広島高等裁判所 昭和27年(う)788号 判決
物の所持とは、人が物を保管する実力支配干係を内容とする行為であつて、実力支配干係を開始する行為と実力支配干係の持続を客観的に表明する客態とから成り立つていることは所論のとおりである。そして他人から預つた物で自己の所有に属しないと云うことは所持ということの妨げとはならないし、又容器に入れた物をそのまゝ預つた場合、保管を開始した当時はその内容品の何物であるかを知らなかつたとしても後にこれを知りながら敢てその保管を継続するにおいてはこれを知つた時からその物を所持していると解するに何等の支障もないのである。ところで本件は原判決の挙示する証拠によると、被告人は昭和二十六年五月三〇日の朝九時頃予て知合の甲立町方面から屑鉄等を買いに来る朝鮮人から頼まれて自宅台所に本件密造酒一斗一升入りの雲助一瓶を預り、同夜その蓋を開けて見て密造酒であることを知つたがそのまゝ保管してゐたところ、翌三一日午前九時頃吉田税務署係官の臨検をうけ押収されるに至つたものであることが認められる。
所論は、被告人が右雲助の内容を酒であると知つたのは、前記差押を受けた時で、それ以前は知らなかつたと主張するけれども、被告人の弁解以外にはこれを肯定するに足る証拠は存しないし、右弁解は原審の採用しなかつたところである。されば被告人は少くとも右内容品が密造酒であることを知つたときから右差押を受けるに至るまで本件密造酒を所持していたというに妨げはないから原判決が判示事実を認定してこれに酒税法第五三条を適用処断したのは相当であつて原判決には所論のような事実誤認の違法はない。論旨は理由がない。