金額がそのまま新基本給となるのではなく、原告が昭和四九年四月に制定した新給与表に当てはめ、対応する金額がない場合は直近上下の給与額に一致するよう調整したこと、そのほか、減額修正を受けても同種学歴者の初任給を下廻らないよう考慮し、また、年齢による調整をも加えたことが認められ、これらの調整(手直し)は一応合理的なものということができる。そして、原告は、被告が、そのような手直しが公正に行われたとは認められないとした点をとらえて非難するところである。

しかし、前述のように、全労・非組のうち一名をDと査定しながら、事実上B査定の者と同一の給与額を決定した事例が認められるし、また、(証拠略)によれば、原告は被告委員会による本件の調査段階において、全労・非組従業員の多数につき年齢を一歳(うち一名については三歳)多く申し出、後にこれを訂正したことが認められ、これらの者については、年齢調整を理由に有利な手直しを施したのではないかとの疑いを払拭できない。

4  以上の諸点に、前記のような背景的事情を併せ考慮すると、原告が忌部芳郎ほか八名(丸岡智恵子を除く)について、昭和四九年度新基本給を全労所属者及び非組合員よりも低く決定したことは、同人らが一労の組合員であることを理由とした不利益取扱いと認めるのが相当であり、この点、被告の第一命令中の認定、判断に何らの違法はない。

5  しかし、右丸岡については、(証拠略)によれば、右丸岡はBの査定を受けたが、原告は同人の学歴が中卒(高校中退)、年齢二一歳であることから、新基本給を算出額より僅かに多い六万円(従来の四万四〇〇〇円から一万六〇〇〇円増加)のランクに当てはめたこと、全労所属短大卒のB査定者(二二歳女子)で、新基本給六万二五〇〇円(従来の四万四〇〇〇円から一万八五〇〇円増加)の例があることが認められるから、同人が査定において不利益な取扱を受けたということはできず、また、新給与表への当てはめについても特段の不利益取扱の事実を認めるに足りない(原告の事業内容に照らし、短大卒と中卒とで給与上多少の差を設けることは不合理ではないと考えられ、仮に旧基本給においてほとんど差がなかったとしても、新たな給与体系において右程度の差を設けたことは、不当視するに及ばないと思われる)。したがって、同人に関する限り、一労の組合員であることを理由とする不利益取扱があったとは認められず、被告が同人についても労働組合法七条一号の不当労働行為が成立するとして、主文第1項において、昭和四九年四月分からの基本給を二五〇〇円増額し、賃金、手当及び一時金のはねかえり分を支払うよう命じたことには、事実認定を誤りひいて右法条の適用を誤った違法があり、右部分は取消を免れない。

三  昭和四九年四月の昇格人事(主文第2項関係)について

1  (証拠略)を総合すると、

(一) 原告は、昭和四九年四月、大量昇格人事の一環として一四名の従業員を主任に昇格させたが、右昇格者らの勤続年数は、六年が三名、五年が一名、四年が五名、四年未満が五名であり、そのうち六年の三名は高卒で、大卒とはやや条件を異にする者であったこと、

(二) 右一四名のうち四名は班長を経ず一般社員から直接主任に昇格したものであり、また、班長経験者一〇名についてみると、その班長在職年数は、二年の者が四名、一年の者が六名であったこと、

(三) 一方、中谷及び榊はいずれも大卒で、右昇格人事までに、中谷は勤続五年、班長在職二年、榊は勤続五年余、班長在職四年であり、右昇格者らと比較していずれも最長期の部類に属すること、なお、原告側(証人森中)も、当時大卒、社歴五年で主任に昇格しなかった者は右二名以外にはない旨を認めていること

以上の事実が認められ、右二名の不昇格は多分に例外的な処遇であったことが窺われる。

2  班長と主任の職務権限や責任の軽重については、具体的にどのような差異があるのか、証拠上必ずしも明らかではない。この点につき、原告は従来主任以上を管理職とみなしてきたことが認められるけれども、昭和四九年四月の賃金体系の改定と同時期に、課長以上のみを管理職として取扱うこととし、係長以下を除外したことが併せ認められるから、その面における差等は解消したこととなる。また、原告は、主任には担当職務への精通や指導・統率力が要求されること、或いは係長を欠く場合、主任が人事考課における第一次査定者となること等を指摘してその特殊性を強調するけれども、右のような知識・能力は班長についても相当程度要求され、本質的な差異は乏しいとも考えられるし、人事考課において、現実に主任がどの程度の役割を果しているのかも明らかではない。

3  ところで、前掲各証拠によれば、従前原告会社においては、役職手当として班長には月額三〇〇〇円ないし五〇〇〇円、主任には一万円ないし一万四〇〇〇円が支給されていたが、前記賃金改定によって従来の役職手当を基本給に組み入れ、これに一定率を乗じて新基本給を定め、一方、役職手当は大幅に減額して、班長二〇〇〇円、主任三〇〇〇円としたことが認められる。したがって、両者の給与面の差はほとんど失われたというべく、また、一面において、右給与改定直前に主任に昇格させることは、事実上賃金(新基本給)引上げの性格が強く、賃金上の優遇措置の効果が大であって、原告会社が当時多数の者を主任に昇格させたことは、かかる効果を意図したものとみることもできる。

4  原告は、中谷・榊の両名は担当職務においてミスが多く、信用を傷つけ或いは業務を混乱させたこと、また、人事考課の内容が極めて不良であったことを指摘するけれども、昭和四九年三月までの間、右両名が犯したというミスの具体的内容や回数、程度等については、本件各証拠によっても明らかとはいえないし、人事考課についても、前記のような当時の労使事情から、一労の中心的活動家である右両名に対し、特に厳しい査定が行われた疑いを否定できない。また、両名に対する度重なる懲戒処分(就業規則上の制裁)に関しては、(証拠略)によれば、右はいずれも右労使事情のもとにおいて、一労の組合活動に関して行われたものであることが認められ、その組合活動に何らかの行き過ぎがあったとしても、原告がその都度懲戒処分をもって臨むことが果して必要、妥当であったかは少なからず疑問である。

5  上記の諸点に照らして、右両名が主任として不適格であったとは認め難く、特に、上記3のような性格を有する主任昇格人事にあたっては、右両名をも主任に昇格させることが取扱の公平、公正に適うところであったというべく、原告がこれに反し、両名を昇格させなかったことは、その組合活動を理由とする不利益取扱にあたると判断される。よって、この点につき、被告の認定、判断に何らの違法はない。

なお、原告は、被告が右両名を主任として取扱うよう命じたことは使用者の人事権に対する介入であり、不当労働行為の救済としての原状回復を超えるものであると主張するけれども、本件の場合、前述のように、主任への昇格は給与面における優遇措置の性格が強く、かつ、右両名と同種、同程度の経歴を有する者は全員が主任に昇格したことが認められるから、もし原告に不当労働行為意思がなければ、右両名をも同様昇格させたであろうことが強く推認され、このような場合においては、被告が右両名を主任として取扱うよう命じても、原告の人事権を制約しこれに介入したとはいえず、違法の点はないと解せられる。

四  昭和四九年夏季一時金及び年末一時金の減額(主文第3項関係)

1  原告は、被告が右各一時金についての減額基準(懲戒処分を受けたこと及び始末書を提出しないことによるもの)は原告が一方的に作成したもので、一労と合意に達した事実はないと認定したことにつき、右は事実誤認であると主張する。

この点につき、(証拠略)によれば、右各一時金については、一労からの斡旋申立を受けた被告委員会が、昭和四九年一二月二〇日に至って、「全労組合員に支給した基準と同一基準で一労組合員に支払うこと」との勧告をし、原告と一労は同日右勧告を受諾する旨を協定したこと、右の「同一基準」とは、懲戒処分を一時金査定上の減額事由とすることを含む趣旨であり(全労との間では、処分による減額の項目を含む一時金考課査定表を用いることが合意されていた)、一労もその点は了解していたことが認められる。しかし、一方において、処分による減額の具体的方法(処分減額基準)は、右勧告並びに協定の当時未だ明示されておらず(なお、全労組合員中には現実に処分減額を受けた者はない)、その後原告はその基準を提示したが、一労組合員は減額の率が過大で不当であるとして反撥し、結局、右基準については双方の合意に至らないまま、原告はこれを適用して各一時金を減額のうえ支給したことが併せ認められるところである。そして、右減額基準が事実上専ら一労組合員に対して適用されるものであり、その減額率も、出勤停止処分一日につき一〇パーセント、一日増すごとに二・五パーセント、譴責処分一回につき五パーセント、一回増すごとに二パーセントなどという高率のものであることを考えると、原告としては、一労に対しより早期に十分な説明をし交渉を経ることが必要かつ妥当であったというべく、そのような過程を経ていないことに徴しても、原告には、前記勧告及び協定を機に大幅な処分減額を強行し、一労組合員の組合活動に影響を与えようとの意図があったものと推認される。

2  また、原告は、特に冬季(年末)一時金の処分減額については、一労の要望によって減額率を引き下げた事実があり、このことからみても、一労が処分減額に合意していたことが明らかであると主張する。

なるほど、前掲各証拠によれば、昭和四九年一二月二五日に夏季一時金が処分減額のうえ支給された直後、被告委員会の労働者委員(同時に一時金紛争についての斡旋員)である今田委員から原告に対し、減額率が大き過ぎるので冬季一時金についてはその率を引き下げてはどうかとの打診ないし示唆があったため、原告は同委員と話し合ったうえ、前記の減額率を引き下げ(例えば、出勤停止処分一回につき六パーセント、一回増すごとに三パーセントとした)、かつ、減額の最高限度を二五パーセントとするなどの修正を施し、これを適用して冬季一時金を算出し、同月二八日に一労組合員に支給したことが認められる。したがって、少くとも冬季一時金の減額基準については、原告が一方的に作成したとの認定は必ずしもあたらず、むしろ、一労は同委員を通じて減額率の引き下げを原告に働きかけ、ある程度の譲歩を得たとみることも可能である。しかしながら、冬季一時金についても、原告が一労に対し直接に右修正減額率を明示して説明、折衝した事実は認めるに足りないし、結果として、中谷悦二ほか一四名に対しては、いずれも夏季一時金を遙かに上廻る処分減額(うち三名は二五パーセントの減額)がなされたこと、それもすべて一労の組合活動に関する行為についての懲戒処分を理由とするものであったことが認められるから、一労が最終的にかかる処分減額を了承して冬季一時金を受領したものとは到底解し難く、合意の成立を認めるには足りない。

3  原告は、減額事由たる処分はいずれも違法な組合活動ないしこれに関連する違法行為を対象としたものであると主張するが、個々の処分対象行為につきそれが正当な組合活動にあたるか否かをにわかに判定することは困難としても、そのうちにはビラ貼り、鉢巻・腕章の着用、職場集会等も含まれており、そのすべてにつき懲戒処分をもって対処することが相当であったかは少なからず疑問である。

4  以上の諸点を考慮すると、被告が、本件処分減額は一労組合員の活発な組合活動を嫌悪した不利益取扱といわざるを得ない旨認定・判断したことは正当であり、何ら違法の点はないというべきである。

第二第二命令関係

一  基本的事実関係について

(証拠略)を総合すると、第二命令理由中の「第1 認定した事実」に記載されている「1 当事者」「2 榊の組合活動」「3 榊の経歴」「4 榊に対する懲戒処分及び配置転換」の各事実を、いずれも概ね右記載のとおり認めることができる。

二  榊に対する出勤停止処分(主文第1項関係)について

1  榊が「フレッシュエイジ」昭和五〇年六月号の組版割付けに際し、三か所延べ一ページ半の原稿を欠落させたことは、確かに軽率なミスというほかはない。しかし、編集作業の過程においては、この種のミスは或る程度避け難いものと考えられるし、現に(証拠略)によれば、原告の多数の出版物のうちには、印刷後或いは刊行後に誤りが発見され、正誤表等によって訂正した例も稀ではないことが認められる。本件の場合、榊自身がミスに気づいて上司に申し出たことにより補正がなされ、結果的に一、二日の発送の遅れで済んだことを併せ考えると、同人の過失及びその結果はさほど重大ということにはあたらないと判断される。

2  次に、著者原稿の改変の点については、出題文及び解答原文と比較してみると、榊としては表現の簡潔化を意図して書き換えたと推察されるものの、大学受験生対象の解答例としては、原文の方がより周到、懇切なものということができ、右改変が必要であったとは認められない。しかし、右改変はそれ自体小規模であるし、原文の趣旨に反するとか、その意味を誤らせるといった内容、程度のものではないと考えられる。また、この程度の書き換えにつき、筆者や上司の承諾ないし許可を得ることがさほど厳密に守られていたかどうか、証拠上必ずしも明らかではない。なお、右改変について榊が自ら申し出たことはないが、上司がこれに気づき、結果的に1の原稿欠落の補正と同時に訂正、処理されたことは前記認定のとおりである。これらの事情に照らすと、同人の原稿改変行為は、原告に損害を与えようとの故意に基づくものでないことは勿論、若干の過失があったとしても、その内容及び結果においてさほど重大なものではなかったというべきである。

3  また、榊が上記の所為に関し、原告の指示に反して始末書を提出しなかった点について検討するに、(証拠略)によれば、原告は従業員にいわゆる不始末があって口頭による注意のみでは不十分と考えられる場合、慣例的に当該従業員から始末書を作成、提出させる方針をとっていること、本件処分の後であるが、一労の組合員が職務上のミスを認めて始末書を提出した事例もあることが認められ、榊の上記所為(原稿の欠落及び改変)が組合活動とは全く関係のないものであることを併せ考えると、同人が原告の再三の要求を拒否して始末書を提出しなかったのは意固地な態度とも評すべく、たやすく支持し難いものがある。

しかし、始末書要求の就業規則(証拠略)上の根拠としては、その五七条が、制裁(懲戒処分)の一つである譴責の内容として、「始末書をとり将来を戒める」と定めているのみであり、本件の場合、榊に対し制裁としての譴責を加えることは明示されておらず、原告としてもその意思であったとはみられないから、同人が始末書提出を拒否する以上、その提出を強制したり、その不提出を理由に制裁を課することはその根拠に乏しいといわなければならない。

4  原告は、被告が出勤停止処分は懲戒解雇に次いで重い制裁であることからいっても、榊に対する右処分は妥当ではないと説示したことを非難し、被告に処分の軽重までを判断する権限はないと主張するけれども、被告は、上記認定のような榊の所為やその結果からみて右処分が重きに過ぎることと、その背景的事情である会社と一労との対立抗争、榊の一労役員としての活発な活動等の事実を総合して、右処分は同人の組合活動の故をもってした不利益取扱にあたると判断したものであるから、原告の非難は失当である。

5  そして、当裁判所も上述の諸点及び背景的事情から右と同一の結論をとるものであって、主文1項に関する被告の認定・判断に何ら違法の点を見出すことはできない。

三  榊に対する配置転換(主文第2項関係)について

1  原告は、榊の編集業務における能力的不適格性を強調するところ、なるほど(証拠略)は榊の能力面に関し、原告主張のような諸点を指摘し、事実、校正上のミス等で上司から何回か注意を受けたことが認められる。

しかし、既述のように、編集業務上一般に或る程度のミスは避け難いものと思われるし、正確性、注意力、集中力等の判定も、多少とも判定者の主観によって左右されることは否定し難い。また、本件配転前の榊の職務上の顕著なミスとしては、昭和四八年一一月、電算機の処理の誤りにより、答案及び成績表の発送に一日の遅れを生じさせたこと(証拠略)と、前記「フレッシュエイジ」六月号の原稿欠落等がみられるが、その他にもミスがあったとしても、右に類するような内容・程度のものであったとは認め難い。一方、原告の出版物中には前記のような誤りも散見されるが、その編集等に従事した者が不適格として他の部署に配転された事例は証拠上窺うに足りない。なお、(証拠略)によれば、榊は昭和四四年一月原告会社に入社した翌四五年の四月には班長に昇格したことが認められ、証人増田も極めて早い昇格であったことを認めているのであるから、榊が出版会社の従業員(大卒者)として、一般的な事務処理能力に欠け、或いは他より著しく劣っていたとは想定し難い。

これらの諸点に照らして、同人が編集担当者として能力的に不適格であり、他に配転するほかなかった旨の原告の主張は、是認することができない。

2  本件配転先である総務部製版室の業務内容は、オフセット印刷に廻す前のフィルムの傷などを修正するという極めて単純な作業であり、大卒後勤続六年余、班長の経験五年で、コンピューター業務、編集業務に従事してきた同人を正当に処遇するものとはいい難い。

3  その他、既述の労使関係を併せ考えると、本件配転もまた榊の組合活動の故をもってした不利益取扱にあたるというべく、この点についても、被告の認定、判断に何らの違法はない。

第三結論

上記の次第で、被告のした第一命令中主文第1項の丸岡智恵子に関する部分のみは違法であるから右部分を取消し、同命令中の他の部分及び第二命令には何らの違法の点はなく、その取消を求める本件各請求はいずれも理由がないことからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条但書を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田川雄三 裁判官 小西秀宣 裁判官金村敏彦は転任につき署名捺印することができない。裁判長裁判官 田川雄三)

別紙一 命令書

申立人 出版労連第一学習社労働組合

代表者執行委員長 榊敏正

被申立人 株式会社第一学習社

代表者代表取締役 松本清

主文

1 被申立人株式会社第一学習社は、忌部芳郎、太田俊美、下坊和幸、瀬戸和夫、河島節夫、中元良子、丸岡智恵子、多田光子、松本良子及び藤谷登美子に対して、昭和四九年四月分からの基本給を二五〇〇円増額し、賃金、手当及び一時金のはねかえり分を支払わなければならない。

2 被申立人株式会社第一学習社は、中谷悦二及び榊敏正を昭和四九年四月一日に遡って主任として取り扱わなければならない。

3 被申立人株式会社第一学習社は、中谷悦二、榊敏正、児島文信、下坊和幸、瀬戸和夫、河島節夫、大島講平、竹丸義則、中元良子、松尾良子、藤谷登美子、小林道子、多田光子、児島真知子及び井上孝子に対して、懲戒処分及び始末書の未提出を理由に、昭和四九年夏季一時金及び同年年末一時金から減額した金額を支払わなければならない。

4 その余の申立ては棄却する。

理由

第1 認定した事実(編略)

第2 判断及び法律上の根拠

1 会社は、一般社員の新基本給について、所定の人事考課表により第三次まで査定し、役員会で最終的に評価得点を決定して人事考課を行い、新給与表に当てはめ、客観的かつ公正に各人の新基本給を決定したものであると主張する。

しかし、班長及び一般社員の人事考課の第一次査定者のほとんどは全労に所属しており、その全労は、一労に対して批判的であり、しかも、会社が決定した一般社員の新基本給は、人事考課の査定結果に基づいて算定した金額どおりではなく、かなりの手直しが行われており、その手直しにしても公正であったとは認められず、一般社員の新基本給の決定が客観的かつ公正になされたものとも考えられない。また、会社と一労とは、ことあるごとに対立抗争を続けていたことなどを総合勘案すると、会社が、一般社員のうち、一労に所属する者の新基本給を、全労に所属する者及び非組合員よりも基本給の増加額においても増加率においても低く決定したことは、一労の組合員であることを理由とした差別扱いであり、労働組合法第七条第一号に該当する不当労働行為である。

2 会社は、四九年四月の主任への昇格については、単に勤続年数を基準に昇格させたものではなく、所定の人事考課表により客観的かつ公正に判定し、本人の成績が他の範となる者を昇格させたものであり、中谷及び榊は、勤務成績が不良で担当する職務において度々不注意な過失を重ね、業務の運営に支障をきたし、また、懲戒処分も数多く受け、不適格であるため昇格させなかったものであると主張する。

しかし、主任への昇格が単に勤続年数を基準にしたものではないとしても、班長と主任の職務権限や責任の軽重は明らかでなく、班長に比較して、主任が職責上重い職にあるとはいえず、役付手当については、額に相違がみられるが、四九年四月の賃金改定の際、従来の役付手当を旧基本給に繰り入れたことからみて、賃金上の優遇の措置と考えられる。

また、中谷及び榊の勤務成績については、前者が二年間、後者が四年間それぞれ班長として勤務しており、その間、担当する職務において、会社が主張するように、度々過失を重ね業務の運営に支障をきたしたということについては、明らかでない。さらに、当時対立抗争があった労使事情からすれば、両人は、一労の結成当初からの中心人物で、人事考課査定が公正になされたとは認められず、中谷及び榊に対する懲戒処分についても、当時の労使事情のもとにおいて、組合活動に関してなされたものであり、結成後間もない一労の組合活動に多少の行き過ぎがあったにしても、会社がことあるごとに懲戒処分をもって対処するやり方は穏当を欠いており、中谷及び榊が主任として不適格であるとは認め難い。

以上から、中谷及び榊を主任に昇格させなかったことは、両人が一労の役員として活動していたことを理由とした不利益扱いであり、労働組合法第七条第一号に該当する不当労働行為であるといわざるを得ない。

3 会社は、四九年の夏季一時金及び年末一時金の処分減額については、懲戒処分及び始末書の未提出に対する減額基準を作成し、従業員に共通かつ公平に適用したものであり、しかも、一労の組合員は、このことも了解のうえ一時金を受領していると主張する。

しかし、四九年の夏季一時金及び年末一時金についての懲戒処分及び始末書の未提出に対する減額基準は、会社が一方的に作成したもので、その内容については、一労と合意に達した事実はなく、しかも、処分減額の対象となったのは、ハチマキ、腕章、ワッペンの着用、ステッカー張りなど組合活動に関するものであり、処分減額を受けた者が一労に所属する従業員のみであったことからすると、処分減額したことは、一労の組合員の活発な組合活動を嫌悪した不利益扱いといわざるを得ず、労働組合法第七条第一号に該当する不当労働行為である。

4 申立人は、請求する救済内容として、陳謝文の掲示をも求めているが、主文のとおりの救済で十分であると判断し、これを棄却する。

よって、当委員会は、労働組合法第二七条及び労働委員会規則第四三条の規定により、主文のとおり命令する。

昭和五二年二月一九日

広島県地方労働委員会

会長 勝部良吉

別紙二 命令書

申立人 出版労連第一学習社労働組合

代表者執行委員長 榊敏正

被申立人 株式会社第一学習社

代表者代表取締役 松本清

主文

1 被申立人株式会社第一学習社は、榊敏正に対する昭和五〇年五月九日から四日間の出勤停止処分を取り消し、同処分がなかったならば受けるはずであった給与相当額を支払わなければならない。

2 被申立人株式会社第一学習社は、昭和五〇年五月一四日付けで配置転換した、榊敏正を原職に復帰させなければならない。

3 その余の申立ては棄却する。

理由

第1 認定した事実(編略)

第2 判断及び法律上の根拠

1 会社は、榊に対して出勤停止処分を行ったのは、「フレッシュエイジ」六月号の編集の際、榊が組版割付けする原稿を欠落させ業務に重大な支障をきたし、会社に損害を与えたこと、著者の原稿を独断で書き換えたこと及びこれらのことについて始末書を求めたにかかわらず提出しないで反省の情を示さなかったためであり、また、榊を総務部に配置転換して単純な業務に就けたのは、榊がこれまでの職場で業務上のミスを繰り返し、能力的に不適格であると判断したためであると主張する。

そこで、まず、榊に対する出勤停止処分について判断すると、榊が原稿を欠落させたり、独断で書き換えたりしたのは、編集業務に携わる者として軽卒であり、また、始末書の提出を拒んだのも好ましいことではない。

しかし、榊は、原稿を欠落させたことについては、自らその誤りに気付いて、その旨を申し出ており、また、著者の原稿を一部書き換えたのも悪意があったとは認められず、前者は補正され、後者は著者の原稿どおり訂正されて、取り上げる程の実害はなく出版されており、しかも、就業規則上、出勤停止は、懲戒解雇に次いで重い制裁であることからすれば、会社のとった出勤停止処分は、妥当な措置とはいえない。

次に、榊を配置転換して単純な業務に就けたことについて判断すると、会社は、その理由として、榊がこれまでの職場で業務上のミスを繰り返し、能力的に不適格であるといっているが、榊は、これまで、コンピューターの操作を誤って受講生への郵便物の発送に約一日の遅れを生じさせたほか、編集業務において校正上のミスのことで上司から注意を受けたことが何度かあった程度で、これをもって、榊が能力的に不適格ということはできず、会社の主張は、到底認め難い。

一方、会社と一労との間には対立抗争があり、しかも、榊は一労の役員として中心的な役割りを果し、活発な活動をしていたことが認められる。

以上のことを総合勘案すると、本件榊に対する出勤停止処分及び配置転換は、榊が一労の役員として活発な活動をしていたことを会社が嫌悪してなした不利益な取扱いであり、労働組合法第七条第一号に該当する不当労働行為である。

2 申立人は、請求する救済内容として、陳謝文の掲示をも求めているが、主文のとおりの救済で十分であると判断し、これを棄却する。

よって、当委員会は、労働組合法第二七条及び労働委員会規則第四三条の規定により、主文のとおり命令する。

昭和五二年四月一三日

広島県地方労働委員会

会長 勝部良吉

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