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広島家庭裁判所 昭和45年(少)334号 決定 1970年5月18日

少年 I・N(昭三一・一・二六生)

主文

本件について審判を開始しない。

理由

本件送致事実の要旨は、少年は昭和四四年五月○日午前一〇時頃広島市○○○町○番○○号○○市○○高等学校自転車置場において、○本○二の所有する自転車一台(時価五、〇〇〇円相当)を窃取したものである。というのである。

よつて按ずるに、一件記録によれば、上記送致事実は優にこれを認めることができ、本件非行が警察官に発覚したのが昭和四五年二月一九日であり、捜査が遂げられた末、これが司法警察員から検察官に送致されたのが同年三月一三日であり、ついで検察官から当裁判所に送致されたのが同年三月二六日であり、本件非行時に、少年は一四歳に満たなかつたが、当裁判所に係属した時には、既に一四歳に達していること、これによりさき、少年は昭和四四年六月○日の非行により同年八月五日から広島県中央児童相談所に係属中のものであることも記録上明らかである。而して、少年法三条一項二号、二項が一四歳に満たない者について都道府県知事又は児童相談所長から送致を受けたときに限り審判に付することができるとしているのは、単に家庭裁判所の審判権の範囲を画するためではなく、責任能力の限界をも加味したものであり、刑事責任年齢に達しない者が非行を行なつた場合にはまず児童福祉機関に先議させその処置に委ねる趣旨であると解するのが相当である。そうだとすれば、本件は、県知事又は児童相談所長からの送致を受けていないことが明らかであるから、審判に付することができないものといわねばならない。よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 渡辺宏)

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