広島地方裁判所福山支部 昭和44年(ワ)48号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被告は根抵当権の順位譲渡はいわゆる枠を譲渡するものであつて、附記登記により第三者に対しても絶対的効力を生じ、譲受人は譲渡人の有していた順位においてその極度額の限度で、自己の被担保債権につき優先弁済を受ける権利を有する旨主張するのであるが、抵当権そのものが譲渡された場合でも譲受人は決算期において譲受人の有する被担保債権――中間に変動のないかぎり――について優先弁済を受ける権利を取得するにすぎないのであるから、単に抵当権の一部の効力にすぎない順位のみの譲渡によつて、譲受人がかような権利を取得することは背理といわざるを得ない。およそ権利が移転された場合でも無から有は生じないのであるから法律に特別の規定のない限り、譲受人は譲渡人の有していた権利の範囲を超える利益を受けることのできないことは当然であるからである。
そして大正六年一〇月二二日大審院民事二部決定の先例(民録二三輯一四一〇頁)によれば、抵当権の処分は第三者に対しては何らの影響をも与えないものとされているのであるから被告の主張の採り得ないこと多言を要しない。
すなわち根抵当権の順位譲渡がなされた場合、譲受人は譲渡人がその順位において優先弁済を受け得る金額と、譲受人がその本来の順位において弁済を受け得る金額との合算額の範囲内において譲渡人に対し、極度額の限度で優先弁済を受ける権利を有するに止まると解するを相当とする。
そうだとすれば、本件において譲渡人である訴外広相は、配当時における被担保債権が存しない以上、何らの弁済も受ける理由がないので、譲受人たる被告はその本来の順位において優先弁済を受ける権利を有するにすぎない。
(富川秀秋)