大判例

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広島高等裁判所 昭和27年(う)759号 判決

原審は被告人等が昭和二六年六月二八日頃広島市選挙管理委員会の署名を使用して原判示の様な選挙投票通知書及投票通知交付書を作成し、之を広島市選挙管理委員会事務局に備付けたことを以て虚偽公文書作成及同行使の犯罪を構成するものと認定したものであつて、右投票通知書は何れも其の作成当時より二ケ月も以前である同年四月二三日に施行せられた選挙に関するものであり、右通知書は何れも選挙人に交付せられたものではなく、曾て昭和二六年四月二三日に施行せられた広島市長及同市会議員の選挙に関し作成せられて選挙人に交付せられた通知書と同一のものを再製したものであること等は、所論の通りである。而して公職選挙法施行令第三一条第一項には市町村の選挙管理委員会は特別の事情がない限り投票の期日の前日までに選挙人に投票所入場券を交付する様に努めなければならないと規定して居り原判決に挙示する証拠に依れば、広島市選挙管理委員会に於ては右に規定する投票所入場券の代りに本件の様な選挙投票通知書を作成して、之を投票期日の前日迄に選挙人に交付し投票期日には、選挙人をして右通知書を投票場に持参せしめて之と選挙人名簿とを対照すると共に、選挙人本人であるか否かを確認し、之を対照確認した証左として右通知書と選挙人名簿の該当者欄との間に照合印を押捺した上投票用紙を当該選挙人に交付して居たもので、右通知書を持参しなかつた選挙人に対しては、本件と同様な投票通知再交付書を作成した上、右と同様の対照確認手続を採つて居たものであつて、之等の手続を経た投票通知書及投票通知再交付書は総て右手続の終ると同時に破棄せられて居たものではなくして、選挙管理委員会に保存せられて居たものであり(公職選挙法施行令第四五条は選挙に関する書類を当該選挙に依つて公職に就任した者の任期間当該選挙管理委員会で保存して置くことを命じて居る)従て右通知書又は再交付書が選挙管理委員会に存在することに依つて当該選挙人が投票期日に投票所に出頭したことを証する資料とされると共に、投票所に出頭した選挙人が投票用紙を受取ることなくして退場するといふことは稀有のことであり、一旦投票用紙を受取つた上は投票しないで其の用紙を持帰ることは法令の禁止して居るところである(公職選挙法施行令第三六条第四二条等)から、当該選挙人に投票用紙を交付し且投票したことを証する一応の資料ともされて居たものであること、並被告人等は本件当時広島市選挙管理委員会の主事として委員会に関する事務に従事して居たもので前記の様な投票通知書又は投票通知再交付書の作成交付対照保存等の職務権限を有して居たことを認めることが出来る。従て投票通知書なるものは形式上は一定の選挙の日時投票場所等を選挙人に通知するものであつて、右書面に記載せられてある文言も亦其の趣旨のことが記載せられてあるに過ぎないが、之が一旦選挙人に交付せられ、投票期日に選挙人に依り投票場所に持参せられて選挙人名簿との対照を経た後、選挙管理委員会に保存せられて居るものと認められる状態に置かれた場合には、もはや右通知書は単なる通知書に止ることなく、当該選挙人が当該選挙の投票期日に投票場所に出頭して投票したことを証する資料としての書面たる性質を具有するに至るものであり、又其の故にこそ右通知書を持参しない選挙人に対してもわざわざ投票通知再交付書なるものを作成交付して之と選挙人名簿とを対照した後其の再交付書を保存して置くのであるから、其の再交付書も亦単なる再交付書に止ることなく前記の様な通知書と同様のことを証する資料としての書面たる性質を具有するに至るものであつて、従つて事実上或選挙人が投票期日に投票所に出頭し投票したことがないにも拘らず、其の選挙終了後其の選挙人に対する投票通知書又は投票通知再交付書を作成して之を恰も其の選挙人が投票期日に投票所に出頭し投票したことを証する資料としての書面と認め得る状態に置いた時には其の旨の虚偽の事実を証する書面を作成したものといふべく広島市選挙管理委員会の職員として右委員会の事務に従事する職責を有する被告人等が右の様な事実証明の状態に置く目的で広島市選挙管理委員会の署名を使用して選挙投票通知書又は投票通知再交付書を作成したことは刑法第一五六条に所謂公務員が其の職務に関し行使の目的を以て公務所の署名を使用して虚偽の文書を作成した場合に該当し、其の作成した文書を右の様な状態に置いた時には同法第一五八条に所謂虚偽文書を行使した場合に該当することは明かであつて原判決の認定した事実も右と同趣旨であり、原判決に挙示してある証拠に依れば右事実を認めるに十分であるから、原判決には何等所論の様な法令の解釈を誤り事実を誤認した違法等は存しない。論旨は理由がない。

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