大判例

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広島高等裁判所 昭和29年(う)365号 判決

昭和二七年政令第一二七号(日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定の実施に伴う外国為替管理令等の臨時特例に関する政令)第四条第二項は「同条第一項の者はその収受した又は所持する軍票を大蔵省令で定める手続により遅滞なく日本銀行に寄託しなければならない」と規定し、所論の法令におけるように、その収受したときから寄託するまでの猶予期間は特に設けず、右のように遅滞なく寄託しなければならないと定めているのである。そして右にいわゆる「遅滞なく」とは、合理的に考えて出来るだけ速かにとの意であつて、時間的に見れば多少遅れたとしてもその遅延がやむを得ない事由に基く正当なものと認められる限りここにいう遅滞したことにはならないと解すべきであるけれども、しかし軍票の収受者又は所持者が、その収受し若しくは所持する軍票を正当の理由なく他に譲り渡すなど同条項により命ぜられた日本銀行への寄託と全く相容れない処分行為をするにおいては、この者に対しては、もはや右に命ぜられた寄託行為の如きは到底望むべくもなく、その義務違反は明らかなところであるというべきであるから、この時において同条項違反罪は完全に成立するものと解しなければならない。そして本件は原判決挙示の証拠によると、被告人は他と共謀して軍票の密売買の周旋等をするに当り、イーサン号乗組員の中国人某等から判示の各軍票を受取り更にこれを揚均溢等に引渡して取引し、日本銀行に寄託しなかつた事実が明らかであるから、原判決がこれに対し前記同罪の成立を認め、判示法条を適用処断したのは相当であつて、所論のような事実誤認、法令適用の誤等はない。所論は独自の見解であつて採用することはできない。

(裁判長判事 尾坂貞治 判事 溝口節夫 判事 石見勝四)

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