大判例

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広島高等裁判所 昭和26年(う)428号 判決

第一、原判決は公訴第三事実に付事実誤認の違法があるというのであるが証人上田省三、同屋弥下競、同大石環等の原審公判廷においてなしたる各供述が同人等の公判準備手続における裁判官乃至検察官の面前においてなしたる供述と異つていることは所論の通りであるがその証拠力の優劣はその手続の段階形式によつてきめることはできない。公判期日において圧迫を受け前の供述と異る供述する虞ある場合のあることは法の予想するところで刑事訴訟法第二百二十七条の規定がそれである、従つて斯かる状況の下になされたる供述は公判期日になされたものであつても公判期日前になされたるそれに比し証拠力薄弱のものがあることは考えられる、而して前記大石の検事に対する第一回供述調書中「私が申上げたことは私の良心に誓つて本当の事を申上げたのでありますが岡崎などの前ではこの事を申上げるのは言難い事であつてこの点可然御取計いを願ます」という供述記載があり同人の公判期日における供述の真実性を一応疑わしめるものがあるようであるが、原審公判廷における証人上田省三、同河喜田能雄の各供述及「日本共産党は諸君と共に不滅である」と題する文書(証第三、四号)は昭和二十五年六月十四日に作成され、同日配布されたる公訴第一、第二の事実と「職場はわれわれの手で」と題する文書(証第六号)は同年六月二十九日に作成されたものであるという事実及其他の証拠を綜合判断するとき、検事の主張に反し昭和二十五年六月二十九日上田省三外多数名に配布したビラは寧ろ右後者であつたのではなかろうかと考えることは条理乃至吾人の経験則に照し決して肯定できない筋合ではない、従つて原判決が公訴第三の事実に対し犯罪の証明充分ならずとして之に対し被告人等に無罪の言渡をなしたのは事実の誤認乃至訴訟手続に違背はない。論旨は理由がない。

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