広島高等裁判所 平成3年(ネ)123号 判決 1991年12月19日
控訴人
株式会社第一学習社
右代表者代表取締役
松本洋介
右訴訟代理人弁護士
開原真弓
同
田邉満
同
国政道明
被控訴人
高瀬均
被控訴人
小林和俊
右両名訴訟代理人弁護士
相良勝美
同
坂本宏一
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 控訴人訴訟代理人は「原判決中控訴人敗訴部分を取消す。被控訴人らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴人ら訴訟代理人は、主文同旨の判決を求め、なお、被控訴人らの訴状あるいは一九八九年五月三〇日付準備書面に「被控訴人らが控訴人会社本社編集一課あるいは二課に勤務する権利を有することを確認する。」との判決を求める旨表示してある趣旨は、原判決主文第一、二項同旨の判決を求める趣旨である旨述べた。
二 当事者双方の主張は、次のように改めるほかは原判決「事案の概要」記載のとおりであり、証拠関係は、原審記録中の書証目録(略)及び証人等目録(略)記載のとおりであるから、これを引用する。
原判決四枚目裏末行(本誌五八九号(以下同じ>79頁3段18行目)から同五枚目表一行目(79頁3段20行目)までを次のように改める。
「1 本件配転命令及び本件出向命令は、被控訴人らが第一学習社労働組合に加入し、又は同労働組合の正当な組合活動をしたことの故をもってなされたものであるかどうか。
2 本訴訟提起又は訴えの変更により、被控訴人高瀬の昭和四九年二月分から昭和五〇年一一月分までの賃金請求権(残額)並びに昭和四九年度夏期一時金、同年度末一時金及び昭和五〇年度夏期一時金、被控訴人小林の昭和四九年一月分から昭和五〇年一一月分までの賃金請求額(雑額)並びに昭和四九年度夏期一時金、同年度末一時金及び昭和五〇年度夏期一時金の支払請求権についての消滅時効が中断したかどうか。」
理由
一 当裁判所も、被控訴人高瀬均及び同小林和俊の就労場所はそれぞれ控訴人本社編集部二課及び同一課であることの確認を求める請求はいずれも理由があるからこれを認容すべきであり、また、同被控訴人らの賃金及び一時金の支払を求める請求は原判決が認容する限度で理由があるからこれを認容すべきであるが、その余の請求は理由がなくこれを棄却すべきものと判断するものであって、その理由は次のように改めるほかは、原判決説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決三枚目裏二行目の「同様の期間」(79頁1段26行目)を「同様に賃金の算定期間」に改める。
2 原判決三枚目裏一〇行目の「弁論の全趣旨」(79頁2段10行目の(証拠略))の次に「。以下、認定の用に供した書証の成立については、成立又は原本の存在及び成立につき争いがないか、他の証拠又は弁論の全趣旨によってその成立が容易に認められるかのいずれかであるので、その旨又は右書証の成立の認定に供した証拠を適示することはしない」を加える。
3 原判決五枚目表四行目の「本件証拠」(79頁3段23行目)を「<証拠・人証略>並びに弁論の全趣旨」に、同行目の「認められる」(79頁3段24行目)を「認められる。」にそれぞれ改め、同行目の括弧(79頁3段24行目の(証拠略))から同六枚目表五行目(79頁3段24行目の(証拠略))までを削る。
4 原判決七枚目裏二行目の「森中を労務管理課長として」(80頁1段19~20行目)を「逸早く組合結成の動きを察知してこれに対処すべく森中績を労務管理課長に任じて」に改め、同八行目の「外郭団体」(80頁2段1行目)を「外部団体」に改める。
5 原判決八枚目裏八行目の「現在」(80頁3段11行目)を「当時」に、同一〇枚目表八行目の「営業のため」(81頁1段11行目)から同行の末尾(81頁1段12行目)までを「、営業のため、会社から前記営業所に出向と称する長期出張を命じられ、あるいは配置換え等をされていた。」に、同末行の「輸入パイプ」(81頁1段16行目)を「輸入パルプ」に、同行目の「紙面」(81頁1段17行目)を「紙」にそれぞれ改め、同裏八行目から九行目にかけての括弧及び括弧内(81頁2段3~4行目)を削り、同一〇行目の「出向命令」(81頁2段6行目)を「出向命令のほか」に改め、同一一枚目表三行目の「予定されていた。」(81頁2段13行目)の次に「配転命令を受けた第一組合員のうち、青木書記長のように、既に第一組合結成前に配転を内諾していた等の個人的事情から、右命令に従い名古屋営業所に赴任した者もあったが(但し、同人は、将来に希望を失い昭和四九年一二月に退職)、河島は、これを拒否したところ、昭和四八年一一月一日倉庫係に配転され、昭和五二年三月まで倉庫で肉体的労働に従事したが健康を害して退職し、忌部は、これを拒否したところ河島と同日倉庫係に、昭和四九年一月八日京都支社に、昭和五〇年一〇月一七日名古屋営業所に配転され、昭和五一年一月退職し、太田は、これを拒否したところ、河島らと同日倉庫係に、昭和四九年一月八日福岡営業所に、昭和五〇年四月名古屋営業所に配転され、同年八月退職し、新保は、これを拒否したところ、河島らと同日倉庫係に、昭和四九年一月八日松山分室に配転され、昭和五〇年三月退職した。なお、従来編集担当者が営業の応援等のために営業所等に転勤、出向を命じられることがあっても、応援業務が終り、又は一定年限後には再び本社の企画、編集、通信教育指導業務等に戻されるのが通例であったが、第一組合の組合員については、右のとおり、一旦、営業所等に配転を命じられた者は、誰一人本社の編集職に復帰した者はなく、このことは、本件配転命令後の昭和五〇年二月二七日倉庫に二か月間の応援業務を命じられた当時の第一組合の書記次長児島文信(同人は、先に、名古屋営業所に対する会社の出向命令が裁判所において不当労働行為と認定されて、仮に原職に復帰すべきことを命ずる仮処分命令を得た直後に倉庫への応援業務が命じられている)、昭和五二年八月一日編集課から倉庫への配転を命じられた当時の第一組合の委員長中谷悦二等についても、同様である。」を加える。
6 原判決一二枚目裏九行目の「出向」(81頁4段24行目)を「京都出向」に、同行目の「生物教科書」(81頁4段25行目)を「生物教科書の指導書の編集が残っていたところ、その」にそれぞれ改め、同一三枚目表二、三行目の「業務もあったが、」(82頁1段2行目)の次に「これは程なく終了する程度の業務にすぎず、」を、同五行目の「小林に対し、」(82頁1段6~7行目)の次に「従前の被告会社の慣行に反し、事前に一切本人の了解を取り付けることもないまま、」を、同一三枚目裏二行目の末尾(82頁1段22行目)に「更に、後任に通信教育部の梅田薫を持ってくるということになると、通信教育部の業務に穴が空いて困るということを梅田の上司の田中係長から聞いた井上が、翌一七日、梅田及び田中と共に入院中の増田常務を訪ね、右の事情を説明して重ねて自己の後任に被控訴人高瀬を推薦したのに対しても、増田常務は、前日と同趣旨の発言をして、高瀬を井上の後任とすることに反対した。そうしてその後任に控訴人は、教科書の編集には全く経験のない前記梅田薫をあてた。」を加え、同三行目の項番号「(四)」(82頁1段23行目)を「(六)」に改め、同二行目の次に改行の上次のように加える。
「(四) また森中総務部長は、昭和四九年一月二五日福井県武生市在住の高瀬仁太郎(被控訴人高瀬の父でその身元保証人)に電話を掛け、「会社は高瀬の組合活動を嫌悪して今回の配転をしたもので、配転に従わなければ解雇処分にしなければならないので身元保証人に予め通知して置く」旨言明した。
(五) 第一組合は、組合役員の役員としての組合活動を基本的に阻害するとして、組合役員の本社外への配転を行わないよう控訴人に対し再三にわたり強く申し入れており、被控訴人高瀬、同小林に対する配転、出向命令後は、その撤回を要求して再三にわたり団体交渉を申し入れたが、その団体交渉の場でも、控訴人は、配転、出向は組合の関知するところではないとしてその撤回の要求には一切応じようとしなかった。」
7 原判決一三枚目裏五行目の「事件で」(82頁1段27~28行目)を「事件として」に改め、同九行目の「被告」(82頁2段3行目)の次に「本社」を加え、同一四枚目表一行目から同四行目(82頁2段8~14行目)までの括弧内を「名鑑に登載された官庁、会社に訂正依頼状を発送し、返送されたカードを従前のものと差し替え、改訂版を発送するという作業であるが、従前は、出版部、通信教育部所属の者の中から臨時応援的に出てその作業を行っており、常時右作業に従事させられた者はなかった。」に、同六行目の「なかった(倉庫業務は」(82頁2段18行目)を「なく、特に倉庫業務は」に、同行目の「行っていた。)。」(82頁2段19行目)を「行っていて、正社員が常時その作業に従事させられたことはなかった。そうして被控訴人らは、従前の編集課の仕事は全く与えられなかった。」にそれぞれ改め、同裏七行目の「配置することができ」(82頁3段10行目)の次に「、前示のとおり、現に控訴人会社にあっても編集課の他の係への配転を考えたこともあり」を、同一六枚目表三行目の「加えて、」(83頁1段3行目)の次に「前示のとおり」をそれぞれ加え、同一七枚目表一行目の冒頭(83頁2段11行目)から同七行目の「更に、」(83頁2段22行目)までを削る。
8 原判決二〇枚目表七行目(84頁2段17行目)の次に改行の上、次のように加える。
「 被控訴人らが、本件訴えにおいて、昭和四九年四月分以降の賃金について、被控訴人高瀬については一か月分につき五万九九〇〇円、同小林については一か月分につき金五万三〇〇〇円の割合での支払を求めていることは当裁判所に顕著な事実であるが、一部請求については残額についての時効中断の効力は生じないから、昭和四九年四月分以降昭和五〇年一一月分までの賃金額と仮処分により被控訴人らが受領した金員の差額については、右訴えの提起によっては時効の中断の効力は生じていない。また、被控訴人らは、前示のとおり平成元年五月三〇日に至って訴えを変更しているが、右訴え変更は、訴え変更後の被控訴人らの請求に係る昭和四九年四月分以降の賃金差額分の支払請求権並びに一時金支払請求権がそれぞれ二年の時効により消滅した後になされたものであることは暦数計算上明らかであるから、右訴えの変更によっても、これらの債権の時効は中断しないことはいうまでもない。」
9 原判決二〇枚目表八行目の「これに対し」(別頁2段18行目)を「他に」に改め、同九行目(84頁2段21行目)の次に改行の上次のように加える。
「3 よって、被控訴人らの賃金及び一時金の支払を求める請求は、被控訴人高瀬については、昭和四九年二月分及び三月分の未払賃金合計一一万五二〇〇円、同小林については昭和四九年一月分から三月分までの未払賃金合計一一万四三二八円並びにこれら未払賃金に対するこれら賃金の支払日の後である昭和五〇年一一月末日から支払済みまで商事法定利率年六分(控訴人が商人であることは当事者間に争いがなく、控訴人と被控訴人らとの間の労働契約が附属的商行為に該当することはいうまでもない。)の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、これを認容すべきであるが、その余の賃金及び一時金の支払を求める部分は理由がなくこれを棄却すべきである。」
二 よって、被控訴人らの請求を原判決主文第一項ないし第四項の限度で認容し、その余はこれを棄却した原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 篠清 裁判官 宇佐見隆男 裁判官 難波孝一)