広島高等裁判所 昭和27年(う)620号 判決
物品税法(以下昭和二四年法律第四三号に依る改正前のもの)第一五条には「第一種若は第二種の物品を製造せんとする者は命令の定めるところに依り政府に申告すべし、製造を廃止せんとするとき亦同し」と規定し同法第二五条には「自己又は同居の親族の用にのみ供する第一種の物品を製造する者には当該物品に付本法を適用せず」と規定してあるから、自己又は同居の親族の用のみに供するものでない所定物品の製造を為さんとする者は政府に申告すべき義務があるものであるところ、右第一五条には所定物品を製造せんとする者と同様に政府に申告すべき義務がある者として「第一種第九一号に掲ぐる物品の小売業を営まんとする者」と併せて規定し、営業を為さんとする場合に申告義務があり販売せんとするときに申告義務があるものと定めて居らず、又製造せんとするときのみならず製造を廃止せんとするときにも申告義務があるものと定めて居り、物品税法施行規則第四条には右申告の際申告すべき事項として製造場、製造すべき物品を定め住所氏名を記載した申告書を製造場所轄税務署に提出すべき旨規定し、同規則第五条には一月以上右製造を休止せんとするときは其の時期を定めて申告すべき旨、同第七条には前記申告事項に異動を生じたときはその都度申告すべき旨、夫々規定して居り、之等の諸規定や物品税は第一種第九一号に掲ぐる物品以外の所定物品に対するものは原則として製造場から移出せられた物品の価格又は数量に応じて製造者から之を徴収するものであり(物品税法第四条)製造者は毎月其の製造場から移出した物品に付其の品名毎に数量及価格を記載した申告書を翌月十日までに提出すべく(同法第八条)物品税は毎月分を翌月末日までに納付すべく(同法第一〇条)無申告で製造した所定物品に対する物品税は直ちに之を徴収する(同法第一七条の三)と規定して居る点等を綜合考察すれば、物品税法第一五条に所謂製造者の申告は脱税を予防する必要上納税義務者及製造場の所在を確知すると共に同法所定の質問、検査命令、処分其の他課税上必要な監督を行う為に之を為さしめるものであると解すべく、従て右申告は所定物品の製造を開始せんとするとき之を為せば足り、一旦右申告を為した以上其の製造の休止又は廃止の申告をしない限り継続して其の物品の製造を為すことを得るものというべく、所論のように所定物品一個を製造する毎に右申告を為すことを要するものと解すべきではない。故に右申告をしないで所定物品を製造した者は其の数量が一個であると数個であると其の製造が同時であると継続して居るとを問はず、無申告で所定物品を製造した物品税法第一五条違反の一罪を構成するものというべく昭和二三年法律第一〇七号に依る改正前の物品税法第一九条第一項第二号、右法律に依り改正せられた同法第一七条の三第一項に所謂政府に申告しないで製造した者とあるのも右趣旨であると解するのを相当とする。右解釈は所論のようにその製造行為の製造分界が一個宛明確に区別し得る場合であると否とに依り異にすべき理由を見出し得ない。従て原判決が被告人か物品税法第一五条所定の申告をしないで昭和二三年四月八日頃から昭和二四年二月二七日頃までの間に課税物品である木製浴槽合計十四個を継続して製造した所為に対し右法条に違反し同法第一七条の三第一項に該当する一罪として処断し併合罪の規定を適用しなかつたのは真に相当であつて、何等所論の様な法令の適用を誤つた違法はない。論旨は理由がない。