広島地方裁判所 昭和55年(わ)243号 判決 1981年4月13日
裁判所書記官
石井公平
本店の所在地
広島市南区出島一丁目六番一号
法人の名称
有限会社 松岡クリーナー
代表者の住所
広島市南区出島一丁目六番一号
代表者の氏名
代表取締役 真田教史
国籍
韓国(慶尚北道金陵郡大徳面釣龍里四三三)
住居
広島市南区皆実町四丁目一九番二〇号
会社員
松岡広男こと
李泰龍
一九三六年七月七日生
右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官重冨保男出席のうえ審理をして、次のとおり判決する。
主文
被告人有限会社松岡クリーナーを罰金七〇〇万円に、被告人李泰龍を懲役八月に各処する。
被告人李泰龍に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人有限会社松岡クリーナーは、広島市南区出島一丁目六番一号に本店を置き、ごみ処理及びこれに付帯する一切の業務を営むもの、被告人李泰龍は、昭和四四年四月一日から同五二年二月九日までの間は同会社の取締役、同年二月一〇日から同五二年三月三一日までの間は同会社の代表取締役として同会社の右業務全般を統括していたものであるが、被告人李泰龍は同会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、
第一 同五一年四月一日から同五二年三月三一日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が別紙第一のとおり五三、〇六〇、五五九円(当期利益金科目の公表金額と犯則金額との合計額。以下の判示第二、第三においても同じ。)で、これに対する法人税額が二〇、二四九、六〇〇円であるにもかかわらず、廃棄物収集代金の収入金の一部を除外する等の行為により所得を秘匿したうえ、同五二年五月三一日同市南区宇品東六丁目一番七二号所在広島南税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が三九、九一七、五九〇円で、これに対する法人税額が一四、九九二、四〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により法人税五、二五七、二〇〇円を免れ
第二 同五二年四月一日から同五三年三月三一日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が別紙第二のとおり九七、八〇八、三五一円で、これに対する法人税額が三七、一二一、二〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により所得を秘匿したうえ、同五三年五月三一日前記広島南税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が七三、三六〇、一六五円(ただし、確定申告書の所得金額らんには四〇、〇〇〇、〇〇〇円少ない三三、三六〇、一六五円と記載した。)で、これに対する法人税額が二七、三五一、五〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により法人税九、七六九、七〇〇円を免れ
第三 同五三年四月一日から同五四年三月三一日までの事業年度における同会社の実際の所得金額が別紙第三のとおり五〇、一一七、一〇一円で、これに対する法人税額は一九、〇〇六、二〇〇円であるにもかかわらず、前同様の方法により所得を秘匿したうえ、同五四年五月三一日前記広島南税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一二、一九〇、三五〇円で、これに対する法人税額が三、八三五、四〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって不正の行為により法人税一五、一七〇、八〇〇円を免れ
たもの(税額の算定は別紙第四、第五、第六記載のとおり)である。
(証拠の標目)
一、被告人李泰龍の当公判廷における供述
一、第四、第五回公判調書中の被告人李泰龍の供述記載部分
一、第三回公判調書中の証人白川一夫こと白鳳鉉の供述記載部分
一、第六回公判調書中の証人畑本義雄の供述記載部分
一、被告人松岡広男こと李泰龍の検察官に対する供述調書二通(検察官請求証拠等関係カード番号168、169、以下検一六八、一六九というように略記する)
一、被告人松岡広男こと李泰龍の収税官吏に対する質問てん末書一五通(検一五三ないし一六七)
一、藤岡康子(検三四)、川口人美(検三五)、大塚勲(検三九)、白鳳鉉(検四一)、中畝正雄(二通、検四二、四三)の検察官に対する各供述調書
一、藤岡康子(二通、検三二、三三)、川口人美(検三六)、徳正毅(検三七)、大塚勲(検三八)、白鳳鉉(検四〇)の収税官吏に対する各質問てん末書
一、商業登記簿謄本六通(検四四ないし四八、一七三)
一、広島南税務署長作成の「青色申告の承認の取消通知書」の証明書(検一七六)
一、収税官吏作成の調査事績報告書一三通(検一ないし一三)
一、収税官吏作成の現金有価証券等現在高検査てん末書三通(検一四、一五、一六)
一、左記のものの作成にかかる各証明書
1 広島商銀本店営業部長(検一七)
2 広島商銀西支店支店長(二通、検一八、一九)
3 広島相互銀行翠町支店支店長(二通、検二〇、二二)
4 広島相互銀行新天地支店支店長(検二六)
5 福岡相互銀行広島支店支店長(検二七)
6 広島信用金庫皆実支店支店長(検二八)
7 住友信託銀行広島支店支店長(検二九)
8 広島商銀海田支店支店長(検三〇)
一、高田諄三、谷上正彦、田川ミサヲ作成の各上申書(検二一、二五、三一)
一、岡山正則、金川淳次作成の各答申書(検二三、二四)
一、被告人有限会社松岡クリーナー代表者作成の上申書二通(検一七〇、一七一)
一、押収にかかる左記の帳簿、書類
1 所得税の確定申告書一綴(昭和五五年押第一三八号の1、以下単に符号のみ記す)
2 総勘定元帳四綴(2、3、4、95)
3 会計伝票三六綴(5ないし40)
4 賃金台帳二綴(41、42)
5 支払関係書類綴二綴(43、44)
6 仮払帳、立替金台帳各一冊(45、46)
7 月決め収集先請求台帳二冊(47、48)
8 入金カード三三綴(49ないし81)
9 日付二冊(82、83)
10 入金台帳二冊(84、85)
11 台帳二冊(86、87)
12 得意先名簿三冊(88、89、90)
13 集金台帳二冊(91、92)
14 組合員名簿一綴(93)
15 法人税決議書一綴(94)
16 税務綴二綴(96、97)
(法令の適用)
被告人季の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するので、所定刑中各懲役刑を選択し、被告人有限会社松岡クリーナーについては同法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑を科することとし、右は被告人らにとっていずれも刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人有限会社松岡クリーナーについては刑法四八条二項により所定罰金額を合算した金額の範囲内で、被告人李については同法四七条本文、一〇条により犯情最も重い判示第三の罪の刑に併合加重をした刑期の範囲内で、各処断することとなるが、本件において免れた法人税額は相当多額であり、その免れた期間も三年にわたる長期であって、被告人らの刑責は軽いとは決していえないけれども、査察については積極的に協力して早期に調査の終結を見たこと、当然の義務ではあるが本件三年分についての本税、重加算税、延滞税を完納していること、現在では諸帳簿を整備し、再び過ちをくりかえさないよう心がけ、反省の情が顕著であること、さらに被告人李は会社の代表者を辞任し、ごみ収集作業に身を挺して働いていること等酌むべき事情も認められるので、これら各般の情状を総合して、前記金額、刑期の範囲内において、被告人有限会社松岡クリーナーを罰金七〇〇万円に、同李を懲役八月に各処するが、被告人李については刑法二五条一項一号を適用してこの裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとし、訴訟費用は、刑事訴訟法一八一条一項本文により、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。
よって、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 谷口貞 裁判官 増田定義 裁判官 浅野秀樹)
別紙第一
修正損益計算書
自 昭和51年4月1日
至 昭和52年3月31日
<省略>
別紙第二
修正損益計算書
自 昭和52年4月1日
至 昭和53年3月31日
<省略>
別紙第三
修正損益計算書
自 昭和53年4月1日
至 昭和54年3月31日
<省略>
別紙第四
脱税額計算書
自 昭和51年4月1日
至 昭和52年3月31日
<省略>
税額の計算
<省略>
別紙第五
脱税額計算書
自 昭和52年4月1日
至 昭和53年3月31日
<省略>
税額の計算
<省略>
別紙第六
脱税額計算書
自 昭和53年4月1日
至 昭和54年3月31日
<省略>
税額の計算
<省略>