広島高等裁判所 昭和26年(う)1126号 判決
職権により調査するに原判決は判示の如く五十六個の詐欺事実を認定しその証拠の標目として (一)被告人の原審公廷における自供 (二)各被害者提出の詐欺被害始末書或いは司法警察員に対する供述調書を挙示しているが右(二)の記載によつてはいかなる人の始末書、いかなる人の供述調書が証拠となるのか不明であつてこれを特定し得ない。思うに本件の如く五十六個の多数に及ぶ同種犯罪事実についてはその事実毎にその証拠を挙げなくても一括して証拠を挙示することは許さるべきであるが少くともその挙示する証拠が如何なる証拠であるかが判る様特定して挙示することを要するのであつて原判決の如く漠然たる挙示は許さるべきではない。従つて原判決は理由そごの違法を犯かしたものというべきであつて破棄を免れない。