広島高等裁判所 昭和25年(う)632号 判決
原判決は法令の適用を誤つた違法があるというのであるが被告人西坪康之が昭和二十五年二月三日午後一時逮捕状により逮捕せられ同月十日午前九時検察庁に送致の手続がとられ其間勾留の処分によらず被告人が警察に在つたことは本件記録により認められるが原審公判調書中証人生野節章の「被告人は二月四日自白したのでそのまま帰らすつもりでしたが本人が共犯向井が逮捕されるまでここにおいてくれというので宿直室におらせた」旨の供述記載があり、其の他被告人の意思に反し之を留置したと認むべき事実は本件記録上之を認められない、勿論斯様な事態の発生は之を避くべきであるが之を以て直に不法拘禁ということはできない、のみならず被告人の自白は適法の逮捕期間内になされたるもので且つ右が被告人の任意性が抑圧された結果なされたものであると認むべき事由を見出すことが出来ない。
又被告人向井四郎の自白もそれが任意になされたものであることを疑ふべき事跡は見出し得ない。
従つて原判決がこれ等被告人等の供述調書を証拠に引用したことは何等法令の適用を誤るものではない。