広島高等裁判所 昭和30年(う)406号 判決
論旨はいずれも原判決の量刑は不当であるというに帰するのであるが、職権を以て調査するに、原判決はその証拠の部において単に「前科調書」と掲げ、法令適用の部において刑法第五六条第五七条を示して累犯加重をしているけれども、右刑の加重理由となるべき累犯の事実については何等判示するところがない。原審は右前科調書の記載を引用する趣旨の如くであるけれども、かゝる引用を許した規定は存しないところであるのみならず、右前科調書に記載された前科は二犯あつてその一については刑執行終了の日が明らかにされているが他の一については不明であり且つ原審はこれらの点につき何等審理をした形跡も認められないため、右は再犯の関係になるのか三犯の関係になるのかの点も明らかでない。結局原判決には理由不備の違法があるものといわざるを得ないから、この点において破棄を免れない。
よつて論旨(量刑不当)に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三九七条第三七八条第四号により原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書に従い更に左のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高木常七 裁判官 尾坂貞治 裁判官 池田章)