大判例

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広島高等裁判所 昭和27年(う)789号 判決

弁護人は権利実行の手段として恐喝をなす場合には恐喝罪は成立しない、被告人は武本千恵子の依頼により濠洲兵ホーキンスの有する債権行使の手段として小柳毅陽に対し恐喝を行つたものであるから、被告人の所為は恐喝罪にならないと主張する、しかし原判決挙示の証拠によるときは被告人は当時ホーキンスと小柳との間の取引が不正なる取引であること右取引のためホーキンスは除隊となり、小柳は所持金三十二万円を差押えられたことを知つていたこと、被告人は何等特別の事情もないのに午前三時頃富永方に出掛け寝ている家人等を起してまで小柳と交渉してゐること、被告人は小柳に対しては、ホーキンスの妻の兄の如く振舞い武本千恵子の依頼をうけて来たということは全然言つていないこと、被告人は芦浦外一名と共に富永方に行き被告人が小柳と交渉した際はその中の一名は家の外にあつて見張をしていたこと等が認められるのであつてかゝる事実に徴するときは被告人は当初より小柳をおどして金員を取ろうという意思で富永方に出掛けたものであつて、弁護人所論の如く被告人が真に権利を行使する意思をもつていたとは認められない、仮に、被告人に真実ホーキンスの有する債権を行使する意思があつたとしても被告人が、その権利を行使するにあたり所携のジヤツクナイフを小柳の胸元近く突きつけ、自分は妹の為命にかけて来たのだから命をかけて話せ、話がつかねば体をあずかつていこう一万や二万の金は受取らんなど申向けて金員を要求したこと原判決の判示するところであるから、被告人の右の所為は権利行使の正当なる範囲を逸脱したものであつて権利の濫用といわねばならない。従つて被告人の所為を権利の実行なりとして恐喝罪の成立を否定することはできない。原判決には所論の如き違法はなく論旨は理由がない。

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