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広島高等裁判所 平成11年(ラ)101号 決定 1999年10月22日

主文

一  本件抗告を却下する。

二  抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由

本件抗告の趣旨及び理由は、別紙平成一一年八月二六日付け「免責決定に対する意義申立書」と題する書面、同年九月二九日付け「即時抗告」と題する書面及び同年一〇月一二日付け準備書面に各記載のとおりである。

二  一件記録によれば、原審は前記免責申立事件につき、前記のとおり相手方を免責する旨の決定(原決定)をし、右決定書の謄本を平成一一年七月二八日相手方(破産者)の債権者で免責につき異議申立てをしていた抗告人に送達し、かつ、同年八月一二日原決定についての公告を官報に掲載してなしたこと、抗告人は、同年八月二六日、「免責決定に対する意義申立書」と題する書面により本件抗告を申し立てたことが認められる。

ところで、免責決定の裁判につき、原決定の場合のように、送達と公告とが重複してなされたときは、送達を受けた日からの一週間(破産法一〇八条、民事訴訟法三三二条)と公告のなされた日からの二週間(破産法一一二条)のうちのいずれか先に終期の到来する時点をもって、その抗告期間が経過するものと解するのが相当である。

したがって、本件抗告の申立ては、即時抗告期間を徒過しており、不適法である。

三  よって、本件抗告を却下することとし、主文のとおり決定する。

(別紙)

免責決定に対する意義申立書

一 破産者の債務額約五三〇万円の債権者二三社の内、サラ金業者が二二社個人は僅か一名であります。貸金を業とする会社は、破産者が出ると簡単に損失処理を行っても決算内容は最高利益更新であります。

しかし、年金生活者である個人の破産債権者(以下債権者という)は、九四万円を免責されることは命とりでこの決定は不当であり、実情を再調査され賢明な裁定を望みます。

二 五月一二日および六月一〇日付の破産者代理人の意見書には、実父の資産は一切所有していないとなっていますが、当時土地・建物だけでも別紙登記簿謄本のとおり所有されており、意見書は遺産相続という民事上最も重要な行為に対する説明および内訳の明示がなく、信ぴょう性がないといわざるを得ない。

さらに、登記簿謄本による判断では、実父は土地を昭和五〇年一〇月に現金にて取得され住宅を五一年四月に七〇〇万円(利息九、三%)借入れて建築されている。

この返済を九年間で済まされたのは異例のスピードであり高額な所得者と考えられます。

加えて、実父が五十八才の若さで死亡しているが、退職金・生命保険金・貯金(安芸農業協同組合・広島銀行)等の財産もあったと推定できる。

ついては、相続財産の詳細な科目・金額等の一覧表を提示して説明すべきである。

三 六月一〇日付の破産代理人の意見書(二)では、破産者はサラ金等から約二〇〇万円の借金があり、弁済期を定めず金ができたら一括支払うということで借りたとなっているが、破産者は、平成六年四月六日に広島市の三井ガーデンホテル一階の喫茶店へ金の無心のため債権者を呼び出した。

その際、破産者は「実父名義の土地・建物があり、法定相続分は四分の一ある」と相続財産をチラつかせ債権者が信用する説明をしたが、今回の債権者側の調査で実父名義の土地は平成元年三月に実母名義に変更させておりウソをついていたことが判明した。

続いて、破産者は「サラ金に一〇〇万円の借金があり、毎月五万円の利息を支払っているが、元金は全く減らないので困っている。一括返済すれば利息分の五万円を翌月から債権者に返済するから信頼して助けてくれ」と切実に要望した。債権者は、過去七か月位破産者に金を貸すばかりで全く返済されないので詳細に聞いた。問いつめると破産者は、サラ金の借金を八十万円に減額修正して返済財源は収入が確実な福祉手当と親戚の料理屋へ勤める収入等で五万円を確実に返済すると約束をした。

債権者は、十六か月で八〇万円を返済して呉れるなら人を救助する意味で二回に分けて八〇万円を貸付けた。

また、同意見書(二)では、平成八年の調停の支払いは毎月五千円で話がついたとなっているが、別紙調停調書のとおり別途協議するものとするが正しい。

毎月五千円の返済では、約一七年を要し常識的な期限は二~三年の返済である。

調停において金額が決められなかったのは、破産者は平成七年九月から調停が開かれてもほとんど欠席をして、調停委員さんはシビレをきらされた。平成八年四月一一日にめずらしく破産者が出席したので、一〇〇万円の支払い義務があることを認めさせ調停を終了した。

破産者は、「債権者が貸金を銀行振込みした際の振込金受取書を、自分で保管していると妻にバレるから焼却してくれ。その代りに破産者が借りた金は確実に記録するから」と言って振込み証拠書類の隠滅を数回勧めた。

これは、破産者が借金を否定しようとするため勧めたものである。

また、平成六年には実父名義の土地はないのにあると債権者を信用させる説明をしたり、約二〇〇万円の借金があるのに八〇万円であるとウソをついたり、さらに返済の約束の不履行は詐欺的な行為であり破産法があるとはいえ免責の適用を絶対除外すべきである。

破産者が、約二〇〇万円をサラ金で当時借りているなら、債権者は貸す余裕もなく、一部返済として八〇万円が使われるなら、確実に返済される財源がないのでこれはドブに金を捨てるようなもので絶対に金を貸していない。

サラ金等へ七〇万円を支払ったとされているが支払明細表を必ず提出されたい。

四 五月一二日および六月一〇日付の破産者代理人の意見書には、債権者に対しては大変な迷惑をかけて申し訳なく思っているとされているが、思うだけでなく返済するという行為で表して頂きたい。

破産者は、借りる時はすばらしい知恵を働かせたが、どうすれば返済できるかについて知恵を絞り、破産者を信頼して金員を貸し人助けをした債権者の立場を人道的に十分考慮されたい。破産者は支払い不能の状態とされているが、平成九年一一月に高給の国家公務員と再婚しており、すでに二年近くになれば生活は安定していると察しられる。

実子は女子高校生一人で育児の必要はなく、アルバイトまたは内職に専念でき、債務額が九四万円であれば家計のやりくり等でその気になれば返済は容易である。

破産者の主人は自衛官であり、服務においては一致団結・厳正な規律を保持し常に徳操を養い、人格を尊重しなど強い責任感をもって専念されておる方で、家庭においても常に夫婦は十分な話合いと、借りたものは返すという規律・固い道徳心・強い責任感をもって自己破産には対処すべきである。

五 破産者は、電話加入権を持っていないとされているが、電話番号082―884―0854は、六年前に破産者が使用していた番号であり、今年二月の破産宣告時も同番号を使用しておりNTTにおいて加入権者を調べようとしても他人には教えてくれません。

これは、財産隠しのため名義を変えたもので、計画的な破産行為の一つである。

六 債権者は、温和で人に頼まれるとイヤと言えずのお人好し、責任感の強い性格である。

定年まで勤務した団体は、封建的で固い職場であった。女性から業務以外の電話は特に変な目で見られるため、職場には電話をするなと破産者に伝えていた。

しかし、破産者からの金の無心電話には困った。金を貸してくれの電話には簡単にハイと返答をした。債権者の勤務時間内でも破産者は、会社の向いのデパートまで取りに行くから金を貸してくれと言ったり、勤務時間は午前八時三〇分からであるが、破産者が八時十分頃電話をしてきたが、債権者は出勤していなかった。破産者は同僚に「本地ですが壇上さんに急用があるので電話してくれ」との伝言をした。

急いで電話をすると金の無心の電話であり、周囲の者は何があったかと心配していた。

またある時は、金が今日どうしてもいると言って、午後八時ごろ福山からJR三原駅まで金を持って行き、破産者は広島から三原駅まで受取りに来た事もあった。

破産法では、「所定の免責不許可理由に該当する事実がない」と簡単に破産者を保護しているが、以上のように善意な債権者の立場状況は全く無視をされ、悪意の破産者が助かるということは、法治国家とは言え異常であります。

経過の一端を記述いたしましたが、債権者にとっては九四万円が免責されるなら年金生活者にとり大変なことでこちらも破産します。

以上のとおりでありますので、高等裁判所としての賢明な裁定をお願い致します。

即時抗告

控訴の趣旨

免責決定を取消する。

平成一〇年(ワ)第二七号 貸金請求事件の判決どおり金員を支払え。

との裁判を求める。

控訴の理由

一 破産者は、平成九年一一月に再婚しており、生活が安定している。

抗告者は、年金生活で家計は年々苦しくなっている。

二 抗告者は、金員を無理に都合して貸付けた大切な金である。

三 破産者は、実父からの相続財産の詳細な説明をすべきである。

準備書面

一 夫婦生活共同体として家団論の趣旨により借金は弁済すべきである。

(一) 破産者は、破産宣告を受ける前である平成九年一一月に国家公務員である自衛官と再婚しているが、夫である自衛官も妻が破産宣告を受け、しかも免責されたことは当然に知り得る立場にあり、また十分に知っているはずである。

(二) 破産者である妻は、法律的には債務の弁済の責はなくなったがそれは婚姻後であり、社会的道義的責任までなくなったのではない。

(三) 破産者は、免責され更生の道が開かれたが、抗告者からの借金あることは各裁判の結果からも明白である。

(四) 破産者は、免責され更生の道が開かれたが夫婦生活共同体として、家団論をもち出すまでもなく、共同して借金を返済すべき義務がある。

家団論は、裁判規範としては十分に認知されてはいないが、学説としては十分に成熟し一般的に通用され認められているのである。

ちなみに、建物保護に関する最高裁昭和三七年(オ)第一八号・昭和四一年四月二七日大法廷判決(民集二〇巻四号八七〇頁)は、上告人(賃借人)が勝訴したがその判決について、横田喜三郎裁判官ほか三名の裁判官の少数意見である家団論を詳細に述べておられるが、学会も賛成しているのである。

この裁判は建物保護法に関するものであるが、家団論の趣旨からして本件のような貸金返還のような場合も適用されるものである。

本件の場合においても夫婦生活共同体として、借金は返済する義務と責任があると思料される。

二 相続財産の有無を争っているのにその内容を明らかにしないまま免責申立事件は終結をした。

(一) 相続人である破産者の当然に相続すべき財産を明らかにしないで、「破産者の実は昭和六二年(昭和六一年が正しい)ころ死亡しましたが、土地建物等不動産はもとより他に資産は一切所有しておらず、従って破産者は何一つ相続していません」と述べているのみで詳細については一切供述していない。

(二) しかし登記簿謄本によれば、宅地一〇二・八一平方メートルは実父の死後昭和六一年九月四日に母本地ミチコが相続して、平成元年四月に抵当権の設定があり平成九年二月一二日抹消登記している。

この事実は、どのように説明すべきであるか。

(三) 本件においては、相続財産の有無を争っているのであるから、破産者は誠意をもって抗告者に説明し立証する義務を負うのである。

(四) 破産者は、相続財産の総目録を提出し説明する必要があり、法定相続分の相続(民法八八七条、八八九条)額も具体的に説明しなければならない。

(五) かりに、相続放棄の事実があるとしても相続財産があり、前項の家団論からみても、母子共同して借金の返済をすべきであり、たとえ免責されたとしても、社会的道義的責任は免れないと思料される。

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