広島高等裁判所 平成7年(行コ)4号 判決 1996年3月27日
広島市南区段原二丁目四番一九号
控訴人
串本金一郎
東京都千代田区霞が関一丁目一番一号
被控訴人
国
右代表者法務大臣
長尾立子
東京都千代田区霞が関三丁目一番一号
被控訴人
国税不服審判所長 小田泰機
広島市南区宇品東六丁目一番七二号
被控訴人(広島西税務署長訴訟承継人)
広島南税務署長 大成一貴
被控訴人ら三名指定代理人
村瀬正明
同
徳岡徹弥
被控訴人国税不服審判所長指定代理人
藤井俊
同
山口靖
被控訴人広島南税務署長指定代理人
伊奈垣光宏
同
清水利夫
同
小林重道
同
藤本悟
同
女鳥清治
同
光成和浩
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実
一 控訴人の控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 控訴人と被控訴人広島南税務署長との間において
(一) 広島西税務署長が平成四年三月三一日付けでした控訴人の平成二年分所得税の更正処分のうち、納付すべき税額六万五〇〇〇円を超える部分を取り消す。
(二) 広島西税務署長が平成四年七月八日付けでした控訴人の平成二年分所得税の更正請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分を取り消す。
(三) 広島西税務署長が平成四年三月一〇日付けでした平成三年度分源泉所得税国税還付金四万一六一五円を控訴人の平成二年度分所得税の延滞税に充当した処分を取り消す。
(四) 広島西税務署長が平成四年九月二八日付けでした控訴人の平成二年度分所得税の延滞税八四万九四八五円に基づく債権差押処分を取り消す。
(五) 広島西税務署長が平成四年一二月一〇日付けでした控訴人の平成二年度分所得税の延滞税に対する配当処分を取り消す。
(六) 広島西税務署長が平成五年三月八日付けでした控訴人の配当に対する異議申立てを棄却する旨の決定を取り消す。
3 被控訴人国税不服審判所長が平成五年一〇月二五日付けでした、控訴人の平成二年分所得税の前記更正処分及び通知処分に対する控訴人の審査請求を棄却する旨の裁決、控訴人の平成二年度分所得税の延滞税に基づく前記差押処分に対する控訴人の審査請求を却下する旨の裁決、及び控訴人の平成二年度分所得税の延滞税についてなされた前記配当処分及び異議棄却決定に対する控訴人の審査請求を右配当処分に関し棄却し、異議棄却決定に関し却下する旨の裁決をいずれも取り消す。
4 被控訴人国は、控訴人に対し、三一四九万三六〇〇円及びうち三〇六〇万二五〇〇円に対する平成三年六月二七日から、うち四万一六一五円に対する平成四年三月一一日から、うち八四万九四八五円に対する平成四年一二月一一日からその還付のための支払決定の日まで年七・三パーセントの割合による金員を支払え。
5 被控訴人国は、控訴人に対し、一〇〇〇万円を支払え。
6 控訴人と被控訴人国との間において、国税通則法一二二条、国税徴収法八条は、納税者に受忍の限度を越えた特別犠牲がある場合には、その限度において、日本国憲法一四条一項、一一条、一三条に違反し違憲無効であることを確認する。
7 控訴人と被控訴人国との間において、戦争賠償立替支払金に対する補償立法及びその具体的方法としての「中華民国に対する戦争賠償金立替支払額の減免額」の税額控除の立法がなされていない不作為が違憲であることを確認する。
二 当事者の主張
左に付加するほかは原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。
1 控訴人の主張
(一) 本件充当処分取消請求について
控訴人は青色申告をしているし、また本件においては正当な理由があるから、異議申立てをしないで直接審査請求できるものである。
(二) 本件異議棄却決定取消請求について
(1) 広島西税務署長は、控訴人に対し、本件異議棄却決定については審査請求ができる旨の誤った教示をした(甲二一号証)。そこで、控訴人は、被控訴人国税不服審判所長に対し審査請求をし、これについての裁決がなされた平成五年一〇月二五日から三か月内に本訴を提起したものであるから、出訴期間を徒過したことにはならない(行訴法一四条一、三項)。
(2) また、本件については正当な理由があるから、行訴法一四条三項但書により出訴期間を徒過したことにはならない。
2 被控訴人の認否、反論等
(一)(1) 控訴人の右主張(一)について
控訴人は、本件充当処分については審査請求もしていないから、結局不服申立てをしたことにはならない。
(2) 控訴人の右主張(二)の(1)については、広島西税務署長が誤った教示をしたことは否認する。
同(二)の(2)の主張は争う。
(二) 控訴人が本訴係属中の平成七年七月二七日に肩書住所地に住居を移転したことに伴い、被控訴人広島南税務署長が広島西税務署長の事務を承継した。
理由
一 当裁判所も、控訴人の本件訴えのうち控訴の趣旨欄2(二)ないし(四)、(六)、6及び7の請求(原判決の原告の請求欄1(二)ないし(四)、(六)、5および6の請求)にかかる訴え部分を却下し、その余の請求を棄却すべきであると判断するもので、その理由は、左に付加するほかは原判決の説示するところと同じであるからこれを引用する。
1 控訴人の主張(一)について
控訴人は、本件充当処分については審査請求もしていないのであるから、不服申立てを経たことにはならず、結局右処分の取消を求める訴え部分が不適法であることに変りはない。控訴人の主張は採用できない。
2 控訴人の主張(二)の(1)について
甲二一号証によると、広島西税務署長は本件異議棄却決定を経た後の処分(本件では本件配当処分)について審査請求ができる旨を教示したものであって、控訴人主張のような誤った教示をしたものとは認められない。
それゆえ、控訴人の主張はその余の点につきふれるまでもなく失当である。
3 控訴人の主張(二)の(2)について
控訴人は、本件異議棄却決定がなされたことを右決定の翌日の平成五年三月九日に知ったことがその主張自体から明らかである。
このような場合には行訴法一四条三項但書の適用はないものと解されるうえ、本件において出訴期間を徒過したことにつき正当な理由があるとは認められないから、いずれにしてもこの点の主張も採用できない。
4 なお、控訴人は、本件被控訴人国税不服審判所長のなした各裁決につき、手続上の違法があるかのような主張をするけれども、右各裁決に違法な点があるとは認められないから、控訴人の主張は理由がない。
二 よって、原判決は相当で、本件控訴は理由がないからこれを棄却することにし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 柴田和夫 裁判官 松村雅司 裁判官 岡原剛)