大判例

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広島高等裁判所 昭和29年(う)225号 判決

しかし、原判決挙示の証拠を綜合すれば、被告人は、原判決認定のように、原審相被告人張世勲と共謀して、本件砲金インゴツト二四二本を税関の免許を受けないで韓国から本邦内へ密輸入すべく、これを判示船舶に積載して韓国統営港から広島へ向け航行の途中、濃霧のためその進路を誤り、判示日時頃判示地点において、座礁するに至つたが、その際これが救助に赴いた判示警察署員に右物件を発見せられ検挙されたため、その目的を遂げなかつた事実を認めるに十分であつて、記録を調査するも原判決の認定に誤があるとは認められない。そして右は関税法(昭和二九年法律第六一号による改正前のもの)第七六条第二項に該当することは明らかであるから、原判決が同条項を適用処断したのは正当である。所論は、本件は前記関税法第一八条第二項違反即ち第七九条第二号違反の案件に過ぎず同第七六条違反の案件ではないと主張するけれども、右は原判決の認定に副わない事実を前提とするものであるのみならず、右第七九条の規定は関税法が輸出入の管理を適正に行うため船長又は機長などの地位に在る者に対し、これらの者の遵守すべき事項を定めたいわゆる取締規定に違反した場合における罰則であつて(いわゆる形式犯)本件のように、初めから無免許輸入を目的としたいわゆる実質犯の場合にあつては前記第七六条を以て論すべく、右第七九条を以て論ずべき限りではない。所論は要するに、原審の採用しなかつた証拠等に基き、原審が適法にした事実認定ないし証拠の取捨選択、証拠の価値判断を徒らに非難し、或は原審の認定に副わない事実を前提として原審の法令適用の誤を主張するものであつて採用することはできない。

(裁判長判事 柳田躬則 判事 尾坂貞治 判事 石見勝四)

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