広島地方裁判所呉支部 事件番号不詳 判決
主文
被告人等を各罰金一万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。
訴訟費用中証人牛田豊春に支給した分は被告人等の連帯負担とし証人武岡賢に支給した分は被告人森、同浜田、同光宗の連帯負担とする。
本件公訴事実中被告人等四名が共謀の上、海上保安庁長官の許可を受けないで昭和二十七年八月二十四日頃安芸郡下蒲刈島村沖黒島附近海上において旧海軍用魚雷一発を海底より引揚げたとの点につき被告人等はいずれも無罪。
理由
罪となる事実
被告人等四名は、法定の除外事由がないにも拘らず、共謀の上、昭和二十七年九月三日頃呉市警固屋通七丁目十九番地松岡清吉方附近海岸において火薬類である旧海軍用魚雷一発を所持していたものである。
証拠(省略)
法律の適用
被告人等の判示所為は各刑法第六十条、火薬類取締法第五十九条第二号第二十一条に該当するのでその定むる刑のうちそれぞれ罰金刑を選択し、その金額の範囲内で被告人等を各罰金一万円に処し、被告人等において右罰金を完納し得ないときは刑法第十八条に従い金二百円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置することとし、訴訟費用は刑事訴訟法第百八十二条を適用の上主文第三項記載のとおりこれを負担させる。
一部無罪
本件公訴事実中被告人等四名が共謀して、海上保安庁長官の許可をうけないで昭和二十七年八月二十四日頃安芸郡下蒲刈島村沖黒島附近海上において旧海軍用魚雷一発を海底より引揚げたという事実に関し、被告人等は公判廷において右引揚に係る物件が前示魚雷であることは認めているが、それは海底から漁夫の網を引揚げる際網に掛つた物件にワイヤーを巻きつけ海からウインチで巻き上げたところ、海面近くにおいてそれが魚雷と思しきものであることが判つた旨供述しているのである。この点につき被告人浜田は自分が水深七十米位の海底に潜つてみると網が鉄らしい物に引掛つて判らないので浮上つて船の者(他の被告人等を指す)に鉄のような長い物があると話したと公判廷で供述しているに過ぎず、その他同被告人又は他の被告人等において本件魚雷の引揚に着手する前又はこれが海面附近に現れる途上において魚雷又は他の爆発物件であることを察知乃至認識したという証拠はない。
そして右物件が海面近くに達した時に被告人等が魚雷であることを知り又は察知したことは被告人等の各供述により明かであるが、この段階において引揚行為は既に終り共同所持の状態に達しているものと解するのが相当である。果して然らば、被告人等が右魚雷をその乗船した住吉丸に吊して呉市警固屋通の海岸まで持帰つたことを目して運輸省令第四十号第四条の三にいわゆる引揚行為の一部として同条に該当するものと認めることはできない。
結局被告人等の魚雷引揚行為については犯意なきに帰着するから、この点に関しいずれも無罪の言渡をなすべきものである。
よつて主文のとおり判決する。(昭和二八年三月二五日広島地方裁判所呉支部)